映画『去年の冬、きみと別れ』  vol. 3

Interview

表裏一体にある愛と狂気の物語を生きた2人。岩田剛典と山本美月が「去年の冬、きみと別れ」のテーマを語る

表裏一体にある愛と狂気の物語を生きた2人。岩田剛典と山本美月が「去年の冬、きみと別れ」のテーマを語る

自然とページをめくる動きがはかどり、読み進めていった結果、驚愕する──。そして読み手は一様に物語をさかのぼり、つかみ損ねていた「真実」を探すことになる…。
「教団X」で知られる芥川賞作家・中村文則の最高峰との呼び声高き衝撃の一篇『去年の冬、きみと別れ』は、傑作であるがゆえ”映像化不可能”とも目されてきた。
だが、『脳男』(’13)や『グラスホッパー』(’16)などで知られる名手・瀧本智行監督によって、ついに映像化を実現。中村をして「この手があったか!」と唸らせた会心の一作に仕上がった。
その世界観を背負いし主人公・耶雲恭介と婚約者の松田百合子の関係性も、ストーリーにおいて重要な伏線となっている。
この春必見の一篇”冬きみ”特集の第3弾は、両者を演じた岩田剛典と山本美月のクロストークをお届けする。役に対するアプローチや瀧本監督の演出の印象などを掘り下げてもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

作品に没頭するあまり役に影響された岩田にとって、現場で明るく凜と存在する山本が救いだった

原作や脚本を読まれて抱かれた印象をお聞かせください。

岩田 原作を読んだ時、中村文則さんならではのトリックであったり、伏線の張り方に驚いて、『この作品が映像化されたらどうなるんだろう? 本当に映像化できるのかな?』と思いました。そして、最後までたどり着いて結末がわかっても、また最初に戻って何度も読み返したくなるような…そういう奥深さがあるなとも感じました。1回読み終えた時点では、すべてを理解しきれなくて、何度も何度も読み返していくうち、”きみ”が誰のことを指しているのかわかってくるんですね。では、イニシャルは誰のものなのか…といったことを推理する楽しさに満ちている物語、というのが僕の中での印象です。

山本 私は台本から読んだのですが、まんまとダマされました。いろいろあって、自分の役柄についてはくわしく話せないんですけど(笑)、『お〜、こうなるのか!』と、ストンと腑に落ちた感じでしたね。原作を読んでいないのは、『読むと、百合子はかえって混乱するかも』と言われたので、迷ったんですけど…映画では台本をベースにしようと決めました。

撮影中、役に没頭することでご自身も影響された、といったことはあったのでしょうか?

山本 岩田さんはあったんじゃないですか?

岩田 ありましたねぇ。まさしく役に没頭していて、撮影期間中はプライベートの自分に蓋をしているような感じだったんです。何て言うんだろう…イメージとしては、暗〜く長〜いトンネルが永遠と続いているような感覚があって。
なので、撮影が休みの日もプライベートで何かしようというマインドに全然なれなくて。気持ちを切り替えてしまうと、現場へ戻るのが逆にしんどくなると言いますか…器用なタイプではないので、精神的にタフさを求められる撮影だったなと、あらためて感じます。そのころ、たまたまグループ(EXILE/三代目J Soul Brothers)としての活動が少ない時期だったので、撮影に集中できたことも幸いしました。ほぼ毎日現場にいたので、瀧本(智行)監督とよくお話していたんですが、熱量と圧がすごく高い方でいらっしゃるんです。なので、僕も同じような熱と圧でいるように心がけていましたね。

山本 私は、岩田さんとくらべると、精神的には楽な状態だったと思います。ただ、監督の熱量と圧がすごかったので(笑)、毎回ドキドキしながら現場に来ていました。自分なりに何となくお芝居のプランを立ててきても、監督の演出によってすごく細かいところまで修正を求められるのが常だったので、覚悟をしながら臨んでいたという感じです。わかりやすく言うと、例えば、台本を読んで私は右だと解釈していた箇所が、監督からすると左だというようなことが、すごく多かったんです。ただ、自分がやろうとしていることと違うことを求められることで、自分の発想にはなかった新しい表現の幅が広がったように思います。

