Interview

スキマスイッチ デビュー15周年を経て、「原点回帰」の先に見通したものを訊く

スキマスイッチ デビュー15周年を経て、「原点回帰」の先に見通したものを訊く

前作『スキマスイッチ』から約3年3ヵ月ぶりとなるスキマスイッチのニュー・アルバム『新空間アルゴリズム』は個性的な名曲がズラリと並んだ傑作となった。デビューして15年たつのに、初期衝動のほとばしりが見事に作品化されていて、みずみずしさと斬新さと自在さを備えている。と同時に、どの歌にも今の彼らだからこその味わい深さと人間味が染みこんでいる。原点回帰的な作品でありながら、ぐるりと回って到達したのは未知なる原点だ。アーティスト12組をプロデューサーに迎えた企画アルバム『re:Action』などによって、音楽的な刺激を受けたことも糧として、彼らは音楽の新しい扉を開いたところだろう。4月11日からは「SUKIMASWITCH TOUR 2018“ALGOrhythm”」もスタートする。彼らの音楽の旅に参加するのはスリリングな体験となっていくだろう。

取材・文 / 長谷川誠 撮影 / 笹原清明

「やりたいことをしっかり詰め込めたという達成感がありました。これが今の自分たちの最高傑作だと思えるところにたどり着けたので」

前作『スキマスイッチ』から3年3ヵ月ぶりの作品となります。この間隔についてはどう思っていますか?

大橋 空いてしまったというよりも、空けたという感覚がありますね。前作は『スキマスイッチ』と自分達の名前をタイトルにつけたぐらいで、現時点での自分達ができることはこれですって、すべてを出し切った作品でした。毎回そうなんですが、出し切った後って、インプットを経てからじゃないと、次の作品へ向かえなくなるんですよ。いろんなアーティストから刺激をもらって、『re:Action』というアルバムを作るなど、インプットの時間が必要でした

アルバムができあがった瞬間はどんなことを感じましたか?

大橋 やりたいことをしっかり詰め込めたという達成感がありました。これが今の自分たちの最高傑作だと思えるところにたどり着けたので、ホッとしている部分もあるんですが、同時に、アルバム完成からツアーまでが一括りという意識もあるので、ツアーに向けて、これからやるべきことがたくさんあるなって(笑)。

常田さんはどんなことを思われましたか?

常田 毎回、バタバタするってことですね(笑)。アルバムの話を始めたのは『re:Action』の一連の活動がひと区切りついた去年の秋くらいからだったので、じっくり考える時間があまりなかったんですが、そのことが逆にとんでもない集中力を発揮することにつながりました。余裕があって、楽々とアルバムを作るのは僕らのスタイルじゃないんだなって(笑)。『新空間アルゴリズム』というタイトルにしてもそうなんですが、初期の感じを意識して、原点回帰的な意識で制作したんですが、そうしたアプローチも良かったのかなと思います。「これ、いいと思うんだけど、どうかな?」「いいね」って言いながら、まずやってみるという。

自分たちの創作への衝動に素直に反応していったわけですね。

常田 『re:Action』を一緒に作った皆さんも自分たちのサウンド感にこだわりを持ってやられていて、譲れない部分を持っていると感じたんですよ。じゃあ自分たちに立ち返った時に、譲れない部分って、なんだろうって。そこで考えたことを今回の新作制作にぶつけたところはありますね。

大橋 ほかのアーティストさんの制作現場って、なかなか見ることができないものなんですが、『re:Action』の時には目の前で起こってることを間近で見れたので、そのこと自体が大きな経験でしたし、自分達と共通するところと、そんなアプローチがあるんだ!って気づかせてもらえたところと2つあって。共通するのは何かアイディアが出てきた時に、実際にやってみて、トライ&エラーを繰り返して作っていくところ。あとは、リスナーはそこまで聴いてないよっていう細かな部分にも徹底的にこだわっていくところ。そういう作り込み方は自分たちと重なる面があって、安心しました(笑)。

違うと感じたのは?

大橋 『re:Action』というアルバムはこれが正解ですって僕らが提示したものを全部解体して、お願いしたアーティストさんの色にプロデュースしてくださいという企画だったので、僕らが思いつかなかったアプローチがたくさん出てくるんですよ。おそらくそれぞれの音楽的なルーツやたどってきた道のりの違いによって、培われてきた感覚から生まれるものなんだろうなと思います。なので、目から鱗、ということがたくさんありました。

「もっとシンプルに伝わりやすい表現にしていけるんじゃないかと考えた時に、原点回帰という言葉が出てきました」

原点回帰しようと思ったのはどうしてですか?

