Interview

JUJU 7thアルバムは、錚々たる作家陣とタッグを組んだ、圧巻の全13曲。「史上最高の作品」という新作について、制作エピソード、そして4月からのツアーへの意気込みを訊く。

JUJU 7thアルバムは、錚々たる作家陣とタッグを組んだ、圧巻の全13曲。「史上最高の作品」という新作について、制作エピソード、そして4月からのツアーへの意気込みを訊く。

JUJUが、約2年2カ月ぶり通算7枚目のオリジナルアルバム「I」を完成させた。これまで洋邦さまざまな楽曲を歌い紡いできたJUJUだが、今作には大物プロデューサーから気鋭の若手クリエイターまで多彩な面々が参加。平井堅として初めて他のアーティストに詞曲を提供した「かわいそうだよね(with HITSUJI)」や、「クリスマスの約束2017」で初披露された小田和正の書き下ろし曲「あなたがくれたもの」をはじめ、小林武史、蔦谷好位置、松尾潔、松井五郎、森大輔、藤林聖子、her0ism、玉井健二、亀田誠治など、そうそうたるプロデューサー / 作家とJUJUがタッグを組んだ全13曲で構成される。「史上最高の作品」と自負するJUJUに、アルバムの制作エピソードや史上最多公演ツアーの意気込みを聞いた。

取材・文 / 鳴田麻未

人生の悲喜こもごもって全部「I」じゃないか

今作はいつにもまして作家陣が豪華ですね。ポップスの作り手の、重鎮から若手まで堪能できます。JUJUさん自身はどんな作品になったと感じていますか?

私の中でも「史上最高の作品」だと。毎回毎回アルバムを作るたびに「今回のが一番良いな」って思っていて、7枚目ともなるとどんなアルバムになるのかな?って、作り始めたときこそ思っていたのですが、できあがってみたら「なんて良いアルバムなんだろう!」って。「今一番お気に入りのアルバムはなんですか?」って聞かれたら「7枚目」って胸を張って言えます。

タイトルを「I」とした真意を聞かせていただけますか。

端的に言うと、すべてのことは自分ありきだ、と思ったのが一番の理由なんです。最近いろんなことが便利になって情報があふれてる状況でも、情報に流されることなく自分が選び取っているもので今の自分は成り立っているだろうし、これから先も自分がすべてのことに決定権を持って、自分の決めたことの積み重ねで生きていきたいんですね。もちろん1人で生きていけるわけではないし、いろんな方に助けられながら生きているのですが、それも自分があるから人と巡り会える。だから、自分であることへの確認や戒めだったり、出会った人たちへの自分からの感謝だったり……ここに来て“自分”っていうものに立ち戻って「I」にしたんです。

まずは“自己”という意味合いで「I」なんですね。

はい。さらに「I」といってもいろんな「アイ」があるじゃないですか。「哀」も「藍」も「逢」も「愛」も「アイ」。もしかして人生の悲喜こもごもって全部「I」っていう言葉に集約されるんじゃないかなと思って。プラス、この表記にしたのは、数字の1にも見えるから。また1からやり直すっていう意味にも見えたらいいなと思いました。

そのように思ったきっかけはあるんですか?

アルバムタイトルがその都度の自分と重なっていて、1枚目の「Wonderful Life」は、契約打ち切りの危機が「奇跡を望むなら…」を知っていただいたことによって首の皮一枚でつながり「しんどいこともあるけど人生諦めずにやってると面白いね」って言っていたことから。2枚目は、愛についてのいろいろが巷にあふれていて、「愛って一体なんだろう?」ってよく言ってたのでそのまま「What’s Love?」になったんですね。で、3枚目は2010年でジュウにちなんでと「明日がくるなら」などの楽曲に恵まれ、いまいちど“JUJU”というアーティストを浮き彫りにさせる「JUJU」ってアルバムを作ろうとなって、次の「YOU」は2011年…ファンの皆さんへの感謝の気持ちを一度ちゃんと伝えたい、“あなた”との出会いがあってここまで来られましたっていう意味で付けました。5枚目は、10周年を迎え同じことをやるよりも新しいドアをどんどん開けていきたいなっていう思いで「DOOR」。「WHAT YOU WANT」は、大人だからこそ楽しむことに貪欲でありたい、“大人げなさの肯定アルバム”という意識でした。そして今回は、そこからさらに自分が自分であることの肯定、というのを形にできたらと思いました。