では、お2人…耶雲と百合子のシーンが劇中にたびたび登場しますが、お芝居を通じてお互いに抱かれた印象や感触をお聞かせください。

岩田 山本さんは、すごい目ヂカラを持った女優さんだと思っています。いろいろなシーンでそれを感じることがあったんですけど、特に…終盤で耶雲と百合子が見つめ合うシーンでは瞳に吸い込まれそうになる感覚をおぼえました。あの目ヂカラはスクリーンに映った時、さらに強い印象を増すのではないかなと感じています。また、現場では”一輪の花”というか…すごくピリピリしていたというわけではないですけど、そこはかとなく緊張感が漂う中、明るい存在として凜といてくださって。もしかしたら、ご本人的には窮屈だったのかもしれないですけど(笑)、僕からすると山本さんがいてくださったことが、すごくありがたかったんですよ。

山本 今、岩田さんのお話を聞いてホッとしている自分がいます。ちょっとピリッとした空気の現場だったので、『私、こんなにしゃべっていてよかったのかな、ちょっとケラケラと笑いすぎたかな…』と思っていたので(笑)。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

でも、岩田さんがおっしゃるように、終盤のシーンの目ヂカラの強さはすごく印象的でした。

岩田 ドキッとしますよね、あのシーンは。

山本 わ、ありがとうございます…。

そのあたりのギャップというか、お芝居においてメリハリをつけていくという意識を山本さんはなさっていたんでしょうか?

山本 はい。二面性という部分は考えて演じていました。ただ、そのサジ加減をどうするかというところではすごく悩んだのも確かです。最終的には1人2役じゃないですけど、それくらいのつもりでお芝居しようという気持ちで臨みました。

耶雲にとっては眼鏡をはずすタイミングが”スイッチ”になるというお話をしていただいたんですが、百合子にもそういったタイミングや小道具が存在したのでしょうか?

山本 髪型から服装まで全部がガラッと変わるので、私としてはすごく切り替えやすかったなと思います。自分としては『何だか百合子、大人びちゃって』みたいな感覚だったんですけど(笑)。

岩田 ティアドロップ(サングラス)かけたりしてね(笑)。

確かに、あれで印象が大きく変わりました(笑)。それと、お2人の共演シーンでは、レストランのオーナー役のMummy-Dさんが、いいアクセントをつけていたようにも映りましたが、ご一緒されていかがでした?

岩田 僕、大ファンだったんですよ、昔から。ライムスターもMummy-Dさんも。なので、台本を読んだ時に配役表にMummy-Dさんの名前が入っているのを目にして、『え、ウソぉ!?』って。お芝居もされていることを僕が知らなかっただけなんですけど、まさかこんなカタチでご一緒できるとは思っていなかったので、テンションがめちゃくちゃ上がりました。
現場で『お芝居もなさるんですね』なんて、失礼なことを聞いてしまったんですけど、『何かねぇ、最近ちょこちょこやってるんだよ』って、気さくにお話してくださって。カフェレストランの優しいオーナーさんの役がすごくナチュラルにはまっていらっしゃったんですけど、ご本人は『違和感あるわぁ』って謙遜なさるんですね。なので、『全然そんなことないですから!』って、力説していました(笑)。アーティストとして活動なさっている時は笑顔という印象ではなかったので、朗らかなキャラクターを演じていらっしゃるのを見て、振り幅の大きな役者さんでいらっしゃるんだなという認識を新たにしたところがあります。

山本 私もご一緒するシーンが多かったので、Mummy-Dさんにはすごく助けていただいたという印象があります。いつも私のおしゃべりにつきあってくださって、たくさんお話していただいたことが癒やしになっていたな、って…。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

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