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『ワンダと巨像』クリア後も楽しめるやり込み要素とは?PS4版の新機能も

『ワンダと巨像』クリア後も楽しめるやり込み要素とは?PS4版の新機能も

PlayStation®4でのリメイクによってビジュアルがさらに美しくなり、作品世界の儚げな魅力をより鮮やかに描き出すようになった『ワンダと巨像』。想像力を強く刺激する幻想的な世界の中、本編を進めるごとにプレイヤーは深まる謎に酔いしれる。一転、クリア後にプレイできるタイムアタックではアクション性を存分に堪能。1本の作品で異なった楽しみかたができる二面性も本作の魅力だ。

本稿では、その二面性が生み出す静と動の面白さを追及していく。PlayStation®4版で追加された新機能、本作の美しい世界を自由に切り取ることができるフォトモードの魅力にも注目だ。

文 / 村田征二朗(SPB15)

語らないことで広がる世界 

PlayStation®2での発売から約13年の時を経てリメイク版が発売された『ワンダと巨像』。本作がこれだけ長くプレイヤーに愛され続けているのは、巨像との戦いが持つ独特のアクション性はもちろん、やはりその幻想的な世界が唯一無二の魅力を持っているからでしょう。

ワンダという青年がひとりの少女を救うために禁断の地を訪れ、ドルミンという謎の存在の指示に従って巨像を倒していく。一見シンプルなストーリーながら、プレイを進めれば進めるほど多くの謎が現れる作りになっており、作中に登場するさまざまな要素がプレイヤーの好奇心を強く刺激してくれます。本作がほかの作品と一線を画しているのは、謎の多くはその詳細がはっきりと明かされることはなく、作品世界の大部分をプレイヤーの想像に委ねているということです。

▲巨像たちの存在理由はゲーム終盤に判明しますが、誰がいつ作ったのか(そもそも人造物なのか)、といった謎は残されており、プレイヤーたちのあいだで考察が盛んに行われています

ワンダと彼が救おうとしている少女の関係や、ドルミンが何者なのかといった、まずプレイヤーの頭に浮かぶであろう疑問には触れられず、むしろ巨像を倒すたびに数を増す謎の黒い影や、同じように巨像を倒すごとに増えていく白いハトなど、さらなる疑問を抱かせる要素が登場してくるのです。黒と白という色の対比、そして影はワンダを取り囲むように立ち、ハトは少女の周りに集まっているなど、このふたつを見比べるだけでも意味ありげな要素に満ちています。

▲黒い影は作中で“死者”と呼ばれています。ならば影の対極に位置していそうな白いハトは“死者の逆=蘇る魂”を意味しているのでは、といった深読みもできます

具体的な説明がない状態で謎が散りばめられているからこそ、逆にプレイヤーはそれぞれが意味することや関係性が気になり、『ワンダと巨像』の世界に深くはまっていくのです。ワンダと少女の関係については、“ワンダがどんな代償を払ってでも少女を救おうとしている”ということぐらいしかわからず、少女については作中で名前が呼ばれることすらありません。

▲彼女が何者で、ワンダとはどんな関係だったのか。ある意味で巨像以上に謎の多い存在です

そこまで情報が少ないと感情移入をするのも難しい、と思いきや、ゲーム最終局面で少女を想うワンダの心が垣間見えるシーンは、ふたりの関係がわからずともかなり胸に響くものがあります。少女を救うという目的のためだけに禁断の地に足を踏み入れ、危険を顧みずに巨像に立ち向かうワンダ。その姿に見えるのは間違いなく少女への愛、と筆者は感じましたが、ワンダの行動に何を見出すのか、それもプレイヤーごとの自由。はっきりとした答えが存在しないのがもどかしくもあり、本作の魅力でもあるのです。

▲作中の描写を考えると、少女への愛がワンダの行動原理だと考えるのが自然そうですが、いけにえを捧げるという慣習そのものに立ち向かおうとしている、と考えることもできます

細かな設定までもすべて開示し、情報量の多さで作品世界の広さや大きさを感じさせる作品もありますが、本作は逆に情報量を絞ることで、作品世界の描かれていない部分をプレイヤーに想像させてくれます。情報が断片的、おぼろげであるからこそ、そこから自由な発想や考察が生まれ、プレイヤー自身のなかに自分が解釈した『ワンダと巨像』の世界が広がるのです。

巨像以外に余計な敵を配置しないという、ある種の寂しさを感じさせるゲームの作りと完璧にマッチした世界の描きかたがあるからこそ、本作は10年以上の時を経てなお、魅力的な作品として映るのでしょう。

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