Interview

GLIM SPANKY 映画主題歌でもあるハードなロックチューンの新作は“尖りを抑えずに尖ったままで作った曲”という。ふたりの言葉から作品への想いとユニットの最新のスタイルを探ってみたい。

GLIM SPANKY 映画主題歌でもあるハードなロックチューンの新作は“尖りを抑えずに尖ったままで作った曲”という。ふたりの言葉から作品への想いとユニットの最新のスタイルを探ってみたい。

ニューシングル「愚か者たち」は、松坂桃李と沢尻エリカの競演で話題の映画『不能犯』の主題歌。存在感のある松尾レミのボーカルと、エモーショナルな亀本寛貴のギターは、映像作家のイマジネーションを刺激してやまないようだ。
映画にがっちりハマるハードでストレートなロックチューン「愚か者たち」に対して、カップリングの「In the air」は浮遊感が心地よい意欲作。もう1曲のカップリングは、CMで松尾が声で起用されている「I Feel The Earth Move」をGLIM SPANKYとしてカバーしたロック・クラシックだ。この3曲のバランスが、音楽好きの興味をそそる。
今年1月、ルーツロックをGLIM SPANKYのスタイルに昇華させたアルバム『BIZARRE CARNIVAL』を掲げた全国ツアーを新木場コースト2daysで締めくくった2人は、今年5月12日に初の武道館ライブを行なうことが決定。大活躍の昨今について、松尾と亀本に聞いてみた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 森崎純子

人間の汚い部分もオブラートに包まず、そのまま出してる部分もあるし、別にいい子ちゃんの曲じゃなくてよかった(松尾)

ツアー・ファイナルのライブ、よかったです!

2人 ありがとうございます!

中盤に歌った「お月様の歌」は感動しました。

松尾 あの歌をしっかり聴かせたかったんで、ありがとうございます!

またしても歌が上手くなった!

松尾 ホントですか? ありがとうございます! わからんけど(笑)。

ああいうライブの構成ができるというのは、曲のバリエーションが揃ってきた顕われだね。特にオープニングの「THE WALL」がシブくて、ドカンと盛り上げるわけでもないのに、ちゃんと“ツカミ”になってた(笑)。

松尾 はいはい(笑)。

亀本 そうですねえ、全然ツカミにもなってないという(笑)。

ははは!それを平然とやるところが面白かったです。

松尾 お客さんがどんな反応をするのかなあっていう、それがやりたくて(笑)。自分たちから見ていても、すごく面白かったですね。オープニングでガンガン盛り上げて、テンションをブチ上げるっていうのじゃなくて、1曲目にミディアムなロックの曲から入ってから、落として、幻想的な雰囲気にもって行く。最新アルバム『BIZARRE CARNIVAL』の曲順の通りにやっただけなんですけど。

亀本 アルバム通りだもんね。

松尾 そう。あの流れが私、すっごく好きで。「この良さをわかってくれ!」と思いながら、最初の3曲をアルバムと同じセットリストにしたので、もう自分の好きな流れのままやれたっていうのが楽しかった。で、しかもそれをちゃんとお客さんが理解して、跳ねるとか手を挙げるとかじゃなく、ボルテージを上げていってくれました。ちゃんと音楽を聴くっていう意味でも、ロックにノるっていう意味でも、みんなが身体を揺らして気持ちのいいノリ方をしてくれていたので、私もホントに気持ち良かったです。どれだけテンションが上がったとしても、自分自身があんまり手を挙げたりしないんで、自分のテンションに合う、ちょうどいい感じにお客さんがノってくれて、良かったなあって思いましたね。

洋楽アーティストも、ミディアム・ナンバーからライブに入って行く場合が多いよね。

松尾 そうなんですよ。

亀本 僕はライブをメチャクチャ観に行くんですけど、邦楽はほぼ行かないんですよ。だから逆に言うと、あの流れは自分の中では自然だった。

松尾 そうだね、うん。

亀本 フジとかサマーソニックとかのフェスで、いろんな洋楽のアーティストを観る。そこで邦楽アーティストもたまに見たりしますけど、やっぱり僕は洋楽ありきだから。メジャーのJ-POPだったりJ-ROCKど真ん中の人のライブに行くことっていうのは、ほぼないです。

松尾 私もないな。

亀本 観たとしても、全然関係ないものみたいなふうに見ちゃうんですよね。「ああ、この人たちはライブをこうやってやるんだ」とかじゃなく、なんかもう、「全然違うもの」みたいな感じになっちゃいます(笑)。

だとするとGLIM SPANKYは、J-ROCKど真ん中のバンドと違うことをやろうとしているわけじゃなくて、自分たちが気持ちいいようにやったらああいうセットリストになったということなんだね?