常田 これまでの活動の中で知ってしまったことがたくさんあって。それゆえに、こういう伝わり方をしたら嫌だなって、防衛本能的な意識が出てしてしまって、複雑になりすぎたところがあったんですよ。例えば、会話でも、こんな取られ方をしたら嫌だなって、必要以上に気を使って、回りくどい言い方になるのと一緒で、音楽でも遠回りな表現になってるところがあった。デビュー当時は恐れ知らずで、いいと思ったことを素直に重ねて、音を作っていたわけで。そういう意識でアプローチしていこうって。

大橋 真太君の言ったことと似ているんですが、いろんなことを経験してテクニックも身に付いてくると、そのテクニックを駆使したくなる自分がいて。そうすると、テクニカルなものが仕上がって、聴く人を置いていってしまう瞬間があるんじゃないかと感じたんですよ。スキマスイッチというユニットはジャンルでいうとポップスだと思うんですね。ひずんだギターもロックやファンクっぽい要素も、ポップスという中での振り幅だと思っていて。ポップスという概念にはいろんな定義があると思うんですが、二人に共通しているのは聴く人に向けたもの、大衆的なものであるということ。そこから少し離れている自分達がいる気がして、もっとシンプルに伝わりやすい表現にしていけるんじゃないかと考えた時に、原点回帰という言葉が出てきました。ただ、当時のものを今作ったらこうなりますってことではなくて、今の自分たちが当時の感覚で取り組んだら、どんなものが出てくるんだろうって思いながら、作った作品ですね。

より音楽の本質に向かった作品でもあると感じました。「未来花(ミライカ)」「Baby good sleep」「リアライズ」などに顕著ですが、テクニックを駆使するのではなくて、抑制されたシンプルな歌い方でありながら、人間味がにじみでてくる歌声が素晴らしいです。

大橋 そこは目指したところではありましたね。昔はテクニックもなく、何も考えず歌っていたんですよ。今のほうが昔より少しはテクニックが身についたと思うし、昔の歌い方に戻したいと思ってもできないんですが、感覚だけそこに戻すことで、いつもと違う表現方法を見つけられたら、ということは考えていました。

「(「パーリー!パーリー!」は)僕らのライブのCM曲として押したい気分ですね(笑)」

個々の曲についてもうかがいたいのですが、先行シングル曲「リチェルカ」はアルバムの1曲目にふさわしい曲ですね。“ゼロからイチを見つけよう”という歌詞はタイトルのアルゴリズムという言葉と掛かっているとも言えそうです。

常田 ドラマの主題歌として作っていたので、アルバムの1曲目とか、まるで考えてなかったんですが、イヤー・キャッチで始まる曲がいいよねって、ああいうイントロにしたことが、ここに来て実を結びました(笑)。

大橋 曲順を決める時、2人でそれぞれ思う曲順を考えてきて、せーので出して、「ここ一緒だね」「ここは違うね」「そういう解釈もあるね」って話しながら決めていくんですけど、僕も真太君も当初、「リチェルカ」を1曲目にしないパターンを考えていたんですよ。この曲は「ファンファーレ」という仮タイトルが付いていて、1曲目に置きやすい曲ではあったんですが、僕らはあまのじゃくなところがあるので、だからこそ違うパターンはないかなって。でも躍動感や高揚感があって、幕開けにぴったりだし、歌詞もアルバム・タイトルとつながるところがあるし、「リチェルカ」という曲自身が、「俺が1曲目だろう」って強く主張していて、こうなりました(笑)。

「パーリー!パーリー!」はライブの光景が目に浮かぶ曲です。

大橋 実はこれが1曲目もありかなと思っていたんですが、“もう疲れたの?”というフレーズから始まるところが、どうにも1曲目に置けなかった(笑)。でも可能性の大きな曲になりましたね。ライブの歌にしようってことになり、二人でライブを思い出しながら、歌詞を綴っていたので、自分たちの音楽を聴いてくれている皆さんを想像しながら作った曲でもありますね。

常田 まだ僕らのライブに来たことのない人がこの曲を聴いた時に、スキマスイッチのライブはこんな感じかなと思ってもらえれば。僕らのライブのCM曲として押したい気分ですね(笑)。

「ミスランドリー」はフォークカントリー調の曲です。シンプルでありながらマジカルなテイストもある名曲ですが、どんなきっかけから?

大橋 二人ともカントリー調の楽曲が好きなんですが、今回作ったデモの中にこの曲があって、真太君が「これ、アルバムでやりたいね」って言ってたのがきっかけです。何かしらの違和感をもたせることが導火線になればいいかなと思って、歌詞の世界観も歌い方も、あえて普段の自分とは違うものを追求しました。

常田 最後の工程で、泡の音を入れるというアイディアが出てきて、お風呂に石鹸を入れて、一生懸命かきまぜて音を録ったんですが、「泡の音に聞こえない。チャプチャプしてるだけ」って言われて、全部ボツになりました(笑)。結局、エンジニアのアシスタントさんが持っていたライブラリーに助けられました(笑)。

「Revival」は夏の空気感までも巻き戻していくようなパワーを備えたバンド・サウンドが見事です。

常田 空気ごと入れたい、バンドでやりたいという気持ちはありました。バンドの5人で録ったんですが、5人の顔の絵が見えるような雰囲気は意識しました。

大橋 仮タイトルも「バンド・サウンド」でした。僕ら、バンドがうまくいかなくなった二人で組んだユニットなので、バンドに対する憧れがずっとあるんですよ。2016年の秋に“”THE PLAYLIST””というカバー曲ばかりをやるツアーをやった時のメンバーでレコーディングしたんですが、バンドを疑似体験できるのが楽しかったですね。5人の雰囲気が良くて、みんなが楽しんでくれてる空気をそのまま楽曲に落とし込めました。

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