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『ザ・ウォーク』ロバート・ゼメキス監督インタビュー

『ザ・ウォーク』ロバート・ゼメキス監督インタビュー

『ロジャー・ラビット』(’88年公開)では実写とアニメを合体させ、『コンタクト」(’97年公開)ではワームホールのその先にある「こと座」を映像にし、「ポーラー・エクスプレス」(’04年公開)ではパフォーマンス・キャプチャーをCGアニメに取り入れる等、常に時代に先駆けて映像のイノベーションに取り組んできたロバート・ゼメキス監督。
最新作『ザ・ウォーク』もやはり、実在の大道芸人、フィリップ・プティが地上411メートルで挑戦する綱渡りのリアルを精密な合成映像で具現化した、革新的ヴィジュアルが話題だ。


 とにかく、プティが綱の上を行き来するラストの20分は、あまりの怖さに足が震えるのですが、この映画を企画した時点で、あの”体感映像”を撮ると決めていたのですか?

“体感映像”と言っていただきましたが、まさに、それがこの映画を撮った理由のひとつです。この興奮は映画以外のほかの芸術では表現できないと、プティの偉業を知った時、確信したのです。

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それにしても、完成間近のニューヨークのワールド・トレード・センター(WTC)の南北2棟の間にワイヤーを張り、綱渡りしようなんて、あまりに無謀な考えではないですか?

確かに、プティの計画は違法だけれど、反面、アナーキーなアートと言ってもいい。危険な行為だけれど、人を傷付けるわけではないですからね。恐らく今の世の中では実現は不可能だけれど、そういうことが可能だった’74年という時代に存在し得た“生きた伝説”に触れて、僕は映画監督として激しく創作意欲を掻き立てられたんですよ。

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しかし、そもそもプティはなぜ危険すぎるワイヤーウォークに挑んだとお考えですか?

偶然、建設中のWTCの写真を見た時、彼は本能的に“ワイヤーを渡してその上を歩く”と宣言しているんです。それが彼のために建てられた建造物だと直感したんでしょう。パリのノートルムダム大聖堂に綱を張って渡った時も同じです。プティの発想は全てのアーティストに通じるものです。なぜ、絵描きは絵を描き、音楽家は曲を作るのか? “やらねばならない”からです。何かを表現したいという衝動はアーティストに共通するものなのではないでしょうか。

プティの眼下に広がるロウアー・マンハッタンの風景と、風に乗って上空まで聞こえてくるささやかな街の喧騒、そして、何よりも、今はなきWTCの勇姿が完璧に再現されていることにも感銘を受けました。

ツインタワーはふたつのキャラクターとして、この映画に存在しているんですよ。プティ本人と面談した時にも、彼はあのツインタワーをまるで生き物のように、または、アートを描く上でのパートナーのように話していましたね。だから、自分もそういう目線で外観を克明に再現したんですよ。

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本作には3Dとしての見せ場も多くあります。プティがジャグラーやコインを空中に投げ上げる場面は勿論、綱渡りシーンの高度感は3Dならではのものですね。

映画で最も大事なのは物語ですが、『ザ・ウォーク』ではワイヤーウォークのシーンをリアルに見せるために3Dを導入しました。3D技術はここ数年でかなり進歩しています。特に、デジタルシネマの導入によって進歩が加速しました。3D映画のために撮影された映像は右目用と左目用のふたつに分けられ、それを同時に投影し、そこで派生する視差を利用して観客の目に3Dとして届くわけです。その際、以前はフィルムを回すアナログ上映だったので映像にズレが生じていたものが、デジタル投影機には機械的な動きが皆無だから、全くブレがないのです。ワイヤーウォークの場面で観客が震えるのは、3Dデジタルだからこその醍醐味なのです。

映像の未来を開拓してこられた監督ならではのお言葉だと思います。ところで、本日’15年10月21日(取材日)は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(’85年公開)でマーティとドクがデロリアンに乗ってタイムスリップする、まさにその日です。この30年間を振り返られて何を思われますか?

そんな日にここにいられて本当にうれしいです。思えば、30年はあっと言う間でした。その間、僕はその都度使えるツールを使って映画作りを楽しんできました。技術的なアートを用いて、ストーリーを伝えてきたと言い換えてもいいでしょう。このエフェクトを使うために、この展開を考えるというようなことをしたことはありません。あくまで、伝えたいものを最高の形で伝えるために技術を拝借しているのです。アートに対してよろこびを感じるのは、作り上げた時点ではなく、そのプロセスにあるのだと思います。

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その考え方はフィリップ・プティとも根底で共通するものですね。

そうかもしれません。ハイリスクなプロジェクトに対して恐れず、楽観的に取り組む姿勢は、僕らふたりに共通しているから。

次は何に挑戦されるんですか?

みなさんが許してくれる限り、今後も映画作りを続けていくつもりです。これからの映画作りは、より効率的に、より経済的になっていくでしょう。新たな技術の誕生によって!

 

そう自信ありげに締め括ったロバート・ゼメキス監督。タイトル未定のまま製作が進行している次回作は、第二次大戦下、ブラッド・ピット演じる敏腕スパイが、とあるミッションの最中に恋に落ち、結婚したフランス人妻(マリオン・コティヤール)の妊娠に関してある疑念を抱くところから始まる、『ザ・ウォーク』とは一転してロマンチック・スリラーだ。心理劇のどこに技術的アートが投入されるのか? 期待して待ちたい。

文  / 清藤秀人

ロバート・ゼメキス 

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’52年、イリノイ州シカゴ生まれ。自主製作作品がスティーヴン・スピルバーグに認められ、『抱きしめたい』(’78年公開・兼脚本)で監督デビューした後、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで世界的な名声を得る。’94年公開の『フォレスト・ガンプ/一期一会』ではアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、全米映画監督組合の監督賞の栄誉に輝いた。

ザ・ウォーク

1月23日(土)公開

1271033 - THE WALK

監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、シャルロット・ルボン、ジェームズ・バッジ・デール ほか

’73年、パリに移り住んだフィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、大通りでワイヤー・ウォークの芸を披露しては日銭を稼ぐようになっていた。ある日、フィリップは手に取った雑誌に掲載されていた完成すれば世界最高層のビルになるというNYに建設中のワールド・トレード・センターに目を奪われる。このツインタワーの屋上と屋上の間にワイヤーを架けて歩くという危険極まりない違法行為を実現させようと猛烈な勢いで走り始め、フィリップは“共犯者”となる協力者を次々とスカウトしていき……。

オフィシャルサイトhttp://bd-dvd.sonypictures.jp/thewalk/

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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