黒川文雄のエンタメ異人伝  vol. 14

Column

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(下)今後のエンタメのキーワードは「アナログ」

ゲームクリエイター小口久雄氏が語るエンタメ論(下)今後のエンタメのキーワードは「アナログ」

戦いながら一緒に歩いてると「何やってんの?」とか聞いてくる

なるほどね。

小口 そういうアナログ感的なところがエンタテインメントではけっこう大事。ゲームの取材だからゲームの話をすると、僕が今一番やってるゲームが『我が天下』(注31)。最近はさすがに忙しいからそれほどでもないけど、ここ1年半ぐらいずっとやってる。

注31:三国志の世界を舞台にしたストラテジーゲーム。おなじみの有名武将たちを配置し、内政を発展させて兵力を増強し、他のプレイヤーと領土争いを繰り広げていく。

小口 これが面白いの。12人でバトルがスタートするんだけど、全部NPCじゃなくてプレイヤーキャラなの。NPCはひとりもいない。人だからそこには人間性があって、そのアナログ感が面白いんだよ。

なるほど。

小口 だから、僕が都市をどんどん増やしていくじゃない。そうすると、ほかの人が攻めてくるんだけど、いきなり攻めてくる人もいれば、他の人と戦っている間に脇からチョロチョロって攻めてくる人もいたりする。で、なんだコイツってガツンと攻めたら、おとなしくなっちゃったりとか、あのゲーム上の人間模様が面白いの。プレイヤー同士で同盟もできるんだけど、ゲーム上でしないでメールで「明日の12時までお互い停戦でどうですか」みたいなことやったりとか。

そんなこともやってるんだ。それは面白いですね。

小口 めっちゃ面白いよ。「このクエストをクリアしたいんで1個だけ城を取らせてください。そのあとは攻めてけっこうですから」みたいなメールが来たりとかさ、分かる?

分かる、分かる。すごいアナログでいいですよね。

小口 ちょこっと攻めただけなのに、全部殺してやるみたいなレベルで反撃してくる人とかもいるしね。「僕はもう寝たいんだけど、寝るとその間に殺されるし」、とか思いながら。でも、結局寝ちゃって朝起きてログインしてみると、みんなやられててみたいな。面白いでしょ?

面白いね~。

小口 それが『我が天下』。人が相手だから面白いの。ただ、あの煩わしさに今の人たちが耐えられるかどうか。だってさ、面倒臭いじゃない。同盟とか言われたら無視できないから、いや今回はそんなヤル気ないんで同盟はナシで、なんてメールしたりね。しかも、きっと相手は多分学生とかだよ。まさか、こっちが58歳だとは思ってないよね。

思ってないですよね(笑)。PCのオンラインゲームとかはやらないんですか。

小口 昔、死ぬほどやった。『ウルティマオンライン』(注32)は7年ぐらいやったね。英語の時代からやってたもん。

注32:古典RPGの代表作である『ウルティマ』のシリーズ最新作として1997年に発売されたMMORPG(他人数同時参加型RPG)。ネットワークゲームの始祖のひとつとされており、日本でも多くの廃人を生んだ。

あ、そうだったんだ。

小口 もう20年ぐらい前だよ、『ウルティマ』をやってたの。「地球の裏側の人と会話してゲームができる、すごい!」ってなって死ぬほどハマった。で、英語でやってると、外国人から一緒に冒険に行こうとか言ってくるわけさ。それで、こっちも「分かった、オッケー」とか言ってね。戦いながら一緒に歩いてると「何やってんの?」とか聞いてくるの。僕が「剣士」とか言うと「ノー、ノー、リアル、リアル」みたいな。

そういうこともあるでしょうね。

小口 そのうち「何歳?」とか聞いてきて、当時もう僕は40歳ぐらいでね。「う~ん」と思って、「君こそ何歳?」って返したら「8歳」って(笑)。

8歳!?

小口 そう、8歳とか言われて、8歳と40歳が一緒に冒険してるわ~って。それで、その子がこっちの歳を聞いてくるから「あ~」ってなってね。ちょっと若めに入力したの。多分、39とかそんなだったと思うけど、そうしたら、その子「F●ck!」とか言って、トトトトトっていなくなっちゃったの、ハハハハハハハ(大笑)。

いなくなっちゃったの?

小口 面白いでしょ。まさか向こうも40のおじさんとはさ。

思わないもんね。でも、すごいね。8歳がやってたんだ。

小口 そう。けっこう衝撃的だった。だって外人に「F●ck!」って言われたんだよ?

確かにそれはビックリするわ(笑)。

小口 寂しかったよ。なんか嫌われちゃった~みたいな。でも、そういうことも含めて楽しかった。其の手のゲーム、今はないよね。今ってそこまで深く関せずみたいな感じでしょ。だから、その中でも『我が天下』はけっこうアナログなのでハマった。

カジノ的なものは、人間の本能に根差すものだから、必ずどこかにできる

最後にひとつ質問があるんですけど、日本のゲーミングは今後どうなっていくと思われますか。

小口 地球上の今までの歴史を考えてもらえればいいと思うんだけど、先進国の中でカジノがないのは日本だけなのね。なんで日本になかったかっていうと、それはパチンコ、パチンコホールがあったから。さっき言った人間の楽しさとかさ、そういうところに紐づいてくる話なんだけど、モノを賭けたいっていう欲求と、その見返りへの期待値みたいなものは人間の本能で、人間がいる限りカジノ的なものは必ず存在する。人間の本能に根差すものだから、必ずどこかにできる。だけど、日本にはパチンコ・パチスロ業界があって、それがカジノの代わりであったんだよね。それはだいたい分かるよね。

分かります。

小口 で、パチンコ業界にはパチンコ業界の悩みとか問題とかがあるよね。それは先人たちがこの業界を作ってきた、これまでの歴史の中にその理由があって、いいところも悪いところもいろいろあるわけじゃない。でも、行政としてはそういうところをクリアにしていきたいっていうのがあると思うのね。

ちなみに今回ウチの会社がネバダでゲーミングのライセンスを1年かけて取ったわけだけど、ものすごく厳しいコンプライアンスチェックが必要だった。だから、日本もだんだんそっちの方になっていくんじゃないかなと思ってる。

それで、今のIR(カジノを含む統合型リゾート)は経済効果を期待していて、法案的にはそれを理由に進めているよね。だから、東京オリンピックが終わった2年後ぐらいには、関東圏や関西圏に大きいモノができると思うんだけど、そのあとだよね。今、和歌山だとか苫小牧だとか、そういう小さな自治体がウチもやりたいと手を挙げているけど、日本でもそういったところにできてくると、また変わっていくんじゃないかなと。

アメリカとかのカジノに行ってもらえば分かると思うんだけどね。実を言うと僕も、この会社を立ち上げるまではちょっと間違えていたんだけど、カジノっていったらラスベガスをみんなイメージするじゃない。ところが、ラスベガスってカジノとしては異色で、あそこは特殊な場所なんだよ。

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