Interview

おかしくも切ない、一線を越えんとする者たちの悶絶。林遣都と池田エライザが『チェリーボーイズ』に見た、男女の感覚の違い。

おかしくも切ない、一線を越えんとする者たちの悶絶。林遣都と池田エライザが『チェリーボーイズ』に見た、男女の感覚の違い。

田畑と空が一面に広がる風景は、若者たちの閉塞感の象徴でもある。

でも、それこそ国森と笛子が2人きりで織りなすシーンの時間の流れ方は、物語のアクセントになっていたような気がします。

 最初に笛子と2人になる…笛子がビール瓶をラッパ飲みするシーンは、本当に申し訳ないんですけど…頭から足の爪先まで短時間でどれだけ目に焼きつけられるかみたいな視線の投げ方なんですけど、時間が経つにつれ、どんどん国森のスタンスが変わっていくので、そういうところも見てもらえたら面白いかもしれません。

池田 笛子が罪つくりなのは、国森に対して無自覚に優しく接しているところですよね。私は人物相関図を俯瞰して見ているから、結構、笛子って残酷なことをしているなと思ったんですけど、西海監督から「本人はそんなこと気づいていないから、気にしなくていいよ」と言われて、それもそうだなって開き直りました(笑)。

女子の方が無自覚だからこそ、行き場のない国森の想いが切なくもあって。

 何気に切ないシーンが、実はたくさんあります。前野(朋哉)さんが演じた高杉の恋も切なかったですし…。ただ、高杉の場合はサイコっぽいところもあるからなぁ(笑)。また、前野さんが現場ですごく面白くて。

池田 五木(般若)に「あの〜、連続強姦魔の方ですか…?」って、大真面目な顔で聞くシーンが、本当ツボでしたね(笑)。

 街の誰もが恐れている人に対してストレートに聞いちゃうという、ネジのハズレたキャラクターなんですけど、前野さんが演じることで絶妙な味わいが出るんです。でも、あのシーン、実は本人が一番ツボって笑っちゃっていたんですけど(笑)。

©古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

そうだったんですね(笑)。あと、吉村(栁俊太郎)が「俺、プーチン(石垣佑磨)に初めて逆らったよ」と意気揚々と電話しているのに、国森が「なぁ、Perfumeがテレビに出ているから、切るぞ」とあしらった場面もおかしかったです。

 あの会話は原作にもあるんですけど、台本で読んだ時もあらためて爆笑しました。

池田 栁くんって本人はすごくイケメンなのに、吉村になっている時は本当に冴えなく見えるんですよ。面識があるから、この現場で会う栁くんは別人のようでした。

 栁くん、この現場でさらに大好きになっちゃいました。

池田 林くんと前野さんに一生懸命ついていこうとする感じが、何か愛おしかった。あんな栁くんを見たの、初めてかもしれない。

その3人=チェリーボーイズにとって脅威たるプーチンの存在感も、大きかったのではないでしょうか?

 プーチンのセリフにもありますけど「この街で知らないヤツはいない、この俺が〜」という、小さな街の中にも歴然とした格差があって…それはある種の縮図でもあるんですけど、小泉(智浩)さんの描くキャラクターはどこか憎めないところがあって。それこそ、自分で「この街で知らないヤツはいない」と言ってしまうのって、笑うところじゃないですか。その尊大なのに笑ってしまうプーチンを、佑磨さんが見事なまでに演じてくださったと思います。

池田 洗車場でプーチンと笛子が対峙するシーンがあるんですけど、佑磨さんのお芝居が真に迫っていて、本気で頭にきちゃったんですよ。だから、プーチンに中指を立てているのは、アドリブなんです。なんか、かましてやらないと気が収まらないって、とっさに(笑)。

 え、そうだったんだ!