2人 そうですね。

松尾 自然な感じです。

武道館はいろんな歴史もありますし、すごく嬉しいことではあるんですけど、あまり「武道館でやれるからどうだ」とかを考えたくないなあと思ってます(松尾)

それがGLIM SPANKYのライブの個性になってた。そして5月に武道館ライブをやることになった! 武道館は自分たちがすごく切望していたことなの?

松尾 いや、まったく。

亀本 まったく切望してはないよね。

松尾 まったく切望していなかった。別にやる場所とか規模とか、どこでもいい。聴いてくれる人がいればいいんです。私たちのライブのお客さんは、「すごく年上の人が多いんだね」って言われることも多いんですけど……。

亀本 それもどっちでもいいよね。

松尾 そう、誰でも来てくれていいので、場所とか年齢層とかそういうものをまったく考えてないんですよね。なので、武道館はいろんな歴史もありますし、すごく嬉しいことではあるんですけど、あまり「武道館でやれるからどうだ」とかを考えたくないなあと思ってます。

GLIM SPANKYは武道館を目指して始めたバンドではないってこと?

松尾 うんうん、そこに目標はないです。

亀本 ただ人に「今度、武道館でやります」って言うと、「あ、すごいですね!」って言われるんで、「ああ、やっぱりすごいって思われるんだな」っていうふうに認識はするよね(笑)。だから、自分ら的にはホントにライブの場所はどこでもいいもんね。

松尾 うん。でもやっぱり武道館は「ビートルズがやった場所だ」とは思います。

いつの時代の話ですか(笑)。

松尾 (笑)。

でも、2人とは別に、ファンの人たちは盛り上がってるでしょ。

亀本 ファンの方は、人によっては思い入れのある方もいると思いますし、それぞれの感覚があると思うから、「ああ、GLIM SPANKYもついに武道館か」って思う人もいるだろうな。若い人は「武道館って大っきいんだろうな」ぐらいの人もいると思うんで、それはいろいろですよね。

GLIM SPANKYは武道館をどんな風に使おうと思ってるの?

亀本 特に、あるのかなあ。

松尾 特にないんだよなあ~。

「次にまたここから頑張ろう」っていう弾みが付くような雰囲気にはしたいですね(亀本)

ははは! それならそれでいいんじゃね(笑)。

亀本 何も考えてない。

松尾 常にどこだろうと“更新”していきたいので、ベストなライブが下北沢かもしれないし、武道館かもしれないし、っていう感覚です。武道館は到着地点でもないし、通過点というか。それよりも、世界に届くクオリティを追求していきたいなっていう。キャパシティの大きさじゃなくて、もっとクリエイティブな面でちゃんと音楽を拡大して、いろんな人に聴いてもらえるようなクオリティにしていきたいなっていうことなので。ただ、何か面白いことができればいいなとも思ってます。映像は使ってみたいかな。

亀本 僕はアンプをずらっと並べて、“アンプの壁”を作ってみたい。

松尾 ええ~……?

アンプを10個並べて(笑)。

亀本 あははは! 10個あると、もうなんかメタルとかみたいになってきちゃうんで、クリームとかツェッペリンとかフリーぐらいのイメージでやりたいな。

松尾 そうだね、うんうん。

ははは! それだったらレミさんは、馬鹿デカいアコギを持って弾くとか。

亀本 ははは! 何スかそれ(笑)。

松尾 (笑)。まだあんまりわかんないですね。ま、楽しく、いつもどおりにね。

亀本 去年が結成10年で、今年は11年目なんで、10年やってきて、あるひとつの通過点に感じられるような、で、「次にまたここから頑張ろう」っていう弾みが付くような雰囲気にはしたいですね。

松尾 そうだね、うん。

ニューシングルの「愚か者たち」は、いつごろ作ったんですか?

松尾 これは、1年前にレコーディングし終わっていました。アルバム『BIZARRE CARNIVAL』を作る前にもう終わってたんですよ。

亀本 そうなんですよ、すごく前なんですよ。だから時間軸が違いすぎたので、その対比をカップリングで出そうと思ってました。

松尾 でも、その“時間の違い”も楽しんでリリースするんですけどね。この「愚か者たち」を作ったすぐあとに『BIZARRE CARNIVAL』を作り始めたので、むしろちゃんと繋がっている部分っていうのがあって。たとえば「愚か者たち」は、私が考えた♪ターンターンタターン♪っていうリフから始まるんですけど、その頃はザ・バーズ(アメリカの60~70年代のバンド)にすごくハマってたんで、そのバーズが66年67年辺りで使ってた音階を、こういうサウンドに当てはめられないかなあってずっと考えていたら、あのメロディが浮かんだ。それを12弦ギターで弾いて、ハードなサウンドだけども、実はサイケデリックの、60’sの匂いがあるっていうところに落ち着かせたんです。それがあったからこそ『BIZARRE CARNIVAL』の、サイケに振り切った曲ができたり、そういうふうに繋がっていったんで、そのきっかけとなったのが「愚か者たち」なんです。

