LIVE SHUTTLE  vol. 251

Report

BRAHMAN 何色にも染まるが、何色にも染まらない、徹頭徹尾BRAHMANと言える日本武道館のステージを振り返る 。

BRAHMAN 何色にも染まるが、何色にも染まらない、徹頭徹尾BRAHMANと言える日本武道館のステージを振り返る 。

BRAHMAN  日本武道館公演「八面玲瓏」
2018年2月9日 日本武道館

会場に入り、目に飛び込んで来たのは360度オールラウンドの八角形ステージだった。これは約5年前の『超克』ファイナルの幕張メッセ(13年6月8日)で仕様されたものと同類のシステムだ。幕張ではステージ下に観客がいる形式だったが、すり鉢状にステージを見下ろす今回はあの時とはまた違う。ただし、この日もステージ下のアリーナはスタンディング形式であり、幕張メッセ同様に観る場所によって景色は異なってくる。僕は1階のステージほぼ正面から観る形となり、バンドと同じ目線で見守ることになった。

開演前BGMの祭囃子のような音色に耳を傾け、始まりを今か今かと待ち続ける。これまで何度とBRAHMANのライヴを観ているが、今日はいつもと雰囲気が違うように感じた。TOSHI-LOW(Vo)も思わず、ライヴ後半でその気持ちを露にしていたが、やはりここは人を特別な感情にさせる場所なのだろう。ゆえに、後にも先にも二度と観ることができないライヴになったのは言うまでもない。

1万2千人の観客が固唾を飲んで開演を待ち構える中、19時13分場内がいきなり暗転すると、ステージ側面には4面のLEDスクリーンされ、下から武道館の天井に向けてプロジェクション・マッピングを施し、まるでヨーロッパの美術館にある天井画のごとき荘厳とした美しさ。どよめく歓声の中、TOSHI-LOW、KOHKI(G)、MAKOTO(B)、RONZI(Dr)がアリーナ端からステージに上がるプロレス入場で姿を現すと、「THE ONLY WAY」でショウは始まった。硬質な音色を轟かせると、アリーナは早くもダイバーが続出する騒ぎっぷり。続いて最新アルバム『梵唄 -bonbai-』から「雷同」に繋ぎ、イントロからMAKOTOのベース・ラインが鋭く主張し、ハードコアの熱量を存分に叩き付けてくる。TOSHI-LOWも360度のステージを有効活用するように動き回った後、「上も下も、右も左も、前も後ろも、恨みもわだかまりも、過去も未来もねえ。あるのは、今この瞬間」と言い切り、「賽の河原」へと突入。すると、観客は大声で歌い上げ、さらに「BASIS」に進むと、演奏はエンジン全開でビートの加速度は増すばかりだった。

それから「SPECULATION」が始まると、ステージ上のライトが天井に照らされ、星空のような幻想的な光景を作り出すなど、武道館をフル活用する演出効果に何度も唸らされる。「其限」を経て、ここで再び新作から2曲続けて披露する。「怒濤の彼方」においては、東京スカパラダイスオーケストラから谷中敦(B.Sax)、GAMO(T.Sax)、北原雅彦(Tb)、NARGO(Tp)が黒のスーツ姿でビシッと決めて登場。八角形ステージに総勢8人が立つ様は壮観で、思わず心の中で「かっこいい!」と叫んでしまうほど。また、RONZIの地鳴りのごとき壮絶ドラムとホーンの爽快な音色が交差するミクスチャーっぷりも素晴しかった。加えて、独特のテンポ・チェンジで聴かせる「AFTER-SENSATION」もライヴで格段に映え、まっすぐ放たれる歌の力強さにも圧倒された。

「終夜」を挟み、中盤の白眉は「ナミノウタゲ」であった。この曲は震災以降、長男を失った石巻の漁師の話をもとに作られたものだ。KOHKIのブルージーなギターと相まって、心を丸裸にされるような名曲である。

「たった90秒のために札幌から来た!」とTOSHI-LOWが叫ぶと、背中にMOTORHEADの巨大パッチを付けたKO(SLANG)が参上。「守破離」で2人が熱い掛け合いを披露した後、もう一人の札幌出身者のILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)が姿を現し、「ラストダンス」が炸裂。ピンク色のライトがステージに注ぐ中、ILL-BOSSTINOのラップとTOSHI-LOWの歌声をリレー形式で紡ぎ、ラストに両者の声が激しく折り重なるシーンには感極まった。レベル・ミュージックの凄みを腹の底から味わうと、その余韻を引きずるように「不倶戴天」に雪崩れ込む展開にも身震いした。

その後も「ARRIVAL TIME」、「ANSWER FOR…」、「警醒」と畳み掛け、ドラム・セット背後に伸びた花道でTOSHI-LOWは歌い、無軌道に感情を解き放つステージングに耳目は釘付け。

「今日、(武道館は制約があるため)俺はできねえことだらけだ。でも自分ができないことは人に頼めばいい。その代わり、俺も引き受ければいいんだ。そうやって俺は頼むことを知った。それは逃げじゃねえ、挑戦だ。俺が歌えねえんなら、歌の上手い友達に歌ってもらえばいいんだよ」とTOSHI-LOWが熱く語ると、「今夜」へ。細美武士(the HIATUS/MONOEYES)をゲスト・コーラスに招くと、細美は観客に一緒に歌ってくれとばかりにマイクを仕向ける。またTOSHI-LOWと細美のハーモニーも抜群で、多くの観客が曲の世界観を堪能するように聴き入っていた。

