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これは一種の「事件」!? 自称“クソマンガ”『ポプテピピック』旋風がすごい。

これは一種の「事件」!? 自称“クソマンガ”『ポプテピピック』旋風がすごい。

2018年のいわゆる冬アニメで強烈なインパクトを残している作品といったらなんといっても『ポプテピピック』(大川ぶくぶ)だろう。

ポプ子とピピ美というセーラー服の女子2人がメインとなっているのだが、原作マンガはストーリー要素皆無。ひたすら1本完結のネタ4コマが続くマンガである。

そんな原作をどう30分アニメにするのかと、期待と不安が入り交じるなかスタートした同作は、前半と後半でまったく同じ話を別の声優で繰り返すという前代未聞の形式を採用。その声優も事前に発表されていたのとはまったく違っていたりした。

内容もさることながら、この掟破りの手法、姿勢によって、『ポプテピピック』という作品は一種の「事件」となっている。

ライバル誌のネタも堂々と丸パクり!

『ポプテピピック』は原作からしてどこかそういう事件性を帯びていた。原作は「まんがライフWIN」というウェブ媒体での連載作で、火が付いたのもやはりウェブだった。

©大川ぶくぶ/竹書房

「今日も1日がんばるぞい!」という当時流行していたあるマンガのセリフをそのまま使ったかと思えば「私が最初に言い出した事になんねーかな」と言い出す。ライバルとも言える他社の4コマ作品のネタだったこともあり、「まさか身内からこんな恥知らずが出るとは。」という煽りとともに掲載された。

©大川ぶくぶ/竹書房

版元である竹書房も頻繁にネタにされている。単行本をなかなか出さない竹書房の看板に「指定暴力団」と書き加えるネタを発表した結果、2018年2月現在でもGoogleで「竹書房」と検索すると、検索候補に「指定暴力団」というフレーズが出てくる。

時事ネタ、パロディ、風刺的な要素などを散りばめながら、『ポプテピピック』はネットの“バズ”になっていった。

『ポプテピピック』らしさの正体

強烈な個性を印象づける同作だが、一方で“『ポプテピピック』らしさ”というのが何なのかというのはとらえづらい。

©大川ぶくぶ/竹書房

たとえば単行本1巻1本目に収録されている4コマ。ポプ子がピピ美を殴り、「おこった?」と聞くと「おこってないよ」と答える。ただそれだけが2回繰り返される1本だ。

一言でいえばシュール系。ポップな絵柄でありながら絶妙に違和感が残るキャラ造形や、表情とセリフの噛み合わなさがふしぎなおかしさを醸している。

こうしたギャグの技法は、それ自体は伝統的であったりする。いわゆるシュール系はたくさんあるし、絶妙な違和感を残す造形といえば地獄のミサワ氏のような作家もいる。話題を呼ぶパロディや時事ネタも、手法としては笑いの定番といっていい。

それでいて本作は伝統的な作品というより、どこか唯一無二の革新性を感じさせる。それは台詞回しなどのセンスでもあるのだろうが、ひとつの大きなポイントは態度だろう。

©大川ぶくぶ/竹書房

徹底して演出された脱力感

『ポプテピピック』ではたびたび作品コピーなどに「クソマンガ」「クソ4コマ」というフレーズが使われる。1巻帯でも「とびっきりのクソ4コマ」と大きく打ち出されている。

「シュール系」という言葉にはどこか「ハイセンス」という雰囲気がある。やや被害妄想的にいうなら「センスがある人間にはわかるし、わからないのはセンスがない」というような、ある種のプレッシャーを漂わせている。

だが、『ポプテピピック』はそれを「クソ」と表現する。作品自体があたかも思いつきだけで描いた悪ふざけであるかのように演出しているのだ。だから、わからなくても「さすがクソマンガ(笑)」という笑いになったりもする。

それは編集サイドの打ち出し方でもあるが、作品自体が持つ“演出された脱力感”でもある。たとえば先ほどの第1話1本目の4コマのように、露骨なコピペを繰り返したりして、手抜き感、悪ふざけ感を強調しているのも『ポプテピピック』らしさの演出になっている。

「シュール」という言葉の持つ高尚さからの脱出。『ポプテピピック』にエポックがあるなら、そのひとつはこの点だろう。徹底して演出された脱力感が、作品をシュールの先に運んでいるのだ。

文 / 小林 聖

書籍情報

『ポプテピピック』

大川ぶくぶ・著
竹書房

風刺もパクリもどんと来い! ネット上で大人気(笑)の暴れん坊4コマ、不可能といわれていたコミックス化が実現!

『ポプテピピック SECOND SEASON』

大川ぶくぶ・著
竹書房

japanese underground scum comic.
★単行本カバー下イラスト収録★

TVアニメ「ポプテピピック」

毎週土曜深夜1:00~TOKYO MX1などで放送中!

©大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード

原作:大川ぶくぶ(竹書房「まんがライフWIN」)
企画・プロデュース:須藤孝太郎
シリーズ構成:青木純(スペースネコカンパニー)
コンセプトデザインワークス:梅木葵
音響監督:鐘江徹
音響効果:小山恭正
音響制作:グロービジョン
音楽:吟(BUSTED ROSE)
音楽制作:キングレコード
シリーズディレクター:青木純(スペースネコカンパニー)、梅木葵
アニメーション制作:神風動画
製作:キングレコード

オフィシャルサイト
http://hoshiiro.jp/

関連サイト

まんがライフWIN
http://mangalifewin.takeshobo.co.jp/

©大川ぶくぶ/竹書房