Interview

androp 約3年ぶりとなるオリジナルアルバムは、“歌を届ける”1枚に。ツアーを目前に、完成した意欲作について4人の想いを訊く。

androp 約3年ぶりとなるオリジナルアルバムは、“歌を届ける”1枚に。ツアーを目前に、完成した意欲作について4人の想いを訊く。

andropが約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『cocoon』をリリースする。シングル「Joker」(映画「伊藤くんA to E」主題歌)、「SOS! feat. Creepy Nuts」、さらに儚く、愛おしい記憶を描いたバラード「Hanabi」、Aimerをフィーチャーした8分超の大作「Memento mori with Aimer」などを収録した本作。1音1音を丁寧に紡ぐように制作された本作には、初の野外ワンマン、アコースティック・ライブなど新たな挑戦が続いた2017年の経験がリアルに反映されている。歌を中心にした有機的なバンドサウンドからも、彼らのさらなる成長を感じてもらえるはずだ。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 荻原大志

選曲のときは“歌を届ける”ということを意識してましたね(内澤)

5thフルアルバム『cocoon』が完成しました。ソリッドで生々しいサウンド、大きく幅を広げた音楽性など、バンドとして新たな一歩を踏み出した作品だと思いますが、メンバーのみなさんの手応えはどうですか?

佐藤 2017年は僕らにとって、いろんな挑戦をした年だったんです。インディーズを経てまたメジャーとタッグを組み、他のアーティストとのコラボ曲(「SOS! feat. Creepy Nuts」)だったり、野外のワンマン(2017年10月に行われた日比谷野外大音楽堂のワンマンライブ)だったり、最小限の人数でライブハウスツアーをまわったり、ビルボード公演だったり(12月に行われたビルボード大阪、ビルボード東京でのアコースティックライブ)。楽曲は「ひとつひとつ、良いものにしよう」という気持ちで作っていたんですが、アルバムが完成したとき「2017年の経験がすべて活かされているな」と思って。

前田 音楽の幅も広がったし、それをしっかり受け入れるだけの基礎が出来たんだと思います。ギターやドラムが入ってない曲もあるんですが、メンタル的にもフィジカル的にも「この形でいい」と思えるようになったというか。特にビルボードのライブは大きかったですね。技術的にもぜんぜん違うものを求められたし、メンバーとサポートの鍵盤の方でいろんなジャンルのアレンジに挑戦することで、自分たちに足りないところも見えてきて。個人的にはユーフォニアムという楽器とコントラバスをandropとして演奏するようになったんですが、それは今回のアルバムにも活かされているので。

内澤 前田くんがユーフォニウムを演奏できることを前提にして作ったのが「Ao」なんですよ。「Kitakaze san」「Tokei」ではコントラバスを弾いてもらっていて。

伊藤 メンバーそれぞれが好きな音楽、やりたいことがいままで以上に出ていると思いますね。以前は内澤くんが作る楽曲やデモ音源のなかに自分を置いて、その世界をがんばって表現するという感じだったんですが、経験を重ねて、いろんな音楽を吸収することで、自分たちがやりたいことを発揮できる環境が出来て。今回のアルバムにはいろんなジャンルが入ってますけど、それは4人から出て来たものなんですよね。すごくバンドらしい作り方だったし、メンバーが好きなものがいろんな形で収められていると思います。

お互いの音楽性を認識し合って、それを楽曲につなげていったと。

伊藤 そうですね。4人で一緒にライブを観たり、動画を見ながら「これいいよね」みたいな話をすることも増えたので。

アルバムに入れる曲とか、今後の活動方針を一晩中ずっと話して(佐藤)

アレンジの幅が広がれば、当然、楽曲のバリエーションも増えますよね。

佐藤 1年間ずっとデモを作り続けていたんですけど、アルバムの制作に入るときには40〜50曲くらいあったんですよ。そこからメンバーやスタッフと話し合って、曲を絞って。

内澤 選曲のときは“歌を届ける”ということを意識してましたね。

佐藤 あとはホールツアーが決まっていたので、ホールで鳴らしているところがイメージできる曲ですね。アルバムを作り始めるちょっと前に、4人で泊まりがけで出掛けて話をしたんですよ。アルバムに入れる曲とか、今後の活動方針を一晩中ずっと話して。

