LIVE SHUTTLE  vol. 250

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浜崎貴司 対バン・イベント”GACHI”で魅せた奥田民生とのステージをレポートする。

浜崎貴司 対バン・イベント”GACHI”で魅せた奥田民生とのステージをレポートする。

~GACHI クラブクアトロ4連戦 ~其の三
浜崎貴司 vs. 奥田民生

2018年2月14日 渋谷クラブクアトロ

フライングキッズのボーカリスト浜崎貴司の人気対バン・イベント“GACHI”の最新シリーズ第3夜目『~GACHI クラブクアトロ4連戦 ~其の三』が渋谷クラブクアトロで行なわれた。バレンタイン・デーだというのに、女性客中心に超満員(笑)。19時半開演という余裕のある時間設定が功を奏して、会場は超いい雰囲気でイベントのスタートを待っている。今回のお相手は奥田民生。浜崎とは一緒に曲を作ったりする仲だ。よく一緒にお酒を呑んだりもしているらしい。と、なると、今日の対バンは、かなり期待できそうだ。

と、思っていたら、スタートからアクシデントが起こった。開演時間が来て浜崎が登場し、“前説”を始めたのだが、BGMがうるさくて何も聞こえない。浜崎はそれに気が付かないらしく、「みんな、声が小さい!」と煽るが、観客は何が何やらわからない。するとスタッフが現われて浜崎に事情を耳打ち。「なんか、(音響の)卓がバグってるんだって。一回、退散しま~す」と浜崎はケロっと言って、ステージ袖に帰ってしまったので、観客は取り残されて、ただ呆然。

3分後、浜崎が再登場して、さっきとまったく同じことを言うので、まず会場は最初の大笑い。

「今日の対バン相手は、奥田民生! 何事もなかったように拍手と歓声で迎えてくれ~!」。いよいよ奥田がステージに現われた。よく見ると、手の指がスタン・ハンセン(注:プロレスラー)の“テキサス・ロングホーン”の形になっている。つまり浜崎がブルーザー・ブロディという見立てで、会場にいたマニアックな男性ファンがそれを察して「ハンセ~ン!」と声援を贈る。果たしてどんな対バンになることやら(笑)。浜崎と奥田はステージに仲よく並んで座って、アコギをスタンバイしたのだった。

浜崎「奥田さんはクアトロは20年ぶりなんだって?」

奥田「ジェリーフィッシュ(注:その後、奥田とコラボするアンディ・スターマーが在籍したバンド)を観に来て以来だから、20年以上ぶりかもしれない」

浜崎「クアトロでライブやったことは?」

奥田「ユニコーンで、男だけ入れるライブやったよ」

女性客A「見たよ~!」

奥田「え~? 当時、男装して来たの? それか、今日が女装?」

女性客A「女だけ入れるライブもやったでしょ」

奥田「あ~、やった、やった」

浜崎「おくだ~たみお~!!」

観客全員「大爆笑!」

最初から小ネタのギャグ満載で盛り上がる。観客のレスポンスも最高だ。すかさず2人が、イベントテーマ曲の「GACHIのテーマ」を歌い出した。奥田が「♪ハ~マちゃん 調子はどうだい?」と歌えば、浜崎が「♪タ~ミちゃん」と返す。こんな感じで始まる対バンは滅多にない。さっきのアクシデントなどとっくに忘れて、オーディエンスは“GACHIの世界”に引き込まれていった。

「民生くん、モノマネいろいろできるじゃん」と浜崎から振られて、奥田は故・桑名正博(注:1972年に「スウィートホーム大阪」でデビューしたJ-ROCKボーカルの元祖の一人)の真似をして見せる。その後、バレンタイン・デーと恵方巻ネタで笑わせた後、次のデュエット曲のオリジナル・ラブ「接吻」に入る。最初に♪な~が~く♪と歌い始めた奥田が、途中で「あ、ちょっとモノマネ入ってる」と自分で突っ込むと、フロアから笑い声が上がる。浜崎も負けじとねちっこく歌う。懐かしいJ-POPをこの2人が熱演すると、改めて時代を越える名曲の魅力を思い知らされる思いだ。すると観客から「(田島)たかお~!」と声がかかったのだった。観客もノリノリだ。

「接吻」を思い入れたっぷりに歌い終わると、「はい、後はよろしく~!」と浜崎がさっさと去る。ステージを任された奥田が「なんか、人前、久しぶりで。ここんとこ、YouTubeばっかやってるんで」と話し出す。奥田はアナログレコーディング機材を使った宅録スタイルのDIYレコーディングプロジェクト“カンタンカンタビレ”を昨年秋にスタートその模様をYouTubeで公開し、完成した音源の配信を行なっている。そんなこともあってか、「できるかな?」とつぶやきながら、最初の曲「ミュージアム」の弾き語りに挑んだのだった。