ライヴも終盤戦に差し掛かった頃、TOSHI-LOWは素直な気持ちを吐露する。「武道館は凄いとこだけど、いままでツッパってきた人たちが一様に感謝の言葉を述べることが気に喰わん」と言った後、悪いけど一言言わせてくれと言って、「ご来場ありがとうございます!」と会場を沸かせた。自分たちが武道館でライヴをやれるのもビートルズを筆頭に、数多のバンドがこの場所でライヴを行い、歴史を守り続けた事実にも言及する。

その話にも通じるのだろう。阪神淡路大震災のときに、ミュージシャンが種を蒔いた。その種が東北で芽を出し、歌い続けることで大きな木にしたい。そう前置きすると、中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、山口洋(HEATWAVE)、うつみようこを呼び込み、「満月の夕」をプレイ。この曲は「バトンを繋ぐような気持ち」とTOSHI-LOWは取材時に話していたが、まさに一つのバトンが時を超えて渡った瞬間だった。音楽は人の心に寄り添い続け、時に鼓舞し、時に慰撫してくれるもの。この7人で奏でる「満月の夕」はひときわ感動的だった。

「鼎の問」ではステージ下のスクリーンに福島第一原発で働いていた作業員やその風景の写真が流れる。この曲を聴きながら、「満月の夕」をBRAHMANが引き継いだように、また次の世代が「鼎の問」を何かしらの形でカヴァーする日が来るのかもしれない。そんなことが頭を過ったのも、「満月の夕」の後にこの曲を聴いたからだろう。「FOR ONE’S LIFE」で観客を再び焚き付けると、ラスト曲は新作の冒頭曲「真善美」で締め括った。KOHKI、MAKOTO、RONZIによる長めのイントロを経て、「さあ 幕が開くとは 終わりが来ることだ 一度きりの意味を お前が問う番だ」の始まりの歌詞を歌い上げるTOSHI-LOW。それを聴いた瞬間、目頭と身体の両方に熱いものが流れ込み、自然と涙が溢れてきた。始まりと終わり、生きて死ぬこと、限りある命の灯火を全身全霊で聴き手に問いかけるパフォーマンスは、間違いなく今日のハイライトだった。最後はさきほど引用した歌詞を再び熱く叫び、「ゴン!」とマイクを下に落とした鈍い音が武道館に鳴り響き、会場は暗転。潔くも鮮やかな幕切れだった。ライヴ終了後、しばらく言葉が出てこなかった。

ゲストを多数迎え入れた『梵唄 -bonbai-』の空気をそのまま武道館で体現したショウは、従来の孤高・BRAHMANというイメージを見事に刷新していた。いや、孤高を貫き通した今があるからこそ、親友や仲間、先輩たちを同じステージに招いても、自分たちらしいライヴができるという確信があったのだろう。何色にも染まるが、何色にも染まらない、徹頭徹尾BRAHMANと言える内容に驚愕した。

繰り返しになるが、「お前の番だ!」と全身全霊で問いかけるパフォーマンスを眼前にして、“何かを託し、繋ぎ、渡すこと”の大切さを痛感した。誰しも終わりが来る。お前は何を遺せるのか。究極の命題を突きつけ、彼らはここからまた全国ツアーを始める。まだまだBRAHMANから目を離せないし、今後も追い続けたいと深く思った。それ以上に、今日の武道館公演は生涯忘れられないライヴになったことも付け加えておきたい。

文 / 荒金良介 撮影 / Tetsuya Yamakawa (Showcase)

BRAHMAN  日本武道館公演「八面玲瓏」
2018年2月9日 日本武道館

セットリスト
01. THE ONLY WAY
02. 雷同
03. 賽の河原
04. BASIS
05. SEE OFF
06. BEYOND THE MOUNTAIN
07. DEEP
08. SPECULATION
09. 其限
10. 怒涛の彼方
11. AFTER-SENSATION
12. 終夜
13. ナミノウタゲ
14. A WHITE DEEP MORNING
15. 守破離
16. ラストダンス
17. 不倶戴天
18. ARRIVAL TIME
19. ANSWER FOR…
20. 警醒
21. 今夜
22. 満月の夕
23. 鼎の問
24. FOR ONE’S LIFE
25. 真善美

そのほかのBRAHMANの作品はこちらへ

ライブ情報

Tour 2018 梵匿 -bonnoku-

詳細はオフィシャルサイトで
http://brahman-tc.com/live

BRAHMAN

1995年、東京にて結成。メンバーは、TOSHI-LOW(Vo)、KOHKI(G)、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドで、パンク / ハードコアに留まらず、ロックシーンの先頭を走り続ける。国内だけでなくアジアやヨーロッパでもライブを行う。2011年3月11日の東日本大震災以降よりライブ中にMCを行うようになり、震災の復興支援を目的とした活動を積極的に展開。2015年7月4日に箭内道彦が監督を務めるドキュメンタリー映画『ブラフマン』が公開。8月12日に20th Anniversary Album『尽未来際』を発表した。2018年2月7日には、自身初となる単独日本武道館公演「八面玲瓏」を開催し、その2日後の2月9日に5年振りとなるニューアルバム『梵唄 -bonbai-』発表。3月3日から全国ツアー「梵匿 -bonnoku-」がスタート。

オフィシャルサイト
http://brahman-tc.com

vol.250
vol.251
vol.252