Interview

末井昭のドラマティックな半生を淡々かつ飄々と演じた柄本佑。 『素敵なダイナマイトスキャンダル』に宿るエモさとは?

末井昭のドラマティックな半生を淡々かつ飄々と演じた柄本佑。 『素敵なダイナマイトスキャンダル』に宿るエモさとは?

少年時代に母親がダイナマイトで若い男と心中するという、衝撃的なバックグラウンドを持つ男、末井昭。無名時代の荒木経惟や森山大道らとともにエロ本に革命をもたらし、毎月のように警視庁に呼び出され、ついには廃刊の憂き目に遭うも、雑誌「パチンコ必勝ガイド」を創刊して旋風を巻き起こすなど、数々の”武勇伝”を残して出版界にその名を刻んだ異才の編集者だ。
その劇的な半生を綴った自著「素敵なダイナマイトスキャンダル」が、「南瓜とマヨネーズ」(’17年)でも気を吐いた鬼才・冨永昌敬監督によって映画化、絶賛公開中だ。
「素敵なダイナマイトスキャンダル」原作者の末井昭に続き、主演の柄本佑をフィーチャー。末井の人生を生きてみて感じたことや、撮影時のエピソードなどを聞いた。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

原作本を読んだ時に文章という表現というより、末井さんそのものという感じがしました

さんざん言われていると思うんですが……末井さんご本人の若いころと似ていらっしゃるんですよねぇ。

そうなんですよ! 僕も写真を見て同じことを思いましたし、完成した映画を観た末井さんから「遠い親戚のような感じがした」と言っていただいて(笑)。

冨永昌敬監督も、『素敵なダイナマイトスキャンダル』を映画化しようと思いついた時から「柄本さんを主演で」と考えていたと聞いていますが、その辺りのことは監督とお話したのでしょうか?

別の取材で対談した時、監督がお話したことを横でちょこちょこと聞いていた…というレベルなんですけど…以前から興味をもっていただいたみたいで、”『素敵なダイナマイトスキャンダル』の映画化が決まって実際にご一緒したところ、ピタッとはまってくれた”といったことを言ってくださって、ありがたいなぁ、と。
僕自身も冨永監督の映画が好きで観ていましたから。でも、最初にこの映画のお話を耳にしたのは、「冨永監督の映画に出てほしい、というオファーがあるかもしれないよ」と、遠回しな感じだったんです。しかも、風の噂で(笑)。ただ、題材が何であれ、冨永組には参加したいなとは思っていました。そしたら、末井さんの半生を描く作品だったわけですけど、台本がまだ届いていなかったので、まず原作を手にして…カバーを見たら、「あ、顔が似てる。じゃ、大丈夫かな」と、謎の安心感を得たという…。

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

謎の(笑)。原作は、末井さんの文体が軽妙ということもあって、あっという間に読めるんですけど、人生そのものはかなり濃厚ですよね。

そうですね、お母さんがダイナマイトで年下の男と心中しちゃうというのは、そうそうあり得ないことですから。

ただ、原作も映画も湿っぽくなってないのが印象的で。

確かに、全体的にカラッとしているから、末井さん自身のことじゃなくて他人の人生を語っているように思えますよね。実際はきっと大変だっただろうな、と想像できる出来事もそういうふうには書いていないですし。極めて淡々としていて…自分自身のことなのに距離を置いて見ているのがスゴイなと感じました。
だから最初に読み終わった時は、『お母さんが爆発した人』ーその印象が強すぎて… 細々(こまごま)としたところはあまり覚えていなかったんですよね。何と言うか…飄々としてはいるけれど、実は辛らつな思いもしていて…でも、そういうところは感じさせませんよ、という末井さん本人のような雰囲気が、原作本そのものにあって。文章というより、人そのものという感じがしたんです。

冷静に読み解くと、大変なことをたくさん経験されているのに…そこをまったく感じさせないという。あのバイタリティーはどこに根ざしているんでしょう…?

いやぁ、そこは僕にもわからないですけど…演じていて感じたのは、頑張っているのに頑張っていないような印象を与える人なのかな、と(笑)。もちろん、いい意味でですよ。ただ、映画の後半の末井さんは、若干”壊れて”いるところがあって、「面白ければいい」という基準でいろいろなことに手を出していくんですよね。怪しげな先物取引だったり。
なので、冨永監督ともお話したんですけど、怪しかろうがお金を出すことはもう決めているんだ、と。で、「どのタイミングでどう札束を出せば、目の前のセールスマンが驚くかな?」ということを考えている、と。つまり、周りの人とはちょっと違った感じでこの世界を漂っているんです。そこは常人にはわかり得ないし、僕も完全に理解できたとは言い難くて。ただ、冨永監督には明確なイメージがあったので、そこは演出していただいて、近づけていったという感じです。

なるほど。そういえば、末井さんご本人もインタビューで「どこか僕は破滅を望んでしまうところがある」と、おっしゃっていました。

そこは何となく感じました。意外と僕は流されて生きていますよ、自分から破滅へ向かっていますけど、実は人には悟られないように小波だけは常にたてていますよ、みたいなところがあるんじゃないかな、と僕は感じたんですよね。

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

あ〜、そういう感じありますよねぇ。

ご本人もおっしゃっていましたけど、慣れてくると飽きてしまうそうなんですよ。状況や環境に飽きちゃうと、それをブッ壊したくなるんだって。だから、写真誌も3回摘発されていますけど、もし摘発されていなくても辞めていたんじゃないかな、という気がしますね。

実は、末井さんご自身も『写真時代』の廃刊はベストなタイミングだったと、おっしゃっているんですよね。エロ本は「次号はもっとスゴイから!」と煽り続ける”永遠の予告編”として成立する媒体だったのが、ヘアヌードの規制が緩くなっていって、それができなくなるのが目に見えていたから、と。

あぁ、なるほど! その飽き性なところは女性との関係にも表れているんですよね。映画の後半で描かれる(三浦透子が演じる)笛子さんとの関係も、自分から激情していったのに自分から飽きてしまって、放置するという感じでしたし。作品における比重として笛子さんとのエピソードは多めなんですけど、末井さんの著書の『自殺』で一章まるまる使って書いていることに、監督が着目したからなんです。それって珍しいことらしくて、たぶん末井さんの中でも特別な感情を抱いていたんじゃないか…というようなことを、確か話されていました。

そういえば、「精神が不安定な人は妙にエロティックだ」と、末井さんがおっしゃっていました。

確かに、危うさというのは色気につながりますよね。だから、その危なっかしいところに惹かれるのかもしれないし、『面白そうだな』とアンテナに触れたら、まず足を踏み入れにいく人という印象が僕の中にはあるんです。基本的に『NO』がなくて、まず一回受け入れてみてから考えよう、と。そこが人と違うところなのかなと思いました。何をもって”普通”とするのかわからないですけど、多くの人が「ちょっと待てよ」と止まって考えるところを、感覚的に受け入れているのが末井さんなんです。でも、けっして突っ走っているわけじゃない。受け入れてみて、気がつくと3億円の借金があった…という感じの口調でお話されるので、「え、今3億って言いました?」と後追いで聞き直したくなるというか。でも、「全然大変そうじゃないように聞こえますね」と言うと「いやぁ、大変でしたよ〜」って返してくるんですけど、全然大変そうじゃないんです(笑)。

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