Interview

古川雄大とミュージカル『モーツァルト!』との出会い。夢が現実となり芽生えた、彼の新たな決意。そして、山崎育三郎についても語る

古川雄大とミュージカル『モーツァルト!』との出会い。夢が現実となり芽生えた、彼の新たな決意。そして、山崎育三郎についても語る

記憶に残るミュージカルといえば、あなたは何と答えるだろう。おそらくその数は無限だ。その理由もまた様々にあるだろう。ひとつのミュージカルにおいてもキャストの組み合わせ次第で、見え方はガラリと変わってしまう。そして、このミュージカル『モーツァルト!』でも、ダブルキャスト、トリプルキャストというパズルのような組み合わせが存在する。けれど、あなたの人生の記憶を更新できる、凄まじい舞台だ、ということは断言できる。
しかも、ミュージカル『モーツァルト!』は、井上芳雄、中川晃教、山崎育三郎といった歴代のミュージカルスターがモーツァルト役に挑んできた、いわば若手の登竜門ともいえる作品。今作では、今話題の古川雄大が初出演を果たす。
エンタメステーションではダブルキャストの2人にインタビューを敢行。今回、モーツァルト役に抜擢された古川雄大がこの役に何を想い、どう演じたいのか。これからのミュージカル界を担っていくであろう彼の希望に満ちた言葉を聞いて欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


モーツァルトは世間から少し浮いた人。天真爛漫ないつまでも子供の心を持った大人

今回このミュージカル『モーツァルト!』で、初めての帝国劇場、そして天才作曲家のヴォルフガング・モーツァルトを演じます。

役が決まっても夢の中のような出来事で……。現実になっても実感がなかったのですが、徐々にびっくりする気持ちが強くなって、スチール撮影をしながら、モーツァルトをやるんだとハッと目覚めたような気持ちになって緊張しました。2014年の『モーツァルト!』を拝見させていただいたときに、ハードな役だとわかっていたので、やってやるぞと気合いを入れて、衣裳の襟を正しましたね。

2014年にご覧になったイメージはいかがでしたか。

感動的な舞台でした。まず、ヴォルフガング・モーツァルトは大変な役柄ですね。ずっと歌って踊りながらいろいろな表情を見せる。今回は、お父さんのレオポルトを市村正親さん、姉のナンネールは和音美桜さん、コロレド大司教は山口祐一郎さんになりますが、登場人物はいつもとてもパワフルで存在感があるキャラクターです。その中で、モーツァルトがいろんな人間関係を築いて、葛藤していく様子が魅力的だなと思いました。

脚本のミヒャエル・クンツェさんが作られたモーツァルト像はどう感じられましたか。

世間から少し浮いている人ですね(笑)。才能があって、実力的には優れているけれど、性格的にはちょっと変わった人に思われてしまっている。言い換えれば、やんちゃで天真爛漫ないつまでも子供の心を持った大人です。

モーツァルトを演じるうえで気をつけようと思っていることはありますか。

自分の中にない部分、激情的なところも引き出さないといけないのですが、やはりそのとき感じる舞台の雰囲気、稽古を経たリアルな感情で演じてみたいと思っています。今までに、あまり僕が演じたことのない手法なので、まさに挑戦の連続ですね。

ご自身が考えるモーツァルトの信念になっているものはありますか。

ブレない人だと思うんです。そこをどんどん掘り下げたいですね。天才と言われて葛藤があるけれども、想像でも史実でも、どうしてこんなに確固たるものを持っているんだろうと尊敬するんです、そこをつねに持っていれば演じていても怖くない。

自分が新しく一歩成長するための役柄。演じるうえで役者冥利につきる

演出の小池修一郎さんの印象を聞かせてください。

今回は演じる役がハードですから、役づくりの面でも厳しくご指導いただきたいです。以前、とある舞台でご一緒させていただいたときはもちろん厳しかったのですが、自分が新しく一歩成長するための役柄ですから、演じるうえで役者冥利につきます。稽古序盤から、今までにない自分をさらけ出したいと思います。

作曲のシルヴェスター・リーヴァイさんの印象を聞かせてください。

優しい方ですね。ただ、優しさの奥には厳しさを持っている方だと思います。歌う前は、褒めながら僕が気持ちよく歌える環境を整えてくれるんです。ただ、名作曲家なので、僕のいろいろな部分を見透かされていたのかもしれません。怖いから聞けないけど(笑)。

リーヴァイさんの目の前で歌を披露されてリーヴァイさんが感動されたと聞きました。最初に歌を披露されるときは緊張されたりしたのですか。

緊張しなかったつもりだったのですが、声がいつもより硬いなと思っていました。おそらく、緊張していたんですね。

ダブルキャストの山崎育三郎さんの印象をうかがわせてください。

とても優しい方で、周りをつねに見ている方です。共演して、袖ですれ違っても必ず話しかけてくれるお兄さん的な存在の人です。

山崎さんから見習いたいことはありますか。

激しい役ですから、ペース配分を知りたいですね。どこで歌のブレスをしたり、演技に力を入れたり抜いたりと、技術的な面を教えてもらいたいです。

山崎さんと演技や歌で違いを見せたいと思っている部分はありますか。

そこはダブルキャストの永遠の課題ですね。あえて山崎さんと違う方向にいかないで、その中で自分らしさにこだわりたいと思います。というのも、個性が違うから自然とそうなると思うんです。まずは、自分の心に根ざしたモーツァルトの色を作ることが大切なんじゃないかと思います。難しいですけれどやりがいがあります。

歌うことは実は一番苦手(苦笑)。だから高みに行ける

古川さんも山崎さんと同じように歌うことが天命だなと感じたのですが、古川さんにとって歌うこととは。

一番苦手なことなんです。

えっ!? 苦手なんですね(笑)。

だから頑張ることができるんです。ミュージカル『テニスの王子様』の不二周助役で初めてこの世界に入りました。僕自身の経歴は浅いですし、まだまだ課題がたくさんありますけど、それを乗り越えたいという心意気があるからやり続けられるんです。例えば、劇中に出てくる「僕こそ音楽」というナンバーは本当に手紙にあった言葉を歌詞にしたそうです。実際に発売されている『モーツァルトの手紙』という本を読んで、モーツァルトは、こんな厳しい言葉遣いをするのかと思えばギャグも披露する、カチカチの人間ではないので、言葉や史実からいろいろヒントを得て参考にしています。

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