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PLAYBACK 1995 THE ANIMATION Part II

PLAYBACK 1995 THE ANIMATION Part II

今回の「PLAYBACK 19XX THE ANIMATION」がピックアップするのは1995年。この年、アニメは“子供向け”を卒業し、本当の意味で大人も楽しめるものとなった。また、そのことが世界に置けるジャパニメーションの評価も一変させていくことに……?

Part II
1995年、本当の意味で“大人のアニメ”が登場し始める

庵野・河森に続け!? 60年前後生まれクリエイター列伝

『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明、『マクロスプラス』の河森正治ら、1960年生まれの才能がいよいよ広く知れ渡り始めた1995年。もう1人、ぜひとも紹介したいのが、1995年にスタートした『新機動戦記ガンダムW』で監督を務めた池田成(1961年生まれ)だ。

彼はサンライズで『装甲騎兵ボトムズ』や『機甲界ガリアン』などの作品に参加した後(監督・高橋良輔の右腕的存在として評価されていた)、『鎧伝サムライトルーパー』(1988年)で監督デビュー。今日の“腐女子”アニメブームの嚆矢とも言える盛り上がりを作ったものの、メインスポンサーの男児向け玩具が不調という結果を受けて2クールで監督を降板するという悲劇に見舞われた(作品自体は計4クール)。

そんな彼が手掛けた『新機動戦記ガンダムW』は前年の『機動武闘伝Gガンダム』の成功を受けて生み出された、宇宙世紀と関わりのない、いわゆる“アナザーガンダム”作品の第2弾。『サムライトルーパー』同様、イケメン男子5人組を主人公に据えることで(もちろん敵側もみんなイケメン)、それまで男性人気が中心だったガンダムワールドに女性ファンを呼び込むことに成功している。以降、ガンダム作品が多かれ少なかれ女性ファンを意識した内容になっていくのはファンならご存じの通り。

ただし残念ながら本作でも池田は監督を途中降板。真相は明らかにされていないが、ストーリー展開に関する方針の食い違いが原因と言われている。実はその後の監督作品でも同様の理由で監督を降板するケースが多発しているのだが、そのロックな姿勢に惹かれるというファンも多いようだ。

新機動戦記ガンダムW

新機動戦記ガンダムW

また、1995年に公開されたオムニバス形式の劇場アニメ実験作『MEMORIES』でもこの世代の監督たちが活躍。背筋の凍るSFサスペンス『彼女の想いで』では1959年生まれの森本晃司が、サラリーマンの悲哀を描いたブラックユーモア作品『最臭兵器』では1961年生まれの岡村天斎が監督を務め、それまでのアニメではやれなかったような、寓話的で深みのあるストーリーや、大胆な表現にチャレンジしている。「現実」と「幻想」の融合がアニメの醍醐味だが、本作はそれこそをとことん追求。全体に通底する「やってやろう!」感、グッと来ます。アニメファンはもちろん、映画や小説などの「物語好き」にも強くおすすめしたい傑作だ。

ちなみに本作は全3話のオムニバス形式なのだが、その3本目『大砲の街』は、この作品を主導した漫画家・大友克洋が担当。劇場アニメ映画『AKIRA』の時点で既に映画監督として頭角を現わしていたが、この作品以降、本格的に監督業に専念していくこととなる。年齢的には1954年生まれと、ここまでで紹介してきた才能より1世代前なのだが、アニメ業界への参戦が遅かったことを考えれば、彼もまた、アニメ業界を切り拓いた“新たな才能”と言えるだろう。

アニメを観て大きくなった若き才能が、その翼を大きく広げて飛び立ち始めた1995年。この頃から、“表現”としてのアニメは、より大きな可能性を感じさせるものへ。『Re:アニメ』編集部は、それまで子供のためのものであったアニメが、本当の意味で大人も楽しむ娯楽となったのがこの年だったと分析する。

“日本のアニメ”の定義を変えた『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』

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そうしたドラマ性を高めたアニメは海外でも高い評価を集めるように。中でも押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)は、SFアニメの大傑作として世界中から高い評価を得る。「現実と虚構」という押井がライフワークとして扱うテーマを主軸に、その後のネット時代を予見したかのような電脳世界が舞台の戦いを描いており、その内容は20年経った今でも全く色あせていない。

その写実的なキャラクターデザインとアニメならではの映像美(冒頭、主人公・草薙素子が光学迷彩で風景に溶け込みながら落下していくシーンはあまりに印象的)はまさにこれこそが“アニメ新時代”と言うべきものだった(「おまえの脳、ノイズが多いぞ」「生理中なんだ」なんてやり取りにもちょっとドキっとしたり)。

それまでも『マジンガーZ』や『北斗の拳』など、多くのアニメ作品が海外で大きな人気を博していたが、それはあくまで“ジャンクな娯楽”としての人気に過ぎなかった(単純でスカッとする作品が人気)。しかし、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』以降は、日本のアニメを「ジャパニメーション」と名付けて“アート”として評価する声が増大。1999年に世界的大ヒットとなった映画『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟は、この作品が『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の影響を受けていることを公言しているし、『パシフィック・リム』(2013年)で世界を沸かせたギレルモ・デル・トロ監督も自身の作品の多くが押井監督作品の影響を受けていると語っている。

海外における日本のアニメの評価という点でも1995年は大きなターニングポイントだったと言えるだろう。

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

GHOST IN THE SHELL

【COLUMN】フル3DCGアニメという大革命も1995年

国内アニメが大きく変わった1995年だが、実は海外アニメにおいてもこの年に大きなパラダイムシフトが発生している。それが「フル3DCGアニメ」の登場。この年に米国で公開された(日本では翌年、1996年に公開)『トイ・ストーリー』は、画面上のすべてのものをCGで表現するという驚異的なチャレンジで世界的な話題に(実写も含めた全ての映画作品で断トツの興行成績も記録)。国内でもここまでに紹介した『マクロスプラス』や『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が積極的にCGを活用していたものの、残念ながらこれはもうはっきりと別次元。以降、米国ではアニメが3DCGへと驚異的なスピードでシフトしていくこととなった(今現在、米国のアニメはほとんどが3DCGで制作されるようになっている)。

ちなみに日本では、昨年辺りからやっと3DCGへの本格移行がスタート。大きく出遅れてしまった感は否めないものの、現在絶賛放送中のフル3DCGアニメ『ブブキ・ブランキ』が、手描き2Dアニメと見まごうばかりの映像美を実現しているなど、そのクオリティは決して負けていない。日本のアニメもようやく「ここまで来た!」と言っていいだろう。

文 / エンタメステーション編集部