Interview

緑黄色社会 彼女たちはどこに照準を定めて1stフルアルバムを作ったのか?

緑黄色社会 彼女たちはどこに照準を定めて1stフルアルバムを作ったのか?

緑黄色社会の1st フルアルバムが届いた。昨年リリースした2枚のミニアルバムから5曲、先にライブ会場限定でリリースしていた曲も含め新曲が5曲の全10曲入り。昨年の成果と、未来に向けたバンドの現在と、その両方を詰め込んだこの新作は、セルフ・タイトルからもうかがえる通り、彼ら自身が“自分たちはこういうバンドです”と胸を張れるような納得の仕上がりになったようだ。
ここでは、新曲を中心にアルバムの制作を振り返ってもらいながら、大きく支持を広げた去年の活動でどんなことを感じ、またいま何を意識しているのかということをメンバー全員に語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢
撮影(ライブ) / 安藤みゆ

自分たちのことがすごくわかって、それでこれからどうするべきかということもわかってきた1年だったと思います。

まず、昨年の活動とその成果について、それぞれどんなふうに感じているのか聞かせてください。

小林 自分たちのやってることがどれくらい伝わってるかということについて、全国的な規模の話はやっぱりちょっと感じにくいですね。でも、自分の身の周り、身近なところで「僕の友達がこういうバンドやってるって話したら、知ってたよ」と言われたりすることは増えて、そういうのが一番わからせてくれますよね。自分たちの音楽が着実に広がってるということを。

peppe 去年は、1年先のことを聞かれても、イメージはボンヤリしてたなあと思うんです。でも今だったら、1年先のことがいろいろ明確になってきてる感じがすごくします。自分たちのことを、自分たちがわかるようになってきたということが大きいと思うんですけど。

穴見 自分がバンドをやる上で、ただベースを弾いて、曲を作るというのではなくて、どうやったらこのバンドがたくさんの人に届くのかとか、いろんなバンドがいるなかで僕らの音楽を聴いてもらうためには何を出していけばいいんだろうとか、そういうことをこの1年はすごく考えました。例えば、去年は夏フェスにも何本か出させてもらったんですけど、そこでいろんな先輩バンドのステージを、お客さんとしてではなく、同じステージに立つ人間として見たときに、やっぱり感じることがすごく多くて…。そういうふうに自分たちも動き出したというか、活動が広がるなかでお客さんの反応とかを見ながら見えてきたこともあったし。だから、自分たちのことがすごくわかって、それでこれからどうするべきかということもわかってきた1年だったと思います。

長屋晴子(Vo : Gt)

長屋 自分たちのことを知ってくれてる人が増えたなあということをいちばん強く実感できたのは、年末のワンマン・ツアーが3カ所ともソールドアウトしたことで、特に大阪公演のソールドアウトは自信になりました。大阪でライブをやることが、回数も少なかったし、何かの企画に呼ばれることはあっても自分たち発信の企画ライブをやることがなかったんです。そういうことも含め、大阪で広げていくのは難しいなと思いながら、でもキャパもちょっと挑戦的なキャパの会場でやったんですけど、そこがソールドアウトできたのは大きかったですね。

「真夜中ドライブ」は直感的なイメージをそのまま形にできたなという感じがしてます。

そういう感触も踏まえ、今回のアルバムの内容についてはあらかじめどういうことを考えていましたか。

長屋 わたしたちのことをまだよく知らないけど興味があるという人にちょうどいいもの、そういうアルバムを作りたいなと思ったんです。いまは曲単位で聴く人が多いのかもしれないけど、1枚通して聴いてほしいと思ったから、曲数や曲順、それに“ここは盛り上がるけどリラックスして聴ける場面も作ろう”みたいな流れですよね。そういうことも考えて曲を選んだんですけど、そこで去年は自分たちのことがつかめた1年だったから、去年出した2枚のミニアルバムからも選び、「いまの自分たちはこういう感じです」と言える新しい曲もアルバムの流れに合うものを選んで入れました。

では、新曲について順番に聞いていきたいんですが、まず穴見さんが作曲を担当している「君が望む世界」はどういうふうに生まれた曲ですか。

穴見 最初に、みんなでコーラスしているフレーズが浮かんで、そこからなんとなく雨上がりの朝みたいな(笑)、ブルーなことがあったんだけどそれが解消されて晴れやかなというか、良い気分になった感じをイメージして作ったメロディができて、そこに詞をつけてもらいました。

