Interview

映画『ミスミソウ』でも存分に発揮された目ヂカラ。 次世代ヒロイン・山田杏奈は観る者を圧倒する!

映画『ミスミソウ』でも存分に発揮された目ヂカラ。 次世代ヒロイン・山田杏奈は観る者を圧倒する!

家族を焼き殺された日から、少女は修羅と化した──。
愛情と表裏一体の憎悪を増殖させて、凶行に走っていくヒロイン。凄惨でもの悲しく、しかしどこか切なさと美しさを感じさせる物語を綴り、読む者を釘付けにした押切蓮介の伝説的コミック『ミスミソウ 完全版』が待望の実写化を果たした。メガホンをとったのは、映画『先生を流産させる会』(’12)で衝撃を呼び、『ライチ☆光クラブ』(’16)でディストピアを描いた内藤瑛亮監督。残酷な思春期を過ごす少年少女たちの心情と行動を容赦なく描写した世界に、今後の映画界を担う逸材たちが結集した。

今回は主人公にして孤高のヒロイン・野咲春花を演じた山田杏奈をフォーカス。力強い眼光の奥にある、柔らかでハニカミ屋な素顔も浮き彫りにする。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 冨田 望

原作を何度も読み返して挑んだオーディション。「好きな作品やキャラクターはできることなら演じたい」

降り積もる雪の中で長期のロケをしたことが、役やお芝居に大きな作用をもたらしたと思うのですが、いかがでしょうか?

そうですね、リアルに雪景色がある日常を過ごしたことは、確かに大きかったと思います。ただ、実際に雪が降っていた中で撮ったのは、春花をいじめていた男の子2人に復讐をするシーンだけで、ほかのシーンでは雪を”降らせて”いました。と言っても積もっていたのは本物の雪なので、寒いことに変わりはなかったんですけど(笑)。スキー場が近くにあるような地域でしたから…。

ロケ自体は、ちょうど1年くらい前ですよね。

はい、まだ雪深かった3月に春花が復讐していくパートを撮っていって、4~5月の春になってから同じ場所で雪がない季節のパートを撮りました。

なかなかヘビーな世界観の物語ですけど、山田さん自身はどう受け止めたのでしょう?

たまたまなんですけど、中学生の時に原作を読んでいたんです。個人的に、バイオレンス要素の強い物語やバッドエンドを迎える話がわりと好きなので、中学3年の時だったかな? 友達に勧められて読んだんですけど…救われない、重たい話だなぁというのが率直な感想でした(笑)。そのちょっと後に、この映画の主役オーディションがあるという話を聞いたんですけど、その時も「あぁ…あの話を映画化しちゃうんだ」って、好きな作品だからこそどこか冷静に思っていた自分がいて。その一方で、どんな映像になるんだろうと期待している…実は『ミスミソウ』の世界観に惹かれていたことに気がついたんです。好きな作品やキャラクターは、できることなら演じたいという気持ちがあるので、オーディションを受けようと思った時から原作を何度も読み返して、自分なりに消化した上で(オーディションに)臨みました。

山田さんの”目ヂカラ”の強さが遺憾なく発揮されたことを考えると、まさしく適役だったのかなと思います。

わ、うれしいです…。最近、「目ヂカラが強い」と言っていただくことが多いんですけど、(言われるまで)私自身は全然自覚していなかったんです。15歳くらいの時に『城とドラゴン』というゲームアプリのCMの撮影で、まばたきをしないでお芝居をしたところ、スタッフの方から「目ヂカラがあるね」と言われたのが初めてだったんです。映画『あゝ、荒野/前編』の時も、「気が強い妹を意識して」と監督から言っていただいたので、リングで戦っているお兄ちゃんを応援している時も、怒りの混じった声援を意識したお芝居をさせてもらって。『ミスミソウ』の春花も「復讐するモードの時はあんまり感情を出さないように」と、内藤監督から言われていたので、ふだんの春花とモードを分けて演じていたんですけど、感情を出さない時も目の強さだけは意識するようにしていました。特にクライマックスは…特別な相手なので、意志が宿っていたな、という感覚があって。単に「裏切られた、だから復讐する」っていうだけではなくて、本当は戦いたくない気持ちもあったんだろうな、と思ったんです。その悲しさだったり、やりきれなさのような感情も、あの場面では意識していた覚えがあります。

なるほど、あのワンカットの凄みの根源がわかったような気がします。

私自身としては、血まみれになったり人を刺したりする芝居を楽しんでいたほうなので、精神的にキツかったという感覚はあんまりなかったんですけど、クライマックスだけはすごく辛かったんです。役としても、自分自身としても。「なんで、この人に憎しみを向けなくちゃいけないんだろう」という春花の気持ちとか葛藤がわかるような気がしたので、その気持ちは大事にしようと思って演じました。

