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「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」ライブレポート

「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」ライブレポート

生誕50周年と題したアリバーサリーLIVE。多数のゲストミュージシャンのサポートもあり、お祭り色が強い中、奥田民生は、あくまでもエンタテインメントと自らのロックンロールを体現するパフォーマンスを、国際フォーラムのオーディエンスに、スマートかつユーモラスに披露した。奥田にしかできないスペシャルなコンサート。その雰囲気を平山雄一が伝える。奥田特集の最後の記事をお送りします。

 「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」が、東京国際フォーラム ホールAで開催された。
 奥田の50歳イヤーの2015年は、5月に広島で行なわれたユニコーン 奥田民生50祭“もみじまんごじゅう”を皮切りに、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島での“奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム”などユニークなイベントが目白押し。いわく、「50歳のお祝いなのに、なんで俺が歌うの? 他の人が祝ってくれるんじゃないの?」。ボヤくことしきりの奥田だが、50歳イヤーの最後を飾るイベントとなる“となりのベートーベン”は、これまでの中でも最高の、他の誰にもできない超ユニークな内容となった。

 第1部は、ミュージシャン仲間が大勢駆けつける。そのバックを奥田自身が引き受けるというもの。それも、奥田の20年以上にわたるソロ活動を支えてきた二つのバンド・メンバーが勢ぞろいする。祝ってもらう本人が脇役を務めるのだから、奥田のボヤきもうなづける。が、しかし、本人は心底嬉しそうにバック・ギタリストに徹したのだった。

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 後輩にあたる岸田繁(くるり)、同世代の吉井和哉や草野マサムネ(Spitz)、先輩にあたるCharなど13名のボーカリストが、心を込めて奥田ナンバーをカバーする。
中でも仲井戸“CHABO”麗市の「人間」が素晴らしかった。このロッカバラードをチャボが歌うと、奥田とはまた違った深みが感じられる。テレキャスターから繰り出されるソリッドなギター・ソロが、満場をうならせた。

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第2部は、一転してフルオーケストラをバックに奥田が歌う。だが、ただ単に直立不動で歌うのではない。背後に控える金原千恵子率いる22名のストリングスとブラスや木管のフルオーケストラの前に、ロックバンドを従えた奥田がいる。あくまでロックなのが奥田らしい。
素晴らしいのは、そうした奥田の意図を汲んだ斎藤有太のアレンジだった。長年、奥田と一緒に演奏してきた斎藤は、このイベントの発案者。奥田らしいロック・オーケストラをプレゼントしたいという斎藤の思いのこもったサウンドが、オーディエンスを魅了する。
ストリングスで細かい和音を奏でるのではなく、同じ音を大人数で弾くことで太いメロディラインを生み、バンドにパワーを与える。これはロックなオーケストレーションの代表格である“エレクトリック・ライト・オーケストラ”(ELO)の編み出した手法で、斎藤はこの様式にのっとってスコアを書いた。ELOの名を世界に知らしめた大ヒット曲「ロール・オーヴァ・ベートーヴェン」が、“となりのベートーベン”に華を添えたのは偶然ではないだろう。

まず「ライオンはトラより美しい」と「コーヒー」で勢いをつけた後、おおいに観客が沸いたのは「股旅(ジョンと)」だった。この曲は、マーチのリズムでツアー暮らしを鼓舞する面白ソングだ。調子のいい行進曲を、ステージ上の全員が同じリズムで演奏するから、ムダに迫力がある。会場はそのコミカルさに腹を抱えて大爆笑だ。「音楽で遊ぶこと」をテーマに活動してきた奥田ならではのユーモアだ。同時にこのシーンは、斎藤から奥田への最高のプレゼントとなった。

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「さすらい」ではコーラスとしてバンドに加わったTRICERATOPSの和田唱と、ストリングスにバイオリンで参加した真心ブラザーズの桜井秀俊がいい仕事をする。
興味深かったのは「風は西から」だった。奥田はイントロで、コーラス隊と一緒に英語でこの歌を歌う。以前、レポートしたマツダスタジアムでの“ひとり股旅”で、「みなさん、一緒に歌いましょう」と言ってこの歌を英語で歌って観衆を煙に巻いたシーンの“元ネタ”がここにあった。おそらく奥田はこのイベントのリハで覚えた英語バージョンを、広島の本番で“練習”したのだ。そういうことをサラッとやってのける男なのだ。
アンコールで、奥田と一緒に現われたPUFFYの2人が「先生、おめでとうございます」と祝福する。曲はもちろん「アジアの純真」。元々、ELOのパロディとしてアレンジされたオーケストラ・パートが似合わないわけがない。超デラックスな生演奏に、オーディエンスは大喜びだ。

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続くユニコーン・ナンバー「すばらしい日々」はインストで、ここで初めて斎藤の“ロックではないオーケストレーション”が披露される。最後の最後で、繊細なハーモニーが観客の耳に沁みる。心憎い演出だ。オーラスは出演者全員が顔を揃えて、名曲「CUSTOM」を歌う。実力派ボーカルがひしめく中から、奥田の声が抜けてくる。つくづく凄い50歳の締めくくりとなった。

text / 平山雄一

奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”@東京国際フォーラム ホールA 2015.12.22 セットリスト

[第1部]
1.マシマロ(オカモトショウ)
2.野ばら(浜崎貴司)
3.悩んで学んで(Leyona&うつみようこ)
4.The STANDARD(岸田繁)
5.愛のために(八熊慎一)
6.手紙(吉井和哉)
7.夕陽ヶ丘のサンセット(和田唱)
8.スカイウォーカー(草野マサムネ)
9.息子(真心ブラザーズ)
10.明日はどうだ(トータス松本)
11.人間(仲井戸”CHABO”麗市)
12.あくまでドライブ(Char)
13.イージュー☆ライダー(全員)

[第2部]
1.ライオンはトラより美しい
2.コーヒー
3.股旅
4.手引きのようなもの
5.ヘヘヘイ
6.MILLEN BOX
7.さすらい
8.風は西から
[アンコール]
1.アジアの純真(PUFFY)
2.すばらしい日々(Inst)
3.CUSTOM