池田 大声も出してしまったから、ご近所の方はビックリされたと思いますけど…。

そのプーチンにしても、あの小さな街だからこそ威張っていられるわけで…先ほど、林さんが「縮図」という話をされていましたけど、郊外都市に生きる若者たちならではの閉塞感や行くあてのない気持ちが、チェリーボーイズたちを生み出した側面もあるんじゃないか、とも思いました。

池田 何かしらのカテゴリーで優位に立っていたいと思う人は、なおさら街から出ようとしないでしょうね。出た瞬間、その優位性を失うことになるから…。なので、観てみたいですよね、「チェリーボーイズ/プーチン東京編」を。

 都会に打ちのめされるプーチンの挫折を(笑)。

池田 ジャラジャラ着けていたアクセサリーを外すまで、どれくらいの時間が掛かるのか、とか(笑)。

もしかすると、一度打ちのめされて戻ってきて、「やっぱり地元は最高だわ」という過去があるかもしれないですよね。それにしてもイケてないんですけど(笑)。

池田 閉鎖された環境でぬるま湯に浸かっていると、だんだん麻痺してきますよね。そういった感性が。

 それは、あの一面に広がる田んぼと畑が象徴しています。五木も格好つけてハーレーに乗っているけど、周りを見渡せば田畑しかないわけで。道はどこまでも伸びているけど、だからこそ、この街から抜け出せないんじゃないかと思わせる…そういうことを、あの景色は物語っていたのかな、と今にして思ったりもします。

池田 高い建物がないから、空がすごく広いんですよ。でも、空が広すぎて燻る感じというのも、わからなくはないんですよね。私も地方で育ってきたので、何もない空を見上げて途方に暮れる感覚というのが、自分の中にあるんです。

もしかすると、そのどこまでも続く道の向こう側に越えられない人たちを総じて、「チェリーボーイズ」と呼ぶのかもしれないですね。ある種のメタファーとして。

池田 あぁ、そういう見方もできますね!

 何か、そうやって作品を深く読み込んでもらえることが、すごくうれしいです。原作の時点から、すべての登場人物が人間味のあるキャラクターとして描かれているので、1人ひとりに焦点を当てて…しっかり見ていただけると、いろいろなとらえ方ができるのではないかなと思います。

林遣都:ヘアメイク / SHUTARO
スタイリスト / 菊池陽之介

池田エライザ:ヘアメイク / 豊田千恵
スタイリスト / 大島陸

林遣都さん、池田エライザさん画像ギャラリー

映画『チェリーボーイズ』

2月17日(土)より シネ・リーブル池袋、渋谷TOEIほか全国ロードショー

林遣都 栁俊太郎 前野朋哉
池田エライザ / 石垣佑磨 岡山天音 般若
山谷花純 松本メイ 岸明日香 馬場良馬
吹越満 立石涼子

監督:西海謙一郎
脚本:松居大悟
原作:古泉智浩『チェリーボーイズ』(青林工藝舎刊)
主題歌:「GO! GO! Cherry Boy!」MANNISH BOYS(スピードスターレコーズ)
配給:アークエンタテインメント
オフィシャルサイトhttp://cherryboys.net/

©古泉智浩/青林工藝舎・2018東映ビデオ/マイケルギオン

林遣都

1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。
’07年、映画『バッテリー』で主演デビュー。主な映画出演作に、『ダイブ!!』(’08年)、『パレード』(’10年)、『荒川アンダー ザ ブリッジTHE MOVIE』(’12年)、『僕だけがいない街』(’16年)、『にがくてあまい』(’16年)、『花芯』(’16年)、『しゃぼん玉』(’17年)、『HiGH&LOW』シリーズ(’16〜’17年)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(’17年)などがある。放送中のドラマ「FINAL CUT」(関西テレビ/フジテレビ系)に出演中。2月24日公開『野球部員、演劇の舞台に立つ!』が待機中。
オフィシャルサイトhttp://official.stardust.co.jp/kento/

池田エライザ

1996年4月16日生まれ、福岡県出身。
’09年に「ニコラ」モデルオークショングランプリを獲得し、モデルデビュー。’11年、『高校デビュー』で映画デビューを果たす。『みんな!エスパーだよ!』(’15年)でヒロインに抜擢され、注目を集める。『一礼して、キス』(’17年)で映画初主演。ドラマ『ぼくは麻里のなか』(フジテレビ系)でドラマ初主演。主な出演作は、『オオカミ少女と黒王子』(’16年)、『ReLIFEリライフ』(’17年)、『トリガール!』(’17年)、『伊藤くん A to E』(’18年)など。4月27日公開の「となりの怪物くん」出演、2018年8月31日公開映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』出演。2018年公開予定映画『ルームロンダリング』主演が控えている。
オフィシャルサイトhttp://www.elaiza.com/

原作コミック

チェリーボーイズ
古泉智浩(著)

©古泉智浩/青林工藝舎
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