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さらば、2代目猿飛佐助(椎名鯛造)。永遠(とわ)に君を……忘れない! 『斬劇「戦国BASARA」第六天魔王』観劇レポート

さらば、2代目猿飛佐助(椎名鯛造)。永遠(とわ)に君を……忘れない! 『斬劇「戦国BASARA」第六天魔王』観劇レポート

2009年の初演『戦国BASARA』から数えて約10年。すでに1年の風物詩になってお祭り感のある「戦国BASARA」シリーズ。その第14作にあたる『斬劇「戦国BASARA」第六天魔王』がAiiA 2.5 Theater Tokyoにて3月2日から上演中だ(3月16日からは大阪の森ノ宮ピロティホール)。
今作ではチャレンジを通奏低音に感じさせながら、『戦国BASARA』の伝統だけでなく、新鮮な観劇体験をすることができた。その感動の模様をレポートする。

取材・文・撮影 / 竹下力 撮影 / 曳野若菜

上演後のアフタートークショーの帰り道、原宿駅の表参道口の改札前にて。

寒風吹きすさぶ原宿駅で人知れず泣いていた。泣き止むことができなかった。

その理由は、たまたま奇跡的(その日に観劇する予定ではなかったのだ)に目にすることができた上演後のアフタートークショーが、松村龍之介(真田幸村)と椎名鯛造(猿飛佐助)、眞嶋秀斗(伊達政宗)と井上正大(片倉小十郎)という組み合わせだったからかもしれない。いわゆる真田主従と伊達主従が、舞台後に今日の感想や役への想いを述べるというイベント。エンタメステーションで真田主従をインタビューさせてもらったせいもあるのだろう、松村と椎名の仲の良さも知っているし、特にこの舞台を最後に卒業する椎名と松村の絡みが抜群に面白かったからかも知れない。思い入れが強すぎるせいかも知れない(どうかファンの一人として許して欲しい)。自慢げに「殺陣は完璧です」なんて答えてちょっと自慢げに微笑む椎名の笑顔がまぶしかった。

松村は「今回の台本は斬新で、惹きつけられるものがありました。こんな感動は2013年の舞台『戦国BASARA3 宴』の時以来だなと思いつつ、役者、スタッフと作・演出のヨリコジュンさんで今までの全てをお客様にぶつける舞台になっています」と語っていたが、ストーリーの斬新さは如実に表れていた。

ストーリーは、第六天魔王と異名を持つ織田信長(唐橋充)が、豊臣秀吉と武田信玄を人質に取り、天下を手中に収めようとするところから始まる。それを、秀吉側の主従である、石田三成(沖野晃司)とその友である徳川家康(中尾拳也)、さらに武田信玄の主従である真田幸村が伊達政宗とタッグを組み、人質の奪還と、織田信長を倒すため、友情を超え、主従を超えた関係を結びながら、織田信長に立ち向かっていくという物語。ストーリーの面白さは、ここでは書ききれないので是非とも観劇をお勧めしたい。

囲み取材で、構成・演出・映像のヨリコジュンは「今作は衝撃的な内容です。現代のデジタル化で人と人の関係が気薄になっています。一人で何でもできてしまい、大きな壁にぶつかって、周りを見ると誰もいない。そんな時に、周りを振り返れば一緒に戦ってくれる仲間がいることに気付く、そんな斬新な内容になっていると思います」と意気込んでおり、彼の言葉がこの舞台の新しさを裏付けているはずだ。

友情と信頼で結ばれたカンパニーの武器が見せる見事な殺陣

何より、「戦国BASARA」に欠かせないのは武器だろう。それから殺陣の凄まじさになるだろう。殺陣指導は、新進気鋭の殺陣集団の“30-DELUX”だし、監修は30-DELUX製作総指揮の清水順二らが務めているので、凄まじさは折り紙つき。殺陣指導の泉紫太朗とともに相当にハードな稽古を積んだはずだ。スピーディーに、目まぐるしく、舞台を彩る殺陣に目をみはる。

伊達政宗(眞嶋秀斗)の六双の剣は、すっかり板について、舞台上で抜群に輝いていた。囲み取材では「稽古場に通う毎日が楽しく、役者をやっていて良かったと思いながら舞台に立つことができている」と語っていた通り、(本番は緊張するとアフタートークで言っていたけれど)どこかリラックスしながらも縦横無尽に舞台を駆け巡り、あの伊達政宗が本当に今生きていたらというリアルさも演技に加わっていた。そして座長の感が板についている。