登場人物の誰もがどこかに狂気をはらんでいるのが、『ミスミソウ』の特徴でもあるんですよね。

そうなんです。なので、現場でもキャストのみんなで「みんながみんな、どこかおかしいよね」っていう話をしていました。言ってしまえば、春花の復讐も冷静に考えたらけっして肯定できない行為であって…。

誰も正しくはない、でも完全に否定も肯定もできないという。

はい。でも、春花としてあの場所に立つ以上、彼女が正しいと思って行動していることは、演じている間は素直に受け止めようっていうスタンスでした。

いじめという社会が生み出す歪んだ構造をあぶり出す一方、バイオレンスなエンターテインメントという側面もあって、さまざまな見方ができる映画かなとも思ったんです。内藤瑛亮監督ならではの、と言いますか。

監督の『ライチ☆光クラブ』を観ていて「どういう演出をなさるのかな?」と思っていたんですけど、現場でご一緒してみると、春花のキャラクターに関して細かい指示があったわけではなくて。ただ、さっきもお話したように、復讐者モードとふだんのモードを分けるということと、相場くん(=清水尋也)と2人でいる時は、ちょっと雰囲気が違うということは意識していました。いじめを受けた子たちに復讐している時は感情を表に出していないんですけど、押し込めていた感情が出る場面では、春花がどういう気持ちなのかということは、監督もお話をしてくださって。あと、叫び声をあげるシーンでは、その都度、内藤監督がお手本を示してくださったんです(笑)。やっぱり、状況によって叫び方も違ってくるので、実演してくださったことで、わかりやすく飲み込めました。

「どなたが観ても納得のいく芝居をすることが私の仕事。満足していただける表現を忘れないようにしたい。」

それから、同世代の人たちに囲まれたことで、励みや刺激になったことも多いと思われますが、どうでしょう?

そうですね。休憩時間にお話はするんですけど、春花をいじめる役の子たちとは、一応、役での関係性を考えて距離感を縮めすぎないようにしよう、と意識していました。反対に、相場くんや妙ちゃん(※大谷凜香演じるクラスのボス的存在・小黒妙子)とは話すようにしました。やっぱり同い年くらいの子たちが集まる現場だったので、自然と刺激を受けていた気がしています。

その中で主演を張る、ということに対しては、どう感じていたんでしょうか?

他人事のようで何ですけど、「主演か…」みたいな漠然ととらえていて。「自分で大丈夫なのかな」って(笑)。ただ、正直なところ”主演だから”といって何をすればいいのか、わからなくて。自分なりに「主演らしさって何だろう?」と考えたりもしたんですけど、結局わからなくて。むしろ、清水くんのコミュニケーション能力の高さに助けられていました。

そうなんですね。清水さんは役のイメージからか、口数が少ない人という印象があるもので…。

私自身が人見知りをする方なので、初めてお会いした時に(清水さんが)すごく気をつかって話してくれたんです。こんなことを言うのも失礼なんですけど、それがすごく意外だったというか…(笑)。いろいろな話題を振ってくれたので、「あ、話しやすいな」とほぐれていった感じがありました。なので、私自身は全然”座長”みたいな感覚じゃなくて、みなさんに引っ張っていただいた現場だったなと思います。

座長ではなくて、座組が大切だということですね。

そうだと思います。同世代の人たちが多かった分、普通に学校のような雰囲気で共通の話題で盛り上がったりもしつつ、どこかでちゃんと『ミスミソウ』の世界の空気を共有できたのは、自分としても大きかったなと思います。

そういった中で、なかなか映画そのものを客観視するのは難しいと思いますが、印象に残っているシーンなどはありますか?

妙ちゃんと春花に溝ができる前の回想シーンは、すごく画として美しいなと思いました。きっと監督も意識的に美化されたシーンにしたんじゃないかなって感じたんです。あのシーンがあるから、春花の復讐がどこかもの悲しく思えるような気がして。しかも、「あ、ここでそのシーンなんだ!」という編集がされていて、いろいろな感情がわき起こるという意味でも、素敵だなあって思いました。

原作が多くの人に愛読されているコミックですが、山田さんとしてはどういった感じで原作を意識したんでしょう?

原作がある作品に参加させていただく時は、その本やマンガを持って現場に行きます。好きな作品が三次元になることに対して、原作ファンの方々が拒否反応を示したとしても、理解できなくはないんですけど…いざ、自分が当事者として演じる以上、その気持ちは切り離さないといけない。批判されることは覚悟しながらも、全力で役と向き合って演じる使命があるので。だから、すごく気持ちとしては複雑で難しいんですけど…どなたが観ても納得のいく芝居をすることが私の仕事だと思っているので、そこはいつも意識しています。ただ、原作に完璧に近づけることがゴールではなくて、映画なら映画、ドラマならドラマとして満足していただける表現を、忘れないようにしたいと思っているんです。

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