Interview

キュートな3ピースバンド The Wisely Brothers。彼女たちの愉快なおしゃべりが奏でる音楽──1stアルバム『YAK』

キュートな3ピースバンド The Wisely Brothers。彼女たちの愉快なおしゃべりが奏でる音楽──1stアルバム『YAK』

3ピースバンド、The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)が、メジャーデビュー作にして、待望の1stアルバム『YAK(ヤック)』をリリースした。タイトルの“YAK(ヤック)”には“おしゃべり”や“会話”という意味があるが、この音盤の中には、まさに3人がおしゃべりをしているような空気感がそのまま収められている。
彼女たちの会話は渓谷に降り注ぎ、いくつもの山を乗り越え、きらめく光や心地よい風を受けながら、ここではないどこかへと向かって流れていく──。バンドを結成した2010年、高校1年生の春から8年経っても変わっていないおしゃべりと、変わってきた音楽。彼女たちのおしゃべりのような音楽、音楽のようなおしゃべりをどうぞ。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望

曲に対しての面白さを前より閉じ込めないようにしたいと思えるようになった

真舘さんは先週(2月1日)がお誕生日でしたよね。いつもメンバー3人で一緒に過ごすと聞いたんですが、今年は?

真舘晴子 過ごしました! 午前8時45分に歌舞伎座の前に集合して、築地に連れて行ってもらって、いちご大福と卵焼きの串とお寿司とコーヒーとホルモン煮込みを食べてから築地本願寺に行って……そのあと取材があったので、それ終わりに夜は私の家に2人が築地の人みたいな格好で来て(笑)たこ焼きパーティをしてくれました。しかも、ケーキも作ってくれたんです。

和久利泉 本当は浜焼きのバスツアーに行きたかったんですよ。晴子はホタテがすごく好きなので、焼き放題をさせてあげたかった。なんですけど、取材が入ったので、パーティを朝と夜の構成に分けました(笑)。でも、海鮮は捨てられなかったという。

渡辺朱音 でも、晴子は築地に行ったことがなかったらしいので、ちょうど良かったですね。ケーキは毎年私が作っているんですけど、今年は、夜は楽しくホームパーティをしたいっていうテーマがあったので、家型にしたチーズケーキを作りました。

真舘 煙突に一本だけロウソクが刺さっててね(笑)。なんだか、すごく愛されている小学生の子供みたいな気持ちになりました。

和久利 こっちも、ちょっと親みたいな気分でした(笑)。

あはは! 本当に仲が良いですよね。しかも、毎年恒例なんですよね?

渡辺 はい。たしか、高1のときの晴子の誕生日から始まったんだよね?

和久利 私たち2人は7月なんで、晴子からですね。まだバンドを組んだばっかりの頃。それからは互いの誕生日はずっと3人で過ごしています。

バンド結成から8年目にして初のアルバムが完成しましたが、振り返ってみると、どんな8年でした?

真舘 最初は自分たちが何をやりたいのかもわからないし、どういう音楽が好きなのかもわからない。しかも、どういう音楽が世界にあるのかもよく知らなかったんです。自分たちが自分たちをよくわからないという状態で1stミニアルバム(『ファミリーミニアルバム』2014年10月発売)を作ってから、少しずつ自分たちでいろいろなことを知っていくなかで、今の私たちが日常で感じている様々な気持ちを作品に落とすことができるようになったかなって思っています。

渡辺 誕生日の話もしましたけど、変わらないところはずっと変わってないなって思っています。大学を卒業するまで、バンドをどうするかって話したことがなかったんですよ。高校を卒業したあとの進路はみんなバラバラだったのに「バンドをどうする?」っていう話をしないまま、時が過ぎていった。でも、話さなかったからこそ、高校生の続きみたいにバンドが続けてこれたとも思うんです。そのなかで、晴子が言っていたみたいに、何もわからないままCDがポンっと出てしまい(苦笑)。でも、出さないとわからなかったいろんなことがあったし、自分たちの音楽性もそこから徐々にわかっていったというか。オリジナルを作り始めてから今に至るまで、周りを見ても自分たちに漂う空気や人柄が似ているとかはあるんですけど、音楽が同じだって思ったことは一度もなくて。自分たちは自分たちしかいないんだって思います。それでも、自分たちが好きな音楽、目指したい音楽をどうやったら実現できるのかと考えられるようになったのは最近のことなので、それは結構大きな変化かなと思います。

和久利 何も考えていなかった1年目の私たちと今を比べたら、本当にいろいろ考えるようになったとは思うんですけど、会ったときから変わらないところは変わらなくて。

真舘晴子(guitar&vocal)

その変わっていない部分というのは?