名作家・平井さんのすごさに震えました

通して聴いてみて、前半は濃密な「愛」の歌が多く、後半、特に7曲目「Let It Flow」以降は多様なサウンドで声色がコロコロ変わることでJUJU自身=「I」が浮き彫りになってくるっていう構成なんじゃないかと私は感じました。

なるほど、そういう見解が。曲順って本当にやりようがたくさんあって。でも「何を一番伝えたいか」を基準に考えるんです。私はアルバムの中で、ままならない恋愛があったり悲しいことがあったりしても、最終的には希望を持って終わりたいっていうポリシーがあって。だから今回の曲順に関しては、前半にドロドロだったり悲しい愛の世界を見せたあと、「Let It Flow」から1曲1曲サウンドがバラバラというのは、もういいや!楽に生きよう!って、あったことに対する受け入れ作業が始まってるんですよね。それで最後の「I」で、自分というものを見つめ直して<あなたがいるから鮮やかに染まるなにげない歌がこの景色が…>と思って終われたらいいなという。聴き終わって、次のアルバムに向けてどんな楽曲を作っていけるんだろうって、自分でもワクワクできる曲順です。

楽曲の制作エピソードをいくつか聞かせてください。かなりトピックの多い作品ではありますが、平井堅さん作詞作曲、亀田誠治さん編曲のバラード「かわいそうだよね(with HITSUJI)」はぜひ触れておきたいです。

すごくないですか? あの曲。

すごいですよね、悲哀じみた女心の表現が。

女の人、全員グサグサ刺さるのではと思います。

平井さんとして詞曲両方を他のアーティストに提供するのはこれが初めてです。実現した経緯は?

一緒に呑む機会があり、その際に、「JUJUはやさぐれた歌を歌ったほうがいいと思う。そういう曲書こうかな」っておっしゃったんですよ。それを忘れられずお願いをしたら、一度は難しいというご返答だったのですが、平井さんに「かわいそうだよね」って言葉が降っていらしたらしくて。デモと一緒にお手紙をいただいて「もし嫌いだったら自分で歌うから遠慮なくハッキリ言って」という内容が書いてあったんですけど、一聴して、一瞬の躊躇はありましたが「これはぜひ歌わせてください」って即答しました。

平井堅イコール歌手というイメージで世間に定着してるかもしれませんが、ソングライティングの面でも名手であることを痛感しました。

ほんっとに! 名作家ですよね! 最初に歌詞読んだとき、鳥肌が立ちました。<かわいそうなのは><無様なあたし>っていう歌詞の曲、私から「こういう曲を書いてください」って頼んでもきっと出てこなかっただろうし、女の歌うたいとして「自分の無様さを歌いたいんです」っていうのも難しい。絶対誰もが経験してるっていうか、肯定したくないけど心の中にある闇。それを如実にえぐり出されて突きつけられた気がして。一番私がグッと来たのが、<越えられない夜にひとりきり 床のホコリを見てた>っていうフレーズ。一点しか見つめられないほど落ち込みすぎて茫然自失としてるときの状態を、そんな言葉で描ける平井さんのすごさに震えました。

小田さんと歌を追求した3日間

小田和正さん提供の「あなたがくれたもの」は、さすがにクレジットを確認しなくても小田さん曲だとわかりました。

もう歌い始めた瞬間に小田さん!ですもんね。作曲者皆さんの個性がくっきり出ててすごいなあとは全曲に対して思いましたけど、その中でも一番これがすごい。誰が聴いても小田さんの曲。レコーディングは大変でした……(笑)。

“小田和正発声”ですもんね、この曲だけ。小田さんご本人がボーカルディレクションもされたということですよね?

