Interview

Nintendo Switchで展開する任天堂のインディーゲーム戦略(後編)

Nintendo Switchで展開する任天堂のインディーゲーム戦略(後編)

かつて家庭用ゲーム機でのゲーム開発と言えば、大企業が高価な開発機材と大量の人員を投入し、審査やマーケティング、ディスクのプレスなどさまざまな段階を経てリリースされるのが当たり前の時代があった。しかし、時代が流れれば常識も変わる。デジタル配信によるゲームソフトのダウンロード販売が一般的となった現代では、サークルや個人などのごく小規模な環境でゲームを開発し、流通させることが可能となった。それがいわゆるインディーゲームだ。

ソフトの製造や販路の確保といった物理的な障壁が取り払われても、家庭用ゲーム機でゲームソフトをリリースするには、まだまだ超えなければならないハードルがいくつも存在する。インディーゲーム開発者にとっては、こうした手間が少ないこともまた、今回取り上げるプラットフォームの魅力と言える。

連続2回でお送りしている任天堂インディーゲーム担当者へのインタビュー。前編に続き後編となる今回は、開発者にとってのメリットも含め、プラットフォームとしてのNintendo Switchの魅力をより深く掘り下げていく。

前編はこちら
Nintendo Switchで展開する任天堂のインディーゲーム戦略(前編)

Nintendo Switchで展開する任天堂のインディーゲーム戦略(前編)

2018.02.11

▲任天堂 業務部:副島佑介氏(右) / 朴誠史氏(左)

取材・文 / 大工廻朝薫(SPB15)

ハードルの低い開発環境

昨今のゲーム文化において、もはやひとつのブランドにも相当する存在感を持つに至ったインディーゲーム。ニンテンドーeショップでは“インディーゲーム”としてのカテゴライズこそ行っていないものの、明らかにそれとわかるタイトルがいくつも並び、大手メーカー作品に劣らない人気を博している。

前回の記事ではインディーゲームプラットフォームとしてのNintendo Switchについて、こうしたニンテンドーeショップでの販売スタイルも交えて話を聞くことができた。今回はさらに、ニンテンドーeショップに並ぶ前段階にも注目。ゲームを開発する環境としてNintendo Switchはどのような存在なのか、話を伺った。 

開発者の視点から見た場合、プラットフォームとしてのNintendo Switchにはどのような魅力があるとお考えでしょうか?

副島 前編でもお話ししたように、ユーザー層が広いということがまずひとつ。あとは、ゲームを開発しやすい環境を、早い段階から準備できた、という点があると思います。Wii Uだと、たとえばUnity(※)などのゲームエンジンに対応したのが、ハードの発売から少し遅れてだったんです。それが反省点になったというわけではないのですが、今回はゲームエンジンメーカー様にご協力いただき、Unity(※)やUnreal Engine 4(※※)に初期から対応できたというのは、すごく大きいと思いますね。 

※ ユニティ・テクノロジーズが開発したマルチプラットフォーム対応のゲームエンジン。年間総売上額が10万ドル未満の場合、Personal版が無料で利用可能。
※※ EPIC GAMESが開発したゲームエンジン。2015年より無料化されている。(四半期に3000ドル以上の売上が発生した場合、5%のロイヤリティを支払う必要あり)

 あとは開発に必要になる機材について、価格をぐっと抑え、お求めやすい価格にしています。

価格については、こちらで公開しても大丈夫でしょうか?

 ざっくりと5万円くらい、というのはほかでもお伝えしています。業界に長い方からすれば、かなり安くなったという印象があるかと思います。

5万円! Nintendo Switchの本体2台分もしない程度ですね。

副島 安いものだとその程度ですね。 

 それだけで開発をスタートすることができます。

家庭用ゲームの開発もかなりハードルが下がってきましたね。

副島 はい。また、開発環境とは少し違う話ではありますが、我々も窓口として、いつでもサポートさせていただきます。どこへでも伺いますし、電話やメールでの対応も可能です。

任天堂から開発者に向けて声をかけていく、ということもあるのでしょうか?

 それもあります。ただ待っているだけで新たなゲームがどんどん来てくれるというのも我々としてはひとつの理想なんですが(笑)、もちろんそういうわけにもいきません。Nintendo Switchでのインディーゲーム開発に魅力を感じていただけるなら、ぜひ声をかけていただきたいですし、我々のほうからも声をかけていって、もっとゲーム開発者との距離を詰めていきたいですね。

Nintendo Developer Portalによる開発者サポート

 あとは、開発者の方専用のwebサイトがありまして、そちらから作業していただくことで、グローバルな配信の準備が一括してできるようになっています。これによってデジタルコンテンツをグローバルに配信するという作業が、円滑に進むようになっているのではないかと思います。 

副島 さらにIARC(International Age Rating Coalition)(※)という評価システムを導入しており、日本を除いたほぼ全世界の年齢レーティングが、オンラインの質問に答えるだけで無料で取得できるようになっています。これもスムーズなグローバル展開を支えるひとつです。ゲームを作りやすく、出しやすい環境になっているはずです。 

※ 国際年齢評価連合。デジタル配信されるゲームのレーティングを目的に設立された。制作したゲーム内にどのような要素が含まれるか、各地域のレーティングオーソリティーの基準を反映したユニークなアルゴリズムでプログラムされているアンケート形式に回答していくことにより、加盟各国におけるレーティングが自動的に算出されるようになっている。

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