真田幸村(松村龍之介)は、インタビューで「先輩の中村誠治郎さんが観劇された時に、一槍の方が強く見えると言われて悔しい思いをしたんです」と悔しさを述べたが、二槍の方がしっくりくる出来栄えになっていた。凄まじい鍛錬の証が垣間見える。真田の性格は、「僕が演じる真田幸村はとにかくまっすぐで頑固です。頑固さゆえに、一緒にいる猿飛佐助を困らせる。伊達政宗に対してもそうですが、まっすぐだからこそエネルギーのある武将で、仲間の意思だったり行動を変えたりすることのできるパワーを秘めています。当然、僕も佐助や政宗に思いや行動を変えてもらう。近しい人物にとって原動力になる人です」と優しく語ってくれたけれど、舞台上では激しく火花が散るようなセリフを声量豊かに淀みなく発し、時には人間関係を壊し、再構築する。

徳川家康(中尾拳也)は、「今できる最高のパフォーマンスをお届けしたいと思っています」とコメントしていたが、武将の中では、唯一武器を持たず“手甲”で敵を殴り倒すのだが、その動きが迫力満点だった。連続ぱちき(ヘッドバッド)を含め、体術での見事な見せ所は彼のがっしりした体躯もあって見応えがある。

石田三成(沖野晃司)は、「僕ができるすべての力を使って、この舞台に尽力してまいります」と丁寧に意気込んだが、アクシデントもなんのその、彼がこの舞台で一番の役者魂を感じさせたかもしれない。万雷の拍手を送りたい演技だった。

猿飛佐助(椎名鯛造)は、手裏剣を、そしてアクロバティックな体術をメインに戦う忍なのだが、それは遺憾無く発揮されている。まさに現代を生きる忍。決して大きくない体躯なのに、そのオーラ、その佇まいの巨大さに惹かれてしまう。今作で卒業だからではない、役者としての“魂”の揺るぎなさを感じさせてくれた。
役どころとしては「猪突猛進な真田幸村の裏で舵をとって、正しい方向に進ませる舟守のような役です。ただ、猿飛も完璧な人間ではないので、違った方向に進んでしまったら、2人で困難を乗り越えて、親方様や民を守るために新たな道を模索する。忍びなので、あまり目立たない役だと思うんですけど」と、本人も笑っていたが、安心してください、十分に目立っていました。

片倉小十郎(井上正大)は、クールに抜刀し、瞬時に刀を収める。伊達というどこか熱血漢で先走りしてしまう性格をなだめる役。「お客さんの驚くような顔が、少しでも早くみたいと思っております」とピクリとも動かずに語っていた通り、絶対にこちらが驚いても眉ひとつ動かさないクールネスを発揮していて、思わず胸に飛び込んで抱きしめて欲しくなる。どちらかというと男子も憧れる学校の頼れる先輩男子といった風情だ(もちろん女性も憧れる)。

明智光秀(瀬戸祐介)は、織田信長の配下として、禍々しい2つの鎌を使って戦う。長くて大きいから扱いづらいはずなのに、しなやかさが舞台上で光っている。それ以上に、彼は説明台詞で舞台を進行する役も担っていて、「初めてこのカンパニーに参加させていただきます」と囲み取材でコメントしていたが、彼がいなければ今作はありえないだろう。

後藤又兵衛(汐崎アイル)は、豊臣秀吉を裏切り、織田信長に寝返るという役どころで、いわゆるずる賢いコメディーリリーフなのだが、「舞台というのは何が起こるか分かりません。一つ一つが大切な時間ですし、毎回が初日で千穐楽のつもりです」とその決意が舞台にほとばしる。彼は武器を丁寧に扱い、笑いを難なくさらっていく。役者の心意気ここにあり、という演技。

黒田官兵衛(伊藤裕一)も、豊臣側を裏切り、後藤又兵衛と同じくコメディーリリーフに徹しているのだが、「今回の作品は“心の強さ”が鍵となっていると思います」と表明したが、彼は両の手をつながれた鉄球が武器なだけあって動きづらいが、そんなことは微塵も感じさせず、笑いを誘ってくれる。役者としてのハートの強さに脱帽だ。

