Interview

Nintendo Switchで展開する任天堂のインディーゲーム戦略(前編)

Nintendo Switchで展開する任天堂のインディーゲーム戦略(前編)

Nintendo Switchが登場し、ゲーム業界を席巻した2017年。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『スーパーマリオ オデッセイ』などのビッグタイトルが脚光を浴びる一方で、ユーザーにとって印象深かったのが、ニンテンドーeショップに登場した多数のインディーゲームの存在だ。ビッグタイトルが出ない期間にも新作ソフトの供給を絶やさず、ユーザーからの興味を維持し続けた数々のインディーゲームは、1年目のNintendo Switchを陰で支えてきたと言えるだろう。

こうなると気になってくるのが、今後もNintendo Switchにインディーゲームの展開を期待していいのか、という点。小規模開発による個性的なゲームの数々をNintendo Switchで気軽に遊ぶことができるようになれば、それはインディーゲームファンにとっても大いに喜ばしいことだ。任天堂はどのようなスタンスでインディーゲームと向き合い、どのような未来図を描いているのだろうか。今回はそんな疑問の答えを求め、任天堂のインディーゲーム担当者に全2回でインタビューを敢行。前編となる今回は、任天堂とインディーゲームマーケットについて詳しく話を伺った。

▲任天堂 業務部:副島佑介氏(右) / 朴誠史氏(左)

取材・文 / 大工廻朝薫(SPB15)


任天堂から見た“インディーゲーム”とは?

京都を訪れた編集部は、任天堂でインディーゲーム担当として活躍する、副島佑介氏と朴誠史氏を直撃。インディークリエイターたちとの窓口として最前線で活躍するふたりだからこそ語れる、任天堂独自のインディーゲーム施策について話を伺った。

▲任天堂のホームページ

▲Nintendo Switch用ソフトの中には、インディータイトルも多数ラインアップされている

最初に、おふたりが担当されているお仕事についてお聞かせください。

副島 今回……とくに2016年頃から、小規模の会社や個人も含む、いわゆるインディーの方たちに対しても積極的に任天堂でゲームを出してほしいということで、ふたりで窓口となって活動しています。国内外のディベロッパーさんに対する窓口として、いろいろなゲームイベントや開発者カンファレンスなどに出向き、リリースに関する相談をさせていただいたりしています。 

 役割分担がとくにあるわけではなく、ふたりで担当しています。もちろん部署全体としても動いていますが、我々が表に立ってインディーディベロッパーさんからのコンタクトを受ける形ですね。 

具体的な仕事内容をお伺いしてよろしいでしょうか?

 実際の業務は、大本ではコンテンツとかディベロッパーさんを探すようなところからやっています。それこそ他プラットフォームでリリースされるゲームはチェックしていますし、すでにつながっているディベロッパーさんから「この人も任天堂でゲームを出したいと言ってるんだけど」と紹介を受ければ、その方にお会いして話をすることもあります。あとは発売に至るまでのあいだでわからないことがあれば、そのサポートも行っています。 

副島 ゲームを作ってみたい人がいても、「どうすれば任天堂のプラットフォームでゲームを出せるのか」とか、「そのために誰にコンタクトを取ればいいか」とか、わからないことばかりだと思います。従来はそれに費用の問題などもあって、ゲームを出すまでのハードルが高かったんですよね。それが今はダウンロード販売が普及したことや、システム的な改善もあり、参入のハードルがどんどん下がってきています。だけど長年のイメージもあってか、そのことがなかなか認知されていない。インディーにも楽しいゲームはいっぱいありますので、こうしたタイトルを我々のプラットフォームでも展開していただくことで、良質なゲームをお客様に届けるための仕事をしています。

任天堂としては、インディーゲームと従来のゲームの違いはどのように認識されていますか?

 任天堂のプラットフォームでは、大手メーカーのAAAタイトル(※)もインディーゲームも、とくに区別はしていません。実際、ニンテンドーeショップでもいっしょに並んで売られています。そこでインディーゲームだからと特別に持ち上げたり、逆にインディーゲームであることを理由に大手メーカーのタイトルより扱いを悪くしたり、ということはありません。 

※ 読みは“トリプルエータイトル”。明確な定義はないが、大ヒットした人気ゲーム、あるいは高額の開発費を投じた大作ゲームを指すことが多い。

インディーゲームとNintendo Switchの意外な相性の良さ

近年は任天堂がインディータイトルの確保に積極的に動いている印象があります。こうした動きについて、明確な理由があれば教えてください。

 業界としての大きな流れの中で、デジタル配信環境が整い、小規模な会社でもダウンロード販売で勝負にいけるような仕組みが整ってきたというのが一番大きいです。そしてその中から、メチャクチャ売れるタイトルが出てきている。たとえば大人気の『マインクラフト』も、もともとはインディーゲームですよね。 

副島 国内だと『洞窟物語』など、インディーの中でも光るタイトルが出てくる流れがありました。業界全体として、インディーゲームが無視できる存在ではなくなってきています。 

 それに加えて弊社の立場としては、ダウンロードビジネスの基盤が徐々に構築されてきたタイミングというのも理由のひとつです。

こうしたインディーゲームを扱うほかのプラットフォームと比較したときに、任天堂が持つ強み、アドバンテージはありますか?