はい、真隣にいらっしゃいましたから(笑)。ダメ出しをバッシバシしてくれるんですね。ホントに、歌というのものを考えさせられました。やっぱり小田さんって自分が提供した曲に対してのこだわりも明確で歌い方も含めてご自分のイメージを極限まで突き詰めてくださる方なんだなあと。

具体的にはどんな歌唱指導があったんでしょう?

言葉の発し方を徹底的に直していただきましたね。時に英語詞って、言葉ひとつで音を持たせるじゃないですか。例えば「Time」で持たせるとき「♪タハァーイム」って。この「ハ」を入れるのが私のクセになってるんですよね、日本語を歌うときも。

同じ音を伸ばしながらも抜いたりこぶしを回したり。

そういうのが一切許されませんでした、この曲においては。小田さんから「よく考えてみろ。日本語においてこんな発音はないだろ」って言われたんですよ。「ごもっともなんですけど、ダメですか……!」「だからそんな日本語ないだろう」「そうですよね……」(歌ってみる)「ホラまた『H』の音が入った」「い、今の入りました!?」「入ってる」「うーん難しい……」っていう(笑)。そんな追求と葛藤の3日間でした。

できあがりは細かな追求の結晶なんですね。

はい。完成した楽曲は、自分でも聴いたことのない私の声と歌い方で新鮮でした。ビブラートをほぼ使わなかったり、語尾の切り方だったり、伸ばしたときの余韻に何が残ってるのかだったり。そこまでこだわるから今の小田さんが存在してるんだなって。小田さんが小田さんであり続けられる理由を近くで見せていただき、すごく勉強になりました。でも自分の歌にそんなに「H」が入ってるとは!

それがJUJUさんの歌の持ち味にもなってると思うので、難しいところですよね。

「クリスマスの約束」のプロデューサーの方と対談したとき、「小田さんが『あいつは嫌がるかもしれないけど、JUJUにはいろんな歌を歌わせたいんだ』って言ってたよ」って教えてもらったんです。きっと小田さんは、今の歌い方だけじゃなくてこういうのもしたらいいはずなのにな、っていう別のJUJU像を見出してくださってたんですね。ホントにありがたいなと思って。この曲も目からウロコが5枚くらい出たし(笑)、良い機会でした。

「いいわけ」ににじむ“湿り気”

既発シングルですが「いいわけ」は、改めて、JUJUさんの新たな扉を開いたキラーチューンだと思いました。

「いいわけ」は、もう難易度が高すぎる曲です。この曲と仲良くなるのにけっこう時間かかりました。この曲は筋トレが必要でしたね。あ、ポイントとしては、体揺らしながら歌うと歌いやすいです(笑)。

なるほど。それに小林武史さんのドラマチックなアレンジテクニックはやはり絶品ですね。

小技の効かせ方がすごいですよね。最初のデモはもっとシンプルだったから、このウェットな感じやグルーヴは小林さんのおかげなんですよね。小林さんの中で、音楽の中でも生きていく上でも、一番大事なのって湿り気なんですって。

へえーそうなんですか。

歌に対しても、声に湿り気がある人じゃないと好きじゃないみたいでオファーのときに私がラララで(歌を)当てたものを送ったら、私の声に妙なウェット感があって引っかかったらしく、お忙しい中「やっぱりやる」って引き受けてくださったんです。その後「湿り気ってやっぱ大事なんだな」って升酒を飲みながら言ってたなあ(笑)。小林さんとはこういうタイプの楽曲でまたお仕事させていただきたいですね。ミドルテンポでグルーヴがあるもの。

湿り気のある声と言われて、ご自身で思い当たるフシはありますか?