前回のインタビューで「恋って」の場合は、作曲者のpeppeさんが思い描いていたイメージはあまり意識せずに歌詞を書いたと長屋さんは話してましたが、この曲ではどうだったんですか。

長屋 この曲も、「After rain」という仮タイトルがついてたんですけど、そのことは全然考えずに書きました(笑)。曲をもらって書く場合は本当に直感のイメージで書くことが多いんですけど、この曲の場合は曲調からファンタジーのイメージが浮かんで…。それに、真吾自身のポジティブなイメージが影響してるところもあると思うんですけど、ピーターパンみたいな勇敢な存在がモヤモヤしてるところから自分を連れ出してくれるような、そういうイメージですね。それに、もうひとつ言えば、わたし自身が中学時代はちょっと真面目過ぎて、すごくつまらない女の子で、だからちょっとやんちゃな子に憧れてたりしたんですけど、その当時の自分に言いたい曲ですね。

長屋さんが作詞だけを担当している、もうひとつの新曲「真夜中ドライブ」はどんなふうに生まれた曲ですか。

peppe これは詞が先だったんです。わたしが曲を書いた、「恋って」と『Nice To Meet You??』に入っている「Bitter」は曲が先だったんですけど、詞が先にあるパターンもやってみようということで何曲か挑戦したなかで出来上がった曲で、直感的なイメージをそのまま形にできたなという感じがしてます。ブレずに一本道で終着までたどり着けたなっていう。例えばピアノのフレーズは、いちばん最初に詞しかない状態で付けたフレーズがほぼそのまま最後まで使ってるんですよね。

peppe(Key : Cho)

長屋 そのイメージが二人の間で合致しない場合もあるんですけど、この「真夜中ドライブ」の場合は最初からイメージが合致していたので、スムーズに作業が進んだんだと思います。

その合致したイメージというのは、どういうものだったんですか。

長屋 がむしゃらというか、天真爛漫な女の子の歌にしたかったんです。わたし自身が考え過ぎてしまうというか、歌詞にしてもついつい説明したくなるタイプなんですけど、この曲の主人公はとにかく突っ走っちゃうというか、言葉より先に体が動いちゃうような女の子に憧れていて、この曲の主人公はそういう女の子にしたいなと思ったんです。だから、歌詞を書く上でも説明的にならないようにひとつひとつのワードを置いていくような感じというか、そういうことも意識しながら書いていきました。

「Alice」はこの1年ライブをやってきて、いちばんわかりやすくお客さんがノッてくれる曲です。

「Alice」はライブ会場限定CDで発表されていた曲ですが、この曲を今回ピックアップしたのはどうしてですか。

小林 ライブではすごく馴染みになってるのに、全国流通盤には入ってなかったので…。

長屋 この曲は、すでにライブに見に来てくれている人からはすごく待望されてたし、まだライブを見たことがない人にも絶対気に入ってもらえると思ったんです。

小林 この1年ライブをやってきて、いちばんわかりやすくお客さんがノッてくれる曲なので、僕らとしても全国流通盤に入れることを待望してた曲です(笑)。やっと、みんなに知ってもらえる形ができたなっていう。

この曲は、詞曲:緑黄色社会というクレジットになっているので、他の曲とは作り方が違ってるんだと思いますが、どういうふうに生まれた曲ですか。

長屋 けっこう昔の曲なんです。

小林 このバンドを始めて2年目くらい、オリジナルを作り始めた頃の曲ですね。当時は作り方の順序みたいなこともなくて、真吾が弾いたベースのスラップのフレーズがかっこよかったから「いまのフレーズ、憶えてる? 曲にしようよ」って始まって…。

穴見 それを何回も弾き続けたんです。

小林 一応テーマはあって、わかりやすい曲を作ろうっていう。

長屋 そう、ライブでノレる楽しい曲にしようということで、そこにみんなの勘を寄せ集めて作っていった感じです。

歌詞はオケができてから付けたんですか。

穴見 いや、同時進行ですね。オケもメロも歌詞も、この曲は全部、同時進行でした。

穴見真吾(Ba : Cho)

