Interview

Split end ハードエッジなサウンドで悲しみを鳴らす彼女たちは、その先に何を感じるのか?

Split end ハードエッジなサウンドで悲しみを鳴らす彼女たちは、その先に何を感じるのか?

奈良から登場した、4人組ガールズ・バンドである。ギター/ボーカルとベースの二人が高校時代に結成したバンドは、その後メンバー・チェンジを何度か経験したが、一昨年にドラム、昨年にギターが入って現体制が固まるのと前後して、急速に注目度が高まってきた。一昨年、公開された「ロストシー」のMVは60万回を超える再生回数を記録し、昨年の夏には東京と大阪のライブハウス・サーキットで大いに話題を呼んだ。今年2月7日には、ライブ会場限定リリースだったシングル「ロストシー」と、5曲入りの新作ミニアルバム『夜』を初の全国流通盤として同時リリース。いよいよ活動を本格化させた。
ここでは、現在の体制に至る経緯から始めて、新作『夜』の制作を振り返りながら、バンドの音楽的な個性について語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 田中和彦

初めてスタジオに入ったときに「私たちはこれ1本でやってるから、就活とかもやらんといてほしいんやけど…」と言われたんです。

みさきーにょすさんが加入するとき、ななみさんとみーちゃんがサポートの人たちとやってる音楽についてどんな印象を持っていましたか。

みさきーにょす まずSOUND CLOUDに1st デモの曲が入ってて、そのギター・サウンドにヤラれました。その後、YouTubeにライブ動画が上がってて、そのなかに今回のミニアルバムといっしょに出す「ロストシー」の3曲目の「思わせぶり」という曲があって、それを見たときに歌詞がストレート過ぎて、家でひとりでちょっと泣いてました(笑)。

それで、一緒にやりたいと伝えたわけですか。

ななみ わたしたちがドラムを募集してたんです。そこに応募してきたんですけど、何人か候補がおったんで…。

みーちゃん 1回一緒にスタジオに入ったんです。

候補が何人かいるなかで、みさきーにょすさんに決めたポイントは?

ななみ やる気、のみ(笑)。

みーちゃん (笑)、まずメンバー募集のところにメールをくれて、こっちとしては知らん人やから「参考にしたいんで、演奏してる動画を送ってください」と返事したら、すぐに動画が送られてきたんです。でも、こっちはライブとかあってそれを見れないままでちょっと返事してなかったら「やっぱり私じゃダメですか。どうしても入りたいんですけど」みたいな追い討ちのメールが届いて(笑)。それを見て、これは1回一緒にスタジオに入らんと、もし断るにしても納得してくれへんかなと思って。

ななみ(Vo,Gt)

ななみ で、1回やってみて“いい感じのコやな”とは思ったんですけど、ドラムはあまり上手くないし、どうしようかなあ…という感じやったんです。ただ、ウチら二人になって、それまでにいっぱい抜けていったから、続けてくれる人でないと嫌というのはすごいあったんで、「こういうことを目標にやってます。こういうこともあります」みたいに嫌なことも全部書いて、それでも大丈夫ですか?っていう長文のメールを送ったら、「ぜひやらせてください」という返事だったんで、決定しました。

みなきーにょす 初めてスタジオに入ったときに「私たちはこれ1本でやってるから、就活とかもやらんといてほしいんやけど…」と言われて、ちょうど就活を始めるかどうかの時期やったんですけど、親にも相談せずにその場で「やめます」と答えてしもたんですよね(笑)。

みさきーにょす(Dr,Cho)

みーちゃん 前のドラムが「就活する」言うてやめたんで、また同じことになったら嫌やなあと思って言うたんですけど…。

みさきーにょす 勢いで言うてしまいました(笑)。

ぱっと聴くと、きれいな声やからさらさらと流れていってしまうんやけど、でも“もう1回聴いてみよ”と思うんですよね。

(笑)。その次に加入したイオナズンさんは、3人でやってる音に対してどういう印象だったんですか。

イオナズン 聴いたことがなかったんですよ。私も就活をして内定をもらったんですけど、“ほんまに就職していいんかなあ?”と思いだして、それでライブハウスの知り合いの人に相談したんです。就職するか、就職しないでバンドするか、どうしようかなあ…みたいな。そしたら、そのライブハウスの人が「ギターを探してるバンドはけっこうあるから、探してあげよか」と言ってくれて、それで最初に紹介してくれたのがSplit endやったんです。でも、名前は聞いたことがあるかも…、くらいの感じやったんで、すぐにいろいろ調べたんですけど、“この人たちは表立った活動をあんまりしてないのかな”という感じやったんですよね。だから、就職せずにこのバンドに入っていいのかな?という不安はずっとあったんですけど、でも一緒にスタジオに入ったり、ななみちゃんからいろいろ言われたことで、“やってみるなら今かもしれんし、やってみるならこのバンドかもしれん”と思って、決めました。

