Interview

BIGMAMAが10周年で向かうメジャーシーン。新曲「Strawberry Feels」に込めたバンドのアイデンティティとは?

BIGMAMAが10周年で向かうメジャーシーン。新曲「Strawberry Feels」に込めたバンドのアイデンティティとは?

下北沢のインディーレーベルUK.PROJECTに所属しながら、昨年は日本武道館でのワンマンライブを成功させたBIGMAMA。インディーでありながら、バンドとしての成功を収めていくことも珍しくない時代、その象徴的存在でもある彼らが3月7日にリリースしたシングル『Strawberry Feels』で、メジャーデビューを果たした。
第二の「はじめまして」となる今作は、バイオリニストを擁するロックバンドというBIGMAMAの唯一無二のアイデンティティをシンプルに突き詰めた1枚だ。以下、フロントマン・金井政人(Vo/Gt)への単独インタビューでは、そんなシングルについて聞きながら、すでに10年のキャリアで盤石の基盤を築きながら、いまメジャーフィールドに活動の拠点を移す狙いは何なのか、また今後の展望を聞いた。金井の真摯な言葉からは、「この先」の10年に向けて、さらに聴き手をワクワクさせようというミュージシャンとしての気概が伝わってくる。

取材・文 / 秦 理絵 撮影 / コザイリサ

インディーズからメジャーへ。その先にみていること

ここまでインディーズを貫いてきたBIGMAMAが、なぜ、このタイミングでメジャーデビューを決意したんですか?

もともと誰とやっても良かったんですよね。いままで自分たちがいた環境に不満を持ったこともないんですよ。自分たちがずっと本拠地にしていたUK.PROJECTって母体にプライドもあったし、その場所でインディーズのまま武道館をソールドアウトさせたことに、ひとつ誇らしい気持ちもあったので。
だから、「なぜ」の答えで言うと、自分たちがまだロールプレイングゲームのなかにいるとして、そこに歩み寄ってきてくれたキャラクターが楽しそうな話をしてくれたから、じゃあ、行動を共にするっていうだけなんです。何か大きな目標とか狙いがあったわけじゃないし、そのキャラクターと一緒に仕事をすることのメリット、デメリットもそこまで考えてなくて。ただ、やっぱりアイディアが枯渇することには敏感だったんです。それはすごく嫌だったから、面白そうな提案をくれる人はウェルカムだし、そういう新しい乗組員がいる、この先の10年は楽しそうだなと思ったんです。

これまで10年間活動をしてきたなかで、メジャーのレコード会社から「一緒にやろう」って言われた話もありましたよね?

ああ……あったと思います。でも、そういうのはマネージメントだったり、チームのボスをとおしてくる話だと思うから、僕のところまで話がきたのは一度か二度ですね。ユニバーサルから話がきたのも、これが初めてじゃなかったんです。

そういうなかで、いまメジャーデビューしようと決めたのは?

10年続けたことで、ひととおりいろいろな経験もしてきたし、もうバンドとしての一周目は終わってるような感覚があるんですよね。そのうえで、ちゃんと二周目のまわり方をするには、どうまわっていこうかな?っていうことですね。

それこそ武道館も終えた、このタイミングだからこその決断だった。

タイミングであり、人でしたね。いま会社の名前で仕事することって、ほとんど意味がないじゃないですか。どの会社でやるかよりも、誰と仕事をするかだと思っていたので。その人が信用できるか、どれぐらいの熱量を持っているか。それを聞いたうえで、その人が「こうしてみたい」っていうものに乗ったら楽しそうだなっていう予感があったんです。だから、身を預けるって言うんじゃなくて、きちんとシェアしていきたいっていうところですね。

BIGMAMAってバンドとしては、もう中堅というか……新人ではないじゃないですか。

まあね。「新人」って言われたら困るけど。でも、誰よりも新人のつもりではいますよ。中が堅いっていう字より、新しい人のほうが、文字としても好みだし(笑)。

一応、中堅の前提で話を進めると(笑)、10年もバンドを続けていれば、初期衝動では進めなくなるし、シーンのなかで「中堅」として見られるがゆえの難しさもある。そのなかで、この先の10年いかに自分たちがワクワクしたまま進んでいくかを考えたとき、いまメジャーを選ぶことも必要だったんだろうなと、話を聞いていて思いました。

うん、だから「やることを変えません」っていうのは面白くないし、間違ってると思うんですよ。今までどおりに変わっていくことを選びたいんですよね。

今までどおりに変わっていく?

たとえば、今までいろいろな楽曲を作ってきたけど、もう一度そのどこに特化したら自分たちの曲が刺さるかを考えながら、届けていきたいんです。このタイミングだからこそ、場所を変えて同じことをやるっていう選択もひとつの戦い方だと思うんですよね。で、それを誰とタッグを組んでやったら、より面白いことが起きるのかっていうのは、今まであんまりやってこなかったんですよ。それが、今の新しい乗組員の得意なところでもあるので。そういう新しいカードを良いタイミングで切っていければと思ってます。

その1枚目のカードがニューシングル『Strawberry Feels』になるわけです。今までのBIGMAMAらしさをギュッと研ぎ澄ませたような1枚というか。

これは、僕らがもう一度あいさつをするチャンスだと思ってるんですよね。「おはようございます」とか「よろしくお願いします」とか、そのぐらいの意味で差し出すべきものとして作りました。それって、いちばん本質が問われることだと思うんですよ。

ええ、わかります。

だから、僕なりの「よろしくお願いします」を、ちゃんと音楽にするっていうときに、自分のパーソナリティとズレたことも言いたくないから、10年前の自分でもありつつ、垢抜けていたかった。猫背をやめてたいとか、モゴモゴしてたくねぇなとか(笑)。もう一度「はじめまして」を言うなら、どういう自分がいいかな?っていうのを考えましたね。

レコーディングは、BIGMAMAの持つ本質を発見する場であり、確認できる場でもある

もう一度見つめ直した自分の本質というのは、どういうものでしたか?