そういう意味では、『BIZARRE CARNIVAL』の1曲目の「THE WALL」も12弦ギターで始まってる。

松尾 そうです。

亀本 アタマから全部12弦ギターです。

松尾 実はそういうふうに繋がっていったので、『BIZARRE CARNIVAL』に行く道の途中ではあるんですけど、まだどういうアルバムになるかわからずにいた時期に、アルバムの次にリリースする作品を作らなきゃいけなかったので、いい意味で独立した作品にしようっていうことで、作り始めました。

原作の漫画も全部読んだ上で監督と話し合うことができたので、スムーズに映画と当てはまる曲を作れたという感じです(松尾)

映画『不能犯』のスタッフからは、「こうしてほしい」っていう要望はあったんですか?

松尾 はい。映画はかなり前に撮り終えてたので、それを見せてもらって、まず最初に監督とテーマについて話し合いました。

亀本 もうそのときには映画あったんだもんね。映像自体撮り終わってて、あとはCG処理とか色彩の処理をやってないだけで。

松尾 そうです。で、原作の漫画も全部読んだ上で監督と話し合うことができたので、スムーズに映画と当てはまる曲を作れたという感じです。思い込みで他人を操作していくストーリーだったので、人間の二面性というか、登場人物は表ではいい人なんだけど、裏では実は悪いことを考えている。その悪い気持ちに騙されると、そのまま地獄へ行ってしまうみたいなストーリーだった。あとは、どの道を選ぶかによって天国か地獄か分かれるっていう、人はいつも選択しながら生きているわけですけど、選択によって行き先が異なるっていうことだったり、そういうテーマを訴えかけるような曲にしてほしいっていうのがありました。それを全部考えた上で、歌詞を書いていきました。

映画が言いたいことと、GLIM SPANKYが言いたいことって、そんなに離れてはいなかったんですね。

松尾 そうなんですよ。なので、すごくしっくりきたし、人間の汚い部分もオブラートに包まず、そのまま出してる部分もあるし、別にいい子ちゃんの曲じゃなくてよかった。サウンドもそうだし、そのまま生々しさを出していいですよっていうことだったんで、特に自分たちの中でタイアップに合わせて新しい挑戦をしなきゃいけないっていうことじゃなくて、自分たちの持ってるものを持ってるまま、その尖りを抑えずに尖ったままで曲を作れたので、違和感がなかったですね。

亀本くんはどうだった?

亀本 僕らができることで映画に合うサウンドはどんなのだろうって純粋に考えたときに、この映画の雰囲気がダークだったんで、ある意味自分らが得意なプレイやサウンドでやれる世界観なのかなと思ったから、いかにもエモいギターをプレイしたり、そういうギター・ソロをやったりしましたね。「この映画に合うから、カッケーな」みたいな感じでやれて、そこは逆にすごく新鮮だった。

松尾 全体としては、ポップな部分があるけどポップじゃない部分もある、みたいな感じで、引き算したり足し算したりをけっこうやりましたね。

亀本 サビのコーラスはヤバいんだよね。

サビのハモのところのサウンドは、今までと違う感じがする。

亀本 今まで敢えてやってこなかった、ちょっとポップ系の手法ではあるよね。3和音だし、しかもメチャクチャ高いし。だからそれだけでもサビのインパクトが強い。

松尾 音圧で迫力を出すんじゃなくって、隙間で迫力を出すっていう方向に振り切ったときに、3つの声を重ねることによって、ちゃんとポップさも保ちつつ迫力も出せたっていう。そのコーラスの手法だったからできたんじゃないかな。

亀本 J-ROCKにはサビのコーラスの付け方でそういう手法を取ってるバンドが多いけど、言ってしまえばGLIM SPANKYはアルバムではあんまりそういうことをしてこなかった。

松尾 そうだね、そういうのを頑なに避けてきたんで、今回初めてやってみたっていう。

でも他のJ-ROCKバンドとは同じにはならなかった。

亀本 そう。それどころか、今までなかったサビのパンチ力になってるんですよね。無骨なロックに聴こえますよね。でも本気で聴くと、ポップな手法が使われてる(笑)。

松尾 そうだね、確かに(笑)。

人間的なものはギターとボーカルだけで、あとのサウンドはクールっていう。それがGLIM SPANKYのいつもとはまた違った表現の仕方だなっていうことで、やってみましたね(松尾)

カップリングの「In the air」は斬新なサウンドに驚いた。デッドなトラックと、エコーがたっぷり掛かったボーカルの対比にビックリ!

