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PLAYBACK 1995 THE ANIMATION Part I

PLAYBACK 1995 THE ANIMATION Part I

今回の「PLAYBACK 19XX THE ANIMATION」がピックアップするのは1995年。この年、アニメは“子供向け”を卒業し、本当の意味で大人も楽しめるものとなった。また、そのことが世界に置けるジャパニメーションの評価も一変させていくことに……?

Part I
オタク世代クリエイターたちの“臨界点”だった1995年

『新世紀エヴァンゲリオン』はこの年スタート

これまでいくつかのアニメ史に残る「ターニングポイント」を紹介してきた「PLAYBACK 19XX THE ANIMATION」。今回取り上げる1995年は、その中でもとりわけ大きな動きのあった超・ビッグイヤーと言える。何せ、今に至るまで“現役”作品としてファンを魅了し続けている傑作『新世紀エヴァンゲリオン』が発表された年なのだから。

その記念すべき第壱話「使徒、襲来」は1995年10月4日(水)18時30分に放送開始(テレビ東京系)。この枠ではそれまでギャグテイストの子供向けアニメ『ミュータントタートルズ』(カワバンガ!)を放送していたのだが、一転、ハードなSFアニメがスタートすることとなった。これ、何も知らずに継続視聴していたお子様にどんなトラウマを与えることになったのやら……。ちなみにその前週『ミュータントタートルズ』最終回にエヴァの新番組予告が放送されているのだが、ミサトさん役の三石琴乃が「人類の明日を守るため汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンが今、出撃する!」とあおるなど、普通のロボットアニメとしか思えない内容だった。

この放送枠は正直、アニメファンが全く注目していない時間帯だったため、放送開始当初の『エヴァ』は今からは想像できないようなパッとしない視聴率に(7%前後)。今のようにSNSが普及していなかったこともあって「すごい!」という評価が広まるのにも時間がかかってしまった。筆者は当時大学生で、回りにコアなアニメファンも多かったのだが、それでも観始めたのは第参話「鳴らない、電話」から。アニメファンの“最重要話題”になったのはアスカが登場する第八話「アスカ、来日」の頃だ(ただし、本作が“一般”に普及=社会現象となるのは深夜再放送が視聴率5%台をたたき出した1997年以降のこと)。

本作のすごさは、(もうさんざん言い尽くされているが)庵野秀明監督を筆頭とする、アニメ・特撮世代のクリエイターたちが、「自分たちが好きなもの」を遠慮なしにぶち込んだ“ごった煮”感と、そこに先の読めない“謎”を盛りこんだこと。

ただし、これらは何も『エヴァ』の発明というわけではないことに注意。前者については、10年以上前の『超時空要塞マクロス』(1983年)がアイドル×ロボットという手法で具現化させているし(以降、OVAを中心に「オタク世代アニメ」市場が拡大)、後者についても、演出の1つとして定番ではあった。本作の“手柄”はそれを極めて高い次元で作品の面白さに結び付けたこと。10年、あるいはそれ以上前から萌芽しつつあった新しいトレンドを大きく花開かせたのが『エヴァ』だったというのが正確だろう。

本作が“突然変異”的作品でないことは、制作会社であるガイナックスの過去作品を観れば明らか。『エヴァ』以前の作品は一般にあまり知られていないものが多いのだが、実はそこには『エヴァ』のエッセンスが多く含まれており非常に興味深い。

例えば1987年に公開された劇場映画にしてデビュー作『王立宇宙軍 オネアミスの翼』からはその細部に対するオタク的なこだわりが、翌年リリース開始のOVA『トップをねらえ!』では、オタクパワーを爆発させたようなやりたい放題の“ごった煮”感が感じられる。また、1990年にNHKで放送されたガイナックス初の長編テレビアニメ『ふしぎの海のナディア』は、『エヴァ』に向けた第一歩(プロトタイプ?)と言っても過言ではない実験作。当初は世界名作劇場のような冒険活劇テイストなのだが、徐々にちりばめられていた“謎”が明らかになっていき、最後はまさかのビーム飛び交う宇宙戦艦同士の大バトルへ(これ、絶対、NHKの人は知らされてなかったと思う……)。『エヴァ』とはまた違った“親子のかたち”が描かれるなど、いろいろな意味で『エヴァ』ファン必見の作品に仕上がっている(ちなみにシリーズ最新作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では『ふしぎの海のナディア』のBGMがアレンジして使われていたり、新メカ「ヴンダー」のデザインが、ナディア終盤に登場するN-ノーチラス号にそっくりだったり……ひょっとして何かの関係が?)。

……思えば、1995年という年は、『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』を観て大人になったオタク世代がアニメ業界に飛び込み、ちょうど中堅クラスのポジションになった時期。時代が変わったのは、アニメ業界を回していく中心的な人材が、若手へと移り変わっていったことの“結果”なのかもしれない。

新世紀エヴァンゲリオン

新世紀エヴァンゲリオン

王立宇宙軍 オネアミスの翼

王立宇宙軍 オネアミスの翼

トップをねらえ & トップをねらえ2 合体劇場版

トップをねらえ!

ふしぎの海のナディア

ふしぎの海のナディア

「マクロス」の河森正治が監督業に復帰!

“1995年=若手が中堅となって大活躍”説、もう一つの代表例と言えるのが、『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明と同じ1960年生まれの河森正治監督。大学在学中に『超時空要塞マクロス』(1983年)に参加し、その翌年に公開された劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』ではわずか24歳で監督に抜擢(ただし、大ベテラン石黒昇との共同監督)されるなど、若手スタークリエイターとして注目を集めた、まさに80年代アニメ業界の“シンデレラボーイ”だった。ただしその後はメカデザイナーとしての活動が中心に。監督業には縁がなかった。

?1995 ビックウエスト/マクロス製作委員会

(c)1995 ビックウエスト/マクロス製作委員会

それが1994年〜1995年にリリースされたOVA『マクロスプラス』で華々しく監督業に復帰(肩書きは「総監督」。同時にテレビシリーズ『マクロス7』にも原作・スーパーバイザーとして参加)。トレンディドラマを思わせるような大人の恋愛要素を作中の人間関係に盛りこんだほか、それまでCM業界を中心に活躍していたミュージシャン・菅野よう子を作中劇伴に起用するなど、独創的なアイデアを連発。3DCG映像の積極的な導入や、バーチャルアイドルというテーマなどの先見性も見せ付けてくれた。

もちろん、オタク世代クリエイターならではのこだわりも随所に発揮。当時のメカアニメではほとんど描かれていなかった航空機の挙動描写などを徹底して描き込むなど(細かく神経質に動作する『YF-21』のベクターノズルなどが見どころ。パイロットがGに喘ぎ苦しむシーンもグッと来ます)、メカデザイナーとしても活躍する河森正治の力量を存分に楽しむことができる。

ちなみに物語終盤に主人公・イサムとライバル・ガルドがドックファイトしながら子供じみた口喧嘩を繰り広げるという名シーンがあるのだが、その際、飛び交うミサイルの本数が会話内容にぴったりリンク。「ランチ2回奢ったぞ!」と2発のミサイルが発射され、「オレは13回奢らされた!」と13発のミサイルが撃ち返される。こういう遊び心もこの世代の監督ならではの遊び心と言えるだろう。

マクロスプラス

19950106
19950107

マクロスプラス MOVIE EDITION

販売元:バンダイビジュアル
[価格]Blu-ray:5000円(税別)

著 / エンタメステーション アニメ部