島左近(斉藤秀翼)は、「1カ月稽古をしてきて感じたことが、チーム力の高さです」と語ったようにチーム力の高さを見せつける殺陣を感じさせる。二本の短刀を丁寧に扱っていく。特に彼の腰をしならせて足を思いっきり回す、いわゆる回し蹴りが誰よりもかっこいい。

浅井長政(桜田航成)は、織田信長家に嫁いだ長寿アニメの『サザエさん』でいう“マスオさん”。「レギュラーの出演として『戦国BASARA』に戻ってくるのは約2年ぶりになりちょっと不安です」と控えめに述べたが、ブランクなんてお構いなしに、難しい殺陣を踊るように颯爽とこなしていた。なかでも妻であるお市との“愛”の必要性を観客に問いかける演技に溜飲が下がる。

お市(高柳明音)は、浅井の妻となる織田家の娘なのだが、彼女はとても小さな体にびっくりするぐらい大きな薙刀を振り回す。彼女は、「舞台でこんな物語の作り方ができるんだと、衝撃を受けました」と飄々と述べていたが、あまりに浅井を愛するあまり狂気に取り憑かれる演技は背筋が凍えるほどで、「女性って怖い」と思わず叫んでも怒られない出来栄え。愛に生き、愛に殉じる一途な女性が見事だった。

京極マリア(大湖せしる)は、浅井の姉を演じるエキゾティックな衣装もあって華やかな役所。「作品の良いスパイスとなるように努めます」と控えめなコメントだがスパイスだけではなく、彼女の一挙手一投足がこの舞台でのキーを握っているだろう。元宝塚歌劇団雪組の女役を務めただけあって、妖艶なダンスは見どころだし、振り付けはダンス集団THE CONVOY SHOWの舘形比呂一だから、彼らの生み出すケミストリーは舞台に美しい花を添えていた。踊りや殺陣だけではなく、彼女の表情、セリフを見て聞いているだけで飽きない。

織田信長(唐橋充)は、「椎名さんの卒業のおかげで出来上がった素晴らしいカンパニーです」とコメントしていた通り、唯一無二のカンパニーが出来上がっていた。彼は結果的に一番の手強い武将を何人も一気に束ねることになるわけだから、殺陣は一番難しいはずだ。なのに、大きな刀を振り回し、そして時には西洋銃で相手を打ち負かす様は見事。彼は、思わずこちらが怖くなるほど役が憑依したような演技を見せ、世界征服に取り憑かれた悪魔のように織田信長を演じきっていた。

さよならは2度言わないでおこう

この舞台のテーマは、仲間や性別を超えた“人類愛”かも知れない。心に秘めた想いを正直に語り、そして仲間と助け合う。それだけがこの世知辛い現代で生きていくために必要なことなのだ。そう訴えかけてくれる舞台。

しかし、それでもやはり椎名鯛造から目が離せなかった。彼が松村と舞台上で話し、対立し、和解する。それだけで涙が止まらなくなる。友情や努力や愛や世界平和……そんなことがどうでもよくなってしまうほど、猿飛佐助として彼の存在を舞台上に確固として感じ、卒業を惜しむ気持ちにさせられた。

斬劇『戦国BASARA』第六天魔王

東京公演:2018年3月2日(金)~11日(日) AiiA 2.5 Theater Tokyo
大阪公演:2018年3月16日(金)~18日(日) 森ノ宮ピロティホール

原作:CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ)
構成・演出・映像:ヨリコジュン
企画・原作監修:小林裕幸(CAPCOM)/山本真(CAPCOM)
シナリオ協力:松野出

<出演>
伊達政宗 役:眞嶋秀斗
真田幸村 役:松村龍之介
徳川家康 役:中尾拳也
石田三成 役:沖野晃司
猿飛佐助 役:椎名鯛造
片倉小十郎 役:井上正大
明智光秀 役:瀬戸祐介
後藤又兵衛 役:汐崎アイル
島左近 役:斉藤秀翼
浅井長政 役:桜田航成
お市 役:高柳明音
京極マリア 役:大湖せしる
黒田官兵衛 役:伊藤裕一
織田信長 役:唐橋充

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