Interview

松田凌&松島庄汰 同郷の2人が魅力を語る。辻仁成 作・演出舞台『99才まで生きたあかんぼう』

松田凌&松島庄汰 同郷の2人が魅力を語る。辻仁成 作・演出舞台『99才まで生きたあかんぼう』

原作の『99才まで生きたあかんぼう』は、芥川賞作家でもある辻仁成の小説。出演者は村井良大、松田凌、玉城裕規、馬場良馬、松島庄汰、松田賢二の6人。ひとりの男性が生まれ、大人になり、やがてこの世を静かに去るまでを、たった6人だけでコメディタッチで描く。コメディではあるが、脚本・演出を辻本人が手がけていることで、人が生きることの意味を原作から過不足なく抽出し、舞台に浮かび上がらせることは確実だ。辻がオリジナル作品の演出を手がけるのは『海峡の光』(2014年)以来4年ぶり。また、音楽はLUNA SEAのSUGIZOが担当。なかでも、フレッシュな役者6名が様々な年齢をどう演じ分けていくか注目だ。今回は、松田凌と松島庄汰にインタビュー。同郷の友情に溢れたコンビの掛け合いを楽しんで欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶
スタイリスト / 作山直紀(松島庄汰)、ヨシダミホ(松田凌)


原作は改めて人生の奥深さについて考えさせられた

原作『99才まで生きたあかんぼう』は、ある男性の0才から99才までの1才ずつを見開き2ページで読ませていく印象的な小説ですね。とても感動するシーンの多い物語でしたが、実際に小説をお読みになられた感想はいかがですか。

松島庄汰 小説を読みながら斬新だと思いました。0才から99才までの1年ずつを書くのは、僕には思いつかない発想ですし、読後に待っていた感覚は、“人生は大変”ということ。当たり前といえば当たり前ですが、人間の人生は、苦労があって、成功や失敗がある。なかなか気づかないことがわかりやすく書かれていて、いつ読んでも違う感覚を覚えました。僕は26才のときに読んだのですが、主人公が僕の年齢のときにはすでに結婚しているのは驚きました(笑)。その年齢での結婚をまったく考えていなかったので焦りました。改めて人生の奥深さについて考えさせられましたよ。

松田凌 (笑)。辻さんの持つ独特な世界観が伝わりやすい作品だと思いました。庄汰も言ったように、1年ずつ、人の人生を丁寧に描く小説はなかなかないだろうし、人生の大切さについて気づかされるんです。例えば、小説を読まなければ、他者の恋愛に触れて恋愛の意味を考えることはない。何かに没頭したり、何かに賭けて生きていくひとりの男性の人生を見ている壮大な感覚を味わいました。原作は傑作ですから、小説を書かれた辻さんのメッセージを忘れないように演じたいですね。

松島庄汰

脚本になったことで原作と変わった部分はありましたか。

松島 ストーリー自体は、ほぼ原作のままなのですが、お客様が原作の意図を理解しやすくなっていると思います。しかも、主人公の感情がよりダイレクトにお客さんに伝わりやすくなっています。

松田 そうだよね。今回の魅力は、6人芝居なので、演者が人生のどの年齢を演じていくかでお客様によって見方が変わる。6人だけで100年を描くドラマには演技の柔軟性が必要だから、テレビドラマにはない、まさに“演劇”になると思うんです。

松島 ただ、役者が大変な舞台だよね。台本だけでは全体像が掴めなかったし、稽古までに想像を膨らませている状態です。台本を読んだ印象は“箱根駅伝”。

松田 うん。タスキを受け取ってほかの役者に渡していく舞台かもしれない。

松田凌

辻さんの言葉には一言一言に説得力があって嘘がない

演出もされる辻仁成ワールドの魅力を教えてください。

松島 脚本を書くにあたって、出演する役者の人となりを知りたいということで辻さんとお会いしたんです。いわゆる面談でしょうか(笑)。とにかくカッコよかった。Twitterもフォローさせていただいているのですが、一言一言に説得力があって嘘がない。ツイートのどんな言葉にも辻さんの人生観が表れているような気がして、名言がたくさん散りばめられているよね。

松田 わかる。

松島 発せられる言葉に新しい発見があって鳥肌が立つし、グッときますね。

松田 言葉ひとつひとつの重みが魅力ですね。もちろん、Twitterもそうだし、言葉数では説明できないことを作品に残すとんでもない人です(笑)。アーティストとしていろんな角度から他人が言えないことを言える言霊を持っていらして、人となりにも惹きつけられました。実際お会いしたときも、辻さんの放つ空気感は独特でしたね。僕ら6人が必死に作ったものでは勝てない熱量を心に隠し持った印象を受けて、そのエネルギッシュさが稽古中に出てくるだろうと思います。

辻さんとの面談で面白かったことはありますか。

松島 「お酒は飲めるの?」と聞かれました。これは稽古期間が怖いぞ!? どれだけお酒を飲まされるんだろう?

松田 「楽しい現場にしたい」とおっしゃっていたよね。ほかに何か言われた?

松島 作品のことはあまり話さなかったかな。僕たちの人となりを知りたかったから、間違いなく面談だよね。一番初めは、知人の紹介ぐらいから始まって、徐々に内面を掘り下げてディープな話になっていきました。

今作は6人芝居で、大変さと同時に魅力もあると思います。

松島 ひとりの人生を描くなかで出会ういろんな人々を演じなければいけません。相手の女性役もこなさなくちゃいけなかったり、幼女を演じることもあるので、不安もありますが、役者として成長できる絶好の機会なので、楽しみですね。ただ、頭の切り替えが大変だよね。

松田 そう!!

松島 男性の人生をコメディで描きたいと辻さんはおっしゃっていたので、面白おかしく“真面目”にやれたらいいな。

松田 お客様は舞台上に6人しか見えないから、誰がどのシーンに見あった雰囲気を作るかが重要になります。自分たちにハッパをかける意味でもハードルが高い舞台ですよね。もちろん、それに対応できる役者を呼んでいただけたので光栄です。何十人も出演するビッグなお芝居も素敵だと思いますが、今作はひとつひとつの瞬間に凝縮された人間の魅力を存分に味わえますよ。演技には難しい課題もたくさんあると思いますが、稽古で困難なハードルを乗り越えたいですね。本番になれば、演劇の枠さえ飛び越える観たことのない舞台になるかもしれないですよ。

そんな高いハードルのある舞台をどのように演じて乗り越えていきますか。

松島 村井良太くんだけ主人公の“あかんぼう”を演じるのですが、僕らの役どころはバラバラです。総力戦という気がしますね。普通の舞台だとひとりの役を演じることが多いから、今回は出演していないシーンも含めて全体に気を配っていないといけないスリルがあると思います。僕らは演じ分けに気をつけることを心がけたいですね。

松田 先ほど、庄汰が言ったことで、“真面目”さが大切だと思うんです。頭ごなしに演じるのではなくて、何才の役を演じるにせよ、その年の役に没頭して真剣にやらないと、成立しない。少しでも斜に構えると、それこそ辻さんの描きたい世界を壊してしまう。お客様にとっては、何を見せられているのかわからない作品になってしまうかもしれません。“真面目”にやるからこそ納得してもらえる。そこだけは気をつけたいと思います。

LUNA SEAでも活躍されるSUGIZOさんが音楽を担当されますね。

松島 今作はあくまでコメディなので、LUNA SEAとは違うテイストの音楽になるかもしれないですし、ファンの方も聴いていただいたら面白いと感じると思います。楽しみにしてくださいね。

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