亀本 そうなんですよ、トラックはとにかくデッドにしようっていう。

で、レミさんの歌っているのは、低すぎと高すぎのメロディで、いちばん得意な音域がないようにわざと作ってる(笑)。

松尾 そうですね、へへへ。

亀本 この曲のアイディア自体が、そんなに気合いの入ったボーカルじゃなくて、シュワーっていう感じだったから、そういう系の曲になったよね。

松尾 わかんない、フツーに作ったらこうなったから(笑)。

亀本 このボーカルの雰囲気もいい感じだなと思ったんで、面白くて不思議な曲になったね。

松尾 『BIZARRE CARNIVAL』に入ってる「BIZARRE CARNIVAL」っていう曲だったり、その次の「The Trip」でもやってるんですけど、元をたどるとビートルズのコーラスみたいに、すべてちゃんと3度のハモリで続くんじゃなくて、2つの違うメロディが重なるとハモリになるみたいな、そういうものを目指しましたね。歌詞もフワッと浮遊感のある感じ。私の歪んだ声しか聴いたことのない人にとっては、きっとこういう歌い方って違和感があると思う。「こういう歌い方もするんだ」って思われるかもしれないんですけど、これはこれで自分が好きなように歌ってるだけなんですよ。人間的なものはギターとボーカルだけで、あとのサウンドはクールっていう。それがGLIM SPANKYのいつもとはまた違った表現の仕方だなっていうことで、やってみましたね。

これはいつごろ録ったの?

松尾 超最近。

亀本 アルバムが出来て、ツアー中だもんね、レコーディングしたのは。

松尾 だから今いちばん新しい、レコーディングした曲です。

いちばん古い音がシングルのタイトル曲になってて、カップリングにいちばん新しい音が入ってるんだね(笑)。

亀本 そうなんですよ。

松尾 それがちゃんと繋がっていて、キャロル・キングのカバー「I Feel The Earth Move」で答え合わせができるっていう。そういうストーリーのシングルにしたかった。この曲のレコーディング自体は最近なんですけど、ライブでやったこともあったり、CMで歌ってるっていうのもあって、何回か歌っていたんで。しかも自分たちのルーツになっているロックでもあるから、この3曲を並べたときに説得力が生まれるなと思って入れました。

すごく意味のある3曲入りシングルだね。

2人 はい。

ちなみに、2人はこの『不能犯』にあるようなマインドコントロールを受けた経験はありますか?(笑)

亀本 僕ですか? いや、ない……とは思うけど、わかんない、コントロールされててもわかんない(苦笑)。

松尾 わかんないねえ。

亀本 でも僕は松尾さんを、いつもマインドコントロールしてるよ。

松尾 あ、そう。

亀本 松尾さんを自分の思い通りに誘導するように(笑)。

そのまま行くと、地獄か天国かどっちだろうなあ(笑)。

松尾 ねえ、どっちでしょうねえー。

亀本 僕はいつも松尾さんを言葉巧みに、その気にさせるように誘導しとる。

松尾 そうなんだ。そうやって、「その気にさせようとして、こう言ってるな」っていうのもわかっていて返事してるから、それはマインドコントロールじゃないです。

亀本 何ぃ~! コントロールされてない!?

うははは!

松尾 手のひらに乗せられて、こう(笑)。

亀本 僕が転がされていたの、まさか!

松尾 そうなんです、ははは!

亀本 何ぃ~っ! 『不能犯』か(笑)。

あははは、ありがとうございました!!

2人 ありがとうございました(笑)。

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ライブ情報

GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館

5月12日(土) [東京] 日本武道館

GLIM SPANKY

60~70年代のロックとブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす、松尾レミ(Vo/Gt)&亀本寛貴(Gt)からなる男女二人組新世代ロックユニット。アートや文学やファッション等、カルチャーと共にロックはあることを提示している。2014年に1st ミニアルバム『焦燥』でメジャーデビュー。松尾レミの日本人離れしたハスキーな歌声が、多くのクリエイターを夢中にさせ、既に10本ものCMで歌唱を担当。最新3rd フルアルバム『BIZARRE CARNIVAL』はオリコンデイリーアルバムランキングで堂々2位、iTunesロックアルバムチャートでも1位を獲得する等大注目を集める。昨年公開映画『ONE PIECE FILM GOLD』主題歌「怒りをくれよ」、映画『少女』主題歌「闇に目を凝らせば」等を、新人では異例の大抜擢での担当。2018年5月には初の日本武道館でのワンマンライブも決定。

オフィシャルサイトhttp://www.glimspanky.com/