なんだろう……基本、ままならない楽曲を多く歌っているぶん(笑)、声は泣いているなとは思います。明るい曲を歌っても泣いているなと。

これまでの人生が声に出ている?

この年になってくると歌はもう生き様ですよね。でも私は、自分が経験したことがない感情は歌わないって決めているので、(生き様)でなきゃウソっていうか。

JUJUのライフワーク=“ライブ”

4月から8月にかけて、44公演のホールツアーに出ますね。ジュジュ苑や夏恒例のジャズライブを含め、JUJUさんって本当にずっとライブしてますよね。

生音で歌うのが楽しいのと、リスナーの方とお会いできる唯一の場がライブだから。前にとあるロック歌手が良いことを言ってて、「アルバムはラブレター。それを渡してどれだけの人がラブレターに応えて会いに来てくれるか」。ホントそれだなと思って。あと最近、ヘッドホンとかイヤホンで済ませてしまって生音を聴かない若い子がめちゃくちゃ多いって言うじゃないですか。ライブでしか感じられないものって絶対にあるし、同じ曲でもCD音源とライブではある種別モノだし是非味わっていただきたいですよね。私は子供の頃から「生で聴くからこそ楽しい」と思ってるので、だから“ライブ狂”なんでしょうね。ツアーもどんどんやりたいし、ジャズライブもあの規模(※ブルーノート)で毎年絶対にやりたいという思いがある。

「ライブ狂」っていいですね(笑)。

1年に300本のライブをするとか、それぐらいがホントは希望です。ツアーやってるときのほうが体の調子も良いんですよね。ライブして疲れることってまずないんです。ステージに行くときよりも帰ってきたときのほうが元気なんですよ。たぶんお客さんたちの気をスゥーッて吸い取って英気を養ってるっていうか……(笑)。

作品のリリースも、2006年のブレイク以降絶え間なくあって、女性ソロシンガーとして12年も大きな休みなく活動し続けるって本当にすごいことだと思います。1年休みたいとか思いません?

1年休みがあってもやること思いつかないですね。2週間で十分。だから、これからもせっせとラブレターを作ってはライブで届けていくっていうのを続けていきます。

その他のJUJUの作品はこちらへ

ライブ情報

JUJU HALL TOUR 2018 「I」
2018年4月~8月 44公演の全国ホールツアー開催
4月22日(日) 松戸森のホール21 からスタート!

詳細はオフィシャルサイトでhttp://www.jujunyc.net/live/

JUJU

18歳で単身渡米。ジャズをはじめ、さまざまなジャンルの音楽に触れ独自の音楽性を築き2004年デビュー。
2006年ラストチャンスとしてリリースした「奇跡を望むなら…」がスマッシュヒット。
2010年自身初のカヴァーアルバム「Request」は、女性シンガーのカヴァーアルバムとしては史上初のオリコン2週連続1位を記録し、その後JAZZ ALBUM「DELICIOUS」でもJAZZ史上初のオリコンTOP5入りを達成。
2012年には初となる2枚のベストアルバムがオリコン1位・2位にランクインし、翌年ホール・アリーナツアーで年間20万以上を動員。
2016年10月にリリースした、カヴァーアルバム「スナックJUJU ~夜のRequest~」がロングヒットを記録し、「-ジュジュ苑スぺシャル- スナックJUJU アリーナツアー2017」も大成功におさめる。
毎年、日本記念日協会認定の10月10日“JUJUの日”には趣向を凝らした企画を行い、2007年以降毎年欠かさずツアーを行いライヴをライフワークとしているJUJU。
2018年2月21日には超豪華プロデューサーが集結した7枚目のオリジナルアルバム「I」リリースし、本作を携えての全44公演のJUJU HALL TOUR 2018 「I」が決定している。

オフィシャルサイト
http://www.jujunyc.net