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新田真剣佑はじめ、西川貴教、花澤香菜らが歌に踊りにアクションに、パワフルかつ繊細に物語世界へと誘う、地球ゴージャスプロデュース公演『ZEROTOPIA』開幕

新田真剣佑はじめ、西川貴教、花澤香菜らが歌に踊りにアクションに、パワフルかつ繊細に物語世界へと誘う、地球ゴージャスプロデュース公演『ZEROTOPIA』開幕

岸谷五朗と寺脇康文の演劇ユニット・地球ゴージャス約2年ぶりの公演『ZEROTOPIA』が、4月9日よりTBS赤坂ACTシアターにて開幕した。初日を翌日に控えた8日に行われた囲み取材には岸谷と寺脇、W主演を務める柚希礼音と西川貴教、新田真剣佑、Wキャストの宮澤佐江と花澤香菜が登壇。その後の公開ゲネプロの模様と合わせて、『ZEROTOPIA』の世界へ誘う──。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 中原幸

お兄ちゃんやお姉ちゃんに会いに行くような感覚で稽古場に通っていました

囲み取材では山本寛斎がデザインを手がけている舞台衣装を身に付けたそれぞれのキャストが本作に向けた意気込みを語る。

真面目に話そうとする西川貴教の真後ろに立っていた新田真剣佑が、いたずらっ子のように何度も西川にちょっかいを出したり、岸谷五朗が「(本公演には)過去も個性も身長も違う方が集まってくれて……」と言うと、“身長”というワードに即座に反応した西川にキャストや取材陣から笑いが起こったり。

地球ゴージャスに初参加の新田が「みんな、家族のよう。お兄ちゃんやお姉ちゃんに会いに行くような感覚で稽古場に通っていました。みんなといるといつも楽しくて、幸せです」と語っていたように、約2ヵ月間の稽古期間に生まれた絆でしっかりと結ばれたカンパニーの一体感と和気藹々とした雰囲気が、登壇したキャストたちの笑顔や言葉から十分に伝わってきた。

この時代を生きる私たちの“今”を浮かび上がらせた『ZEROTOPIA』が放つメッセージ

囲み取材が終了したあとは、Wキャストのキャンディー役を花澤香菜が務める公開ゲネプロが行われ、囲み取材時のにぎやかで楽しい雰囲気から一転、沈没してしまった豪華客船から必然的に生き残った男女を待ち受ける数奇な運命を描いた『ZEROTOPIA』が静かに扉を開けた……。

ゆっくりと客電が落ちる。劇場内には波音が響き、舞台前にある幕には航行時に船の後方にできる“引き波”の映像が映し出されていた。そう、この時点では豪華客船はまだ沈んでいないのだ。しかし幕が上がり、ある男(西川貴教)が20名のダンサーたちを従えて中央に現れ、「壊れてしまえー!」と声を荒げた瞬間、不穏な空気が一気に流れ始める。西川が力強い声でダイナミックに歌い上げた「Dynamic Dynamite Extreme」は、登場人物たちがこれから巻き込まれていく数奇な運命の行方を十分に暗示させたナンバーだった。

西川が舞台から去ると、場面は地図にも載っていない色彩のない島(ZEROTOPIA)へと転換する。沈没した船から生き延び、島に打ち上げられたのは自分ひとりだと思っていた人々が次々と島内で出会っていく。互いに、これまでどこで何をし、どんな人生を送ってきたか、どんな性格の持ち主なのか、何ひとつ知らない者同士。そんな彼らの初対面のシーンを、笑いを交えながら演じるキャストたちがつくる絶妙な間とコミカルな演技、また、出会いから25年が経ち、2014年の立ち上げから「地球ゴージャス」を共に持続させてきた岸谷と寺脇のアドリブありの“かけあい”は、次第に彼らを闇の世界へと巻き込んでいくであろう物語の中で、観る者の心を和らげてくれる時間を作ってくれた。

中でも西川が演じたロマンが初めて登場した場面は、前髪パッツンのおかっぱ頭というその見た目や早口でしゃべりながら落ち着きなく動き回る姿に、西川本来のキャラクターも相まってウケることは間違いないだろう。しかし、西川がコミカルに、けれどセンシティブに演じるマロンも、心の中に自らが封印した暗い過去と深い闇を抱えている……。

柚希礼音が演じるジュンの恋人を失った過去の出来事が描かれるシーンで歌われた「Jun’s past II」は、ジュンが抱え続けている強い後悔と葛藤を繊細に柚希が歌い上げており、水田航生と2人で魅せるロマンチックな場面では切なさで心が締め付けられるほどだった。宝塚歌劇団の男役トップスターだった柚希は退団後も数多くの舞台を経験しており、その演技力の高さや歌唱力は誰もが認める俳優だ。

柚希は囲み取材で「地球ゴージャスに出させていただくなら、戦う強い女というイメージでしたが、そこをあえて(脚本を手がけた)岸谷さんは女性らしいキャラクターで書いてくださった。寺脇さんは『こういうふうに言ったらもっと女性らしく聞こえる』とかいろいろと教えてくださった」「初めての経験がたくさんありますので、習ってきたことを出していけたら」と控えめな発言をしていたが、寺脇は「もともと柚希さんが本来持っている女性らしさを出してもらった」と、柚希だからこそ演じられるジュンがいるのだということを伝えてくれた。

