映画『去年の冬、きみと別れ』特集  vol. 3

Interview

表裏一体にある愛と狂気の物語を生きた2人。岩田剛典と山本美月が「去年の冬、きみと別れ」のテーマを語る

表裏一体にある愛と狂気の物語を生きた2人。岩田剛典と山本美月が「去年の冬、きみと別れ」のテーマを語る

残酷ではあるけれども美しい映画だと山本が感じる一方、岩田は、役者が各々の持ち場をまっとうした映画と評す

「愛する人のために変われるか」というのが映画のサブテーマでもありますが、すべてを投げ打ち愛を手にしようとする登場人物たちの魅力を、どのように感じとりましたか?

岩田 耶雲というキャラクターは愛に対してまっすぐであるがゆえに、周りが見えなくなってしまうところもあると思うんです。そこまで盲目になるというところは正直、理解できないんですけど、彼の行動すべてが恋人を思う気持ちに行き着くので、それほど強い気持ちで人を愛するところは、見習いたいなと思う部分もあります。

山本 深い愛を貫き通す耶雲さんのことは素敵だなと思いますし、そこまで想ってもらえる彼女は幸せだろうなとも感じます。羨ましい反面、ちょっと愛情のかたちが変わってしまった時の危うさや怖さがあるのも、また確かであって。
本当に1人の人に一途であるというところにおいては、ただただすごいことだなと思いますね。

愛情を描く一方、誰もがどこかしらに狂気を秘めているというところが作品の面白味であり、登場人物たちの人間味にも通じていると思いますが、つまるところ何を指針として役に臨んだのでしょうか?

岩田 僕は顔合わせからクランクアップするまで、ずっと指針は瀧本監督の中にあると思っていました。『自分がこういう芝居をしたい』という願望よりも、中村さんの唯一無二の原作を元につくられる映画に対して誰よりも深い思いと考えをめぐらせている監督に、すべてを委ねようと覚悟を決めたと言いますか…。また、監督の情熱が自然と役者陣に伝わってくる現場でもあったので、自然とディレクションに対して耳を傾け、軌道修正していくという感じでしたね。
(斎藤)工さんがおっしゃっていましたけど、役者の芝居の”火加減”の微調整が、監督は本当に絶妙なんです。この作品はストーリーがすごく緻密なので、一つでもボタンを掛け違えてしまうとクライマックスにいたる前に気持ちが途切れてしまう恐れがあるわけで…そこを監督は一番苦慮していたように僕は感じました。なので、そこに対する理解を深めようということを、現場では常に考えていましたね。

山本 作品全体の温度を決めて調節していらっしゃったのは瀧本監督だったというのは、すごく同感です。私が演じた百合子の登場するシーンはわりと平穏な雰囲気であることが多かったんですけど、耶雲さんと結婚することに対するキャピキャピ感をどれくらい出すのかといったことも、監督に相談しながら”火加減”を調節していただいて演じていたという覚えがありますね。

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

その瀧本監督による”火加減”のコントロール的な演出というのは、具体的にはどのような感じなんでしょう?

山本 たとえ話になっちゃいますけど、1℃ずつ変えていくというよりも、0.1℃ずつ上げたり下げたりする、といった感じなんです。それくらい、すごく緻密で。『もう少し目線を下げてみて』といった感じで、絵柄から芝居を構築していくような──。

岩田 その緻密な構築の仕方が、すごくいい勉強になったなと僕は思っていて。感情や気持ちはもちろん大事ですけど、映像としてスクリーンで観た時にどうお客さんの目に映り、いかにして心に刺さるのかということが、積み重ねてこられた経験からわかっていらっしゃる監督さんなので、そこもふくめて身を委ねていました。そのぶん、テイクを何度も重ねることも多々ありましたし、ワンシーンまるごと撮り直したこともありましたね。それは初めての経験でした。

山本 私もシーンごと撮り直したのは初めてでした。

ということは、お2人のシーンだったんですね。

岩田 はい、Mummy-Dさんもいらっしゃって(笑)。

そのシーンがどこなのか気になるところでもありますが…お2人には、木原坂雄大を演じられた斎藤工さんの印象をおうかがいできればと思います。

山本 この表現が正しいのかわからないんですけど、木原坂という役柄がすごく合っていらっしゃるなと思いました。工さんご自身もユニークな方でいらっしゃるので、いい意味でどことなく通ずるものがあるのかな、という印象が私の中ではあります。

岩田さんには、ご本人の前では照れくさくて言えなかったことがありましたら、ぜひ(笑)。

岩田 いえ、そういった照れみたいなものは全然なかったんですけど(笑)、この作品のために実際にご自身もカメラを始められたり──。

山本 え、そうだったんですか!?

岩田 そうだったんですよ。しかも、雑誌に写真の連載を申し込みに行かれたりして。そういう役者としての役へのアプローチというのは、工さんのパーソナリティーやポジションでしかできないことだな、と思いつつ、とことんストイックでいらっしゃるところは、本当に尊敬すべきだなという思いを新たにしました。ふだんはとても気さくにお話してくださるんですけど、現場では役に集中されている印象があって、シーンを撮り終えるごとにお1人になられるという感じだったので、対峙するポジションの耶雲としては、現場で思いきり振り切ることができたという感触もあります。

なるほど。では、同じ女優さんとして、木原坂朱里という魔性の女を演じた浅見れいなさんは、山本さんの目にどう映ったのでしょうか?

