Interview

ASKAロングインタビュー! エネルギッシュな創作活動に彼の音楽への愛、欲求が溢れている──ベストアルバム&連続配信リリースについて、そして、これからを語る

ASKAロングインタビュー! エネルギッシュな創作活動に彼の音楽への愛、欲求が溢れている──ベストアルバム&連続配信リリースについて、そして、これからを語る

前回、アルバム『Black&White』に際しては、電話でコメントを寄せてくれたASKAが、なんと今回、独占インタビューに応じてくれた。ちょうど彼は、ソロ30周年記念のベスト盤『We are the Fellows』をまとめたばかり(今作は通販・期間限定販売で5月7日まで予約可)。ファンから投票を募り、得票数が多い順に並べた全13曲は以下のとおりである。

『We are the Fellows』収録曲
01. けれど空は青 ~close friend~/02. 月が近づけば少しはましだろう/03. はじまりはいつも雨/04. 晴天を誉めるなら夕暮れを待て/05. 君が愛を語れ/06. 伝わりますか/07. 東京/08. 同じ時代を/09. next door/10. Girl/11. HELLO/12. と、いう話さ/13. しゃぼん

このようなラインナップだが、特に上位3曲については、改めて、じっくり話を聞いてみた。さらに肝心なことを! ASKAはここで一息つくのではなく、むしろ創作意欲を活発化させている。3月25日に配信リリースされた「虹の花」を皮切りに、今後は毎月、ファンの手元に新曲を届けるという──。

取材・文 / 小貫信昭

いきなり核心を突かれると困るんだけど(笑)

『We are the Fellows』は、そうした主旨の全13曲ということですが、結果をどう受け止めましたか?

1位の「けれど空は青〜close friend〜」と2位の「月が近づけば少しはましだろう」は、ともにシングルではなく、アルバムの核となった楽曲で、「このどちらかが1位だろうな」とは思っていましたね。でも今回は、僕の音楽をたくさん聴いてくれている人たちが選んでくれた順位なので、世に言う“大ヒット曲”というのは「きっとほかの誰かが選ぶだろう……」ということで、上がってこないだろうなと思っていました。そうしたら「はじまりはいつも雨」が3位でね。これには驚きました。でも、そういう意味では“ほかの誰かが……”ではなく、フラットな気持ちで選んでくれた13曲なんだろうなって思いましたね。

なるほど……。

でも、ベストアルバムは“アーティストプロモーション”のためのものでもあるわけで、投票してくれた人たちの中にもしかしたら“スタッフ意識”が働いて、だからこの順位なのかもしれない。だとしたら、これは僕と僕の音楽を聴いてこられた方たちとの “共謀”でもあるんでしょうね(笑)。こうしたアルバムを出す身にとっては、ありがたいことでもありました。

前から聞いてみたかったんですが、ASKAさんといえば“晴れ男伝説”で有名だそうですが、なのになんで、「はじまりはいつも雨」だったんですかね?

いや……いきなり核心を突かれると困るんだけど(笑)。例えば、例えばですが、車を洗ったときに限って雨が降る、みたいなことってあるでしょう? 車に限らず、大事なときに限って……みたいなことは、みなさんも経験したことがあるでしょうしね。この曲は恋愛の歌だけど、そういうところから広げたものではあるんですよ。

どんなふうに完成していったんですか。

もともとはCMの曲だったんです。ひとまず「20秒間、作ってください」って言われて。それで1番を作ってみたところ、僕が聴かせたかったサビのメロディじゃなく、広告代理店の人たちはBメロを取った。「僕は上手に君を愛してるかい」というところを。向こうは「キャッチはここだ」って言うんですが、そう言われても、自分はキャッチはサビだと思っていたので、何度も話し合いをした結果、もう相手に任せてみようと思いました。で、15秒スポットとしてCMが流れ始めたらメーカーに電話が殺到したんですね。当時の反応とは、視聴者が企業にCM曲の問い合わせをする時代でしたので、反応がダイレクトなわけです。「急遽、一曲に完成して欲しいとの連絡を受けて出来た楽曲」ということになっていますが、作品の手応えはあったので、実は、完成させていたんです。3ヵ月間、品切れ状態が続きました。当時は大量にプレスすることができませんでしたので、ショップに並ぶと、その日に売り切れという状態が3ヵ月間も続いたんです。ですので、あの曲は1位を取っていないんですよ。その代わり、ずっと2位でした。「SAY YES」が、13週連続1位という記録を持っていますが、2位の連続記録というマーケティングがあれば、2位の記録だと思います(笑)。

自分の歌ではあるけれど、大衆に投げた時点で、僕の手は離れている

1曲目の「けれど空は青〜close friend〜」は、もともとそんなタイトルの本があったそうですね。

この曲はね、ずっと一緒にいた福岡の同級生がいて……高校3年生のとき、僕が剣道をやめたあとのことなんですけど、初めて“学校から明るいうちに帰る”という体験をするんです。それまでは剣道をやっていて授業が終わっても練習があったから、帰るのは暗くなってからだった。でも昼間に帰るようになり、一緒にワーワー話しながら帰るメンバーの中に、その男もいて。ただ、どこか陰があるヤツでした。高校3年にもなると、溜まり場みたいなところができるでしょう? それはお互いの家でもあって、向こうが泊まりに来たり、僕が泊まりに行ったり、そんなことも許されるようになり、ちょっと大人の気分になるというかね(笑)。で、大学に入ると、もっとそれが普通になっていくと思うんだけど、その頃になると、その同級生が自分の家庭環境のこととかも話してくれるようになって……。「けれど空は青〜close friend〜」は、まさにその同級生をイメージして作った楽曲です。よく「Chageさんのことを思って……」みたいにも言われるんですが、大間違いです(笑)。

