Interview

秘密を開示し合って、相手を少しずつ変えていくのが性の醍醐味。「娼年シリーズ」最終章! 石田衣良『爽年』

秘密を開示し合って、相手を少しずつ変えていくのが性の醍醐味。「娼年シリーズ」最終章! 石田衣良『爽年』

自分たちの性癖を満たし合えばいいと思うんです。
例えば、自衛官の服装してほしいとか(笑)

なるほど。リョウに関しても、1、2作目では「欲望の沼に入って行くようだ」と言っていましたが、本作ではだいぶスタンスが違うように感じました。女性の欲望に対して、どこか俯瞰しているというか……。

マネージャーという立場的もあると思いますが、それこそ性の在り方が、だんだんと貧しくなっているというのもあるでしょうね。それが盛り上がっていれば楽しいお祭りになりますけど、性が貧しくなれば娼夫だって、ある種カウンセラーとかヒーラーみたいなことが仕事になっちゃいますからね。でも今、男の子にはそれはすごく大事なんじゃないかな。そういった資質がないと、あんまりモテないかもしれない。それこそどんなにイケメンでも、「一回セックスしたら、その後はもういいや」ってなっちゃう人はダメでしょう。要は、セックスの中でお互いに成長できるかどうか、ということなんだと思うんですよ。

©⽯⽥衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

どうしたらリョウのように、女性にとってある意味「ヒーラー」みたいなところまでたどりつけるんでしょうか……。

残念ですが、男の人でそこにたどりつく人ってすごく少ないんですよ。要するに、ナメているから。そういう人って、人生ってこうだ、結婚ってこうだ、女ってこうだ、って。その決めごとの中だけで貧しく地味な人生を送るだけです。まぁ、男性だけの問題ではなく、女性が男性を育てることもできると思うので、頑張ってほしいなと思いますけどね。

そう思うと、リョウは本当に素晴らしい男性ですね。女性が、誰にも言えなかった欲望やコンプレックスを思い切って打ち明けても、サラッと拾ってくれて、話を聞いて、理解をしようとしてくれる。本書を読んでいると、女性として許されたり、癒されたりした気持ちにもなります。

そういうことが先天的にできる人っているんです。けど、そんな彼が1時間1万円の娼夫って、絶対売れっ子になるでしょ(笑)。

そうですよね。安すぎるくらいです(笑)。

僕が書いているキャラクターには結構できすぎの子が多いんだけど、「池袋~」のタカシとリョウくんは、無敵の2大イケメンキャラ(笑)。

だから、読者の方には、現実の男性にがっかりしないでほしいですね(笑)。

たしかに。お金を払わなくたってパートナーと普通にできることなんだから。お互いにいろいろ話し合って、自分たちの性癖を満たし合えばいいと思うんです。例えば、自衛官の服装してほしいとか(笑)。何でもいいんですよ。大事なのはセックスよりも、そこに至るまでの会話。だから皆さんにはまず、面白いお話しをできる人になってほしいなぁ。

会話をする機会を持つのが大切ですもんね。そして、パートナーをリョウとまではいかなくても、近づくように育てる努力をするというか。

実は、それが一番面白いんですよ。よく高校生が彼氏と1、2回セックスして、全然ダメとか言うけど、そういうことじゃないんだよね(笑)。何年かかけて、お互いに秘密を開示し合って、それをちゃんと性的に実現して、相手を少しずつ変えていく、というのが実は性の醍醐味なので、そこを取り組んでほしいところですよね。

娼夫・リョウという難役を、桃李くんは透明感と硬質感を保ったまま最後まで演じてくれた。

ちなみに、舞台に続いて映画でもリョウを演じている松坂桃李さん、まさに体当たりのお芝居で、大変そうだなと思いましたが、素晴らしかったです。

とてもよかったですよね。さっき、僕の文体は下品なことを書いても下品にならないと言いましたが、俳優としての彼の存在にも同じことが言えると思うんです。この娼夫・リョウという人間の役は、ダメな人が演じるとどんどん崩れて、歌舞伎町の二流店のホストみたいな感じになってしまう。けれど、彼は透明感や硬質感を保ったまま最後まで演じてくれた。役者としてのそういう資質があるんでしょうね。特に今回のお芝居は、セリフで動いていく話ではなくて、実際の肉体と性的な行為のアンサンブルで成長を表現するという難しいファクターがあったので、そこをうまく乗り切ってくれたと思います。そういえば、桃李くんと対談をしたときに年齢を聞いたら、「今29歳です」と言うので、「『爽年』のリョウくんも29歳なんだよ」っていう話になって。僕は桃李くんの年齢を知らなかったから、お互いちょっとビックリしたんですよ。

