Interview

“骨太役者”渡部豪太、「“型”を語り継ぐ粋な役者になりたい」。『西郷どん』『ふるカフェ系 ハルさんの休日』への思いを語る

“骨太役者”渡部豪太、「“型”を語り継ぐ粋な役者になりたい」。『西郷どん』『ふるカフェ系 ハルさんの休日』への思いを語る

『平清盛』に続き、大河ドラマ出演2作目となる『西郷どん』で、鈴木亮平が演じる西郷隆盛の弟・吉二郎を演じる俳優の渡部豪太。幕末から明治にかけての激動の時代を舞台に、家を空けることが多い兄・隆盛に代わり、大黒柱として西郷家を支え、劇中では一歩下がったところから見守っていてくれているような安心感を与えてくれる、そんな存在だ。

また、渡部が古民家系カフェブロガーに扮して日本各地の古民家カフェを訪ねる番組『ふるカフェ系 ハルさんの休日』(NHKEテレ)の新シリーズが、4月から放送される。「血の通っているものが好き」と話す渡部が、『西郷どん』と『ふるカフェ』にかける思い、役どころや大河ドラマだからこその面白さ、そして、芸術・文化に携わる役者としての思いを熱く語ってくれた時、ふわったとした印象が覆るほど“骨太”な渡部を垣間見ることができた。

取材・文 / 上村恭子 撮影 / 増永彩子

『平清盛』以来、2度目の主人公の弟役は“気負いなく”。「僕もこれからの展開を楽しんでいるひとり。」

大河ドラマの出演は2作目ですが、出演する楽しみと苦労はどんなところに感じていますか?

同じ役を長期にわたって演じられることが、大河の醍醐味だと思います。竹中直人さんに「大河ドラマの出演が決まりました」とお伝えしたら、「ずっと長い間、一つの役を演じるってなかなかないことだから、楽しみなよ」と言われて、嬉しかったです。どんな撮影も大変だし、これが苦労だと呼べるものは特にないです。苦労を苦労って思っていないのかもしれません。でも、スタッフさんの人数が多いので、名前を覚えるのが大変です(笑)。

初めて出演した『平清盛』と比べて気持ちの変化はありますか?

あります。大河の現場では、一つひとつの石を積み上げるように、大勢のスタッフ、キャストが一緒になってものづくりをしているんです。スタジオの扉を開けると、建物、小道具、セットのすべてから、そのドラマの時代の空気を感じて、(『平清盛』の時は)圧倒されていましたが、今回はその雰囲気に気遅れしない心構えで現場入りすることができました。以前、経験したことが今回、活かされているのかなと思います。 

『西郷どん』の台本を読んだ印象はいかがでしたか?

本当に面白くて、好きな本に出合えた感覚です。林真理子先生の原作も読ませていただくと、これがまたすごく面白い。「主君に仕えるとはこういうことか!」と目からうろこが落ちました。書かれていない空白の部分から、いろいろなことを想起させられ、匂いまで伝わってくるんです。

『平清盛』では清盛の弟の平基盛役を演じましたね。今回は隆盛の弟・吉二郎役ということですが再び主人公の弟を演じることについていかがですか。

次は妹役ですかね(笑)。主人公の弟役だからという特別な気負いはなく、演じる喜びは、役を通して体現していこうと思っています。

吉二郎をどんな人物だと捉えましたか?

まず、プロデューサーから「優しい人でいてください」と言われました。お兄ちゃんに代わって西郷家を支えるので、「とにかく優しい人で」と。僕自身、プライベートが鬼みたいな人間なんで……というのは冗談ですが(笑)、優しい人物を演じられるのは良かったなあと思いました。

家を空けることが多い兄を支えるのは、どんな気持ちだったと想像しますか?

支えているというよりも、大好きなお兄ちゃんから「頼んだぞ」と任されたことをやっているという感じだったのではないでしょうか。この時代、武家に生まれて腰に刀を携えている以上、次男でも常に覚悟を持っていなければならなかったんじゃないかなと想像しました。なにせ“兄さぁ”は出世頭。江戸に行き、島津斉彬公の腰刀としての活躍は、「天皇陛下とご飯を食べた」など、吉二郎としては「エーッ!」と思うようなものばかりですから。

歴史について調べたりしましたか?

