LIVE SHUTTLE  vol. 239

Report

Dragon Ashが見せた、オーディエンスとの強い絆。傑作『MAJESTIC』を掲げたツアーファイナル、横浜アリーナ公演のレポート

Dragon Ashが見せた、オーディエンスとの強い絆。傑作『MAJESTIC』を掲げたツアーファイナル、横浜アリーナ公演のレポート

2017年5月に発表したアルバム『MAJESTIC』は、キャリア20年間の中での最高傑作と、Kjが公言してはばからない充実した内容を持っていた。その自信作を掲げたツアー〈Dragonash Live Tour 2017 MAJESTIC〉は昨年6月8日のZepp DiverCityからスタートし、その初日の模様は当サイトでもレポートした。最新型のDragon AshとそのルーツにあるDragon Ashが同居し、荒ぶる魂と優しいメロディが両立する素晴らしいライヴだったと記憶している。あれから半年以上を経て、ライヴがどのように変化したのか。それ以上にファイナルで、Dragon Ashとオーディエンスたちが、20年間かけて築いた絆をどのように確かめ合うのか。注目の横浜アリーナに足を運んだ。

取材・文 / 平山雄一 
写真 / shimboyuki、mao Yamamoto、michitogoto、TAKAHIRO TAKINAMI

お前らがいたら、アリーナもライヴハウスみたいなもんだな

記録的な寒波のせいで、新横浜駅から横浜アリーナに向かうオーディエンスたちは足早だ。それでも道の途中で、「俺、最近、バンド始めたんだ」「何、弾いてるの?」「ベース!」「カッコいい!」などと近況を報告し合っている友人同士がいたりする。約19年ぶりとなる横浜アリーナでのライヴに、みんなの心は弾んでいるようだ。

会場に入ると、Dragon Ashを待ち受けるオーディエンスですでに埋め尽くされていた。アリーナのセンターはオールスタンディングフロアになっており、普段の横浜アリーナとは違って、よりファミリアな雰囲気だ。さて、どんなパフォーマンスが飛び出すのだろうか。

急に明かりが落とされると、歓声が上がる。まずはBOTSによるDJプレイからスタートだ。アルバム『MAJESTIC』はシンセやコンピュータによるプレーが、Dragon Ashのサウンドに色彩と変化を与えていた。その功労者であるBOTSが、これから展開されるライヴの序章のように「Majestic」(イントロダクション)をカラフルな音で奏でる。するとフロアから、「BOTS!!」というリスペクトの声援が上がる。みんな“よくわかって”いる。

ピンスポットが1点に集まると、そこに両手を天に伸ばしたダンサーATSUSHIがいた。すぐにダンサーDRI-VがATSUSHIに絡む。背後の超大型スクリーンに光り輝く樹木のような映像が浮かんで開演を告げると、横浜アリーナにさらに大きな歓声が上がった。ほかのメンバーがそれぞれステージの位置に着く。シルエットでKenKenがベースを受け取ったのがわかる。その間、DRI-VとATSUSHIは大きなフラッグを持って、会場に熱い想いを送っている。

桜井誠のドラムから、ライヴがドカンとスタートする。「Stardust」だ。音がデカい! これは初日のZepp DiverCityでも感じたことだったが、アリーナでもさらなる轟音が響く。中でもKjのボーカルがとても丁寧で、堂々たる存在感を発揮する。初日には前面に出ていなかった“貫禄”に、まず驚かされた。途中、HIROKIのギターソロが大会場を切り裂く。これもまたスケールの大きいプレイだ。ツアーを重ねてきたDragon Ashの“今の姿”が垣間見える。スクリーンにはおびただしい数の流星が飛び交い、Kjが「YOKOHAMA!!」と大声で呼びかけた。

「Majestic」から「Mix it Up」まではアルバムの曲順どおりに進む。KenKenは早くもかぶっていたハットを吹き飛ばして、ヘッドバンギングしながらベースを弾いている。「そう変幻自在 あるのはマナーと思いやり」というリリックがリアルに聴こえてくる。そんなDragon Ashのメッセージをしっかり受け取ったことを表わすように、僕の隣りに陣取る4人のティーンエイジャーたちが、爆発的に踊っている。