山本 すごく妖艶できれいだなと思うと同時に、今の私ではまだ演じられない役柄だと感じました。あの美しさは、大人の女性だからこそのものだなあって、スクリーンを観てしみじみと思ったんです。私もいつか、その域に到達できるのかなって…。

では、完成した作品を、どのようにご覧になったのでしょうか?

山本 物語の展開はもちろんですけど、映像もすごく美しいなと思いました。全体的に青みがかっていると言いますか…残酷なんですけど、美しい映画だな、と──。

岩田 僕は客観的に観られなかったです。ご覧になった方々の反応ばかりが気になってしまって…。

それは作品や役への思い入れが深いから、でしょうか?

岩田 う〜ん…初号試写の雰囲気って、何となく裁判にかけられるみたいな感覚があるんです。自分の芝居や表現を見定められる、という部分もなきにしもあらずじゃないですか。どうしても自分の粗に目がついてしまうんですけど、その分、作品そのものは冷静に観ることができるんですよね。その上で感じたのは、役者さんが各々の持ち場をまっとうしている映画だなと思いました。北村(一輝)さんのお芝居も圧巻でしたし。北村さんとの見せ場は『いいシーンにしよう』と言ってくださって、”あうん”の呼吸じゃないですけど、同じ目標に向かってつくりあげていっている感じがあって『今、”映画してる”ね』なんてしゃべりながら、撮っていったんですよ。
ただ、あのシーンのセリフ量は人生で一番でしたね。20ページくらいあって、しかもワンカットの長まわしで撮っているんですよ! 監督が『カットを割って声のトーンを変えたくないのと、耶雲の気持ちが途切れさせたくない』と、おっしゃって。あの撮影ほど地獄だと思ったことはなかったですが、瀧本監督のことを鬼だと思ったことはないですね(笑)。北村さんも『岩ちゃん、大変だなぁ〜』って他人事でしたし…。でも、ワンカットだったからこそ、あの緊張感が出せたんじゃないかなと思っています。

そういったところも踏まえつつ、最後に主演の岩田さんに「煽りのPR」をお願いして、締めとさせていただきます。

岩田 そうですね…やはり『観る人すべてがダマされる』ところに尽きると思います。本当に予測不能なストーリー展開になっていますので、劇場公開が待ち遠しいですね。観ていただいた方がどんなリアクションをされるのかということを、僕自身もすごく楽しみにしています。どうぞ、ご期待ください。

映画『去年の冬、きみと別れ』

3月10日(土)より大ヒット公開中!

出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工・浅見れいな、土村芳/北村一輝

原作:中村文則『去年の冬、きみと別れ』(幻冬舎文庫)
監督:瀧本智行『グラスホッパー』(15)『脳男』(13)『イキガミ』(08)
脚本:大石哲也
音楽:上野耕路
主題歌:m-flo 「never」(rhythm zone / LDH MUSIC)

配給:ワーナー・ブラザース映画

ストーリー:
彼女を奪われた。猟奇殺人事件の容疑者に――。

結婚を間近に控える記者、耶雲(岩田剛典)が「最後の冒険」としてスクープを狙うのは、猟奇殺人事件の容疑者である天才カメラマン、木原坂(斎藤 工)。世間を騒がせたその事件は、謎に満ちたまま事故扱いとされ迷宮入りとなっていたのだ。真相を暴くため取材にのめり込む耶雲。
そして、木原坂の次なるターゲットは愛する婚約者(山本美月)に――!木原坂の巧妙な罠にハマる婚約者、そして耶雲までも……。だがそれは、危険な罠の始まりに過ぎなかった――。
木原坂の本当の正体とは?耶雲の担当編集者(北村一輝)、木原坂の姉(浅見れいな)の秘密とは? 果たして、耶雲と婚約者の運命は!? 
すべての真実を目撃したとき、あなた自身が巨大な罠にハマっていることに気づく!予測不能!サスペンス、誕生!

オフィシャルサイトhttp://fuyu-kimi.jp
オフィシャルTwitter@fuyu_kimi #冬きみ

©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

岩田剛典

1989年3月6日生まれ。
三代目 J Soul Brothersのパフォーマーとして2010年にデビューし、2014年にEXILE に加入。グループでの活動以外に俳優として数々の作品に出演。2016年公開の映画初主演作品『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』では第41回報知映画賞新人賞、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞・話題賞、第26回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞。主な出演作にドラマ「砂の塔〜知りすぎた隣人」(16)、ドラマ「HiGH&LOW 〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜」(15)から続く、映画『HiGH&LOW』全シリーズ(16〜17)など。新作には映画『Vision』(18年6月8日公開)、主演映画『パーフェクトワールド』(18年10月5日公開)などがある。

山本美月

1991年7月18日生まれ。福岡県出身。
近年の主な出演作は、映画『東京PRウーマン』(初主演/15)、『貞子vs伽椰子』(16)、『少女』(16)、『ピーチガール』(17)、ドラマ「嘘の戦争」(17)、「刑事ゆがみ」(17)、配信ドラマ「東京アリス」(17)など。今後、主演ドラマ「真夜中のスーパーカー」(18年3月28日放送/NHK BSプレミアム)、「モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―」(18年4月19日~フジテレビ系)、映画「友罪」(18年5月25日公開)が控えている。

原作本

去年の冬、きみと別れ

中村文則(著)
幻冬舎文庫
幻冬舎

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