イオナズン(Gt)

バンドの音についてはどういう印象だったんですか。

イオナズン 最初、スタジオに入る前にライブを見に行ったんですけど、そのときにはこのバンドがどこに向かってるのかよくわからなかったんです。でも、その後でわかってきたのは“聴けば聴くほど、いろんなことが詰まってるんや”ということで、ぱっと聴くと、きれいな声やからさらさらと流れていってしまうんやけど、でも“もう1回聴いてみよ”と思うんですよね。で、何回か聴いてると“まだもっと、いろんなことが詰まってるなあ”と思うっていう。

そこでオリジナル・メンバーのお二人に聞きますが、最初はコピーをやっていたバンドがオリジナルを作り始めるときに何かきっかけはあったんですか。

ななみ どうやったっけ?

みーちゃん ななみちゃんから突然「オリジナル作りたいねん」と言われて、こっちは「はあ、いいんちゃいますか」みたいな感じでしたね(笑)。

みーちゃん(Ba,Cho)

(笑)。でも、作ってきたオリジナル曲が良かったから、その後もオリジナルをやっていくことになったんでしょうね。

みーちゃん 周りの反応は良かったですね。いまより、もっとポップやったし。

みさきーにょす そうなん?

ななみ メジャー・コードしか使わんと…。

みーちゃん テンポも、いまの持ち曲と比べたら、だいぶ速いな。

ななみ いまよりもっとかわいらしい、いわゆるガールズ・バンドの曲みたいな感じでしたね。

かわいい感じが後退していったのには、何か理由があるんですか。

ななみ 単純に、ギャル・バンっていう感じはやりたくなかったからです。それに、奈良の先輩バンドにはそういうバンドは全然いなくて、もっとロック色が強いというか、例えばTHE ORAL CIGARETTESもそうやし、LOSTAGEに影響された人たちがやってるというようなバンドがたくさんいて、それが大好きやったし、かっこいい!とずっと思ってたんです。“わたしもあんな音楽がやりたい”って。

ただ、例えばハードエッジなものがやりたいけど作るのは難しくて、キャピキャピというかポップな感じの音楽はすぐに作れるという場合もあると思うんですが、Split endはハードエッジな方向に無理なく進んでいけたんですか。

ななみ そこは、完全にキャピキャピしてないほうが作りやすいですね。この間もスタジオで、ポップなというか、メジャー向きな聴きやすい曲を作ろうという話になって、やってみたんですけど…。

みーちゃん 2時間で16小節しかできなくて(笑)。

ななみ (笑)。もう無理やわってなって、それでもう1曲、わたしが作ってきてたキャピキャピ度ゼロみたいな曲をやってみようという話になって、やってみたら10分くらいでいろんなことが決まっていって、「やっぱりこっちのほうがいいな」という話をしたんです。そっちのほうが好きやから、どんどんアイデアも出てくるし、作りやすいですね。

つまり、ななみさんの個人的な好みではなく、バンド全員の共通認識としてとしてハードエッジな志向があるということですね。

ななみ そうですね。言葉にはしにくいんですけど、「こっちのほうがいい」「確かにそうやな」というふうになっていくんで、何か共通してるものがあるんやと思います。

さて、今回の新作の話です。このミニアルバムを作り始めるときに、何かあらかじめ話したことはありますか。

ななみ なかったよね?

イオナズン 5曲作って、この曲たちを入れよって集めたときに初めて、「あれっ、全部夜に関することちゃう?」みたいな。

ミニアルバムを作ろうという話がまずあったということですか。

ななみ そうですね。

みーちゃん それに、いつも使ってるスタジオが半年先まで予約で埋まってるという状況やったから、曲がまだ全部はでききってない時期に「これくらいの曲数で作りたいと思ってるんで、これくらいの時間入りたいです」ってとりあえず予約だけして、それに間に合うように作っていったっていう。

イオナズン だから、最後は詰め詰めでした(笑)。

みさきーにょす (笑)夏休みの宿題かのような感じで。

ななみ (笑)。それで、まず「サイレン」ができて…。

みーちゃん いや、「夜と朝」がいちばん早かったんです。この曲は、バンドでやる前に、ななみちゃんが弾き語りでやってて、「こんな曲できたから、バンド・アレンジしたいねん」ってことで。その次に「ひとりとふたり」か?