ベースとなっているのが、Chageと出逢う前のエピソード、だからですね(笑)。ただ、そうなると歌うたびに、その友人を思い出しそうですが……。

それは違うかな。これはこれで、楽曲としての世界観になっているから。例えば「長い嵐の夜が お前の胸の中にある」と歌っても、この詞に込められた感情っていうのは、そもそも多くの人に共通項としてあるものだろうし……。自分の歌ではあるけれど、それを大衆に投げた時点で、僕の手は離れている。それに、この例はもしかしたら少し違うかもしれないけど、飼っている自分の犬に子供が生まれ、赤ちゃんの頃は可愛がっていたけど貰い手がつき、いつの間にかその家の犬になっていく……でも自分のところの犬の子供ではあるんだ、というような感覚ですかね。大切に思っているけど、共有のものでもあって、しかも、より愛情を感じてくれるのは相手だったりもするというか。そもそも楽曲というのは、そういうものだから。なので、今ではもう、歌うときに友人の顔が浮かぶということはないですね。

実は、励ますとか、背中を押すとか、そういう歌は作ったことがなくて

2曲目の「月が近づけば少しはましだろう」の場合はどうなんでしょうか。

自分の力ではどうしようもないことってあるでしょ? でも、そういうときは“寝る”という僕のテクニックがあって。眠るまではどんなに悶々としていても、寝てしまえばどこか浄化されるところがある。どんなに嫌なことがあっても、嫌なことをされても、寝てしまえば、一日ごとそれも薄くなっていく。だから僕は、人を長く憎むとかが、子供の頃からできないんです。この歌の主人公もいろいろなことを抱えながらもベッドに横になる。そして、「月が近づけば」、つまり時間が経てば解決するだろう、という。なので、 “一日ごと薄くなっていく”という自分の体験を、ひとつのストーリーにしたのがこの歌なんです。

「そんな考え方をしてみなさいよ。重荷も軽くなるよ」みたいに、聴く人に勧めるというか、ある種の励ましソングなんですかね、これは?

実は、僕は励ますとか、背中を押すとか、そういう歌は作ったことがなくて。「元気を出そう!」とかそういうことを言うの、もともと苦手で。

一時期、J-POPでは流行りましたよね。そういう内容の歌が。

そうそう。でも自分は苦手だった。だって、そんなことを歌っても、その人自身にどれだけパワーがあるのかわからないでしょう? そもそも、所詮人間は同じだと思うし……。だから、「みんな元気を出して」みたいなことを歌の中で一回も言ったことがない。それより自分に起こったことで、そこを自分が通り過ぎようとしているのか、すでに通り過ぎたのかという、ちょうど境目あたりのことを歌ったものが多い。結局は、そこに共感してくれた人たちが多かったというのが、僕の歌の歴史なのかもしれないですね。ただ、唯一『Black&White』の中の「今がいちばんいい」で、「今がいちばんいい」「そう答えようよ」って言いましたね。これが初めてじゃないかな。

ソロのほうが判断も早いし、よりナチュラルな気持ちではあるんじゃないかな

この13曲を眺めてみると、お馴染みの楽曲以外にも、2017年2月リリースの『Too many people』から3曲入っていますね。

あのアルバム自体、いろいろなことがあって、特殊な時期をくぐり抜けて、やっと出したアルバムだったので。待望されていたものだったし、もちろん作り手の喜びもあった。そういったいろんな感情が見事に受取ってくれるみなさんと歯車が合ったものだったかな。だって、まだ聴く前なのに、目の前にアルバムがあるという、それだけでもみんなが喜んでくれましたからね。なので楽曲に対しても、ひとつひとつ、ひとしおだったんじゃないですかね。でも、今回3曲も入ったのは、ちょっとビックリでしたけどね。

その中でも「東京」は、そもそも“チャゲアスを意識した”ものでもあったとか…。

そうそう。「CHAGE and ASKAみたいに思ってもらえるものを作ってみよう」だったから。

そもそもASKAの作品とCHAGE and ASKAの作品というのは、ASKAさんの中で、意識が違うものなんですか?

アルバムを作るにしても、要所要所で楽曲バランスとか全体の見え方とか、様々な判断があるわけだし、いろいろなことを考えるわけで。2人の場合、相手がいれば、こっちはそうじゃなくても、そうしなきゃいけないときもあるし、もちろん、話し合っていたら、突然違うものが生まれたりもする。それがグループの面白さだしね。でもひとりなら、すべて自分で決めてしまえばいいので、ソロのほうが判断も早いし、よりナチュラルな気持ちではあるんじゃないかな?

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