佐藤剛の「会った、聴いた、読んだ」  vol. 32

Column

純烈への「プロポーズ」から生まれる新たなコラボレーションへの期待

純烈への「プロポーズ」から生まれる新たなコラボレーションへの期待

以前にも紹介したムード歌謡グループの純烈が、2月14日にニューシングル「プロポーズ」をリリースした。

今回は幸耕平の作詞作曲で、昭和の時代であればグループサウンズが歌っていたような感触のラブソングだ。
ロックバンドのトランザムのメンバーとして活動していた幸は、吉田拓郎などのシンガーソングライターたちのバックで演奏した経験もあるが、石野真子や川島なお美の作品を手がけて作曲家になった。

一昨年から紅白に連続出場している市川由紀乃を筆頭に、竹島宏、松原健之らの躍進に大きく貢献しているとして、ソングライティングとともにグルーヴを重視する歌唱指導でも高い評価を得ている。
幸の「譜面に出来ないビートの乗り方や歌い方」の影響によって、純烈の5人がどのような成長や変化を見せるか、そこに注目しているのは熱心なファンだけではないだろう。

メンバー中4人が俳優としての活動経験を持ち、歌うだけでなく踊ることや演じること、観せることに関しても今後の可能性を感じさせる彼らが、歌謡曲シーンにもたらす効果や刺激は、決して小さなものではないとぼくは思っている。
かつての美空ひばりがそうであったように、長期にわたって明治座や新歌舞伎座などの劇場公演を成功させた北島三郎を筆頭として、歌謡曲の分野には歌を中心とした総合的なエンターテイナーとして活躍する歌手が存在していた。
そうした歌謡曲の本来あるべき魅力を、純烈ならばもっと膨らませてくれるのではないか。

昭和の時代に歌謡曲が全盛だった頃、人気歌手の多くはキャバレーやクラブ歌っていたし、そうした場からヒットを飛ばしたものだった。
日本の経済成長を支えて働いていた男たちを酔わせてくつろがせたキャバレーやクラブは、明日への英気や活力が養われる場という役割を果たしていた。

だからこそ盛り場のネオン街で遊ぶ男たちや、夜の蝶として働く女たちの心をとらえた歌が、世のなかの空気を反映してヒット曲になったのだろう。
そうした作品が減ったこととキャバレーやクラブの衰退は、どこかで結び付いているとも思える。

そう考えると純烈がデビューの頃から長年にわたって主な活動の場としてきたスーパー銭湯は、庶民が心を解放して英気と活力を養うという意味において、その昔のキャバレーなどに代わるものと考えていいかもしれない。
しかもスーパー銭湯は男性ばかりでなく、女性たちにも開かれた場である。

実際にぼくも彼らのライブを何度か観たが、客席で歓喜し声援を送る幅広い年齢層の女性たちが放つ熱量は、高度経済成長期の男たちのそれに勝るとも劣らないのではないか。

そんな純烈に、歌とパフォーマンスで老若男女に元気を取り戻させてもらえたら、などと願ってしまうのはこちらの勝手な思いでしかない。
だが、そんな気にさせてくれるグループが活躍しているということだけでも、いくらか楽しい気持ちになれる。

前回も書いたようにぼくが純烈をロックバンドのスパイシーコウヤドウフと、ライブで結び付けてみたいと思ったのは、彼らにはもっともっと魅力が秘められていると信じたいからだ。
スパイシーのライブにゲストという形で出演してもらい、コラボレーション出来ないかとひらめいたのはごく自然に、ロック的なグルーヴという面で両者がつながってきたことによるものだ。

純烈は「プロポーズ」で結婚の申し出を歌っているが、proposeには単に「申し込む、提案する」の意味もある。
言ってみればスパイシーと純烈のジョイントは、ぼくから彼らへのプロポーズでもある。

以前からひそかに純烈に歌って欲しいと願っていた、阿久悠作詞の知られざる名曲をリーダーの酒井一圭にリクエストしたところ、こんなにも力強い返事をもらった。

「ビビるほどいぶし銀なチョイス!やりましょう!」

その言葉をかみしめていたら伝説のシンガーソングライター、レナード・コーエンの名曲にも挑んでもらいたいと、さらなる夢が湧きあがってきた。

のびしろがまだまだ十分にあって成長著しいロックバンドのスパイシーと、東京国際フォーラムのホールCで昼夜のコンサートを開催して「次はホールAで!」と宣言するまでになった純烈、この両者の出会いによって起こる化学変化が楽しみで仕方ない。

誰もがハッとするような瞬間と、笑顔になれる幸せな時間が、4月14日に生まれることを願っている。

【公演概要】
「飛びだせ、スパイシー!!」
2018年4月14日(土) 開場 15:00 / 開演 16:00
会場: 渋谷CLUB QUATTRO
チケット代: 前売 \2,500 / 当日 \3,000 (スタンディング・整理番号付・ドリンク代別途必要)
<出演> スパイシーコウヤドウフ
<スペシャルゲスト> 純烈

純烈の楽曲はこちらから

著者プロフィール:佐藤剛

1952年岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち。明治大学卒業後、音楽業界誌『ミュージック・ラボ』の編集と営業に携わる。
シンコー・ミュージックを経て、プロデューサーとして独立。数多くのアーティストの作品やコンサートをてがける。
「マイ・ラスト・ソング」では構成と演出を担当。
2015年、NPO法人ミュージックソムリエ協会会長に就任。
著書にはノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店、小学館文庫)、『黄昏のビギンの物語』(小学館新書)。

美輪明宏と「ヨイトマケの唄」 天才たちはいかにして出会ったのか

著者:佐藤剛
出版社:文芸春秋

三島由紀夫、中村八大、寺山修司・・・・・・

時代を彩った多くの才能との邂逅、稀代の表現者となった美輪明宏の歌と音楽に迫る、傑作ノンフィクション!

「自分以外の人によって、己れの人生を克明に調べ上げ語られると、そこには又、異なる人物像が現出する。歴史に残る天才達によって彩色された果報な私の人生絵巻が、愛満載に描かれていて、今更ながら有難さが身に沁みる」――美輪明宏

vol.31
vol.32
vol.33