この10年間のなかで自分たちがライブをしてきたときに、何をいちばん押してたかなって考えたんですよ。それは5人が神経を研ぎ澄ませて、楽器をガツンと合わせた瞬間の走り出すような音というか。それが重要なキーワードだったかなと思います。

そのレコーディングっていうのは、自分たちでも「やっぱりこうだよね」って確認するようなものだったのか、新たな発見があるものだったのか?

それ、難しいですね。スタジオで曲を作っていくときに「良いフレーズだな」って思うことは発見だし、でも同時に確認でもあるんですよね。やっぱりこの人は予想もつかないような良いフレーズを作ってくるなっていうのは発見なんですけど、でも、そのレベルのことは当然やってくるよなっていう確認作業でもあるんですよ。
やっぱりスタジオで曲を作るときに、相手に「お?」って思わせられるか、思わせられないかってアーティストにとって大切なことなんですよね。曲作りは遊びみたいなものなんだけど、本気で遊んでるがゆえに、才能を評価し合えてる部分がないと、長く続けられないと思うし。だから、常に発見があることは前提ですね。で、それを確認する作業でもあったと思います。

BIGMAMAのアイデンティティには、ロックバンドのなかにバイオリンが鳴っていることも大きいじゃないですか。

はい。

それは、今回の「Strawberry Feels」でもわかりやすく主張してると思いますけど。そのバイオリンの役割って、たとえば10年前と今とで変化してるんですか?

変化……ではないかもしれないんですけど、やっぱりショートケーキのイチゴみたいなものじゃないかなと思いますね。別に生クリームとスポンジでも成立したと思うんです。それでも美味しい。でも、そこにイチゴが乗ってると、華があるし、商品としての完成度があがるんですよね。このことは10年間のなかで、どこかのインタビューで言ったことがあるんですよ。「(バイオリンは)ショートケーキで言えば、イチゴじゃないですかね」って。だから、このタイミングで、このタイトルをつけたのは面白いなって、いま気づきました。

ああ、無意識にBIGMAMAのアイデンティティをタイトルで表わしてたと。

そうですね。最初に高校生でバンドをはじめたときは、バイオリンは男の子が弾いていたんです。でも(東出真緒が入って)いつからか、紅一点っていうワードを目にするようになって。最初は「ふーん」って思ってたんですけど。そのバイオリンもいろいろなさじ加減でやってきたんですよね。カレーのなかのスパイスみたいなときもあるし、日の丸弁当ぐらい依存するときもあるし。それで言うと、今回はショートケーキのイチゴですよね。ロックバンドとしての土台を用意したうえで、「どうぞ」って、きれいに盛りつけてるんです。

今回の3曲のシングルは、1曲目は「Strawberry Feels」=ストロベリー、2曲目は「POPCORN STAR」=ポップコーン、3曲目は「Donuts killed Bradford」=ドーナッツ。それぞれ食べ物がモチーフですけど、このあたりの意図は?

今回はなんとなく記号が良かったんですよ。

記号が良かった?

自分のなかで、「よろしくおねがいします」を伝えるときに、その文字数を増やすべきではないと思ったんですよ「はじめまして。何々と申します、わたくしはこういう仕事をしておりまして……」じゃなくて。すごく潔い「よろしくお願いします」にしたかった。だから三角と星と丸っていう記号でよかったんです。

ああ、ストリベリーが三角(△)、ポップコーンが星(☆)、ドーナッツが丸(◎)?

そう。食べ物のなかでも軽食と呼ばれるものをモチーフにして、3曲入りのシングルがそれぞれ連動していることが大切だったんです。それは連動してるけど、あえて「連動します」って言わないようにはしてて。気づく人が気づける喜びでもあるのから、説明するのは野暮なのかなって、いま迷いながらしゃべってるんですけど。

今回、歌詞のほうには、何かテーマはありましたか?

僕のなかで、良い質問をしたいなと思うようになってるんですよ。聞いた人に対して、「自分はこうなんだ」って言うことで、完結することもできるんですけど、問いかけて終わりたいなと思ったんですよね。たぶん人って良い質問をされたときに、自分のなかで良い答えを得られる。その快感があるはずだから。

それで、「Strawberry Feels」は最後に質問で終わってるんですね。

そう、「本当の勝者は誰?」(=who really won?)の部分ですよね。それに対して、聴く人それぞれが結論を導き出してほしいし、それぞれの人生を歩んでほしいんです。そのために自分がどこかに導くんじゃなくて。そのやりとりをすることが、いちばん自分にとって、音楽と向き合う誠実な方法なのかなと思ってるんです。

でも、この曲は問いかけだけじゃないと思うんですよ。

というのは?

1 2 >