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「誠」を背負った志士たちの生き様を見よ――赤澤遼太郎ら出演舞台『龍よ、狼と踊れ~Dragon,Dance with Wolves~』~草莽の死士~ゲネプロレポート

「誠」を背負った志士たちの生き様を見よ――赤澤遼太郎ら出演舞台『龍よ、狼と踊れ~Dragon,Dance with Wolves~』~草莽の死士~ゲネプロレポート

原作舞台の中で、既成のあり方を蹴っ飛ばすような舞台『龍よ、狼と踊れ~Dragon,Dance with Wolves~』が誕生したのは昨年。そして、続編に当たる『龍よ、狼と踊れ ~Dragon,Dance with Wolves~』~草莽の死士~が、3月21日から紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演中だ。
人間の尊厳と魂のあり方を問うファナティックな観劇体験だった。そんな白熱したゲネプロを囲み取材とともにレポートしたい。

取材・文 / 竹下力
撮影 / 竹下力、友澤綾乃

役者は、その肉体こそ生き様

赤澤遼太郎や谷口賢志を筆頭に「誠」を背負った新撰組の隊士たちが舞台に立っている。綺麗なスポットライトで眩しいからか、涙のせいなのか、彼らの背中から漂う熱気にただならぬ今作にかける想いの丈を感じる。彼らから吹き出す汗、そして荒ぶる呼吸に震える肉体。痺れるほど、猛烈にかっこいい。

撮影 / 友澤綾乃

物語は、赤澤がエンタメステーションのインタビューで語ってくれたように、「清国の姫君、麗貴人という大好きな人を、しかも憧れの人に殺されて、それを間近で見てしまった第1章の終わりからスタート」する。麗貴人の死から数ヶ月後の幕末から第2章は始まり、時代としては新撰組を(良い意味でも悪い意味でも)一躍スターダムにのしあげた事件、“池田屋事件”前の時期にあたる。

新撰組の隊士たち、若きハジメ(赤澤遼太郎)、土方歳三(谷口賢志)、フランス人の女性隊士フラン(前島亜美)、沖田総司(大平峻也)、近藤勇(加藤靖久)、藤堂平助(川隅美慎)、永倉新八(澤田拓郎)、山南敬介(松崎史也)、葛木伊織(田口 涼)らは、幕府転覆を目論む不逞浪士と戦っていた。

撮影 / 友澤綾乃

一方、公家の岩倉具視(ウチクリ内倉)、武器商人であるトーマスグラバー(鈴木ハルニ)は、新撰組を潰すために2人で手を組み、長州藩と接触し、新撰組滅殺の時期を伺っていた。

長州藩には高杉晋作(鎌苅健太)、赤袮武人(安達勇人)、吉田稔麿(横田龍儀)、宮部鼎蔵(村田 恒)ら手練れが揃っており、こちらも新撰組の動きが気になり、岩倉たちの情報は貴重だった。そこに坂本龍馬(萩野 崇)が毅然と立っている。

さらに、長州藩には、陰陽師が転生の術を使い蘇らせた、古の時代に活躍した剣豪たちがいる。宮本武蔵(山口大地)、とある女(大野未来)、柳生十兵衛(水沼天孝)、可児才蔵(原 勇弥)、塚原卜伝(長瀬貴博)、石川五右衛門(村田洋二郎)、佐々木小次郎(鐘ヶ江 洸)……と名だたる豪傑たち。

この新撰組、公家、長州藩の3組に加えて、蘇った豪傑たちの対立と思惑や時に仲間割れという抗争は、幕末という史実に基づいたリアルな世界と、死者が生き返るというフィクションの世界の中で絶妙な絡み合いを見せ、ストーリーの重厚さを一層際立たせる。脚本の松崎史也と原作のイシイジロウによって作り出された「2019年の幕末」の世界で、三つ巴を超えた戦いが始まっていくのだが……。