ステージ背後に設置された巨大スクリーンは、横長のものが“5段重ね”になっている。その間に通常の照明が仕込まれていて、それらが織りなすビジュアルが非常に刺激的だ。レーザーも効果的に使われていて、とても個性的なライヴを構築する。いつも観る横浜アリーナでのライヴとは、何かひと味違うのだ。僕はそんな“いい意味での違和感”を抱きながら、ぐいぐいと『MAJESTIC』の世界観に引き込まれていった。

前半は骨格の太いミクスチャーロックで固められている。英語詞が多く、真正面から音でオーディエンスを揺さぶってくる。ダークに尖った曲も遠慮なく演奏されるから、会場はシリアスなムードになったりもする。するとKjが「もっと楽しめよ!」とたしなめ、アッパーで愉快なナンバーを繰り出す。このあたりにも風格を感じた。これが20周年を迎えたバンド、Dragon Ashなのだ。

ピンスポットがKenKenに集まる。するとKenKenがエッジーなフレーズをベースで弾き、手にしたレーザーポインターからグリーンの光を発射する。それを交互に繰り返す。広いアリーナでもKenKenのベースとレーザーの光は、どの場所にも自在に届き、オーディエンスとステージは次々に結ばれていく。すごいコミュニケーション能力だ。こんなベーシストはほかにいない。「The Live」はDragon Ashの中でも人気のナンバーで、全員がハッピーなエネルギーに巻き込まれていく。客席との交流を楽しんだKjが、「Ladies & Gentleman! 声を限りに歓声を!! KenKen,on Base!!!」と誇らしげに叫んだのだった。

ここで再びBOTSのDJプレイが始まる。スクリーンには地球のような映像が流れる。「Beside You」から、ミディアムテンポの歌の世界に入る。Kjはここでも改めて丁寧にメロディを伝える。Kjを挟んで踊るDRI-VとASUSHIが、Kjの発するリリックの背中を押す。穏やかだがポジティブな言葉が、確実にオーディエンスに伝わっていく。

続いて「静かな日々の階段を」が、HIROKIのスライドギターから始まる。「草木は緑 花は咲き誇り 色とりどり~小春日和」とたたみかける美しいライムが、ジワジワと感動を呼ぶ。ふと見ればKenKenが、リリックを身振り手振りでフォローしている。僕の隣りのティーンエイジャーたちは、今度は肩を組んでKjと一緒に歌っている。スクリーンはメンバーをモノクロで映し出し、心地よいノスタルジーがアリーナを包み込んでいく。

「Jump」では一転、上半身裸のKjがハンドマイクで会場を煽り、タオルを回すと、オーディエンスもタオルで応える。桜井の叩くポリリズムを、BOTSもパーカッションでサポート。シンプルだが深いグルーヴが、空前の熱狂を呼んだ。

その熱気のまま、「百合の咲く場所で」のイントロが流れる。会場はもう大騒ぎだ。サビでオーディエンスたちがハンドクラップしながら「オイオイ」と叫び、モッシュピットはダイブの嵐。Kjはたまらず「すげー、ライヴハウスみたいじゃん!」と怒鳴る。それにオーディエンスも大声で応える。

「お前らがいたら、アリーナもライヴハウスみたいなもんだなぁ」とKj。そう、僕の抱いた“いい意味での違和感”の正体は、これだった。広い横浜アリーナにいるのに、小さなライヴハウスにいるような感じ。ステージと客席が至近距離にあるような“嬉しい錯覚”を抱いていたのだ。これもまた20年目のDragon Ashの姿だった。またKjもそうなることを望んで、このライヴに臨んでいた。

「俺、20年、バンドやってて、今の時代が一番カッコいいバンドが多いと思ってて。ライヴハウスに行くと、ひとつはカッコいいバンドが出てる。どうか平日でも、ライヴハウスに足を運んでください」とKjが言うと、賛同の大歓声が上がった。