前田 まとめて話せる時間を強制的に作ったんです。実際、そこでいろいろ話したことで、アルバムのイメージもほぼ固まったので。

佐藤 ふだんはLINEでやり取りすることが多いんですけど、文字にしちゃうと感情がわからなかったりするじゃないですか。どれくらいの熱で言ってるのか、直に話せばすぐわかりますからね。

内澤 それぞれが大事にしていること、こだわっているところもあるし、それはちゃんと伝え合ったほうがいいので。

この曲をいい雰囲気でレコーディングできたのは、いままでの練習だったり、音楽と向き合ってきたからだろうなって(伊藤)

収録曲についても聞かせてください。まずは「Hanabi」。すごくストレートなバラードですが、まさに“歌”を前面に押し出した曲だし、andropにとっては新機軸ですよね。

内澤 ここまで音を削ぎ落としたことはなかったですからね。音数が少ないとダイナミズムを出すのが難しいんですけど、2017年の活動を通して、そういう表現も出来るようになって。

前田 ホールで演奏することを特に強くイメージしていた曲なんですよ。メンバーと鍵盤の方の5人でスタジオに入って、“せーの”で録ったんですけど、演奏、呼吸の合わせ方を含めて、すごくいいテイクになって。

佐藤 “歌をしっかり聴かせよう”みたいな話はしていないんですけど、自然とその方向に向かったんですよね。以前だったら、こういう感じのアレンジにならなかったかもしれないです。“俺が俺が”じゃないけど、目立つフレーズを入れようとしたかもなって。

伊藤 すごくシンプルな曲なんですけど、プレイバックしたときに「いいね」って素直に思えたんですよね。こういうアレンジの曲は演奏が難しいし、間の取り方、休符の使い方もすごくシビアなんですよ。この曲をいい雰囲気でレコーディングできたのは、いままでの練習だったり、音楽と向き合ってきたからだろうなって。内澤くんの声のトーンともすごく合ってると思います。“サビだから高い音にする”みたいなことではなくて、自然に物語を紡ぎ出していて。仮歌の段階から物語を思い描くことができたし、想像力をかき立てられました。

内澤 確かにサビでも声を張ってないですからね。張ったほうが抑揚も付けやすいし、勢いも出やすいんだけど、「Hanabi」は情景が浮かぶような歌い方をしたかったので。花火を見たときのような淡い記憶は誰にでもあると思うし、それが自分の糧になってることもあるんじゃないかなと。それを共有したいというより、聴いてくれる人の記憶に訴えかけたかったんです。

デビュー当初はボーカルも楽器の一つとして扱っていた印象もあったから、かなり大きな変化ですよね。

内澤 そうですね。その後、楽曲の制作とライブを重ねるなかで「感情を伝えたい」という気持ちが強くなって。「Hanabi」もその延長線上にあると思います。

「Arigato」「Sorry」など真っ直ぐなタイトルの曲も多いですよね、今回は。

佐藤 確かに。

内澤 「Sorry」はこれまでの人生における数々の“ごめんなさい”を込めた曲なんです。「Arigato」はアルバムの制作中に声が出なくなった経験がもとになっていて。声を出せないと、お店のレジで“ありがとう”と伝えることもできないし、すごくもどかしくて。そのときに“当たり前”の大切さを感じたんです。歌って表現できる立場にいるんだから、しっかり“ありがとう”を伝えたいなと。どちらの歌詞も直球ですね。

「Memento mori with Aimer」もアルバムを象徴する楽曲の一つだと思います。スピーカーやヘッドホンのLとRで異なる二つの曲が同時に進行する楽曲ですが、これは本当にすごいですね。どちらも曲として成立していて、同時に聴くと内澤さんとAimerさんが掛け合いしているっていう。

内澤 説明が難しいんですよ、この曲(笑)。実際に聴いたらわかってもらえると思うんだけど。

佐藤 スピーカーで聴いてもおもしろいですよ。位置によって聴こえ方がぜんぜん違って。

前田 車のなかで聴くのもいいですね。運転席で聴くとR(右)が強めだからAimerさんの声がよく聴こえて、助手席の人はLの内澤くんの声が強めになって。

内澤 この曲のアイデアは8年くらい前に思いついたんです。左右から違う曲が聴こえてきて、合わせると一つになるっていう。「こういう感じになるのかな」と頭でイメージしていたんですけど、実際に出来てみると聴いたことがないような音像で。ビックリしました。

