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諏訪部順一&鳥海浩輔によるユニット“フェロ☆メン”がプロデュースする、魅せる音楽朗読舞台「AnGeL fAIL」

諏訪部順一&鳥海浩輔によるユニット“フェロ☆メン”がプロデュースする、魅せる音楽朗読舞台「AnGeL fAIL」

アニメ『テニスの王子様』(跡部景吾 役)、『ユーリ!!! on ICE』(ヴィクトル・ニキフォロフ役)などで知られる諏訪部順一と、『弱虫ペダル』(今泉俊輔 役)、『薄桜鬼』シリーズ(斎藤一 役)などで知られる鳥海浩輔によるユニット“フェロ☆メン”が出演・プロデュースを手がける音楽朗読舞台「AnGeL fAlL」が、2018年1月27~28日、千葉・舞浜アンフィシアターにて開催された。『君に届け』(黒沼爽子 役)の能登麻美子、『夏目友人帳』(ニャンコ先生/斑 役)の井上和彦、『おそ松さん』(カラ松 役)の中村悠一をゲストキャストに迎え、マルチエンディングストーリーの全3公演を実現。全回満員となった会場を、圧倒的な演技力と圧巻の演出で酔わせた。ここでは2日目の昼公演「AnGeL fAlL-DAY-」の模様をお届けする。

音楽朗読舞台「AnGeL fAlL」は、フェロ☆メンの真摯な想いが結実したもの

“フェロ☆メン”は、諏訪部順一&鳥海浩輔という当代きっての人気男性声優が2004年に結成した企画ユニット。2009年にシングル「禁忌の薔薇~Aphrodisiac~」でCDデビューも果たし、これまでにシングル6枚、アルバム1枚をセルフプロデュースでリリースしている。そもそもは諏訪部、鳥海と岸尾だいすけ、鈴村健一、高橋広樹、保村真、吉野裕行によって2002年に結成され、2013年以降無期限活動休止となっている声優ユニット“謎の新ユニットSTA☆MEN”から派生したものだ。

フェロ☆メンの活動は、声優としての2人を応援しているファンに向け、あくまでも恩返しの意味で行なっているという。そのスタンスは、“エロティック貴族”をコンセプトにしたビジュアルとともに、ほかの音楽活動を行なっている声優とは一線を画すものである。終演後トークで諏訪部も語っていたが、フェロ☆メンの活動は会場に足を運んでくれた人しか体験できないモノではなく、時間や場所を問わず誰でも同じように楽しめるモノづくりを目指しており、それでも強く願われたライヴ開催の要望に応えるため、チケット転売防止をはじめホスピタリティに自ら注力することで今回の舞台を実現させた。彼らの真摯な想いが結実したものだといえるだろう。

また、今回、フェロ☆メンがタッグを組んだクリエイター陣も特筆すべき存在だった。

諏訪部が原案と総合演出を手がけたこの物語を、見事な舞台作品として昇華したのは、朗読劇の持つ静的なイメージを覆すダイナミックな作風で、近年高い評価を得ている劇作家・演出家の藤沢文翁。彼が手がける音楽朗読劇に多数出演した諏訪部が、“この手法ならばフェロ☆メンの世界観を具現化できる”と熱望し、藤沢への直談判の末、パートナーとして手腕を振るうことになった経緯があるのだという。

藤沢とも長くタッグを組んできた音楽監督を務める村中俊之は、国内外の著名アーティストとの共演も多いチェロ奏者であり、NHK大河ドラマ『龍馬伝』のテーマ曲のアレンジなども担当した作編曲家でもある。今回の舞台では、オリジナル楽曲だけでなく劇伴として使用するためにフェロ☆メン既存曲のアレンジも手がけ、さらには指揮もこなすという八面六臂の活躍を見せた。管弦含めた構成のバンドを率い、圧巻のサウンドメイクで舞台を彩る。

さらに、無数のLEDで様々な形状の光を表現するドットイメージやレーザー演出をはじめとした、卓越した照明効果を手がけたのは、坂本龍一やX JAPANなどのステージを数々担当するチームだ。また、舞台美術や衣装には東宝舞台チームが参加するなど、錚々たる顔ぶれのスタッフが脇を固めていたという。

多くの舞台作品では演出家やキャストにスポットが当たりがちだが、本作「AnGeL fAlL」はそれだけでなく、ストーリーもドラマチックだ。開演前から場内には雨音が響き、重厚な雰囲気を醸し出す。演奏家たちが静やかに登場し、轟く雷鳴が物語の幕開けを告げると、天使の羽根が象徴的に飾られた半円形のステージで老医師、ロバート・ダドリー教授(井上和彦)と、彼の鞄持ちである若い医者、エマニュエル・ベルナルド(中村悠一)の姿が浮かび上がる。そして2人が、ある銀色のモノクル(片眼鏡)を探す場面から物語は始まる。

