Interview

THE YELLOW MONKEY・菊地英昭のソロプロジェクトbrainchild’sが10周年。新作『STAY ALIVE』を紐解きながら、改めてバンドのスタンスを探る

THE YELLOW MONKEY・菊地英昭のソロプロジェクトbrainchild’sが10周年。新作『STAY ALIVE』を紐解きながら、改めてバンドのスタンスを探る

brainchild’sはTHE YELLOW MONKEYのギタリストEMMA(菊地英昭)のソロプロジェクト。メンバーを流動的にして、その時その時で自由な音楽を探求してきた。第7期となる現在のメンバーは、ボーカル・渡會将士(FoZZtone)、ベース・神田雄一朗(鶴)、ドラム・岩中英明(Jake stone garage)で、2016年にミニアルバム『HUSTLER』をリリースして以来、引き続き活動を続けている。そして今年、brainchild’s は10周年アルバム『STAY ALIVE』をリリースして、全国ツアーに出る。
『STAY ALIVE』はギターリフを軸にしたロックや、浮遊感のあるミディアムナンバーなど、アイデア溢れるアルバム作りがなされている。EMMA自身がボーカルを取る曲も収録されていて、例えばアルバムタイトル曲「STAY ALIVE」は大切なものに捧げられていて、EMMAの誠実な声が心を打つ。またボーナストラック「PANGEA 2018」はドラマチックなセルフカバーで、バラエティに富んだ楽曲がアルバムを彩っている。この充実のフルアルバム『STAY ALIVE』について、EMMAと渡會に話を聞いた。

取材・文 / 平山雄一

brainchild’sは、才能のセッション

取材の初めにいきなり聞くことではないと思うんですけど、このバンド、いつまでやるの?(笑)

菊地英昭 あはは! それは、いつまででしょう? 自分でもわからないですよ。

brainchild’sって、ちょっと変わっているプロジェクトじゃないですか?

菊地 そうかもしれないですね。プロジェクトっぽく始めたんですけど、今はバンド色が強くなってきていて。そのうえ、今はほかにもバンド(THE YELLOW MONKEY)があるという状況だし。でも、自分的には特にすみ分けを考えていたりはしなくて、たまに曲を作っているときに「これはブレチャ(brainchild’s)でやりたい」っていうのがあったりはします。だけど、自分が主体でやってるバンドはブレチャで、メンバーそれぞれが4つの駒になってるバンドがTHE YELLOW MONKEYという違いしかない。ちょっと言い方が雑かもしれないですけど(笑)。だから、これがいつまで続くとか意識せずにここまでやってきてますね。

一緒にやるメンバーによってインスピレーションは違うものですか?

菊地 それは違いますね。もちろんメンバーに関係なくできる曲もありますけど、今は「このメンバーでやりたい」と思って書く曲も結構あるので。

そういうところも、brainchild’sの面白さのひとつではあるかと。

菊地 そうですね。そこの引き出しが今、泉のように湧き上がっているという。

菊地英昭

ほんとに湧きまくりですよね(笑)。しかも、いろんな曲を歌えてしまうボーカリスト渡會くんがすごい。

菊地 ほんとに。歌えちゃってるんですよね(笑)。

渡會将士 いやいや、なんとか歌ってるだけで、ホントに大変です(苦笑)。

難しい曲も自由自在に歌っていて、すごくこなれている感じが気持ちいい。

菊地 たしかに、こなれてますよね(笑)。

渡會 家で相当練習して、散々直したりもしているので。

そういう意味ではすごく時間をかけて作っているんですか?

菊地 歌入れは結構時間をかけてやってます。しかも家でもやってもらってるから。

渡會 本番のレコーディングは3〜4テイクで終わるようにはしてるんですけど。

菊地 努力してますよね(笑)。

一目惚れ。「こういう人は日本にいないな」と思って

渡會さんは、最初、EMMAさんから「一緒にやろう」と言われたときは、どんな気持ちだったんですか?

渡會 小学生のときからテレビの中で見ていた人だったので、最初は「これって、嘘? もしかして騙されてるのかな」みたいな感じだったんです(笑)。

菊地 アメリカにいたときだもんね、最初に話を聞いたのは。

渡會 そうです。陽気も暖かだったのもあって、ポーッとしながらアメリカで1ヵ月くらい過ごしていたんですけど、人づてに連絡がきて。前の作品の音源をデータでもらって聴いたら「あれ!? これ、“鶴”のあっちゃん(秋野温)じゃん!」と思って驚きました(笑)。

菊地 “鶴”とは世代が近いんだよね?

渡會 はい。こういうことを自分ができるんだったら面白いなと思って。でも、いったいどういうスタイルのバンドなんだろうと半信半疑みたいな感じで、謎のまんまスタジオに行ったら、EMMAさんが普通にいて、後ろにはギターがバァーっと並んでて(笑)。そこで「ちょっとやろうよ」ってセッションしたりしたんですけど、もはやどういうふうに緊張していいのかもわからないという状態で(笑)。けど、やっていくうちに、下ネタとかも気さくに言ってもらえるんで(笑)。もちろん先輩後輩というのはあるんですけど、ちゃんとバンドキッズという感じでやらさせてもらってます。

菊地 でもね、MCはワッチ(渡會将士)のほうが先輩なんで、僕が諭されるという(笑)。

渡會 そんなことないですよ、「時間ですよ!」って言うくらいです(笑)。

EMMAさんは、もともと知り合いのミュージシャンたちに声をかけて、brainchild’sで活動してきたんですか?