長屋 タイトルやワードはわかりやすいものがいいねという話で、それでAliceというタイトルも出てきたんです。迷路とかイメージしながら。でも、単純に「不思議の国のアリス」の世界みたいにするだけじゃなくて、人間のリアルな心情も入れ込みたかったから、すれ違ってる男の子と女の子の話を組み合わせていきました。

すでにライブでお馴染みになっているという話もありましたが、ライブで何度もやっていると、アレンジのマイナー・チェンジが進んでいったりしないですか。

長屋 それは、ありますよ。

今回のアルバムに入れたのは、その最新版ですか、それとも会場限定CD用に作り上げたバージョンですか。

穴見 最新版ですね。というか、最近のライブの手クセがそのまま入ってる感じです(笑)。

長屋 そこにクラップも入れたりして、このバージョンを聴いて、ライブでもそういうふうに楽しんでくれるといいんじゃないかなというところもあります。

「regret」という曲で、緑黄色社会にはこういう色もあるよ、ということは本当に知ってほしいですね。

その「Alice」の、いい意味でガチャガチャした感じと対照的なのが「regret」という曲ですが、この曲を『Nice To Meet You??』からピックアップしたのはどうしてですか。

長屋 私たちの音楽にはこういうタイプの曲もありますよ、ということですね。

この曲はリズム・トラックが打ち込みですが、そのことも含め、『Nice To Meet You??』を制作していた頃は、こういうタイプの音楽がバンドのなかで盛り上がっていたんでしょうか。

長屋 そういう方向に進もうというようなことではなかったんですが、引き出しのひとつとしてこういう音楽もできるといいね、という感じだったと思います。

小林 ドラムがいないバンドならではの音源というか、そういう楽曲ができたらいいな、ということだったと思います。

楽曲自体はどういうふうに生まれたんですか。

長屋 タイトルの通り、後悔について歌ってる曲なんですが、わたしは本当に後悔するタイプなんですね。いろんなことが忘れられないんですけど、でもいつまでもクヨクヨしてたらダメだなあとも思ってて。だから、自分への戒めというか、忘れるべきことは忘れて違うことを考えようということを自分に向けて歌った曲で、最初にピアノで作ったときにはもうちょっとしっとりした感じでした。そこに、このバンドならではの色を足していって、こういう出来上がりになりました。緑黄色社会にはこういう色もあるよ、ということは本当に知ってほしいですね。

小林壱誓(Gt: Cho)

小林 この曲を入れるかどうかで、いろいろと議論があったんですよね。もうちょっとアップテンポの曲を入れる案もあって、そのためにレコーディングもやったんですよ。でも今回は、緑黄色社会を初めて聴いてくれる人を想像して曲を選ぶというのが基本にあったから、そういうお客さんの目線に立ったときに、もうちょっとしっとりとした曲のほうがいいんじゃないかという意見も出てきて、それでみんなで話し合った結果、この曲を入れることになりました。

この曲の第一印象ということで言えば、やはりしっとりとした曲調ということになるんだと思いますが、個人的には、どちらかと言えば暗い歌詞の内容とスマートでキラキラとした印象さえあるアレンジのコントラストがこの曲の個性であるように感じました。

長屋 そういう楽曲自体のカラーとはちょっと違う色合いアレンジのトーンにするということはいつも意識していて、この曲も基本は暗いんですけど、最後にはもう後悔なんてせずに次のことを考えようというメッセージがあるように、わたし自身が元々はすごく暗いんですけど、理想というか最終的に言いたいことは明るい前向きなことなんですよね。だからこそ、アレンジは明るくて前向きな感じになるようにと思って、やってますね。

小林 みんなでアレンジをやっていくなかで、もちろんいろんな意見が出るんですけど、やっぱり暗い歌詞はオケを暗くしちゃいけないっていうところに落ち着くんですよ。

それは、自分たちの音楽のメッセージを伝えるにはどういう形がいいかということを考えた先にそういう形が出てきてるんですか。それとも、そもそもこの4人でやるとそうなる、みたいな無意識のレベルの話なんでしょうか。

長屋 無意識ということはないですね。わたしは思うんですけど、ただ明るく「がんばろう」と言われるよりも、大変なことを共有しあった上で「それでも、がんばろう」と言うほうが響くと思うんです。その気持ちをメンバーも理解してくれてるから、例えば「regret」みたいな曲がああいうアレンジになったりして、曲とアレンジのそういうコントラストが緑黄色社会のひとつのカラーにもなってるんだと思います。

