Interview

小早川俊輔&佐伯亮が新境地に挑む! 坂口安吾の名作『白痴』に立ち向かう今の心境とは?

小早川俊輔&佐伯亮が新境地に挑む! 坂口安吾の名作『白痴』に立ち向かう今の心境とは?

無頼派で知られる文豪・坂口安吾。その代表作『白痴』が舞台化される。敗戦間近の荒んだ裏町で織りなされる、映画演出家の青年・伊沢と、その隣家に住む白痴の女・サヨの奇妙な共同生活──この日本の文学史に輝く傑作に挑むのは、ミュージカル『テニスの王子様』で一躍注目を集めた小早川俊輔と、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の好演も記憶に新しい佐伯亮ら、将来有望な若手俳優たちだ。2.5次元舞台で脚光を浴びた彼らにとって、こうした文学性の高い本格ストレートプレイは新境地。まだ見ぬ荒野へ踏み出す若き俳優に、その心境を聞いた。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 冨田望
スタイリスト / EIKI スタイリストアシスタント / 大山瑠梨花
ヘアメイク / 藤澤和紀
衣装協力 / NOT CONVENTIONAL、KINGLYMASK


『白痴』には、現実と理想の中でもがく青年の葛藤や歯がゆさが描かれている

今回、この企画とキャスティングを聞いて、とても刺激的で挑戦的だなと思いました。お2人はお話をもらったとき、率直にどうお感じになりましたか?

小早川俊輔 とても嬉しかったです。初主演ということもありますが、それ以上にこの作品をやれるという喜びが大きくて。今までこうした昭和の文豪の文学作品に出たことがなかったので、まずそこに興味があったのと、僕自身、ストレートプレイをやりたいという気持ちが強かったので、それをまさか坂口安吾の『白痴』で叶えられるなんてという嬉しさで、こうしてお話している今もすごく興奮しています(笑)。

佐伯亮 僕は(企画・製作の)る・ひまわりさんの舞台をよく拝見していて、いちる・ひまファンだったので、まず、る・ひまさんの舞台に出られるっていう嬉しさが大きかったです。その作品が坂口安吾の『白痴』と聞いたときは、難しそうだな、自分にできるかなって不安も強かったんですけど、台本を読んでみたら、すごく人間というものが深く描かれていて。この世界の中で生きられたらどんな感覚になるんだろうって、一気に楽しみになりました。

小早川俊輔

小早川 正直に言うと、それまで坂口安吾と言えば、『堕落論』と『白痴』を書かれた人というくらいの知識しかなくて。今回お話をいただいてから、改めて原作を読ませていただいたんです。そしたら、思っていた以上に読みやすかったです。戦前戦後の作家さんなので、そこまで大昔の方じゃないですし。描かれているのも、青年期に多くの人が感じるような、現実と理想に対する葛藤やもどかしさ、前に進めない歯がゆさなので、心情としては現代にも通じるところが沢山あったので、早く演じてみたいなという気持ちがますます強くなりました。

そういう意味では、とても身近に感じた?

小早川 根本の部分ではそうなんですけど、僕らと圧倒的に違うのは時代や環境の部分で。戦争という特殊な環境下で彼らは生きているので、そこはそのまま今の自分たちに簡単に置き換えることはできないと思うんですね。彼らの周りに漂う戦争という空気感をしっかり感じながら演じないといけないなって。そこが難しいところでもあります。

佐伯亮

人間にはいろんな生き方がある。その魅力を、演じることで伝えられたら

脚本・演出は、ほさかようさんです。

佐伯 ほさかさんの脚本を読んで最初に感じたのは、「人間っていろんな生き方があって何かいい」ということでした。例えば、主人公の伊沢(小早川俊輔)は自分の生き方が絶対に正しいんだと信じ込んでいて、自分の思う理想のレールからはずれている人たちは全員人間じゃないっていう強固な考えの持ち主。それもひとつの生き方としてあるんですけど、でも彼が考えるレールの外にいる人たちだって人間だし、その人たちはその人たちでそれぞれの人生をしっかり生きている。いろんな生き方があってどれも魅力的なんだっていうことが、僕たちが演じることで伝わればいいなって思いました。

小早川 インパクトがあったのは、気違い(木ノ本嶺浩)の存在ですね。原作でも登場はするんですけど、ほとんど描写がなくて。脚本ではそこにほさかさん流の視点を加えて、新たに再構築されている印象を受けました。それはほかのキャラクターも同様で、怠惰だったり暴力だったり肉欲だったり、人間のいろんなパーツが各キャラクターにそれぞれわかりやすく乗せられているようなイメージで。主人公の伊沢が、そうした周辺のキャラクターに影響を受けて、紆余曲折を経ながら前に進んでいくという感じなんです。だからすごく共感できる部分が多かったです。何もしないことが美徳だと言う人もいれば、他人を批判することでしか満たされない人もいる。分かるなあって思う人たちが沢山いて、面白かったです。

小早川さんはまさにその主人公・伊沢を演じます。伊沢と白痴の女・サヨ(熊手萌)との関係性を現時点でどんなふうに捉えていますか。

小早川 サヨは、伊沢の妄信的な部分が投影されたキャラクター。伊沢自身、彼女と出会うまでは、どうにもうまく回らない状況に雁字搦めになって、ここから抜け出したいという欲を常に抱えていたと思うんですね。その中で、サヨという女性に出会って。サヨは、今まで出会ったことのないような真新しい存在で。でも、きっと伊沢自身、心からサヨを認めて受け入れているわけではない気がするんです。すごくいろんな意味でねじれている。そこにおかしみを感じるし、伊沢の脆さをも感じます。

佐伯さんは、伊沢が暮らす寮の主人である仕立て屋を演じます。

佐伯 仕立て屋って、ほかの登場人物と比べて何か突拍子もないことをやるわけでもないし、語弊があるかもしれないですけど、決して濃いキャラクターというわけではないと思うんですよ。正直、まだ自分自身の中で仕立て屋のキャラクター像は掴みきれていなくて。今日皆さんで読み合わせと本に関するディスカッションをさせてもらったんですけど、そこで話してみて、まずはこの役を僕が演じる意味をしっかり見つけられたらなって感じました。本来ならもっと年配の方がやってもおかしくない役どころ。それをなぜ僕が演じるのか。その意味をもっと考えないといけないなって。まだ整理しきれていないところがあるのですが、これから稽古を通じてしっかり埋めていきたいなと思います。

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