Interview

Anger Jully The Sun 北海道発注目の4人組 加速度的に好転していく状況のなか彼らは新作で何を表現したのか?

Anger Jully The Sun 北海道発注目の4人組 加速度的に好転していく状況のなか彼らは新作で何を表現したのか?

にわかに活況を呈している北海道バンド・シーンから登場した4人組だ。昨年、東京や大阪のライブ・サーキットに出演して好評を博し、2月3日に行われたFLOWとTOTALFATのジョンイト・ツアー札幌公演ではオープニング・アクトを務めた。
今回、バンドにとって初となる全国流通盤をリリースしてさらなるステップアップをはかる彼らに、バンドのこれまでとこれからについて語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭

(最初は)変なことをしていることに、かっこよさを感じてたんです。そこだけに集中して曲作りしてました。

このバンドは、どんなふうに始まったんですか。

小竹森 僕が高校3年のときに、バンドはやってなかったんですけど弾き語りをちょっとやったりしてたんで、同じ学校の友達から「ライブをやるんだけど、バンド数が少ないから、バンドを作って出てよ」と頼まれて、でも同じ学校には楽器を弾ける人間がいなかったんで、中学が同じだった真輝と瑞貴を誘って、3人でコピー・バンドをやったのがきっかけです。で、その同じ友達から「卒業ライブをやるから、また出てよ」と頼まれて出るんですけど、そのときにはもう一人ギターが欲しいなという話になって、それで中学のときに瑞貴と同じクラスだった太一を誘って、それでこの4人が揃ったんですけど、そのライブがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。それで、僕が「このバンドをもっと続けたい」という話をしたら、みんな乗ってくれたんです。

岡崎 卒業ライブの3日後くらいに、瑞貴がもうドラムのペダルを買ってて、その本気具合にけっこうヤラれましたね。

小竹森 真輝はそのライブではドラムをやって瑞貴がベースだったんですが、真輝は元々はベースを弾いてたんで「このバンドでもベースをやりたい」ということで、瑞貴とパートを交換したんですよね。それでいまの形になって、大学2年から本格的な活動がスタートしました。

Anger Jully The Sunというバンド名にしたのは、どのタイミングですか。

鈴木 ずっとコピーをやってたんですけど、初めてオリジナルを作ったときに、「バンド名もないとな」という話になって、それでこのバンド名を考えました。

それが、小竹森さんの言う「本格的に活動がスタートした」タイミングですね。

小竹森 そうですね。

コピーをやってた時期には、どういう音楽をコピーしてたんですか。

岡崎 いまとは違って、プログレ系だよね(笑)。Nothing’s carved in stoneとか…。

小竹森 あとはUNISON SQUARE GARDENとかFUZZY CONTROLとか…。だから、いわゆる“ザ・高校生”というイメージのバンドのコピーはしてなかったです。

小竹森敬太(Vo,Gt)

小竹森さんが言う“ザ・高校生”たちはおそらく歌のメロディーや歌詞の内容に注目して音楽を選んでると思うんですが、コピーしていたラインナップから想像するに、みなさんは歌詞や歌メロよりも各パートの演奏ぶりが気になっていたんでしょうか。

鈴木 そうですね。自分だったら、ギターの音にすぐ耳が向いちゃうんで、ギターのフレーズがかっこいい曲をやりたいという気持ちが強かったですね。

オリジナル曲を作るときにも、そういう曲を作り始めたんですか。

小竹森 そうですね。やっていくうちに、だんだん変わってはいくんですけど、当時はかっこいいと言われたかったんで。

岡崎 プログレ感が重要だったよね。

鈴木 そう、メロよりもそっちだったね。

小竹森 そういう音楽をやってるバンドがいなかったから、だからそういう音楽をやると「すごい」と言われるんで。

岡崎 僕ら自身も、変なことをしていることに、すごいかっこよさを感じてたんですよ(笑)。だから、その当時はそこだけに集中して曲作りしてましたね。

常本 当時は例えばback numberの「花束」とかがすごく流行ってて、みんなそういう音楽をやってたなかで、僕らだけがそういうテクニック系の音楽をやってて、そこで差をつけるというか、“どうだ!”みたいな感じはありました。

岡崎 そこで、僕ららしさを見せたかったんですよ。

小竹森 当時は、ね。

歌の重要性や歌詞の重要性をすごく意識するようになってきて、作る曲がだんだん歌モノになっていきました。

ということは、いまは当時とは違ってきてるということですか。

小竹森 当時は真輝が曲を作ってたんです。でも、だんだん僕が中心になって作るようになってきて、そこで僕はどんどん歌モノを聴くようになっていってたから、歌の重要性や歌詞の重要性をすごく意識するようになってきたんです。で、僕もそこで勝負したいと思うようになっていって、それで作る曲がだんだん歌モノになっていきました。Cinema staffというバンドに出会ったのが僕のなかではすごく衝撃的で、プログレ的なギターの絡みもありながら歌を押し出してる音楽に目覚めていったんですよね。

