Interview

NOKKOがREBECCAの再結成を経て、ニューアルバム『TRUE WOMAN』で見せた新たなチャレンジと彼女のルーツ。

NOKKOがREBECCAの再結成を経て、ニューアルバム『TRUE WOMAN』で見せた新たなチャレンジと彼女のルーツ。

昨年はREBECCAとして28年ぶりの武道館を含むライブツアーを敢行、多くのファンの胸を熱くさせたことも記憶に新しいNOKKOが待望のニューアルバムをリリースする。
彼女の今を鮮やかに刻む4年ぶりのソロ・アルバム『TRUE WOMAN』は、NOKKOが敬愛する松任谷由実が初めて彼女のために書き下ろした新曲「ふふふ」や、いきものがかりの水野良樹が作曲を手掛けた「翼」をはじめ、作・編曲家陣に松任谷正隆、亀田誠治、佐橋佳幸、是永巧一、松浦晃久らが参加するなど豪華なコラボレーションが実現した。また、自作曲はもちろんのほか、ユーミンの名曲「卒業写真」「翳りゆく部屋」のカバーや、REBECCA「恋に堕ちたら」のセルフカバーも収録され、歌詞でも彼女の充実を物語るたっぷり聴き応えのある作品になっている。2015年のREBECCA再結成を経て、新しい章に突入したという“稀代の歌姫”NOKKOに訊く、『TRUE WOMAN』の現在地。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 板橋淳一

「一生に一度はユーミンさんの曲を歌ってみたい」という気持ちを思いきってぶつけてみました。

オリジナルアルバムとしては2013年にリリースした『THE NOKKO STORY』以来となりますが、制作はいつ頃から?

去年はREBECCAでのツアーがあったんですが、その前からソロの準備をしていて、今回は松任谷由実さんに曲をお願いしたことからアルバムの制作が始まりました。主人のGOH HOTODAが『宇宙図書館』(2016)のミックスのお仕事をさせていただいて、家のプライベート・スタジオにユーミンさんや松任谷正隆さんがみえることがあったんです。私が家事をしていたりすると地下のスタジオから音が漏れ聞こえて来たりして、「ああ、私ってすごく影響されていたんだな」とあらためて思ったんです。そこでこの機会に思いきって「一生に一度はユーミンさんの曲を歌ってみたい」という気持ちをご本人にぶつけてみようと。

これまでも面識はあったんですよね?

もちろんREBECCAの頃からお会いしたことは何度もあるし、かまやつひろしさんとのご縁で一緒にお食事をしたこともありました。ユーミンさんの音楽は小学5年生から聴いていたんですけど、当時は自分が同じ仕事をしているとは思えなくて、遠い存在に見えましたね。それに私はロックバンドでデビューしたこともあって、その影響を語る機会があまりなかったんです。私の中ではユーミンさんと、漫画家のくらもちふさこさんは同じ引き出しに入っているんです。その引き出しを探って書いたのが、去年REBECCAでリリースした「恋に堕ちたら」でした。

松任谷由実さん作曲の「ふふふ」は、どんな風にオファーされて出来たんですか?

ユーミンさんに「どんなのが歌いたいの?」と訊かれたので、石川ひとみさんの「まちぶせ」が好きだったので、フレンチポップスっぽいのが良いかなとお伝えしました。「でも、歌詞は書いてね」っていわれて、娘が小さい頃に書いたものを取り出して歌詞にして。アレンジは「他流試合がしたい」というユーミンさんのご希望により、亀田誠治さんにお願いしてフレンチに少し昭和が入ったノスタルジックなテイストなりました。

REBECCAを楽しめるようになってから、ソロとのボーダーが無くなってきた気がします。

「翼」は松任谷正隆さん編曲のドラマチックでスケールの大きい曲になりましたね。

水野さんの曲がとても雄大だったので、最初は震災の復興のイメージで歌詞を書いていたんです。その後にピョンチャンオリンピックのテーマソング(テレビ東京系ピョンチャンオリンピック2018中継テーマソング)のお話をいただいたんですが、歌詞はほとんど変えていないんです。松任谷正隆さんのアレンジも素晴らしくて、示し合わせたわけではないんですが、私も含めてみんな同じ方向に向いていた感じがしますね。いきものがかりの曲は、娘の運動会でよく耳にしていたし、普遍性のあるポップスを作る方なので、世代の違いを越えるような歌になったと思います。

その2曲の制作がスタートした後、REBECCAの活動に入り、17年ぶりの新曲「恋に堕ちたら」をリリース。REBECCAとソロでは意識に違いがありますか?

自分の中ではっきり分けているわけではないんですが、REBECCAの方がキャラクター化しやすい気がしますね。ある意味、私もREBECCAのNOKKOという役になりきれるし、それを自然に楽しめるようになって来た。

REBECCAでの役割は「年齢に関係なくガーリーなお洋服をつくっているデザイナーの感覚に近いのかもしれない」と仰っていましたよね。

そうそう。「恋に堕ちたら」はその感覚で書いた曲ですね。私自身も経験があるし、いつもは冷静な女性でも、恋をすると世界中を敵に回してもいいというスイッチが入ってしまう。それも女性特有の心理なのかなと。最近はREBECCAとソロのボーダーが無くなってきたし、自分でも好きな曲なので、このアルバムではアコースティック・アレンジで歌ってみました。

是永巧一さんが編曲を手がけた「シアワセのくつおと」にはREBECCA の雰囲気があるし、多彩な作曲・編曲家とコラボしながら、今のNOKKOさんらしさが表れていますね。