奥田は昨年、9月に最新アルバム『サボテンミュージアム』をリリースし、ツアーは4月から始まる。このアルバムは奥田らしく、ライブで演奏されてさらに輝きが増す内容。本人も早く新曲を演奏したくてたまらないのだろう。この日の奥田ソロのセットリストは、全6曲中4曲が『サボテンミュージアム』からの曲だ。中でも「ミュージアム」は、非常に素早いギターのピッキングが特徴の曲。奥田が「できるかな?」とつぶやいたのは、そんなことを思っての言葉なのかもしれない。だが、その心配は無用だった。始まると、奥田のピッキングが冴える、冴える。専門的には“カーター・ファミリー・ピッキング”というテクニックで、初期のボブ・ディランが得意としていた。この日、奥田はくりくりヘアにサングラスを掛けていたので、初期のディランにそっくり。まさかディランにあやかって超絶テクニックを乗り切ろうとしたのではないだろうが、ディランも絶賛のクオリティの高いギターと歌でクアトロを圧倒。大きな拍手を浴びたのだった。

「俺のギター」ではロックンロールのリズムが爆発。アコギでここまでグルーブを出せるミュージシャンは、ざらにはいない。「手拍子!」と観客に“リズム参加”を強要して巻き込む。「エンジン」では低音弦をブンブン鳴らし、独特のリズムの「歩くサボテン」では、「リズムに自信のない人は、手拍子、いらないよ!」と言って笑いを呼んだ。

「ありがとう! 4月からのツアーもよろしく。あと、2曲」と「風は西から」と「さすらい」で畳み込む。オーディエンスも大合唱で、奥田の心意気に応えたのだった。同時に奥田のバンドでのツアーが楽しみになった。

ステージに戻ってきた浜崎が「おくだ~たみお~!」と改めて奥田をねぎらう。奥田はグラスを掲げ「よろしくお願いします」とステージを去っていった。

次は浜崎のソロの番だ。「フライングキッズのアルバム『みんなあれについて考えてる』が、今日出ました。フライングキッズは30周年でして、ユニコーンの30周年は去年でした。でもあの人たちの活動期間は・・・うちもそうだけど」と言って観客を笑わせる。

ここからクアトロの雰囲気がガラッと変わる。リズミックでユーモアな歌詞が多い奥田に対して、ファンク・ミュージックをルーツとする浜崎の歌はメッセージ性や哲学的な歌詞で勝負する。しゃべりの面白さと、シリアスな歌のギャップが魅力になっている。最初に歌った「ヒカリの春」は、デリケートなコードと歌詞を持つ曲で、オーディエンスはシーンと聴き入った。

「自分の昔の曲を聴くと、恥ずかしい。次は30代前半に作った曲で、とにかく恥ずかしい。自分に酔ってる(笑)。でも、酔っていられる若さがいとおしい。皆さんもそんなお年頃の酔った自分を思い出しながら、聴いてください」と言って歌った「境界線」が素晴らしかった。浜崎の好きなカーティス・メイフィールドを彷彿とさせる渋いバラードに、会場が酔いしれる。笑ったり、しみじみしたりを繰り返しながら、オーディエンスはどんどん心を開いていく。その意味で、奥田VS浜崎の組み合わせの良さが充分に伝わる対バンが進む。

「50才になると逆にヘラヘラしちゃって、もの悲しい。民生くんもそうだよね。サボテンが歩いていくって、凄い歌だよね(笑)」。

フライングキッズのニューアルバムから「♂+♀(ボーイ ミーツ ガール)」と、スマッシュ・ヒットの「風の吹き抜ける場所へ」を観客と一緒に歌って、会場をうっとりさせ、浜崎はソロパートを締めた。

ここからは再び浜崎&奥田のコーナーだ。

浜崎「今日はバレンタイン・デーだけど、おニャン子クラブの『バレンタイン・キッス』は歌いませんよ。そういえば国生さゆりさんて、事務所の先輩なんだって?」

奥田「そう。前に俺が事務所に一人でいたら、国生さんもいて、なぜだか手作り弁当を半分くれた。それ、食べちゃったから、一生、付いていかなきゃいけない」

浜崎「大変だね(笑)」

奥田「そういえばさっき楽屋に戻ったら、ライブが短いって言われた。イベントの時って、時間だけ教えてもらってその場で曲を決めながらやるんだけど、今日は6曲って言われたから6曲やったんだけど」

浜崎「じゃあ、ビートルズやります」

2人のアウンの呼吸が、本当に面白い。それとともに、2人の声のハーモニーがとても魅力的だ。「Baby’s In Black」でそのハーモニーをたっぷり堪能したのだった。

奥田「“カンタンカンタビレ”で最初にCharさんに書いた『トキオドライブ』っていう曲をやったんだけど、いろんな出身地のミュージシャンと各地のナマリでやろうと思ってて。1発目に浜ちゃん呼んで『トチギドライブ』を録った」

浜崎「メチャ、ナマってます」

奥田「それを配信前に今からやります」

始まった「トキオドライブ~トチギドライブ」は、浜崎の言う通り、「さっきの角左だんべよ」など栃木ナマリを連発。会場は笑いの渦となる。“県庁前”や“二荒山”など、アイテムも栃木仕様になっていて、浜崎のユーモアセンスが爆発する。