もちろんたくさん調べましたが、史実にない部分は想像で補ったり、撮影現場でみんなと「あーでもない、こーでもない」と言いながらつくっています。例えば、『ハムレット』のストーリーを知っているのに舞台を観に行く人がいるように、大河ドラマも、歴史を知っているうえで観ている方たちもたくさんいると思うんです。そういった方たちに、どう面白く観ていただけるかは、作る側の大勢の人の手にかかっています。僕の印象ですが、台本もすごく面白かったですが、オンエアはめちゃくちゃ面白いです! だから、僕もこれからの展開を楽しんでいるひとりなんです。

オンエアを拝見していると大勢の出演者、スタッフと作り上げているエネルギーが、画面から伝わってきます。

そうですね! とにかく現場に入って、より良く本番に臨もうという気持ちを全員が共有していて、全員が鈴木亮平さんという神輿をかつぎながら突っ走るという気持ちでいるんですが、伝わるものがありますよね。まるで祭りみたいですね。主人公の寄りの画面にも、周囲の役者を映す形でお芝居を切り取っているので、そこも楽しんで欲しいと思います。

西郷家団欒のシーンはドラマの緩急の「緩」
鈴木亮平はプライベートでも「本当の兄・家族のよう」

鈴木亮平さんや他の共演者の方々とは撮影の合間にどんなコミュニケーションをとっていますか?

時々お酒を飲みに行ったりもします。撮影の合間には、亮平さんと「桜庭ななみさんの前髪は上がっていた方がいい」とか(笑)、世界遺産や映画のこととかいろいろ話をしています。今は本当の兄のようで、家族みたいに感じています。今、こうして取材を受けている時間も、「お兄ちゃん、ケガなく息災でいてくだされば」と思ってしまいます。

「家族です」とおっしゃるその雰囲気が、西郷家の食事のシーンなどに出ていますね。

あの家はみんな食いしん坊なんです。柱もかじっていたいほど(笑)。食べることは生きること。この時代の生命力の強さみたいなものが伝わります。家族団らんの食事シーンでは、西郷家のセットも観て欲しいです。電気のない時代を表現した照明もいいし、囲炉裏からは目に見えない熱が伝わってくるようで、声のトーンやお芝居にも影響を与えてくれるんです。これから波乱の西郷家のドラマの中で、家族団欒のシーンはドラマの緩急の「緩」の一つです。

セットの中で、「ここは気づかないだろう」というような面白いところを教えて下さい。

門をくぐって、左手に西郷家、右手の大久保家があって、庭に西郷家の物干し竿があって、縁側の上のところに燕の巣があるんですよ。もちろん本物ではないのですが、燕もちゃんと動くんです! これには本当に驚きました。

それは、気づきませんでした! そういう映らないような細かいところもよくできているのが、大河ドラマのすごさですね。今回は薩摩言葉も注目点ですが難しいですか?

難しいです。方言指導の方に音源をもらって勉強しています。実は、撮影前に1週間、鹿児島に行ったんですが、たまたま鹿児島に帰ってしまったスケボー仲間に再会したんです。その知人の案内で酒蔵を訪れたとき、地元の方々が「今から薩摩弁でしゃべりましょう」って言って、「ここにちっちゃい『つ』が入って、発音しない『あ』があって、限りなく無音に近い『ん』があって」って、地元の方々に細かいニュアンスまで教えてもらいました(笑)。

ネイティブな鹿児島弁に触れることができたんですね。ロケで再び鹿児島を訪れたときはどんなことをしましたか?

亮平さんたちとラーメンを食べに行きました。後ろに亮平さんのビールのポスターが張ってあって、それを背にしながら(笑)。

鹿児島のラーメン。あまりイメージがないのですがお味はいかがでしたか?

鹿児島のラーメンは、あっさりしていてとってもおいしかったです。暖簾をみて「ここはおいしそう」と思った店にフラリと立ち寄って、4軒くらい回りました。皆さん親切で「楽しんでいってよ!」って心から言って下さり、『西郷どん』を応援してくれました。空の青さ、おいしい水も印象的でした。思いやりがいっぱいで、ほんっとに心地良かったです。あと、銭湯がないんですよね、どこ行っても温泉なんで。今すぐに行きたいくらい鹿児島が大好きになりました!

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