歌の重要性、歌詞の重要性を意識するようになっていったのは、どうしてですか。

岡崎 ライブするたびに、お客さんの反応が変わってくるんですよ。当時の僕が作ってた曲は、演奏でゴリゴリ押してたんですけど、それに対してお客さんはポカーンとした感じで見てる人が多かったんです。だから、自分たちだけでやっている音楽という感じが僕らのなかでも強かったんですけど、この2年の間に楽曲のスタイルや作り方を変えていって、もっとわかりやすくて、お客さんがノリやすいタイプの楽曲にしていったらお客さんの反応が変わってきたんで、それで“これも僕らの音楽のひとつの形として正解なのかな”と思ったんです。

岡崎真輝(Ba)

小竹森 やっぱり、自分たちのやりたいことプラス、お客さんがどういう音楽を求めているかということを加味して、いいバランスのところで攻めていくのがいちばん大事かなと思って、そういう曲作りの方向になっていきました。

目に見える形の上での結成のタイミングとは別に、もう少し感覚的なところでバンドとしてのつながりが実感した場面というのはあったんでしょうか。

岡崎 元々、中学校が同じだったので、コピー・バンドで1回合わせただけでなんかしっくりきちゃったところはあったと思うんです。でも、そこからさらにバンドとしてのつながりが強くなっていったのは、バンド名がちゃんと決まって僕がベースをやって瑞貴がドラムをやるようになってからの話ですね。瑞貴はドラムが初めてだったから、やっぱりうまくいかないところもあったんですけど、彼はガムシャラに練習してくるんですよ。それで、みんなで合わせたときにどんどん形になってくるにつれて、僕ら4人がバンドになっていく感じが目に見えるような感じというか、彼が成長していくにつれてバンドも成長していくような感じだったんです。

常本瑞貴(Ds)

瑞貴さん、ガムシャラにやったんですか。

常本 そうですね。最初にスタジオで合わせたときが相当ひどくて、それは始めたばかりの1日、2日ですぐにできるはずもないんですけど、それにしても“こんなにできないものなのか”と思ったんです。“楽器を始めた最初はこんなにできないんだな”と思って…。でも負けず嫌いなんで、悔しくてほぼ毎日ひとりでスタジオに入って、やってました。

岡崎 その当時やってたのは「フレグランス」という曲で、そのリズムの打ち込みも“これ、叩けるのかな?”というような感じだったんですけど、でも楽曲自体は僕らみんなしっくりきてたんで、「これ、やってみて」ってことで。

鈴木 ドラムをちゃんとやってきた人が誰もいなかったから、ドラムの知識があるわけじゃないないなかで作ってますからね。

常本 それを、とにかく必死にやるっていう。

「初めて楽器をやるのはこんなにできないものなんだ」という話がありましたが、初めてオリジナル曲をやるバンドをやってみて、“バンドってこんなに面倒臭いものなんだ”みたいなことを思うことはなかったですか。

常本 僕は本当にできなかったから、それをできるようになるためにがんばってたから、面倒臭いなんていう感じは全然なくて、“とにかく練習が楽しい”という感じでしたね。

ただ、演奏技術だけ取り上げても、みんなが同じようにできるわけではないから、そこでできるほうの人間が面倒を感じることがあるのが、人が集まって一緒にクリエイティブすることの難しさだったりしますよね。

岡崎 そういうこともあったからこそ形になっていくと達成感を感じられたということだと思うんです。最初の頃は僕が主に瑞貴にいろいろ言ってたんですよ。多分、あの頃は僕のことを絶対嫌いになってたと思うんですけど(笑)。

鈴木 真輝のことを怖いって言ってたよね(笑)。

岡崎 (笑)、そういう時期も経て、ドラムがすごく安定してバンド感が高まったと感じたときはいつも直接言うようにしてましたよ。特にその頃は、本当にバンドのことしか考えてなかったから、ダメなときはダメだと言うし、良かったら心から「いいね!」って。

そもそも全員が、みんなで一緒に演奏することに喜びを感じていたということでしょうか。。

鈴木 仲の良さということはあったと思います。バンド以外にも遊ぶことがあったんですよね。カラオケ行ったり…。

常本 真輝の家で朝まで映画を見たり(笑)。

鈴木 (笑)、あったねえ。オールで学校行ったりして、そういう無茶やるのが楽しいっていう。

鈴木太一(Gt)

今回のアルバムは、いままでの僕らとこれからやっていこうと思っているスタイルがいいバランスで入っています。

さて、今回のアルバムを作り始めるときに何か話したことはありますか。

小竹森 まったくなかったです。

岡崎 制作期間が本当にギリギリで。

「制作期間がギリギリ」ということは、先にリリース日が決まっていたということですか。

鈴木 先に日程を決めて、それに合わせて曲を作り始めたんです。

岡崎 他の曲も元々作ってはいたんですけど、僕ららしさにプラス新しい何かを入れようということで本当にギリギリまで制作してました。

「僕ららしさ」と言われましたが、いまの時点で考えるAnger Jully The Sunらしさとはどういうものだと考えていますか。

小竹森 今回のアルバムに入っている曲でいうと、3曲目(「枯れた花びらを見て」)なんですけど、でもそれはこれまでの話で、最近やり始めたというか、こういうジャンルを開拓していきたいと思っているのは2曲目(「夜明け前までに」)なんです。だから、今回のアルバムはいままでの僕らとこれからやっていこうと思っているスタイルがいいバランスで入っていて、そのあたりをお客さんにも感じ取ってもらえるとうれしいなと思っています。

