モリコメンド 一本釣り  vol. 51

Column

リツキ 圧巻のアコギの弾き語り。とんでもない才能を持ったニューカマーは高校生

リツキ 圧巻のアコギの弾き語り。とんでもない才能を持ったニューカマーは高校生

アコースティックギターとボーカルとロックンロール。それだけでシーンをひっくり返してしまう、とんでもない才能を持ったニューカマーが登場した−−なんていうと“大げさなんだよ。ありもしないことをデッチ上げるんじぇねえよ”という声が聞こえてきそうだが、この音楽に1回でも触れたら、きっと納得してもらえるはずだ。彼の名前は“リツキ”。現在高校2年生(春から3年生)のシンガーソングライターだ。

リツキが注目を集めたきっかけは、昨年の夏に開催された「未確認フェスティバル2017」(Galileo Galilei、ねごと、GLIM SPANKY、BRIAN SHINSEKAI、ぼくのりりっくのぼうよみ、などを輩出した「閃光ライオット」のコンセプトを生き継いだ10代アーティスト限定フェス)でグランプリを獲得したこと。審査員をつとめた音楽プロデューサー蔦谷好位置が「誰も見たことない歌い方とギターの弾き方と聞いたことない声と、本当の意味で未確認だったと思うんです。その凄さにずっと圧倒されていました」と絶賛、10代を中心とした観客の投票でも2位を獲得するなど、そのパフォーマンスはまさに圧巻だった。このフェスでギター弾き語りのアーティストがグランプリを獲得したのは史上初めて。しかもファイナルステージのライブは彼にとって人生2度目のライブ(初ライブは同フェスの三次審査)なのだから、“天才”という言葉を使いたくなるのほどの才能であることはまちがいないだろう。

小学校高学年でギターを手に取り、andymori、ゆらゆら帝国、フリッパーズ・ギターなどの日本のロックバンドを聴いていたという彼は、高校に入学した頃からオリジナルの楽曲を書き始める。ロックンロールの鋭さ、美しさをダイレクトに描き出すアコースティックギター、そして、繊細さと解放感を同時に感じさせるボーカル。圧倒的なオリジナリティとルーツミュージックに対するリスペクトを共存させたリツキの音楽の魅力は、昨年12月に発表された最初の音源「DAWN TO YOUTH」にもしっかりと刻み込まれている。

収録された4曲はすべてアコギの弾き語りだ。性急なビート感、奥深いブルーズを含んだメロディ、“そろそろ時間だろう 家を出ようあの理想郷へ”というラインがひとつになった「偏見」。ペイルファウンテンズ、アズテックカメラなどの80年代のネオアコを想起させるような「角で会いましょう」。心地よいロックンロール・グルーヴを放つ「スコットランド・ダンス」。憂いを帯びた旋律のなかで、どうしようもなく沈んでいく感情を描き出した「笑顔のイデア」。10代特有の衝動的なエモーションを“アコギと歌”という最小限のアレンジで普遍的な楽曲へと結びつけるソングライティング・センスからは、彼の無尽蔵のポテンシャルが伝わってくる。特に印象的なのは、<すでに冷めきってる天井 僕が腐りきる前に/もう一度夢といつかの熱を歌ってるだけ>(「偏見」)、<いつもの僕に名前などない/時計の言葉で遊んでる>(「角で会いましょう」)など、まるで欧米文学の翻訳のような滋味を含んだ歌詞の世界。日々の生活のなかで生まれる感情をそのまま書くのではなく、ビートやメロディと組み合わせながら、豊かな響きと意味合いを備えた“詩”として成立させる。その独自のセンスもまた、リツキの音楽の大きな魅力なのだ。そして言うまでもなく、すべての中心にあるのは彼自身の声だ。葛藤や不安といったマイナスの感情から“どこかにあるはずの理想の世界を目指すんだ”という前向きな意志までを瞬時に伝えることができるリツキの歌声はこれから、多くの音楽ファンの心を掴むことになるだろう。

J.D.サリンジャー、トルーマン・カポーティ、ジャック・ケルアックなどの海外文学に親しみ、最近はロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、ジム・オルークなどの洋楽、50〜60年代のジャズにも傾倒しているというリツキ。以前インタビューしたときは「この先のことはわからない。まずは地道にライブをやりたい」と話していたが、この後も彼は多くの芸術に触れ、様々な経験を重ねながら、素晴らしい音楽を届けてくれるはずだ。今は「DAWN TO YOUTH」を聴きながら、その根源的な輝きをたっぷりと味わっていたいと思う。

文 / 森朋之

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