 とくに開発者さんからこの意見をいただくのですが、「任天堂のプラットフォームで出すと、ほかのプラットフォームとは違う層のお客様にリーチできる」というのがあります。任天堂プラットフォームのお客様はすごく幅が広く、Nintendo Switchもさまざまな年齢層の方に買っていただいているハードです。そういった方々にリーチできるプラットフォームというのが、いまは大きな強みになっているかと思います。

副島 たとえばビットサミット(※)に出展したときに、多くのお子様連れのお客様が任天堂ブースに寄ってプレイしてくださいました。 

※2013年にスタートした、国内最大級のインディーゲームイベント。次回のBitSummit Volume 6は、2018年5月12日・13日の2日間、京都市勧業館みやこめっせにて開催される。

昨年、ニンテンドー3DS用タイトルとして、『Ice Station Z』が若年層を中心にヒットしました。このような現象も任天堂プラットフォームならではの特徴ですが、販売するうえでもこうしたターゲット層を意識されている部分はあるのでしょうか?

副島 ニンテンドー3DSでソフトを出すディベロッパーさんは、やはりそういったところも意識していると思いますね。子どもの層が大きいプラットフォームですので。

▲『Ice Station Z』 ゾンビウィルスの蔓延する島で生き残りを目指すTPS。税込500円という低価格ながらボイスチャットを含めた本格的なオンラインマルチプレイ機能を搭載し、若年層を中心にブームを巻き起こした

インディーゲームを配信するうえで、Nintendo Switchがハードとして優れている点を教えてください。

 Nintendo Switchでゲームをプレイする場合、PCゲームと比較すると外に持ち出して遊べるという利点がありますし、スマホゲームと比べると大画面で遊べるという利点があります。マルチプラットフォームのゲームが増えている中で、どちらに対してもプラスαを提供できるというのが評価していただけるポイントかもしれません。 

副島 また『Overcooked®』のような、みんなで遊べるタイトルを持ち運んでシェアできるというのも大きいと思います。購入した人のみで閉じてしまいがちだったインディーゲームをほかの人とシェアできる。ここもポイントのひとつだと考えています。

年末にプライベートでゲーム好きの友人たちと集まった際、『Overcooked®』の入ったNintendo Switchをひとりが持参し、ほかのメンバーがJoy-Conだけ持って集まる、という遊びかたをしました。Joy-Conがあれば持ち出してシェアできる点は強いですね。

▲『Overcooked® – オーバークック スペシャルエディション』 キッチンを舞台に、つぎつぎに殺到する注文通りに料理を作っていくクッキングアクションゲーム。並走するトラック上にまたがるキッチンや宇宙に浮かぶキッチンなど、さまざまなステージが用意されている。最大4人で協力しながらプレイすることが可能。Nintendo Switchでは、PC版の追加コンテンツ2点が収録されたスペシャルエディションが配信されている

副島 僕もPCゲームをよくプレイしていた人間なんですが、Nintendo Switchを遊ぶようになってから、帰省した際に地元の友人たちと『ロケットリーグ』をシェアして楽しむことができるようになりました。これまでは僕だけの体験だったのが、仲間との共通体験になる。自分の遊んでいるゲームをまわりにもプレイしてほしいと思っている人間にとっては、これってけっこう嬉しいことじゃないかなと思います。

▲『ロケットリーグ』 ジャンプや飛行が可能なバトルカーを操作してサッカーを行う、架空のスポーツ競技を楽しめるゲーム。見た目と裏腹に競技性が高く、eスポーツ種目としても注目されている

シェアするだけでなく、見せるだけでも効果はありそうですね。私が『Battle Chef Brigade』をプレイしているのを見た友人が、後日このソフトを購入した、ということがありました。

副島 そうなんです! 『Battle Chef Brigade』はとてもおもしろいゲームなんですが、バトルして料理してパズルをする、と言葉で言われても普通は意味がわからないんですよ(笑)。そのようなタイトルを実際に目の前でプレイしてみせて、説明できるというのは非常に大きい。まさに“百聞は一見に如かず”ですね。

▲『Battle Chef Brigade』 戦う料理人“バトルシェフ”となり、高級料理を作っていくアクションゲーム。厨房の外に出て食材となるモンスターを狩るアクションパート、落ちものパズルと3マッチパズルの融合したパズルパートを自在に行き来しながらゲームが進行していく。アニメ作品のようなグラフィックも特徴

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