撮影 / 友澤綾乃

まず舞台美術の角田知穂と舞台監督の渡邊 歩のセット、カンパニーの手際の良さが目を引く。2階建てのヤグラに移動式の大きな2つの階段。階段を上手に操りながら、場面転換をする。2階には長州藩、1階には新撰組たちがいたりすれば逆もある。場所を超えて時間が並列されたり、逆に時間がすれ違っていたり、あるいは1階や2階を巻き込んだ戦場になったりする。その転換のスムーズさが見事だ。

ヤグラを巧みに使いながら新撰組や長州藩の役者はまるで同時にセリフを交わしているように見せながら、テンポよく抜き差しならない時代の切迫さをわかりやすく説明する。または、彼らはスリリングな心理劇を生み出し、そこでは何が善で悪か、あるいは正義か悪か、生きる事や死ぬ事という人間の根元に関わる問題を客席に提示していく。答えは舞台上では示されない。考え感じるのはあくまで観客だ。この体験は舞台でしか味わえない経験で感動的なのでぜひ一度観劇してほしい。

撮影 / 友澤綾乃

役者も見どころがたくさんあり、ハジメ役の赤澤遼太郎は、インタビューで「少年漫画の男の子の主人公をイメージしていただければわかりやすいかもしれません。正義感があって、一本気で、女の子に弱い。そして、第1章は人間味があった」と語っていたが、今作では「そこからダークで少し血に汚れている役」を見事にこなしていた。彼のヤサグれた演技は、幕末という不穏な時代を100%体現する。

撮影 / 友澤綾乃

土方歳三役の谷口賢志は、無作法に生やして後ろで結んだ髪の毛やヒゲ、そして凛とした佇まいが鳥肌ものにかっこいい。とりあえず口よりも先に手が出てしまうタイプなのだが、隊士たちへの思いやりを十全に表現していた。フランス生まれフランス育ちの新撰組女性隊士・フランを演じる前島亜美は、騎士道精神に忠実な女戦士として美しかった。彼女の様々な舞台経験を経ての殺陣は見どころ満載で、所作もフランス人という役柄を丁寧にこなしていた。沖田総司役の大平峻也は、どちらかと言えば、第1章のハジメに近い印象を覚えるかもしれない。剣の道にひたすら生きるが、幼さも残る。鏡の向こうに映るもう一人のハジメと言えるかもしれない存在。

藤堂平助役の川隅美慎は、新撰組でのコメディーリリーフを闊達に演じ、永倉新八役の澤田拓郎は、ひたすら藤堂にツッコミを入れて笑いを客席からかっさらっていく。山南敬介の松崎史也は、丁寧な説明セリフで、まったく難しくなく観劇できる。葛木伊織の田口 涼は伝令役として、また山南を慕う男として活躍していた。近藤勇の加藤靖久はまさに豪胆そのもの。殺陣は豪快、話しっぷりも豪快で、まさに隊長といった趣が肉体に宿っていた。

公家である岩倉具視役のウチクリ内倉、武器商人・トーマスグラバー役の鈴木ハルニは、舞台全体の“笑い”をすべて担っていた。時にボケ、ツッコミ、客席から笑いを上手にさらっていく。彼らの所作に思う存分笑って欲しい。

高杉晋作役の鎌苅健太は、たとえ洋風にかぶれているとバカにされようが、己の命をかけて倒幕を目指していた演技は迫力があった。赤袮武人役・安達勇人は、高杉の良き友人として常に側にいる優しい弟のような存在。そして、吉田稔麿の横田龍儀は、長州藩随一のクレバーでピカレスクな役所を丁寧にこなしていた。さらに、どこかあっけらかんとした宮部鼎蔵の村田 恒は、殺陣になると鬼の形相で、こちらも役をしっかりと掴み演じきっている。

転生の術で蘇った剣豪たちも見応えはたっぷりある。とある女を演じた大野未来は妖艶であり可憐だった。柳生十兵衛・水沼天孝は、巨漢の体躯を活かしたオリジナルキャラクターと言ってもいい出来栄え。可児才蔵役の原 勇弥は史実に基づきながら狂気を生きていたし、塚原卜伝役の長瀬貴博は、オラオラ系のお兄ちゃんをコミカルでいて力強く演じていた。