地球ゴージャスで初めてのWキャストとなる宮澤佐江と花澤香菜が演じるサンディーは、たくさんのフリルやリボンがついた服を着たキュートなお嬢様っぽいキャラの女の子。同じ設定、同じストーリーの中でこの2人がどのように違う色と個性でサンディーを演じていくのかも注目のひとつだろう。

色彩のない島をつくり出す舞台美術や照明演出、回転ステージ(盆)を使った場面の変化は、登場人物たちの過去と現在を舞台上で交差させ、どんなに時が経とうが消し去ることができない感情に捕らわれてしまった人間の苦悩と運命の残酷さを増幅させていた。観客たちも登場人物たちと同じように物語が進むにつれて彼らが体験した過去の出来事を知っていく。

2014年から日本での俳優活動を本格化させている新田は、本公演が二度目の舞台とは思えないほどの能力と実力を見事に発揮。新田が扮するアトラスの過去──元特殊工作員だったことや大好きな兄を失った悲しみを抱えていることが徐々に明かされていくのだが、特殊工作員だった過去の中にいるアトラスを演じるときの新田は眼光を鋭く光らせ、亡くなった兄への想いを抱えたアトラスを演じるシーンでは兄を慕う弟の眼差しで、哀しみに打ちひしがれる表情を見せた。さらに、空手をイメージした激しいアクションではキレのある美しい動き、柔らかな身体で華麗な曲線を描くバク転、2本の剣を見事に操る華やかで鮮やかな二刀流の殺陣なども見せ、自身がもともと持っている身体能力の高さを思う存分に見せつけた。

囲み取材で新田は「これからもミュージカルに挑戦してみたいです。ただ、映像のお芝居とはまったく違うので、まだまだ覚えなければいけないことがたくさんある。ひとつひとつやっていければ」と謙虚に語っていたが、岸谷は「真剣佑は特別な身体能力があるので、僕は絶対に舞台に出て欲しいと思っていた。板の上で生の真剣佑の力を見て欲しかった。この2ヵ月間、舞台での発声法やストレッチなど、演劇の基礎のありとあらゆることを初体験でやってきたなかで、ガンガン伸びてきました。ホントに素晴らしい(役者)です」と絶賛。そして「たぶん、これからも舞台をやるでしょうね、彼は」と言葉を続けたのは、高い身体能力を生かした殺陣のみならず、新田が表現力豊かな歌唱もできる才能を持っていること、新田真剣佑という役者の魅力と今後への期待があるからだろう。

「罪を隠す女」「悲しみを隠す男」「恨みを隠す男」「狂気を隠す女」「何も隠さない男」……それぞれの絶望した過去や心の奥底に抱え続けた闇が少しずつあらわになっていくなかで、彼らは自分たちが乗船した客船は沈没したのではなく、何かの理由で沈没させられ、みな共通した何かに導かれるようにこの色のない島に流れ着かされたことに気づく。そして、企みを隠すある男の登場により、大きな陰謀が明かされていく……。

岸谷は地球ゴージャスの前公演「The Love Bugs」(2016年)が千秋楽を迎えた日からすぐさま次回公演に向けた脚本を書き始め、それから約2年間ずっと今作の脚本づくりに取り組んできたとのこと。「地球ゴージャスの代表作は最新作です」というつねに彼自身が言っている言葉をエネルギーの源にして書き上げた『ZEROTOPIA』は、岸谷の言葉を借りれば「2018年ならではの作品」「今のこの時期にしかできない演劇」へと昇華した。

それぞれのキャリアと個性を持った35名のキャストたちは、色彩のない島にやってきた登場人物のように、『ZEROTOPIA』が生まれなければ、ここに一同に介することがなかったメンバーだろう。地球ゴージャスならではの一期一会の出会い。今、この時代に、この場所で、この物語を一緒に作り上げていく喜びを胸に抱きながら、キャストたちは『ZEROTOPIA』の舞台に立っている。

色彩のない島=ZEROTOPIAとはいったい何なのか。“ZERO”は始まりなのか。それとも終わりを意味しているのか。果たして“謎の男”の企みとは何なのか。この時代を生きる私たちの“今”を浮かび上がらせた『ZEROTOPIA』が放つメッセージを、ぜひ劇場で受け止めて欲しい。

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.15『ZEROTOPIA』

東京公演:2018年4月9日(月)~5月22日(火)TBS赤坂ACTシアター
愛知公演:2018年5月29日(火)~6月2日(土)刈谷市総合文化センター 
新潟公演:2018年6月9日(土)~6月10日(土)新潟テルサ
福岡公演:2018年6月22日(金)~6月24日(日)福岡サンパレス
広島公演:2018年6月30日(土)~7月1日(日)広島文化学園HBGホール
大阪公演:2018年7月6日(金)~7月15日(日)フェスティバルホール

作・演出:岸谷五朗

出演 :
柚希礼音 西川貴教/新田真剣佑 宮澤佐江・花澤香菜(Wキャスト)/
藤林美沙 原田薫 大村俊介(SHUN) 水田航生 植原卓也/
岸谷五朗 寺脇康文 ほか

公演オフィシャルサイト