Interview

魂に共鳴する歌うたい、竹原ピストル。「志を持っていれば、きっと辿り着ける」、自身の信念とも重なるエールを込めた『GOOD LUCK TRACK』

魂に共鳴する歌うたい、竹原ピストル。「志を持っていれば、きっと辿り着ける」、自身の信念とも重なるエールを込めた『GOOD LUCK TRACK』

目を見張る活躍ぶりだった──。7枚目のアルバム『PEACE OUT』から1年ぶりとなるニューアルバム『GOOD LUCK TRACK』をリリースする竹原ピストル。たしかに、前作には「次のステップに進むためのさよなら」という強い想いが込められていたが、まさか“次のステップ”の中に『紅白歌合戦』まで含まれているとはまったく想像していなかった。しかし、彼は規模が拡大した弾き語りツアーを大成功に収め、テレビの大型音楽番組の常連となり、CMに出演し、『紅白歌合戦』に初出場した。宣言どおりに結果を残した。が、決して浮わつくことはない。音楽的な自由を手にした彼は、しっかりと地に足を着け、前だけを見据えている。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望

地に足が着いた活動ができている。しっかり歩んでいった延長線上にそれがありました、みたいな

1年ぶりのインタビューになりますが、大活躍した1年でしたね。

そうですかね。でも、活動の成果に恵まれた、いい年だったなと思います。『PEACE OUT』を出す前に「よー、そこの若いの」を住友生命さんがCMに使ってくれた頃からいい流れが始まっていたように思います。その後、伊藤忠商事さんにも「俺たちはまた旅に出た」を使っていただいて、映画(『永い言い訳』)にも出させていただいたりして。そういう自分がいただいたチャンスと、これまでやってきたことの大きな歯車がグッと合って、ジリジリって前に進んでいる実感がすごくあったので、とても疾走感のある楽しい1年だったなって思います。

前作では「次のステップに行くんだ」っていうことを明確に示していましたよね。

そうですね。そういう意識はすごく込めて作ったアルバムだったもんですから、あの時はあの時で、それまでよりいい成績が出せなかったら作戦を練り直さないとなっていうすごい緊張感はありました。だから、いい結果になって良かったなって安心しましたし(笑)、めちゃくちゃ嬉しかったです。

「次に進むぞ」と言ったとおりの形になったわけですが、まさか昨年末に『紅白歌合戦』に出場するとまでは、正直、インタビューさせていただいたときは想像してなかったです。

自分自身もまったく(笑)。自分もある種、ミュージシャンのタイプとして『紅白』に出る感じではないんじゃないかなって勝手に思っていたところがあったので、決まったときにはちょっと笑っちゃいましたよね(笑)。「え! 俺が!?」みたいな。もちろん喜びとともに、ですけど(笑)。

実際に出演した感想を聞いてもいいですか。

めっちゃ楽しかったですよ! 会場入りから撤収まで拘束時間は長かったですけど、体感としてはあっという間に感じちゃうくらいでしたね。さすが日本を代表する歴史的な音楽の祭りだなって。見るもの、聞くこと、全部楽しかったですね。

お世話になった人たちへの恩返しのひとつという意識はありましたか。

ああ、それは強かったです。それこそが嬉しいというか。『紅白』っていうわかりやすい成果をお見せすればきっとみんな喜んでくれるだろうって。出たときのことも印象に残っているんですけど、嬉しいことに、出場することが発表されたときの祝福のメッセージがとんでもない数で。そのときに、さすがにちょっとは恩返しできたのかなって感じました。

「俺が竹原ピストルを育てたんだ」という方たちがたくさんいらっしゃるでしょうね(笑)。

そう思ってくれる人がいっぱいいると思いますし、お客さんもきっと「だから言ったじゃん!」くらいの感じで思ってもらえていたらいいなって思ってましたね。

ご自身としては次のステップに一気に上がっていった感覚ですか?

もちろん、テレビに出させてもらうことは慣れるものではないし、新たな挑戦ではあるんですけど、感覚としては地に足が着いた活動ができている実感があって。しっかり歩んでいった延長線上にそれがありました、みたいな感じですかね。急に周りが変わったっていう感じでもなかったので。ポンと売れてきた、じゃなくて、ずっと冷静だったと思います。冷静に一個一個、一生懸命やってたなって。

お客さんの反応は変化しましたか。

ライヴのときはそんなに変わらないですね。これはいい意味で変わってないと思います。だけど、初めての人がたくさんいる場で歌うライヴだったら、やっぱり出て行ったときの反応は前と比べれば「ワァー」ってなりますけどね。でも、聴き方は変わらないと思います。

曲作りのほうも変わらずに?

そうですね。曲を作るペースやスタンスはこれまでずっと一緒ですね。ぽこって浮かんだら作って、みたいな。スタッフに「なんかお題ちょうだい」って言って、それをきっかけに書いたりとか、例えば、CMで使ってくださるってことになれば、お題をいただいて書いてみるとか。いろいろありましたけど、これまでと変わらず、『PEACE OUT』を出してしばらくしたら曲は揃っていきましたね。

新しい旅立ち、戦いや挑戦する人たちに向けて、「よっしゃ、頑張っといで!」みたいな気持ち

前作は“区切り”という意識がしっかりとあったと思いますが、今回の『GOOD LUCK TRACK』は?

