Interview

キュートな3ピースバンド The Wisely Brothers。彼女たちの愉快なおしゃべりが奏でる音楽──1stアルバム『YAK』

キュートな3ピースバンド The Wisely Brothers。彼女たちの愉快なおしゃべりが奏でる音楽──1stアルバム『YAK』

誰かの生活にこの『YAK』が、存在できたらいいな

変わっていくものと変わっていかないものの間に漂うっていう意味では、今のバンドの状態とも似ていますよね。ちなみに「グレン」は渓谷のことですか?

真舘 グレン・グールドからいただきました。名前を決めるときになんとなく気持ちがグレンだったので。でも、いろんな意味がありますね。グレンチェックとかもあるし。

渓谷だと思っていました。ほかにもこのアルバムには、雲、太陽、風、草原、庭、川、星などなど、自然の描写が多いですよね。3人とも東京出身なのに不思議だなって思って。

真舘 意識していなかったです。そういうものを現代的なものだと捉えて出そうとしているのかもしれないです、もしかしたら。一番身近にあるものだからかな……ちょっとどうなっているんだか、自分ではわかりません(笑)。

渡辺 人間が生きている周りで絶対になくならない基本的なものでもあるのかな。

和久利 最初にどんな小さなことでも楽しめるって言ったんですけど、晴子は特に、普段歩いているときに見える道だったり、風だったりを楽しんでいるんだろうなと思って。

渡辺 なんだか、鳥みたいな人だね(笑)。

真舘 昔、鳥を飼っていて、すごく好きでした。前にテレビで一日しか生きられないと思っている鳥の種類があるっていうのを観たことがあって。その鳥は一日しか生きられないと思っているから、毎日朝を迎えると、嬉しくてたくさん鳴く。それを「キキララ」の歌詞では歌っています。

「むかえた朝を鳥たちがよろこんで」と歌っていますね。

真舘 誰にも、いつまでいられるかわからないっていうことがありますよね。ここ1〜2年でいろいろ感じたんですけど、それならば、どうやったらもっと毎日を本当に楽しく過ごせるのか、どうやったら一日一日は奇跡だって感じられるだろうと思った曲です。

では、真舘さんのお気に入りの曲は?

真舘 存在の面白さでいうと「give me a mileage」ですね。たまたま自分が発していた言葉がすごく気に入って。「これまで誰か言っていたことがあるかな?」とか「これを言われたらどういう気持ちになるんだろう?」って考えるのも面白いし、言葉の色やスペルの形だったり、それが音楽に入り込んでくる影響も面白いなと思ってるんですけど。だって、これが違う言葉だったら、違う色の曲になっていたと思うし、そういうふうに言葉が音楽を色付ける面白さが出ているのと、少しわからない自分でいたいと思うこともあるので、この曲を選びます。

べつにマイレージが欲しかったわけではないんですよね。

真舘 はい。でも、欲しいなとは思いますよね(笑)。

渡辺 うん。もらえるなら欲しいよね。でも、欲しいとは言えない(笑)。

和久利 この曲を作ったあとに3人でファミレスに入ったら、隣りの席のサラリーマンたちが「マイレージ欲しい」とか言ってたよね? あ、こうやって繋がっているんだなと思ったので、共感する人もいるのではと思います(笑)。

渡辺 私は、自分がドラムを始めてというか、このバンドになって「こういうのが好きなんだ」っていうのを全面に出したのは「マリソン」です。繰り返しが好きなんですよ。この曲ではギターやベースは変化があるんですけど、ドラムは続いていく感じが私は心地よくて好きだし、歌詞に「サハラ砂漠」という言葉があるんですけど、まさに、ずっと同じ景色が続いていくようなイメージがすごくぴったりだなと思っています。それと、私はひとつの映画を観るような気持ちで演奏しているんです。ずっと続いていく景色がありながらも、登場人物の2人は“終わり”のようにも思える。いったい「どういう関係性なんだろう?」って想像もできると思うので、歌詞カードを見ながら聞いてもらえたら嬉しいです。ブックレットも、ちょうど砂漠のところになっているので。

そのブックレットもジャケットも、3人でコラージュした作品になっているんですよね。

渡辺 7インチ(「The Letter」2017年11月発売)で一緒に作業をしていただいたMIC*ITAYAさんとまたご一緒したいとお願いして、ミックさんのアトリエにお邪魔してみんなで作りました。実寸大の紙の上に歌詞にある“砂漠”や“雪”を置いていって。実は、“ヤク”も隠れているんです。アルバムと同じスペルの動物なんですけど。それと、“マーメイド”もいるよね。

『YAK』ブックレット裏面 ブックレット拡大はこちらで

真舘 それぞれが作ったものを組み合わせて、最終的に地続きにしていきました。“腕時計”はミックさんが作ってくれました。「おいで」に「時計」というワードもあるんですが、「彼女のこと」の「彼女はことばのなかの雪を見ては/深くまで降らぬよう手をかざした」っていう状況です。

和久利 あと、“手紙”があったり、“スケートボード”があったり。マイレージなんで、“飛行機”も。

渡辺 さっき話していた“開発中の坂”もあって、“庭”があって、“テニスコート”もあって。

真舘 “流木”や“定規”、“鉛筆”など、実物も混ぜて作ってますね。

ジャケットには3つの果物が描かれています。

真舘 父(デザイナーの真舘嘉浩)がデザインをしてくれたんですけど、実家に行ったときに「果物がいいと思うんだよね?」と言われて。ミックさんのアトリエに向かう途中に「もしも3つ果物を置くとしたらなんだろうな」って考えていたら、泉は洋梨で、朱音はレモン、私は去年たくさんリンゴをもらう機会があったし、色的に考えてリンゴかなって思ったんです。最終的にはミックさんに「それぞれ作ってみたらいいんじゃない?」と提案していただいたので、5分くらいで作ったものをポンって並べてみたら、3つともたまたま同じくらいのサイズに仕上がって(笑)。そこにミックさんが枠を切ってくれて、このジャケットがほぼ完成したという。果物が会話しているような配置にできたのでとても気に入っています。今回、ジャケットやブックレットがもうひとつのおまけの曲みたいな感じで作れたし、音楽の面でもいろんな発見ができたので、本当に楽しんで欲しいなと思うし、たくさん聴いて欲しいなと思います。その人の新しい生活の中でひとつの楽しみ方に繋がったり、オブジェとして飾ってもらうのでもいいし、誰かの生活にこの『YAK』が、ちょっと何かを話しかけてくるもの、喋ってくるものとして存在できたらいいなって思います。

YAK YAK TOUR

3月31日(土)大阪 Live House Pangea
4月01日(日)名古屋 K.Dハポン
4月07日(土)東京 Shibuya WWW X

The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)

真舘晴子(guitar&vocal)、和久利泉 (bass& chorus)、渡辺朱音(drums& chorus )。
都内世田谷総合高校の軽音楽部にて結成。2014年に下北沢のライヴハウスを中心に活動開始。2016 年7月にミニアルバム『シーサイド81』をリリースし、タワレコメンやApple Music「今週のNEW ARTIST」に選出される。2017年1月には7inchアナログ「メイプルカナダ」、3月にEP「HEMMING EP」、11月に7inchアナログ「The Letter」を発表している。本作『YAK』にてメジャーデビュー。
The Wisely Brothersオフィシャルサイト

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