ハンサムクリエイター・中道慶謙が『Last Standard』に仕掛けた野望  vol. 5

Interview

『Last Standard』を生み出したI From Japanの秘密

『Last Standard』を生み出したI From Japanの秘密

突然の『Last Standard』最新バージョン試遊から幕を開けたI From Japan代表・中道慶謙氏への取材。前回の記事で、背景にチラチラと写りこんでいたオフィスの様子が気になった方もいることだろう。一般的に想像するゲーム会社のオフィスとはまるで異なる様子のI From Japanオフィス。はたしてどのような場所なのか?

今回はその全てを写真とともにお届けする。実際の現場写真を通じて、「おもしろいゲームが作りたい」というひとつの思いのもとに集まった、若きゲームクリエイターたちの情熱を感じていただければ幸いである。

取材・文 / 大工廻朝薫(SPB15)

I From Japanオフィスを訪問!

インディーゲームを説明するときによく使われる言葉として、“小規模な開発環境”というものがある。この“小規模な開発環境”とは、具体的にはどのような場を指すのだろうか。ゲームメディアに取り上げられることもある大手メーカーの大規模な開発現場と異なり、インディーゲームの開発現場はその実情を知る機会がほとんどない。

今回我々が取材するのは、『Last Standard』を現在製作中のインディーゲーム開発会社、I From Japan。以前に行ったインタビューの中で、代表の中道慶謙氏ご本人より、社内の撮影を快く応じていただけた。中道氏が学生時代の同級生を集めて結成したというI From Japanとは、いったいどのような会社なのだろうか。

I From Japanのオフィス所在地として中道氏の指定した住所は大阪の住宅街。実際に訪れてみると、そこは人情の街・大阪を感じさせる、独特の雰囲気が漂うところだった。IT企業を思わせるビルなどはなく、あたりにはごくごく普通の住宅と、昔ながらの美容室しかない。どこからともなく現れて我々を出迎えてくれた中道氏は、「ここです」とある建物を指し示した。

▲指し示したのは、なんとこの建物。見た目はごくごく普通のアパートだ

美容室と、つい先日までラーメン店が入っていたというこの建物の2階に、I From Japanオフィスはあるという。中道氏の案内に従い、建物の裏から2階へ上がり、オフィスとして利用されている一室へと足を踏み入れた。

▲前回の記事でも紹介した写真の全体図がこちらとなる

生活感のある玄関から中へ入っていく

友人の下宿に遊びに来た感覚。そして最初に案内された、音楽担当者のデスクがこちらだ。

▲アパートの一室には似つかわしくない、あらゆる音楽機材が並ぶデスク。壁に貼られた防音材にDIY感があふれている

そこに広がっていたのは部屋の外観からは想像もつかない、本格的な音楽機材の数々。もちろん防音などの都合で難しい部分もあるだろうが、アパートの一室であっても、使用機材は一通り揃っている。それは他のデスクについても同様であった。

▲モーション担当者のデスク。一見スッキリしているが、高価な液晶ペンタブレットが使用されている

▲3Dモデル担当者のデスクと中道氏のデスク。中道氏には実際の作業工程も見せていただいた

機材の充実ぶりは、個々の作業スペース以外にも及ぶ。台所には、日本で使用しているメーカーがほとんどないという、少し変わった機材が置かれていた。モーションキャプチャー用のカメラだ。

▲カメラが置かれていたのは台所の食器棚。体に専用の機材を装着してカメラの前で動くことにより、この場でモーションキャプチャーを行うことが可能だ

▲モーションキャプチャーを行う際には、こちらの機材を身に着けて体を動かす

▲打撃モーションの作成には、拳を受け止めるミットも不可欠だ

この機材について話を聞いたところ、実は現在の『Last Standard』では使用していないのだという。「これは思っていたほど精度が出なかったです。動きがカクついたり、自然な感じにならないんです」と中道氏。最終的には見映えの関係上、モーションキャプチャーを使用しない方向も検討している。

最終的には使用されていないかもしれないが、住空間をほんの少し拡張することで、モーションキャプチャーの可能な開発環境は生み出すことができた。これはアパートの室内でもゲーム開発が行えることを示す、いい例だ。こうしたハンドメイド感の中にこそ、インディーゲームの現場が持つ熱量の大きさが垣間見える。インディーゲーム開発の喜びは、DIY―Do It Yourselfの精神を延長した先にあるのかもしれない。

▲もちろん住環境としても充実。押し入れの戸を取り外し、すぐにコーヒーが飲めるようになっていた

▲数多くの機材を動かすために必要なのが電気。一般家庭用のブレーカーでは足りず、別途ブレーカーを追加してあるという

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