撮影 / 竹下力

石川五右衛門役の村田洋二郎は頭がさがるばかりの演技。さすが百戦錬磨の村田洋二郎と手を叩いてしまいたくなる。そして、佐々木小次郎役の鐘ヶ江 洸は、どこか病的な佇まいがこの舞台で異彩を放ち、長い刀の居合が見事だった。そして、何より宮本武蔵の山口大地のむき出しの上半身の肉体がこの舞台のすべてだと言っても過言ではない。ごつごつした肌色の弾丸。この舞台は、肉体が醸し出す“生きる”という人間の根源を見せつけてくれる。しかもそれを体現しているのが死者だというところに原作と脚本の巧さが際立っている。生とは死とは? そんなことを考える契機になるだろう。

撮影 / 友澤綾乃

最後にやはり坂本龍馬役の萩野 崇だろう。この舞台での坂本はフィクサーとして、公家、新撰組、長州藩、転生した豪傑たちを手玉に取っていく。彼の深みのあるバリトンボイスを聞くだけで幕末にタイムスリップしてしまう。思わず時代を作った偉人への思いを馳せてしまう造形作りに彼の役者魂を感じる。

演出の松崎史也は、すべてのキャラクターに命を吹き込みながら、見どころを作っていて、どのキャラクターを追っても見飽きない。そして役者としても、カンパニーを八面六臂の活躍で見事にまとめ上げていた。その意図を汲み取りながら座長の赤澤の若干21歳の「誠」姿も惚れ惚れしてしまう。

撮影 / 竹下力

この舞台は、登場人物すべてが己の信じる「誠」を背負っている。そしてそれを声高に叫びながら、己が存在を、肉体を賭して戦っていく。その見事な生き様が胸をえぐってくれるのだ。明日を生きるために、この舞台で泣きはらして、怒って、笑う、そんな体験をしてもらいたい。公演は4月1日まで。

ひとりひとりの生き様を届けたい

撮影 / 友澤綾乃
上段左から、鐘ヶ江 洸、山口大地、萩野 崇、鎌苅健太、横田龍儀、安達勇人
下段左から、前島亜美、大平峻也、赤澤遼太郎、谷口賢志、松崎史也

このゲネプロの前に囲みインタビューが行われ、松崎史也、前島亜美、横田龍儀、山口大地、萩野 崇、赤澤遼太郎、谷口賢志、鎌苅健太、大平峻也、安達勇人、鐘ヶ江 洸が登壇した。

松崎史也
第3章、第4章と大きなことを仕掛けていきたい作品です。役者全員が見所ですね。どうか彼らの生き様を見届けてください。僕らがなぜ演技をするのか、演技をしているときに大事にしているのは何か、どんなことを考えているのかを感じ取ってもらいたいです。それぞれひとり一人の俳優としての生き様を届けたいです。

前島亜美
フランスの女騎士でありながら新撰組に入隊しています。たくさんの新撰組の舞台がある中で、金髪の少女が新撰組にいるのはこの作品だけだと思うので、誇りを持ってこれまでの舞台の経験を活かして千秋楽まで頑張っていけたら嬉しいです。

横田龍儀
このシリーズには初参加です。最初はカンパニーの足を引っ張りたくない気持ちが強かったのですが、諸先輩がたにアドバイスをいただいて、みんなに負けたくないという気持ちになりました。新撰組に負けないぞという気持ちを出しながらひとつ一つ丁寧に取り組んでいきます。24日(土)と25日(日)のマチネとソワレ、そして28日の14時の回は番外編となっています。長州と新撰組の本編の少し前の時代が描かれるのですが、僕の演じる本編の吉田稔麿は番外編とは少し性格が違います。本編、番外編、改めて本編を観劇するとどういう風に成長したか、さらに深くわかると思いますよ。

山口大地
現世に蘇った剣豪として、新撰組と長州の戦いの渦に飛び込み、幕末に生きる志士たちが何を見て何を伝えるのか考えてもらいたいです。佐々木小次郎もおりますので、2人の間にも色々な思いが渦巻いていて、そこも見どころです。