©⽯⽥衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

そこにもいい偶然があったと言いますか、運命的なものを感じますね! 映画の話になりますが、観た後に女同士で話がとても盛り上がったんです。もう、言いたいことが出てきて、出てきて(笑)。なので、小説を読んで、映画を観て、みんなでわいわい話してみるとすごく楽しそうだな、と。

小説だったり映画だったり、もっと性を明るくオープンにして、みんなで楽しめるようになると、すごくいいと思います。最近、読書会というのがありますけど、この映画も鑑賞会にして、終わったら何人かでバーとかに飲みに行って、感想を話し合うとか。セックスについてちゃんと楽しく話そうっていう。カップルで観て、そのままラブホテルに行くっていうのもいいじゃないですか(笑)。クローゼットに押し込んだ性を光の中に引っ張り出せば、必ず何かそれなりのいいことはあると思いますし、少なくとも僕の書く本の中では、性とか恋愛の王国みたいなものを、ちゃんと作っていきたいですね。

石田衣良(いしだ・いら)

1960年、東京都生まれ。‘84年成蹊大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。‘97年「池袋ウエストゲートパーク」で、第36回オール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。‘03年『4TEENフォーティーン』で第129回直木賞受賞。‘06年『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞受賞。‘13年『北斗 ある殺人者の回心』で第8回中央公論文芸賞受賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催
https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html

書籍情報

『爽年』
「娼年」シリーズ最終章。ついにリョウの物語が完結!

石田衣良・著
集英社刊

映画化(R-18指定)で話題の「娼年シリーズ」最終章。最後の、夜。――始まりはこのバーだった。娼夫として7年もの歳月を過ごしたリョウ。御堂静香の後を引き継ぎ、非合法のボーイズクラブLe ClubPassion(「クラブ・パッション」)の経営を一手に引き受けるまでに。男性恐怖症、アセクシュアル……クラブを訪れる女性たちにも様々な変化が。リョウは女性の欲望を受けとめ続ける毎日の中で、自分自身の未来に思いを巡らせ始めた。性を巡る深遠な旅の結末に、リョウが下した決断とは……。大ヒットシリーズ『娼年』『逝年』続編。


『娼年』
映画『娼年』原作小説!

石田衣良・著
集英社文庫

恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく……。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影を鮮烈に描きだす、長編恋愛小説。


『逝年』
永遠の別れを前に、愛する人に自分は何ができるのか?

石田衣良・著
集英社文庫

人生にも恋愛にも退屈していた二十歳の夏、「娼夫」の道に足を踏み入れたリョウ。所属するボーイズクラブのオーナー・御堂静香が摘発され、クラブは解散したが、1年後、リョウは仲間と共に再開する。ほどなく静香も出所するが、彼女はエイズを発症していた。永遠の別れを前に、愛する人に自分は何ができるのか? 性と生の輝きを切なく清澄にうたいあげる、至高の恋愛小説。傑作長編『娼年』続編。

映画『娼年』

TOHOシネマズ新宿他にて全国公開中!

松坂桃李
真飛聖 冨手麻妙
猪塚健太 桜井ユキ ⼩柳友 ⾺渕英⾥何 荻野友⾥ 佐々木心音 大谷麻衣 階⼾瑠李
⻄岡德⾺/江波杏⼦

脚本・監督:三浦大輔
原作:⽯⽥衣良『娼年』(集英社⽂庫刊)
製作幹事:ファントム・フィルム ハピネット
制作プロダクション:ホリプロ
企画製作・配給:ファントム・フィルム
レイティング:R18+
©⽯⽥衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

オフィシャルサイトhttp://shonen-movie.com/
公式Twitter@shonen_movie

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