菊地 実はそうじゃないんですよ。ベースの神田(雄一朗)くんとは「一緒にやろう」と言っていたけど、ボーカルとドラムが決まってなくて。自分でも探してはいつつ、「誰かいいボーカルとドラムはいない?」って人にお願いもしていて。その中のひとりがワッチだったんですよ。資料をいただく前にYouTubeで名前を検索して観て、一発、一目惚れでした。「こういう人は日本にいないな」と思って。『HUSTLER』(16年2月発表のミニアルバム。渡會が参加して初の作品)を出すときに自分がやりたかった音楽性に、この人の声が乗っかったら最高だろうなと思って。

すでに下敷きになるサウンドが見えていた?

菊地 そう。そのときにやりたかった音楽性があったので、それを具現化できて、しかもその上を行ってくれるボーカリストなのではと思ったから。

渡會将士

渡會さんは何でアメリカにいたんですか?

渡會 ただの一人旅です。その年(2015年)に自分のバンド(FoZZtone)が活動を休止して、そこからソロでいろいろ回っていたりもしたんですけど、刺激というかストレスがかからないと面白い曲が書けないなと思っていて。そんなタームだったので、どこか変なところに行こうと考えたときに、アメリカには行ったことがなかったので行こうと思ったという感じです。ニューオリンズでジャズを聴きながら、安いホステルでビールばっかり飲んでました(笑)。そんなふうにぼんやり過ごしていたら、ビックネームから連絡がきました。

菊地 FoZZtoneが活動休止だって聞いて、「やったー!」と思って(笑)。

渡會 あはは!

曲は、渡會くんの声を想定して作っていったんですか?

菊地 出会ったあとはそういう曲もありますし、今回もありますね。『HUSTLER』のときは、アルバム用に書き下ろした曲もあったんですけど、その前から貯めていたデモもあって。「これを歌ってくれる人いないかな」っていうので、探してた感じですね。

歌ってくれる人が見つかった!

菊地 そう、本当に巡り合わせとタイミングですね。

自分からしたら宝くじが当たったようなもんだった

ちなみに今作『STAY ALIVE』の制作期間はどのくらい?

菊地 去年の10月くらいからリハーサルを始めて、年をまたぎながら、大きなレコーディングのブロックは2回くらいです。去年の秋と、今年の正月明けかな。

THE YELLOW MONKEYの活動と重なってますね。

菊地 去年の秋はTHE YELLOW MONKEYのファンクラブツアーをやっていて、東京ドームが12月だったので、その間くらいにレコーディングをしてました。

渡會 その頃のEMMAさんのスケジュールがすごかったですよね。吉川(晃司)さんのツアーもやっていらしたから、俺らのリハに入っているときにローディーさんと「吉川さんで使うギターはどこにある? 明日、イエモンだからさー」みたいな会話をしてて。「ここはどこのリハなの???」みたいな感じでした(笑)。

菊地 もう、機材のやりくりが超大変で(苦笑)。

渡會 そんな姿を見ながら「すげえなぁ」って思ってました。

菊地 でも、メンバーもみんな活躍してるから。

渡會 僕らはドサ回り世代なんで(笑)。

菊地 ソロでもやってるしね。ライヴハウスにも詳しくて、現地に行っても知り合いは多いし、頼もしいですよ。

このアルバムの中で渡會くんの声からインスピレーションを受けた曲というと?

菊地 例えば1曲目の「Better Day to Get Away」は、今のメンバーでアルバムを作るのを前提で、そもそもアルバムの1曲目にしようと思って作った曲だったり、「TWILIGHT」もそうでしたね。

全体的に場面転換がはっきりした曲が多いという印象がある。リフがあって、そこから歌に入っていったり。

菊地 そうですね。歌い回しというか、譜割りに“渡會節”があるので、そういうところをこの2曲は発揮できるだろうなと考えたりはしました。

「Esper Girl」のサビの譜割りは驚きました。カッコいい!

渡會 EMMAさんからデモをもらったときに、たぶん早口で歌えってことなんだろうなと思ったので。

菊地 あはは。

渡會 デモをもらった段階から平ウタ(Aメロ)の部分がフワーッとしてて、サビがギュッとしてる印象だったので、これは露骨にやったほうがいいのかなと。

菊地 よく言葉があんなにいっぱい思いつくよね?

渡會 これ、一回録ってから、また録り直しましたからね。一回やってみて歌詞を直そうと思ったから。

そういうところがちゃんと練られているアルバムだなと思いました。

菊地 ほんと、才能のセッションじゃないですけど……ほんとにセッションがちゃんとできてる。ソングライティングでも、レコーディングでも、音を合わせてもセッションができているので、素晴らしいなと思ってます。このメンバーが集まったときに、自分からしたら宝くじが当たったようなもんだったんですよ。その感覚を今でも保ててます。

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