萩野 崇
舞台からメディアミックスをしていこうという志の高い作品です。生き生きとリアルでダイナミックな作品になっています。

赤澤遼太郎
毎年たくさんの舞台作品がある中で、今作は僕たちにしか出せない空気感があると思います。今回のハジメはビジュアルから変わっていますが、芯の“少年”の部分は変わっていないです。お客様に新撰組3番隊隊長の勇姿をお見せしたいです。

谷口賢志 役者の生き様を見せるので、初舞台の俳優からベテランの俳優までキャリアは関係なく舞台上でぶつかっているので楽しんでください。

鎌苅健太
先輩たちやスタッフさんやお客様が作ってくれた前作があって、今作がありますから、これからも続けていきたいですね。板の上で戦って己の信じる正義を貫きたいと思います。

大平峻也
今回が初参加ですが、前作を見たときに圧倒されました。そのときに、カーテンコールで松崎史也さんが「みなさんが苦しいときに立ち上がっていた人たちがいたことを思い出してほしい」とおっしゃっていたことを大切にしています。偉人が残してくれた歴史のように僕たちの歴史を残していきたいですね。番外編は、本公演の日に別の作品があるのは面白い試みですね。どちらから観ても面白いので、両方観にきていただければ嬉しいです。

安達勇人
今回の作品を通して、どのシーンもどの役も胸に熱いものを感じました。歴史が動くダイナミックな時代を感じて欲しいです。

鐘ヶ江 洸
このカンパニーは仲が良いだけではなくて、コミュニケーションを密にとっている座組みなので、今後も続けるために必死で頑張りたいと思います。

舞台『「龍よ、狼と踊れ ~Dragon,Dance with Wolves~」 ~草莽の死士~』

2018年3月21日(水)~4月1日(日) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

ハジメ 役:赤澤遼太郎
土方歳三 役:谷口賢志
高杉晋作 役:鎌苅健太
宮本武蔵 役:山口大地
沖田総司 役:大平峻也
吉田稔麿 役:横田龍儀
赤袮武人 役:安達勇人
宮部鼎蔵 役:村田 恒
女 役:大野未来
柳生十兵衛 役:水沼天孝
可児才蔵 役:原 勇弥
塚原卜伝 役:長瀬貴博
フラン 役:前島亜美
近藤勇 役:加藤靖久
山南敬介 役:松崎史也
藤堂平助 役:川隅美慎
永倉新八 役:澤田拓郎
葛木伊織 役:田口 涼
石川五右衛門 役:村田洋二郎
佐々木小次郎 役:鐘ヶ江 洸
岩倉具視 役:ウチクリ内倉
トーマスグラバー 役:鈴木ハルニ
坂本龍馬 役:萩野 崇

あらすじ…清国の姫君、麗貴人の死から数ヶ月。ハジメ、沖田、土方ら新撰組は、幕府転覆を目論む不逞浪士と戦っていた。岩倉、グラバーは新撰組を潰すため長州と接触し、蘇りし剣豪達を戦力として彼らに与える。
剣豪らを奇兵隊として率いる革命の麒麟児、高杉晋作。
亡き松陰の意思を継ぐ吉田稔麿。
やがて暴走する長州勢は、京に火を放ち天皇を攫う計画を実行にうつさんとする。
暗躍する坂本龍馬。
立ち上がるハジメ。
そして蘇る宮本武蔵。
守る者と変える者。生者と死者。刀と刀が入り乱れる狂騒の都。
新解釈幕末転生エンターテイメント活劇第二弾。
これは、誰よりも国を守ろうとした、狼たちの物語。

オフィシャルサイト
オフィシャルtwitter

「龍よ、狼と踊れ ~Dragon,Dance with Wolves~」第1章(2017年)

「ひかりTV」にて3月31日(土)まで無料配信!

オフィシャルサイトより視聴可能。
http://officeendless.com/sp/ddw/