書いて溜まった曲を選曲して出すっていう感じですね。自分にとらわれずにすごく自由に作ったなっていう感じです。

コンセプチュアルな作り方ではないんですね。先にタイトルの意味からお伺いしてもいいですか。前作の「じゃあね、またね」と、今作の「頑張ってね」という言葉を使うシチュエーションは似てますよね。

たしかにそうですね。『PEACE OUT』の「じゃあね、またね」っていうのは、お世話になった人たちとのしばしの別れというか。「ちょっと次のステージを目指すべく行ってきます。また会う日まで」みたいな“さよなら”でしたけど、今回のタイトルに関しては、このアルバムが新しい旅立ちだったり、戦いや挑戦する人たちに向けて「よっしゃ、頑張っといで!」みたいな気持ちを込めている曲が多かったので、こっちが「じゃあね~」って言うんじゃなくて、「行ってらっしゃい!」って言う側の感じです。“さよなら”とも取れますけど、文字どおり“グッドラック=幸あれ”ですね。

「じゃあね。またね」と手を振って去りゆく側から、「頑張ってね」と背中を叩き、見送る側になっているっていうことですよね。そのグッドラック感を最も象徴している曲を挙げるとすると?

2曲目の「Here we go!!」はガキンチョたちや少女たちが大人になっていくっていうか、次の段階へ旅立っていく、「行ってらっしゃい!」みたいな感じが一番出ていると思います。

どんな発想から生まれた曲でした?

お題遊びからだったと思います。マネージャーに「卒業をテーマに書いてみては?」って言われて。だから、あんまり主観視してないというか。視点としては、端から少年少女たちの背中を見守っているみたいな感じですね。

ちなみに、「いくぜ!いくか!いこうよ!」は?

建設会社さん(奥村組)のCMソングで、マラソンの大会を応援していると聞いたので、道を作る人と道を走る人、両方いけるものをと思って書いたんです(笑)。

(笑)ご自身のどんな想いが入っていますか。

曲を書いたあとに、そういえばこういうことでもあるよなって思ったことがあって。レコード屋で「中津川フォークジャンボリー」のライヴ映像と音源のセットみたいなものを買ったんですけど、そこには友部(正人)さんとかエンケン(遠藤賢司)さんとか、若かりし頃のレジェンドたちが今の僕より全然年下の頃の映像が入っていて。それを観ていて、自分は弾き語りを志してきましたけど、やっぱり先輩方が作った道の上を僕らも歩かせてもらっていて。そして、僕らは僕らの世代でまた新しく道を刻んでいかなきゃいけないんだろうな、みたいな。そんなことをぼんやり思ったことがあって。それってこの曲にも当てはまることだなって。後付けではあるんですけど。

なるほど。“TRACK”には“足跡”とか“轍”という意味もあるので、「GOOD LUCK TRACK」とかかってるのかなと思ったんですが。

ああ、そうなんですか。“TRACK”って言葉は、単純に「GOOD LUCK TRACK」って言ってて気持ちいいかなって思って付けたというか、言いたかっただけなんです(笑)。でも、まさにドンピシャなヤツだったんですね。それは知らなかった!

(笑)「ゴミ箱から、ブルース」はドラマ『バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』の続編で起用された曲ですね。

正確には書き下ろしではなくて、お話をいただく直前にたまたま新曲としてあった曲だったんですけど。

そうなんですか。前回の「Forever Young」もそうでしたよね?

そうです。なんてラッキーな!っていう。でも、お話をいただいたときに、あのドラマには「この曲しかないだろう」って思いました。やっぱり「Forever Young」同様に偶然にもこんなにぴったりな曲が出来てて良かったなって思いましたね。

“ブルース。。”というフレーズだけでグッときます。

たしかに作り方としてはそんなんだと思います。メロディと、“ブルース。。”っていうのが最初にあった。そこに行きつくまでの描写って、歌い始めるまでの自分っていうか。本当はこうしたいのに何も行動しねぇ、ウジウジ過ごしていたあの頃みたいなものをなんとなく思い返しましたね。過去のグダグダした自分に対して、こうやって歌にしてみたら先が開けたじゃないか、みたいな、そういう気持ちも込めて作りました。

ドラマのエンディングでは前作同様にキャストの方の前で生演奏をしていて。

はい、先輩方の前で。やっぱりね、「Forever Young」のときもそうでしたけど、膝が震えるほど緊張しましたね、今回も。そして、大杉漣さんが唐突にお亡くなりになってしまって……それもある意味、ぎゅっと刻み込まれてしまった曲になりましたね……。大杉さんにこれからも頑張ってる姿を見せていくしかない、今はそういう気持ちが固まった曲になったなって思います。

1 2 >