ななみ それも弾き語りからやね。

みーちゃん その次に「ワンナイト」。

ななみ 「ワンナイト」は完全にバンド・サウンドからできた曲やね。

「バンド・サウンドからできた曲」というのはどういうふうに作っていくんですか。

ななみ まず、わたしの頭の中にだいたいイメージはあるんです。例えば、ドラムに「8ビートやって」とか「4つ打ちやって」とか、とりあえず基本になるところを伝えて、みーちゃんには「コードこれ弾くから、ルート音はこれでやって」みたいに言うて…。

みーちゃん 何小節かだけメロディがある場合もあるんですけど、とりあえず「このコードで」とか「このリズムで」とかイメージを言って、「ここからはノープランやから、考えながやってみる」みたいな話で…。

ななみ やりながら「ここからサビ」って言うたらハイハットを開けるとか、みんな“こんな感じね”というふうになっていって、そこにズンちゃんが“じゃあ、ギターどうしよう?”って感じで入ってくるっていう。

歌詞は、“これ、使いたい!”ってパッと目についた言葉をつなぎあわせていく、みたいな感じが多いと思います。

歌詞の内容に関して意識していることはありますか。

ななみ わたしはサウンドを聴きながら歌詞をイメージしていくことが多いんですけど、例えば「サイレン」の♪ヘッドライトがゆれる♪というフレーズは“これ、絶対歌詞に入れたい”と思って、そこからどう広げていこうかなということをバンド・サウンドを作りながら考えるっていう。だいたいのイメージはあるけど、言葉にするまでにすごい時間がかかるんですよね。そこで…、なんて言ったらいいのかな…。好きな言葉を選んでいってる、という部分は大きいと思います。例えば好きということを言いたいと思ってるときに、好きとは言わんと好きやとわかるように書く、みたいなことなんですけど。わたしがよく使うのは類義語辞典で、携帯で調べられるんですよ。こんなことを言いたいなと思ったことを調べたら、ブワーッと出てくるんで、そのなかから“これ、使いたい!”ってパッと目についた言葉をつなぎあわせていく、みたいな感じが多いと思います。

そうやって出来上がった歌詞に他のメンバーがダメ出しすることはありますか。

みーちゃん いや、歌詞に関して“こういう感じで書いてます”というスタンスがブレることはないから、「これはちょっと…」みたいなことはないですね。

イオナズン ななみちゃんが歌うからこそ任せたいというか、絶対ハズさないから。

みさきーにょす 出来上がったときには、いつも勝手に一人で感動してます(笑)。

ななみ 弾き語りでみんなに聴かせる曲は、何かことがあって歌詞を書くんですね。だいたい悲しいことなんですけど…、「ちょっとこの曲聴いてくれへん」ってやって、それで泣くっていう(笑)。

イオナズン (笑)、そう、すぐ泣くんですよ。「夜と朝」とかもそうやんな。

悲しいことを歌詞に書くのは、そうすると悲しみが癒されるからですか。

ななみ いや、わたし自身がどうなるからとかじゃなくて、わたしは悲しい歌が好きなんです。胸がグウッとなるような歌が好きだから、そういう曲を歌いたいっていう。歌詞にすることで発散したいとか、そういう気持ちはまったくないです。

出来上がったものから何か影響を受けることはありますか。

ななみ 形にして残してしまったがゆえに、その悲しみを忘れられへんということはあるかもしれないですね(笑)。ただ、何回か演奏してるうち、曲として受け入れるようになるというか…。もちろんライブのときには伝わったらいいなと思って感情を込めるから、苦しくなりながらやってるんですけど(笑)、でもだんだんその悲しい出来事が「わたしの好きな曲」という形になった、みたいな感じになっていってるかもしれないですね。

みーちゃん でも、そうなるまでに3カ月くらいかかるけどな(笑)。それでまた3カ月くらい経ったら、別に悲しいことが起こるから、それでできた曲でまた「ああ…」ってなってるっていう。

ということは、ななみさんに悲しいことが起これば起こるほど、Split endの新曲が増えていくということですか。

みーちゃん そうです(笑)。基本的に、ななみちゃんに悲しいことがあると、こっちは喜んでるっていう。

悲しいことで心が揺れるタイプなので、“夜”的な部分がスタートラインになるのはすごくいいな、と思ってます。

今回のミニアルバムのタイトルである『夜』も悲しいことの暗示のような印象ですが、でも明けない夜がないように楽しい歌も歌うようになるんでしょうか。それとも、これからも今回のような悲しいイメージの“夜”的な歌が中心になっていくんでしょうか。