そのモノクルこそ、疫病がはびこっていた昔、見捨てられた重病人をたちどころに治し“奇跡の少女”と呼ばれていたサラ・アッシュフォール(能登麻美子)の秘密を解き明かす手がかりだと、若き日にサラと知り合いだったダドリー教授は、静かに語り出すのだった。

そこから舞台はサラの物語と移りゆき、サラの前に乱暴な口調で大胆不敵、面倒くさがりな黒髪の天使・マラキア(諏訪部順一)と、聡明で真面目、物腰穏やかな赤髪の天使・パクス(鳥海浩輔)が登場。この2人の天使と出会ったサラの生活は一変する。時にコミカル、時に心温まる様々なドラマがここから紡がれていく。しかし、その裏に忍び寄る不穏な気配によって、物語は激動の終焉へと向かっていく。

過去と現在、ふたつの時代を軽やかに跳躍しながら謎が解き明かされていく展開は、観客の心をしっかりと掴んで離さない。ちょっと天然なところもあるが、そのひたむきさに思わず応援したくなるサラを情感豊かに演じる能登麻美子に胸を打たれ、年老いたダドリーと青年時代のダドリーを巧みに演じ分けるベテラン・井上和彦の確かな存在感に圧倒され、ダドリーをはじめ数々の兼役を見事に演じきった中村悠一の技量には感嘆しかない。

さらに観客の胸を深くえぐったのは、諏訪部と鳥海演じる天使たちの悲哀だった。本作は全3公演それぞれ異なる結末を持ったマルチエンディングとなっているため、明らかになる彼らの胸の内もそれぞれ異なるのだという。だが、そのどれもが衝撃的であり、DAY公演のクライマックスでも、会場内のあらゆる場所から、押し殺したようなすすり泣きが聞こえてきたのも印象的だった。

声優の深みのある演技、バンドによる壮大かつ繊細な生演奏、様々に可動する照明や、幻想的なスモーク、本物の炎の熱とゆらめき、舞い散る天使の羽。それらが有機的に絡み合って紡がれていくステージは圧巻のひと言だ。舞浜アンフィシアターの構造を存分に活用して作られたファンタジー空間は、これまでに味わったことのない感動を与えてくれた。

ドラマチックな結末を迎えた「AnGeL fAlL」の物語のラストは、フェロ☆メンが歌う「AnGeL fAlL」の楽曲で締め括られた。アンコールでは演者たちが観客とスタッフへの感謝の気持ちを述べる。そして最後にもう一曲、フェロ☆メンから届けられたのは、ファンへの限りない愛情が込められたナンバー「ラブソング」。「ここも夢の国だったでしょ?」とやさしく微笑んでいた鳥海、「自分たちは、届けたい人がいるから作品を作っています。その想いは今回の脚本にも込めました。身近な人にやさしくしたくなるような、温かいものを、持って帰ってもらえたら幸いです」と真摯に語った諏訪部。彼らが観せてくれた大切な想いは、ファンの心にいつまでも残るに違いない。

挨拶では、「AnGeL fAlL-DAWN-」初日公演の本編が、今年春にdアニメストアにて配信予定との嬉しい発表も。物語の行方とマルチエンディングの結末が気になる方は、そちらもお楽しみに!

取材・文 / エンタメステーション編集部

フェロ☆メン プロデュース音楽朗読舞台「AnGeL fAlIL(エンジェルフォール)」

2018年1月27日(土)DAWN公演
2018年1月28日(日)DAY公演/NIGHT公演
舞浜アンフィシアター

プロデュース:フェロ☆メン(諏訪部順一・鳥海浩輔)

脚本・演出:藤沢文翁
音楽監督:村中俊之
原案・総合演出:諏訪部順一
出演:
マラキア 役:諏訪部順一
パクス 役:鳥海浩輔
サラ・アッシュフォール 役:能登麻美子
ロバート・ダドリー教授 役 ほか:井上和彦
エマニュエル・ベルナルド 役 ほか:中村悠一

フェロ☆メン

声優、ナレーターとして活躍する諏訪部順一と鳥海浩輔によるユニット。“エロティック貴族”をコンセプトにセルフプロデュースで作品制作を行う。2009年に「禁忌の薔薇~Aphrodisiac~」を発表後、2017年11月発表のシングル「オペラ」を含む6枚のシングル、2016年3月発表のアルバム『MAGIC MIRROR』をリリースしている。

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