Aimerさんとの出会いも、この曲が実現した大きな理由ですよね。

内澤 そうですね。以前、Aimerさんに「twoface」「カタオモイ」という曲を提供させてもらったんですけど、キーチェックのときに「ラララ〜」で歌ってる段階ですごい表現力を感じて、衝撃を受けたんです。歌詞が入るとさらに説得力を増して、本当にすごいボーカリストだなと。この曲を制作することになったとき「もう一人のボーカリストはAimerさんしかいない」と思って、年末のCOWNT DOWN JAPANのときに直接お願いして。その場で承諾してもらえたのも嬉しかったですね。

“大切な楽曲が包まれている”ということですね(内澤)

「cocoon」というタイトルについても聞かせてください。この言葉には“大切なものを守る”というイメージもありますね。

内澤 “大切な楽曲が包まれている”ということですね。それがパッと開いて、聴き手に向かって飛び立っていくイメージがあったので。

いろいろなことを体験するなかで「カッコいい音を出している人は、人間性も素晴らしい」ということもわかってきて(前田)

音楽を続けるうえで、いちばん大切にしていることも変化していますか?

内澤 芯は変わってないかな。聴いてくれる人の心が動くもの、ワクワクしてもらえるもの、いい意味で裏切るようなものを作っていきたいので。

前田 経験を重ねて、成長するなかで気付けることもあると思います。音楽を始めた頃は何もわかってなかったし、「まずは上手くならないと」とガムシャラにがんばって。その後、いろいろなことを体験するなかで「カッコいい音を出している人は、人間性も素晴らしい」ということもわかってきて。「自分たちもそうなりたい」と思うことで、音も変わってきますからね。

伊藤 音楽と向き合って、人として成長することで、初めて説得力のある音を出せるというか。

佐藤 内澤くんも「音楽は人」って言ってますからね。

内澤 経験や考え方が音に出ますからね、絶対。やっぱり、薄っぺらい音は出したくないじゃないですか。音を鳴らした瞬間に納得してもらえる人になりたいし、心に響く歌を歌いたいので。そのためにはもっともっと人間を磨かないと。

すごくいいアルバムになりましたけど、そのぶん、ハードルが上がったので(内澤)

2017年の活動を経て、アルバム『cocoon』を作り上げたことによって、次の展開も見えてきたのでは?

内澤 まだ出来たばかりだから俯瞰はできてないんですけど、やりたいことはたくさんあるし、「この先はこうなっていきたい」というイメージもありますからね。いまは「果たして『cocoon』を超えられるアルバムを作れるんだろうか?」と思ってるんです、じつは。すごくいいアルバムになりましたけど、そのぶん、ハードルが上がったので。

ホールツアーのなかで得るものもあるだろうし、それがヒントになるかも。

内澤 そうですね。ホールツアーを見越して制作したアルバムだから、ライブをやることで初めて完成するというか。

前田 ライブのなかで変化する部分もあると思うので、ぜひ見届けに来てほしいですね。

内澤 きっといいライブになると思います。

andropさん画像ギャラリー

その他のandropの作品はこちらへ

ライブ情報

「one-man live tour 2018 “cocoon”」

4月28日(土) 愛知 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
5月3日(木・祝) 宮城 仙台電力ホール
5月12日(土) 福岡 福岡国際会議場
5月26日(土) 大阪 NHK大阪ホール
6月3日(日) 神奈川 パシフィコ横浜国立大ホール

androp

2009年12月に1stアルバム『anew』でデビュー。
数々の映画やドラマ主題歌、CMソングを手掛けるなど楽曲の注目度は高く、ミュージック・ビデオも国内外11のアワードで受賞するなど、その映像世界やアートワークでも世界的な評価を得ている。また、映像・音響・照明が三位一体となったスペクタクルなステージ・パフォーマンスも大きな注目を集めている。
内澤は楽曲提供も多く、柴咲コウ、Aimer、miwa、上白石萌音などへの数々の作品が高い評価を得ている。
3月7日にフルアルバム『cocoon』をリリース。4月28日名古屋公演を皮切りとした全国5都市開催のホールツアー、one-man tour 2018 “cocoon” 開催も決定している。

オフィシャルサイトhttp://www.androp.jp