ななみ そう思います。基本的に、明るいものより暗いもののほうが好きなんで。音楽でも色でも。もちろん、楽しいことは楽しむけど、悲しいことで心が揺れるタイプなので、暗い要素というか、“夜”的な部分がスタートラインになるのはすごくいいな、と自分でも思ってます。

「スタートラインになるのはすごくいい」という気持ちの先には、“夜”が明けて光が差してくるのを待っている気持ちもありますか。

ななみ 待ってはないかなあ。ただ好きやからそこにおるんやけど、わたし自身に楽しいことがないわけじゃないし、基本的にハッピー野郎なんで(笑)。だから、自分がそういう人間やからこそ、なんかなあ。いま思いましたけど。楽しいことばっかりやったら、楽しくないじゃないですか。

「サイレン」という曲を聴いて思うのは、この歌を作った人は、“どうして悲しいんだろう?”とか“どうしたらこの悲しみから抜け出せるだろう?”というようなことにあまり興味がないのかな?ということなんです。

ななみ そういうことは考えないですね。

イオナズン 悲しいときは、悲しい曲を聴くタイプですよね。悲しいから、それを紛らわすために楽しい曲を聴こうというんじゃなくて、悲しいときは悲しい曲を聴いてさんざん落ち込んで、それで明日に備えよう、みたいな(笑)。だから、この『夜』もそういうときによい曲が集まってるCDやと思いますね。

いまはこれしかできひんけど、いまできる最大限はこれ

ところで、今回のリリースが初めての全国流通盤で、いわゆるプロ・ミュージシャンへの道を進み始めていると考えていいと思いますが、それは望み通りの展開なんですよね?

ななみ そうですね。やりたいことリストというのがSplit endにはあって、そこにつながるように動いてますね。

イオナズン そのリストには「○○でライブしたい」とか「△△と対バンしたい」とか、そういうのが詰まってるんです。どうでもええようなことも入ってるんですけど。

ななみ 食欲の秋ツアーしたい、とかね(笑)。ジャニーズと共演したいとか。

(笑)、そのためには全国流通盤を出すのは貴重な第一歩だと思いますが、何年か後にSplit endは成功したなと感じる場面があるとしたら、それはどういう場面だと想像しますか。

ななみ わたしはどんな大きなステージでやっても、自分の好きなことをやってなかったら多分、満足はしないと思うんです。これや!っていう音楽をやってないと。

イオナズン たとえお客さんが喜んでくれたとしても、納得はできないでしょね。

ななみ 本当に自分たちがやりたいことをできて、それが伝わってると感じられたとき、かもしれないですね。

その“これや!”と思う音楽のイメージからすると、今回の『夜』はそこに向かう第一段階をクリアというような感じですか。

ななみ いまできる最大限の作品やと思います。ただ、わたしはほんまにスタートラインやと思ってるんで、いまはこれしかできひんけど、いまできる最大限はこれ、ということですね。

ライブ情報

「夜遊びツアー」
2月11日(日)  鳥取・米子AZTiC laughs
2月12日(祝月)  島根・松江AZTiC canova
2月16日(金)  静岡 UMBER
2月20日(火) 愛知・名古屋APOLLO BASE
2月26日(月)  福島・郡山#9
2月27日(火)  宮城・仙台FLYING SON
3月2日(金)  埼玉・越谷EASY GOINGS
3月14日(水)  兵庫・神戸太陽と虎
3月20日(火)  神奈川・横浜BAY JUNGLE
3月21日(祝水)  千葉・柏DOMe
3月30日(金)  広島・広島4.14
3月31日(土)  広島・福山 Cable
4月21日(土) 東京・新宿SAMURAI
5月12日(土) 大阪・大阪LIVE SQUARE 2 nd LINE

Split end

ななみ(Vo,Gt)、みーちゃん(Ba,Cho)、みさきーにょす(Dr,Cho)、イオナズン(Gt)。2009年4月、高校の同級生で4ピースのガールズ・コピー・バンド「Split end」を結成。13年12月、1 stデモ「キサンタンガム」をリリース。14年10月1 stミニアルバム『雨模様』をリリース。16年6月、みさきーにょす加入。同年8月、2ndシングル「ロストシー」をライブ会場限定リリース。17年1月、イオナズン加入。現体制となり、同年夏には東京、大阪のライブハウス・サーキットで大いに話題を集める。

オフィシャルサイトhttp://www.splitendofficial.com