Interview

山崎育三郎が意気込む。ミュージカル『モーツァルト!』を2018年の代表作にしたい理由。そして、ミュージカルの持つ魔力について語る

山崎育三郎が意気込む。ミュージカル『モーツァルト!』を2018年の代表作にしたい理由。そして、ミュージカルの持つ魔力について語る

鹿賀丈史、市村正親、山口祐一郎、井上芳雄……言わずもがな、日本のミュージカル史を牽引してきた役者たち。その中でも、山崎育三郎の名前は、10年代のミュージカルシーンにおいて燦然と輝いていることに異論はないはずだ。
そんな彼をスターに押し上げたともいえるミュージカル『モーツァルト!』が再び帰ってくる。脚本・歌詞にミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲にシルヴェスター・リーヴァイ、演出・訳詞に小池修一郎という最強の布陣を携えて。山崎は2010年の再演からヴォルフガング・モーツァルト役を務めているが、今作では演出も変わり、歌も新たに加わり、古川雄大とのダブルキャストで挑む。エンタメステーションでは、ダブルキャストの2人にそれぞれインタビューを敢行。山崎育三郎が語る言葉から、彼の熱い“役者魂”“歌手魂”を感じて欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


この作品で描かれるモーツァルトは、とても人間味があって、泥くさいところが魅力

ミュージカルファンが待ちわびたミュージカル『モーツァルト!』が2014年ぶり、再び帰ってきます!

ただいま(笑)。嬉しいですね! 舞台は一回きりだから、僕はつねに再演があるとは思わず本番に挑むんです。でも、この作品はできるかぎり長く続けることをチャレンジにしたいと思っているので、決まったときは感激しました。

製作発表会も参加させていただいたのですが、そのときに演出の小池修一郎さんは、ビデオメッセージで今回は「演出を変える」とおっしゃっていましたね。そこもファンならず、私も楽しみです。

小池先生は「ピアノをモチーフにしたステージにしたい」とおっしゃっていました。セットが変わるだけで、お芝居も、舞台からの景色も変わり、舞台全体が変わるから、僕自身も楽しみです。

2014年のときのセットも美しかったですね。

品があって、華やかで、ドラマチックなステージでしたね。

それが変わるとなるとまた楽しみが増えます。ちなみに、山崎さんが持っていらっしゃるモーツァルトのイメージはどんなものでしょう。

ヴォルフガング・モーツァルトは誰でも知っている作曲家です。35歳という若さで亡くなりながら、全世界の誰もが知る人物。でも、その生涯は謎めいている。解釈はたくさんあるのですが、この作品で描かれるモーツァルトは、とても人間味があって、泥くさいところが魅力ですね。他者に対して、音楽に対して、ピュアに向き合っている人で、そこが愛すべきところです。彼は、才能を持ったがゆえに己に苦しむけど、それでも自分の信念を貫き通す。そこにロマンがあります。最終的に家族を失い、奥さんも失う。孤独ではありますが、彼には音楽がある。そして音楽をつくる運命がある。そういう意味で、自分を貫き通した人生で幸せだったと思います。彼の人生を見つめながらお客様も自分の人生を見つめて入り込んでいける作品です。

ミュージカルといえば歌がキーになりますが、作曲家シルヴェスター・リーヴァイさんの曲の魅力はどこにあると思いますか。

一度メロディを聴けば耳に残る。そして劇場から帰るときには思わず口ずさめる。そんな魅力がありますね。ミュージカルは作品の雰囲気に合わせて曲を作るので、作曲家の好みが出ますが、リーヴァイさんの場合は、登場人物に合わせて音楽のジャンルを変えられる柔軟性があります。ロックやポップス、クラシカルからジャズまで、ひとつの作品の中でいろんな音楽が楽しめる。モーツァルトは様々なオペラを作ってきましたが、オペラが繰り広げられる敷居の高いミュージカルではなくて、様々な好みの音楽ジャンルが散りばめられているのでどなたでも楽しんでいただけます。

小池修一郎さんは役者の魅力を最大限に引き出す人。誰よりも未来を見抜いて予見する人

それを活かされる演出の小池修一郎さんの魅力はどのようなところになるでしょう。

役者の魅力を最大限に引き出す人ですね。それから、誰よりも未来を見抜いて予見する人です。今はこうだけど、この子は将来こんなスターになるだろう、と。僕自身もこの作品に選ばれたときは、23歳ぐらいで未熟でしたし、大丈夫かなと思っていたのですが、小池先生は大丈夫と確信していらっしゃったんでしょうね。僕の未来はこうなると小池先生が見えた姿を僕も想像できたから、小池先生の背中を信じてがむしゃらについてくることができました。雄大もそのひとりですよ。必ず、その後みなさん大きなチャンスをいただける人になるなんて、毎回驚きますね。

やはり先見の明がおありなんですね。それを小池マジックと個人的に言いたいのですが、例えば、演出で厳しいところや優しいところも小池マジックですか?

ひと言では言えない魅力があります。とにかく、とても繊細で美しいシーンを作るために労力を厭わない方ですね。ロウソクの火を消すシーンだけで30分かかったり、例えば、ここにある(といって目の前のペットボトルを掴んでクルリと回転させる)水の入ったペットボトルの角度にこだわりがあられる。センチ単位で美しいものを追求されるので、時には厳しいかもしれませんが、客席で見るとそれはやはり美しく見えるので、頭が上がらないですね(笑)。

雄大はブレない。己を貫き通すタイプ

ダブルキャストの古川さんの印象はいかがですか。

あんまり多くを語るタイプではないですし、時々ボソボソと喋るから「元気か!」と背中を叩いて気合いを入れるんですが(笑)……心に秘めているパワー、魂と言えばいいんでしょうか、とてもパワフルなんですよ。それが舞台に出たときに爆発する、ギャップが魅力ですね。

実際に演技されている古川さんをご覧になっていかがですか。

ブレないですね。己を貫き通すタイプだと思います。普段はマイペースですけど、自分の表現ができる俳優です。とても大切なことですね。

ダブルキャストになると演じ分けが大変だったりするのでしょうか。

特にこの舞台は、とにかく自分のすべてを出し切らないと演じられないから、演技は一緒にならないんです。その人の稽古量や演技の質が役の色になる。プライベートも違うように、真剣に演じれば自ずとカラーが違ってくるんです。だから相談することもなく自分の色を出し合いたいですね。雄大には言うことはないんですよ。23、24歳の未熟な自分がやり切ったので心配してないです。いつもどおり雄大らしく、自分の中から湧き上がってくるものを信じて演じれば大丈夫だと思っています。

人とのコミュニケーションの中でしか芝居は生まれない

たしかに、古川さんにもお話を伺いましたが、確固たる演技の核になるものを持っていらっしゃる印象を受けました。

僕にとっての演技の核は、“会話”ですね。まず人のセリフを聞く。人とのコミュニケーションの中でしか芝居は生まれないので、自分だけではどうにもならない。相手とのやりとりが一番大事だという想いでミュージカルは出来上がるんです。今回は、奥さんのコンスタンツェは、トリプルキャストですから、芝居を投げかけてくる間も違えば、タイミングも違う。デュエットもそうですし、その瞬間に相手が差し出した言葉や歌をキャッチして、どんな気持ちが生まれるか、どうやって演じるかを瞬時に判断することを大切にしています。

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