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羽生結弦は、なぜ強いのか、なぜ美しいのか―― オリンピック観戦前後に読めば、もっとフィギュアが楽しめる!

羽生結弦は、なぜ強いのか、なぜ美しいのか―― オリンピック観戦前後に読めば、もっとフィギュアが楽しめる!

羽生結弦はどんな難易度のジャンプを、平昌オリンピックの舞台では何度飛ぶのか――。フィギュアスケート個人戦までのカウントダウンが始まったなか、その話題は、連日、ヒートアップしている。もちろん、ジャンプの得点配分は高いものであるし、何より進化し続ける“絶対王者”のジャンプへの期待値は絶大。だが、ジャンプのみに注目するのは、あまりにももったいない!『羽生結弦は助走しない 誰も書かなかったフィギュアの世界』のページをひとたび開けば、その“もったいなさ”が押し寄せてくる。

38年間ものフィギュア観戦歴と、そこでみずからが育ててきた視点、知識、そして何より愛とリスペクトを持つ著者の、フィギュアのツボを熱く語りゆく、今、話題の一冊は、“スケオタ”=フィギュアファンに、“そういうことだったのか!”という驚きと感動を与え続けている。かと言って“オリンピックを楽しんで観るために、フィギュアのことを少しでも知っておきたい”という人にとって、“専門的で、ちょっと難しい……”とは、けっしてならない。 アクセル、ルッツ、スパイラル……といった基本の用語解説はもちろん、解説者がよく口にする“表現力”や“芸術性”の意味するところや細分化された現在の採点システムなどの基礎情報もしっかりと提示。そしてその文体がいわゆる“解説”ではないところが、わかりやすさのツボなのである。“私自身は、「フィギュアスケートライター」とか「スポーツライター」といった肩書を自称するつもりはありません”という姿勢から滲み出る、読者と同じファン目線に立つ“優しい語り”であることも本書の大きな魅力のひとつだ。


【無料】
『羽生結弦は助走をしない』 ~羽生結弦を語り足りない~
高山真(著)
集英社新書 / 集英社

【電子版限定】38年間フィギュアスケートを見続けてきた生粋のスケートファンである著者が、フィギュアスケート界で人気実力ともにナンバーワンを誇る羽生結弦をはじめ、平昌オリンピックに出場するスケーターや、歴代のスケーターたちの名プログラムに関して愛情たっぷりに語りつくした『羽生結弦は助走をしない』(大好評配信中)。平昌オリンピックに、書籍の刊行を間に合わせるため「語り足りなかった」12月下旬の全日本選手権フィギュアスケート選手権観戦記含む、集英社新書HP上で連載中のエッセイ「『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~」第1回~第3回に加え、「青春と読書」2018年2月号に掲載された特別エッセイを収録した特別無料ガイド!

その語りは、この本の肝とも言える「羽生結弦のすごさはどこにあるのか」というテーマに話題が入ってくると俄然、熱を帯びてくる。そこで示されていくのは、本書のタイトルに対する“答え”ともなるものだ。“難しいジャンプの前に、どのようなステップやターンを入れるか”“ジャンプやスピンなどの技と技の間を、どのようなエッジワークでつないでいくか”ということを意味する“トランジション”。羽生結弦の凄まじいまでに濃密なそれと、彼の演技の“カギ”と著者が称する、8種類の要素を複雑に緻密に組み合わせた、体重をまるで感じさせない“エアリー感のある”スケーティング術。ジャンプやスピン、ステップ以外の部分にある数々の演技の見どころが、具体的かつ客観的に提示されていく。

圧巻は、15歳で優勝した2010年世界ジュニア選手権から2017年世界選手権まで、競技会ごとに、“どの演技で感嘆のため息をもらし、うなり、拍手してきたか”、どのような節目で、彼が驚異的な成長を遂げてきたかを克明に記した「羽生結弦の名プログラム ここがすごい」の章だ。ページ数にしてなんと100ページ近く!その一挙手一動を捉えた緻密な描写は、まるで映像を見ているよう。動画と併せ観れば、さらに明確に羽生結弦のすごさ、美しさの理由がわかってくる。そして平昌オリンピックでぜひとも注目したい勝負曲『ショパン バラード1番』&『SEIMEI』の徹底解説を通し、解説者が語らない、その演技を堪能するポイントも……。

本書で、その魅力が著されているのは羽生だけではない。「平昌オリンピックのシングルスケーターはここがすごい」の章では、宇野昌麿、ハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャン、ネイサン・チェンなど、様々な選手にスポットを当てて、分析し、観戦をますます楽しむことのできるポイントをあげている。

観戦の感動を倍増するために、そして観戦後、その余韻を繰り返し味わうために、ぜひとも手許に置いておきたい一冊。それはまた、溢れるような著者のフィギュア愛を通して、大好きなものがあることの誇りと喜び、そうした“好き”を持つことの幸せを感じさせてくれる。

文 / 河村道子