和久利 すごく小さなものでも楽しめる気持ちが3人はすごく強いと思うんですよ。その部分は環境が変わってもずっと変わらなくて良かったなって思います。

真舘 あと、みんな食べることが好きなんですよね。

最初に聞いたお誕生日の話も、ずっと食べてますもんね。

渡辺 あはは。バレました(笑)。

真舘 あはは。高校生のときから食べることが大好きだったもんね(笑)。最近、やっと練習も食べるのと同じくらい頑張るようになりましたけど(笑)。でも、食べることに満足するっていうのはすごく基本的なことですけど、私は大事だなって思っています。

渡辺 あと、去年の冬に初めて3人で韓国に行ったんですけど、成田空港でみんなで写真を撮ろうとしたら、床に動物のシールが貼ってあるのを見つけて。しかも、よく見ると違う絵柄のシールが別の箇所にもあったんですよ。それを私たちは一緒になって床に這いつくばって写真を撮ろうとしたりするっていう。

和久利 今話していると、しょうもないなって思うんですけど、そのときは奇跡みたいに感じたんですよね。

真舘 「なんでこんなところに!」って興奮して。なんか、動物園みたいになってて感動しましたね。

渡辺 しかも、空港で着ぐるみたちのイベントみたいなのもやってたんだよね? 4頭くらいいた中に、あきらかに古株のペンギンがいて。

真舘 そうそう。その古い子だけ、ちょっと小汚いから子供たちが全然寄って行かなくて。

渡辺 それがつら過ぎて、3人で走って行って、その子と一緒に写真撮ったりもしたよね?

和久利 うん。で、この話のオチは?(笑)

渡辺 ん? いや、そういうことがあったなっていう……(笑)。

あはは。この3人で話している感じが本当にアルバムに近いですよね。テンションがガッと上がったかと思いきや、急に会話が止まって、違う話に転換したり、同意するかのように追っかけコーラスが入っていたりっていう。

真舘 すみません。思い出したら、ちょっとヒートアップしてしまいました(笑)。

渡辺 でも、すごかった、切なかった、可愛かった、そういう感じとる部分が3人とも似ているのかなって思います。っていう話ですね(笑)。

和久利泉(bass& chorus)

では、逆に変わった部分というのは?

真舘 曲に対しての面白さを前より閉じ込めないようにしたいと思えるようになったのは大きいですね。それに気づけなかったから、これまではわりと好きな曲調や好きな雰囲気を貫いて作っていたような気がするんです。だけど、もっと広く見られるようになったというか。好きな曲調もありつつ、自分がやったら面白いなって思うようなものにも挑戦してみたり、音や曲の部分でもいろいろ試せるようになったなと思います。もちろんまだまだこれからだと思うんですけど、今回の作品はその始まりかなと思います。

渡辺朱音(drums& chorus)

3人の個ももう少し知りたいと思うので、それぞれが個人的に面白いなと感じた曲、お気に入りの曲を一曲ずつ挙げてもらえますか?

和久利 私は「グレン」ですね。1stミニアルバム『ファミリー・ミニアルバム』に「サンショウウオの海」っていう曲があるんですけど、私たちがバンドでやりたいと思うテンションというか、好きだなって思う雰囲気の曲だったんです。「グレン」も色味的に青とかネイビーとか涼しそうな曲で、こういうかっこいいことができる曲も好きだなって思って……私はこういう“かっこいい”になりたい、こんな雰囲気になりたいなっていう曲ですね。

真舘 去年、韓国に行ったときに、でこぼこの坂道にある小さい本屋さんを発見したんですけど、坂道を上ってるときに“開発中”って書いてあるのに気づいて。これまでの土地があって、これから変わっていく土地がある。しかもその街で飼っているちょっと小汚い犬もいたんですけど、それがかわいかったし、その子の存在もそこにいることで不思議な関係性に見えてきて。これを曲にしたいなと思って、作った曲なんです。変わっていくものと、変わっていかないものがあって、そこにいる街の人たちの気持ちだったり、いろいろなものが漂っていたような気がしたし、その景色は寂しげに見えたんですけど、切なさみたいなものは、人によっては温かいかもしれないし、冷たいのかもしれないなって思ったんですよね。

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