「Re」は、もう一度前を向くための序章としてぴったりの曲だなと思ったんです。

曲順に関する話ですが、バンドにとって初めてのフルアルバムの1曲目に「もう一度」という内容の歌が収められているのは面白いなと思いました。「Re」を1曲目にしたのはどういう思いだったんですか。

長屋 これも自分たちの決意みたいなことなんですけど、これからやっていくうえで忘れちゃいけないことというか、もう一度前を向くための序章としてぴったりの曲だなと思ったんです。バンドのなかでもモヤモヤした時期もあったけど、そういうことも踏まえながら、やっぱり好きなことを忘れちゃいけないし、続けていくぞという思いを込めて、まず最初に聴いてもらえたら、その後の曲たちもより響くんじゃないかなと思って1曲目にしました。

小林 僕は長屋がこの曲のデモを送ってくれたときにもう、アルバムの1曲目だなと思ったんです。というのは、この曲を送ってくれた2、3カ月前に僕が“このバンドをやめたい”と思うくらい悩んでいた時期があって、それを乗り超えた時期にちょうど聴いたので、これまでに長屋が作った曲のなかでも一番、自分のなかの芯に響いた感じがしたんです。僕自身にとってのそういうタイミングもあったと思うんですけど、そのときのこのバンドの状態にもリンクした、本当に等身大の長屋らしい歌詞だなと思って。だから、できるだけ多くの人に聴いてもらいたいと思ったし、となるとやっぱり1曲目が一番聴いてもらえますからね(笑)。

(笑)。さて、アルバムのリリース後にはツアーがあって、というふうにまたどんどん活動が展開していくわけですが、今回のリリースから1年後、来年の春にはどうなっていたいなと思いますか。

穴見 まだメンバー一人ひとりが持ってるものを全部出せているわけじゃないと思うんです。もっとやれると思っているので、それを出しきって、“このバンド、ヤバイね”と思われるような存在になりたいですね。

peppe 次のツアーのタイトルが“リョクシャ化”というタイトルなんですけど、自分たちで「リョクシャ化するんだ」と言い切ってスタートするわけなので、この1年はその範囲をもっと広げられるようにがんばりたいと思います。

小林 ある程度“緑黄色社会”というレールは敷けたと思うので、その上で“そう来たか”と思ってもらえるようなことをやり続けたいですよね。自分たちも、そういうほうが楽しいと思うので。

長屋 今回のアルバムは、知ってもらいたいという気持ちが大きいアルバムなんですが、でも1年後には知ってもらえているからこそ出すCDというのも出したいなと思いますね。知ってもらってるからこそのライブというのもやりたいなと思うし。そのためにも、この1年はまた思い切り駆け抜けていく必要があるんだろうと思っています。

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ライブ情報

緑黄色社会ライブツアー“リョクシャ化計画2018”

4月27日(金)福岡・福岡 DRUM SON
4月30日(月・祝)愛知・名古屋クラブクアトロ
5月3日(木・祝)大阪・梅田クラブクアトロ
5月5日(土・祝)宮城・仙台LIVE HOUSE enn 3 rd
5月6日(日)東京・渋谷クラブクアトロ
5月12日(土)北海道・札幌コロニー

緑黄色社会

長屋晴子(Vo / Gt) 、peppe(Key / Cho)、穴見真吾(Ba / Cho) 、小林壱誓(Gt/ Cho)。
2012年活動開始。愛知県在住。Vocal 長屋晴子の力強く透明で時に愛らしい独特な歌声、キーボードpeppe の型にはまらないフレーズ、Guitar 小林壱誓の柔らかいコーラス、バンドを支える最年少、穴見真吾のBass Line。同級生3人と幼馴染で結成し、お互いを知り尽くした4人がそれぞれの個性を出し合い、様々なカラーバリエーションを持った楽曲を表現し続けている。2013年SCHOOL OF LOCK ×Sonymusic 10代音楽フェス「閃光ライオット」準グランプリ。これまでに『Nice To Meet You??』『ADORE』の2枚のミニアルバムをタワーレコード限定でリリース。2017年11月、12月に行われた東名阪ツアーは全会場ソールドアウトとなった。

オフィシャルサイトhttp://www.ryokushaka.com