「幸せであるように」や、またまた2人のハーモニーが素晴らしい「ありがとう」など、対バンならではのスペシャル・ナンバーにオーディエンスは大喜び。ラストの「GACHIのテーマ」で会場は完全に一体になったのだった。

アンコールに現われた2人は、GACHIのTシャツ姿。奥田が「このTシャツ、いただきました」と言うと、浜崎が「2人で作った曲をやります」と受けて、「君と僕」が始まった。僕はこの曲が生まれてすぐのライブで聴いたことがある。ゆったりした造りの曲で、まったく違う2人の個性が融け合って一つになっていた。それ以来に聴く「君と僕」は、ずっと成熟していて心に沁みた。

浜崎が「盛大な拍手を!」と言って奥田を送り出し、『みんなあれについて考えてる』から「あいのいたみ」をガットギターの弾き語りで歌う。「大人になると本当に悲しいことって、他人に言えなくなる。そういう時に、歌って必要」と観客に語りかけて始まったその歌は、この日、集まった人たちのために歌われているようだった。♪愛の中に痛みがまじるのはなぜなんだろう?♪と問い掛ける歌詞が、オーディエンスに沁み込んでいく。それを心に刻みながら、僕はフラインズキッズの演奏でも聴いてみたくなった。いち早く新曲を届けたいと思う浜崎のピュアな気持ちが、僕にその思いを呼んだのだ。とても穏やかなエンディングだった。

と、思ったら、オーディエンスが帰らない。「あいのいたみ」の感動のまま、またアンコールを求める声が上がる。すると浜崎と奥田が、ニコニコしながら戻ってきた。始まったのは、沢田研二の「勝手にしやがれ」だった。理屈抜きでみんなが楽しむダブル・アンコールだ。さっきのエンディングもよかったが、この選曲もまた浜崎と奥田の“GACHI”らしい。オーディエンスの顔を見ると、みんな嬉しそうで、まるで“大人の宴会”だ。僕も安心してその中にまぎれ込み、ラストソングを思い切り楽しんだのだった。

文 / 平山雄一

~GACHI クラブクアトロ4連戦 ~其の三
浜崎貴司 vs. 奥田民生

2018年2月14日 渋谷クラブクアトロ

セットリスト
1 .GACHIのテーマ 浜崎&奥田
2 .接吻 浜崎&奥田
3 .ミュージアム 奥田民生 ソロ
4 .俺のギター 奥田民生 ソロ
5 .エンジン 奥田民生 ソロ
6 .歩くサボテン 奥田民生 ソロ
7 .風は西から 奥田民生 ソロ
8 .さすらい 奥田民生 ソロ
9 .ヒカリの春 浜崎貴司 ソロ
10 .MY SUMMERTIME BLUES 浜崎貴司 ソロ
11 .境界線 浜崎貴司 ソロ
12 .♂+♀ (ボーイミーツガール) 浜崎貴司 ソロ
13 .風の吹き抜ける場所へ 浜崎貴司 ソロ
14 .Baby’s In Black 浜崎&奥田
15 .トキオドライブ~トチギドライブ 浜崎&奥田
16 .幸せであるように 浜崎&奥田
17 .ありがとう 浜崎&奥田
18 .イージュー★ライダー 浜崎&奥田
19 .GACHIのテーマ 浜崎&奥田
EN 1 .君と僕 浜崎&奥田
EN 2 .あいのいたみ 浜崎貴司 ソロ
EN 3 .勝手にしやがれ 浜崎&奥田

浜崎貴司

1965年6月11日生まれ。栃木県宇都宮市出身。
1990年FLYING KIDSでデビュー。
シングル19枚、アルバム13枚を発売後、98年に解散、
現在ソロアーティストとしても活動中。
2007年FLYING KIDS再集結。結成30周年を迎える2018年、新メンバー加入により9人編成となり、6年半ぶりのニューアルバム「みんなあれについて考えてる」をリリース。

オフィシャルサイトhttp://hamazaki.org/

奥田民生

1965年広島生まれ。1994年にシングル『愛のために』でソロ活動を本格的にスタート。『イージュー★ライダー』『さすらい』などヒットを飛ばし、井上陽水とのコラボレーションや、プロデューサーとしてもPUFFY、木村カエラを手掛けるなど、その才能をいかんなく発揮。弾き語りスタイルの「ひとり股旅」、ひとりレコーディングライヴ「ひとりカンタビレ」など活動形態は様々。世界的なミュージシャンであるスティーヴ・ジョーダンらとの「The Verbs」、近年は岸田繁(くるり)、伊藤大地と結成したスリーピースバンド「サンフジンズ」としても活動している。2015年に50歳を迎え、新たにレーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」(RCMR)を立ち上げた。昨年、約4年ぶりとなるオリジナルフルアルバム「サボテンミュージアム」をリリースし、希少なアナログレコーディング機材を使った宅録スタイルのDIYレコーディング「カンタンカンタビレ」を始動させた。

オフィシャルサイトhttp://okudatamio.jp

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