みなさんのなかでの、3曲目と2曲目の違いはどういうところにあるんですか。

小竹森 どちらもエッジは効いてると思うんですが、そのトガり方が違うかなと思ってて、3曲目はガンガンに歪ませて音で相手を切り裂くような、そういうトガり方なんですけど、2曲目のほうはいままでみんなが出したことのないような音で勝負するというところに僕らなりのトガり方を感じてもらえるとうれしいなと思ってるんです。曲調も、いままでの僕らはBPMの速い曲しかなかったんですけど、2曲目はミドル・テンポだし、それぞれに勝負してるところが違ってる2曲だと思います。

そうした方向性の違う曲が生まれたのは何か気持ちの変化があったんですか。

小竹森 単純に、違うことをやってみたいなと思って。いま自分たちが聴いている音楽がそっち寄りになってきたので…。

鈴木 海外のインディー・シーンの感じをちょっと取り入れてみたかったっていう。

小竹森 そういうものをやりたくなったということですね。

『Afterglow.』というタイトルは、どういうタイミングでどういうふうに決めたんですか。

常本 この言葉は“残光”という意味なんですけど、出来上がった5曲を全部並べて聴いてみたときに、いまの僕らの光と影をいい感じに表現してるように思ったんです。それは、いままでの僕らとこれからの僕らというような意味も含めてなんですけど、そういういろんな表情を比べて感じてほしいなと思って、このタイトルにしました。

自分たちなりの覚悟みたいなものが定まったタイミングと周りの状況がうまくハマッたということなのかもしれないですね。

ところで、最初に話してもらった結成の頃から考えたときに、こういう内容のアルバムを世の中に出すに至っているいまのバンドの状況をどんなふうに捉えていますか。

小竹森 バンドの活動が進んでいくスピード感が去年1年間で3倍、4倍くらいアップしたんです。いままで歩いていたのがクルマに乗ったような感じで、それはなぜそうなったのか、よくわからないんですけど…。

何かスピードアップするきっかけがあったわけじゃないんですか。

小竹森 そうなんです。いろんなオーディションに出たら、めちゃめちゃたくさん引っかかって、いろんな人に気に入られて、それで以前からずっとお世話になってた現在のマネージメントから「CDを出さないか」と言ってもらって、それでこれが出来上がったということなんです。

去年1年の変化は、バンドが目指しているところへ向かうスピードが単純にアップしたという感じですか。それとも、そもそも目指すところが変わったんでしょうか。

小竹森 みんなの意識が変わったというところも多分あったと思います。とりあえず僕は去年の最初の時点で“今年1年、何もなかったらやめよう”と思ってたんですけど、そういう“やってやろう!”という自分たちなりの覚悟みたいなものが定まったタイミングと周りの状況がうまくハマッたということなのかもしれないですね。

岡崎 周りの状況に、僕らも無意識のうちに食らいついてたというか、頭で“ああしよう、こうしよう”と考えるより先に体が勝手にアクションを起こしてたように思うし、それがいまにつながってるんだと思います。

来年の今頃にはどうなってると思いますか。

小竹森 この1年がどうなるのか本当にわからないので、目標というよりは“こうなるんだ!”という覚悟という意味で言えば、音楽で食えるようになっていたいですよね。言霊じゃないですけど、言葉にすれば、それが行動につながって実を結ぶということは去年1年で実感したし、それに音楽で食えるようにならないと意味がないと思うんです。それに、その段階に行けば、またその次に進めるだろうと思うので。

期待しています。ありがとうございました。

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ライブ情報

“Afterglow. Release party 希望の夜明け”

2月23日(金) 北海道・札幌COLONY

Anger Jully The Sun

小竹森敬太(Vo,Gt)、岡崎真輝(Ba)、鈴木太一(Gt)、常本瑞貴(Ds)。
2014年4月に結成された、北海道・札幌在住4人組ロック・バンド。2016年、北海道テレビ主催「make a dream」、「夢チカLIVE」に立て続けに出演し、北海道バンド・シーンでの存在感を確かなものにする。2017年、MASH A&R主催「MASH FIGHT」にてマンスリー・アーティスト選出、並びにセミファイナルへの進出に始まって、大阪サーキット・イベント「見放題」、「MINAMI WHEEL 2017」などに出演。2018年2月、初の全国流通盤『Afterglow.』をリリースする。

オフィシャルサイトhttps://tnkamechans.jimdo.com