「Fantasista」では、BOTSがスクラッチで会場の“火”に油を注ぐ。「Lily」でシンガロングが絶頂に近づく。ラストは『MAJESTIC』収録の名曲「A Hundred Emotions」だった。メンバーの映像がスクリーンに映し出される。その中に混じって、照明のオペレーターも映っている。このツアーを成功に導いたスタッフも、重要な一員だというメッセージだ。初日も「音楽は鳴り止まない 感情はやり場がない」というフレーズが心に刺さったが、ファイナルではさらに深く心に突き刺さってライヴが終わった。

アンコールは「Viva la revolution」。「Viva la revolution」の掛け声のサンプリングが、ループで繰り返される。DRI-VとATSUSHIはフロアに降りてオールスタンディングエリアの後ろに回り込み、ステージのメンバーたちと一緒にオーディエンスを“包囲”する。初期の代表曲に、会場は狂喜する一方だ。

終わって桜井が語り出した。

「早いもんで、もうアンコール。今日はやりながら、バンドってカッコいいなって思いまして。このツアーで北海道から沖縄まで回ったんだけど、どこのお客さんも『横浜アリーナ、楽しみにしてます』って言ってくれた。だから今日はそのつもりでやってたんだけど、そんなこと関係なく楽しいね! 俺は“いいこと言う担当”じゃないんだけど、みんながカッコいいこと言わせるような顔になっちゃってる(笑)。ラウドなロックバンドが、こんな大きい会場でやれるって、感謝の気持ちでいっぱいです。1999年にここでライヴをやりました。そのとき俺は19歳だったんだけど、その19年後に38歳になってまたここにいる。人生、ダブルスコアって、すごいことだよね。こんなに愛されてロックバンドやってるなんて、考えてもいなかった。せっかくなので、19歳のときにやってた曲をやってみます。楽しんでください」

始まったのはアルバム『Viva La Revolution』(1999年)収録の「Drugs can’t kill teens」だった。アップテンポのスカナンバーに、モッシュピットが再び騒然となる。桜井も目一杯ドラムを叩きながら、コーラスしている。このとき、桜井の脳裏には、どんな想いがよぎっていたのだろうか。きっと“19歳の桜井”にこの光景を見せたかったに違いない。

次の「繋がりSUNSET」は20枚目のシングルで、“人との繋がり”についてのKjの想いを描いている。それがステージと客席との強い絆の中で歌われると、長い命を持つ曲だということが自然に納得できたのだった。

最後は、今のDragon Ashに繋がる変化を見せたアルバム『THE FACES』(2014年)からの「Curtain Call」で締めた。「いつかまた逢おうよ goodbye goodbye」と結ばれる、メロディアスなミディアムロックナンバーだ。Dragon Ashの新しい未来は、この“goodbye”という挨拶から始まるのだろう。心に残る鮮やかなファイナルになった。

Dragonash Live Tour MAJESTIC Final supported by LIVEDAM STADIUM STAGE 2018.1.28@横浜アリーナ SET LIST

M. Majestic
M01. Stardust
M02. Mix it Up
M03. Pulse
M04. 光りの街
M05. Ode to Joy
M06. Singin’ in the Rain
M07. Walk with Dreams
M08. TIME OF YOUR LIFE 
M09. Circle
M10. Headbang
M11. Faceless
M12. The Live
M13. Beside You
M14. 静かな日々の階段を
M15. Jump
M16. 百合の咲く場所で
M17. Fantasista
M18. Lily
M19. A Hundred Emotions

EN01. Viva la revolution
EN02. Drugs can’t kill teens
EN03. 繋がりSUNSET
EN04. Curtain Call

Dragon Ash(ドラゴン アッシュ)

1996年にKj(vocal, guitar)、IKÜZÖNE(bass)、桜井誠(drums)による3ピースバンドとして結成。1997年に1stミニアルバム『The Day dragged on』でCDデビュー。その後、BOTS(dj)、HIROKI(guitar)、ATSUSHI(dance)、DRI-V(dance)が加入し、7人編成に。2012年にIKÜZÖNEが急逝。2017年、デビュー20周年を迎え、ベーシストKenKenが制作に全面的に加わったアルバム『MAJESTIC』を5月31日に発表後、全国ツアーを開催した。2018年1月28日に横浜アリーナで行われたファイナル公演を収めた映像商品が3月28日に発売される。

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