そうだと嬉しいですね。きっと「シアワセのくつおと」は、ライブで演奏を重ねる度にもっと育っていくタイプの曲だと思います。曲を作った時点ではもっと鄙びた雰囲気をイメージしていたんですが、是永さんのマシンガンのようなギターを聞いて、「もう後は、是ちゃんの好きなようにお任せします!」ってなりました(笑)。今回初めて楽曲制作をご一緒した佐橋佳幸さん作曲の「All my life」は、以前にヤマハのクラビノーバのウェブムービー・イメージソングとして書いたんですが、結果的にはこのアルバムの方向性を示す曲になりましたね。仕事や子育てに忙しい時期を超えた女性が自分を取り戻すストーリーをさりげなく書いたら、今の自分にもそのまま当てはまるテーマにもなって。

頑張って来た女性にはキレイに、ハッピーになってもらいたいんです。

NOKKOさんが作詞・作曲したアルバム・タイトル曲の「TRUE WOMAN」も女性へのエールが込められていますね。

「いつも頑張って来たんだから、たまにはサロンでキレイになりましょう」っていう感じの歌です。女性にハッピーになってもらいたいですから。実はタイトルは実在するヘア・サロンの名前からいただきました。それで〈Let’s go to the TRUE WOMAN〉なんです。曲はキャロル・キング/アレサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」のようなR&B〜ソウルのイメージで。作曲はまだまだ手探りで、歌い手の延長で作っている感じなんですが、アレンジのおかげもあり、新鮮な曲調になりましたね。

かと思えば、DJ GOMIが編曲を手がけた「この道」のようなダンストラックもあり、これまでのNOKKOさんの音楽的な足跡を感じさせる流れでもある。

ああ、そうかもしれないですね。小学生の時から影響を受けて来たユーミンさんに始まり、90年代のハウスを昇華させた曲もあり、決してワンカラーではないんですよね。女の人って、好きな色がその時々で変わるし、好きな色は一つじゃないですよね。ソロになってからは、色んな方と様々なタイプの曲を歌うようになって、その経験値も上がったので、今回はさらにカラフルなアルバムになったと思います。

「この道」もそうですが、NOKKOさんの歌詞には色がたくさん出てくるのが特徴ですね。

「この道」の歌詞は、「もし、黒しか着られない状況になったら?」と想いを巡らせたことがきっかけで生まれたんです。私の書く歌詞は確かに色がよく出てくるし、情景描写やそこから滲み出る心情は、ユーミンさんの影響もあるし、日本の風土が育んできた感性や情緒のせいなのかもしれないと最近感じるようになりました。それも年齢を重ねて少しずつ分かってきたことで、そうやって自分なりの形が出来上がっていったんだと思います。

若い頃、いつかこういうアルバムが作れたらいいなと思っていたことが実現できた『TRUE WOMAN』

さらに、アルバムでは荒井由実時代の「翳りゆく部屋」と「卒業写真」の2曲をカバーされていますが、その辺がNOKKOさんのルーツですか?

そうですね。70年代の「ひこうき雲」や「あの日にかえりたい」の頃からになりますね。「翳りゆく部屋」は、フィリップ・セスのピアノトリオでのシンプルなアレンジでしっとり歌ってみたかったんです。フィリップとは私のカヴァー・アルバム『KISS』でも一緒にやったことがあるのですが、今回も素晴らしい演奏でユーミンさんの名曲を歌えたのは嬉しかったです。もはやスタンダード・ナンバーでもある「卒業写真」の〈卒業写真のあの人〉は、きっと私の中ではユーミンさんのことなんだと思います。

曲はバラエティに富みながら、NOKKOさんのルーツと現在がアルバムの中で交差し、ネクスト・ステージに進んだ内容になったのでは?

若い頃、いつかこういうアルバムが作れたらいいなと思っていたことが今回は実現できたような気がしています。私の音楽人生は2015年からのREBECCAの活動も含めて、新しい章に入ったんだと思います。

こうありたいと願っていた未来に今、いるんですね?

そうだと思います。女性にとってはなかなか手強い30代以降を何とか切り抜けると、時の経過とともに自然に解放される日が来るんですよね。私の場合、REBECCAの再結成で、自分でかけた魔法や呪いから自由になれたんでしょうね。昔はどこまでが自分か分からなくなったこともあったんだけど、今となれば、そのすべてが自分だったし、いつでも私は私でしかなかったと気がついたことも大きかった。今回はユーミンさんに曲をお願いしたことから始まり、そこからたくさんのチャレンジが生まれました。時間はかかったのかもしれないけど、私はこういう風にやりたかったんだなと思います。

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ライブ情報

billboard classics NOKKO PREMIUM SYMPHONIC CONCERT

4月11日(水)東京・東京文化会館 大ホール
5月7日(月)福岡・福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
5月17日(木)札幌・ニトリ文化ホール  
5月29日(火)名古屋・名古屋センチュリーホール

NOKKO

1984年、REBECCAのボーカルとしてデビュー。「フレンズ」が大ヒットとなり、『REBECCA IV ~Maybe Tomorrow~』はミリオンセラーを記録。バンド解散後の1992年からはソロとして活躍し、代表曲となる「人魚」やアルバムを発表。2015年にはREBECCAが20年ぶりに再結成。横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナでのライブを大成功させ、NHK紅白歌合戦への出場も果たす。以降もソロとして多くの音楽番組やイベントなどに出演。2017年にはREBECCAとして28年ぶりのライブツアーを開催し、ツアーのための新曲「恋に堕ちたら」をREBECCAとして17年ぶりにシングルリリース。2018年1月には新曲「翼」が“テレビ東京系ピョンチャンオリンピック2018中継テーマソング”してオンエアーされた。

オフシャルサイトhttp://nokko.jp/

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