山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 31

Column

WILCOという名の不思議なバンド/WILCO

WILCOという名の不思議なバンド/WILCO

ジャンルに縛られず、実験的な試みを重ねながら、豊かな創造性を磨いてきたバンド。山口洋いわく、いつの間にか空気のような存在として虜になっている、噛めば噛むほど味がでる、という奥深さはどこからくるのだろうか。
HEATWAVE山口洋がR&Rの魔法について書き下ろす好評連載。


WILCOは不思議なバンドだ。

ずいぶん前のこと。彼らの音楽が電波に乗ってやってきて、あっという間にこころを掴まれる。それからたぶん全てのアルバムを聞いているはずなのに、バンドのことは何も知らない。と云うより、あまり知りたいと思わない。メンバーの名前も、人数も、曲のタイトルも、どうやってできたバンドなのかも。そういうことがまったく気にならない。ただ、単純に彼らが創り出す音楽が僕のこころにフィットしていて、身を委ねていたい。

それが誰であれ、新しく買ったアルバムはたいてい車に積んである。運転しながら聞いて、つまらないものは二軍に落とされたり、誰かに差し上げたりする。つまり今、車に残っているものは相当好きな音楽なのだが、WILCOはほぼ全てのアルバムが残っている。どんなシチュエーションで聞いても、夢とうつつを行き来できる芳醇さ。きっと僕と世界を繋いでくれているんだろう。

彼らの新しいアルバムを手に入れる。いつものように、聞いた瞬間から好きになるような曲はあまりない。でも、繰り返し聞いているうちに、いつの間にか空気のような存在として虜になっている。ないと困るのだ。ほんとうに不思議なバンドだ。

インディペンダントであること? 自身のレーベルを持っていること? そりゃ、そうだろう。聞けばわかる、何ものにも依存していないことくらい。音楽をアホみたいに愛していること? そりゃ、そうだろう。ビリー・ブラッグと創ったアルバム『Mermaid Avenue』を聞けばわかる。これを嫌いな人と僕はともだちになれない。想像だけれど、ギタリストは間違いなくトム・ヴァーラインの影響を受けている。どうしてって? 僕も同じように影響を受けて、あんな風にヒリヒリするギターが弾きたかったから。彼(名前を知らないのだけれど)とテレヴィジョンの曲をセッションしたら、すぐに打ちとけるだろうな、きっと。

オルタナティヴであることなんて、どうでもいい。あの音楽にその言葉は無粋だと思う。噛めば噛むほど味がでるWILCO。ロックンロールの歴史、そして未来へ向けて今を生きる志が、音楽という鍋の中で、ガンボスープのように混じり合っているバンド。なによりも真ん中に確かな歌心とメロディーがある。ヴォーカルの彼の声が素晴らしい。その声がもう歌だよ。

こんなバンドが現存していることが嬉しくて、勝手に励まされる。じぶんの道を行かなきゃ、と。でも願わくば、WILCOに加入したい。笑。そうそう、もうひとつ同じ匂いがするいいバンドを知っている。GRAPEVINE。年に一回だけ、必ず横浜で見させてもらうけれど、ほんとうに素晴らしい。地に足がついた冒険者たち。いつも励まされる。一人だけど、独りではないということに。孤独だけれど、孤立はしていないということに。

最後に。いちばん好きな曲の意訳を。

何を歌っているのか、知りたかったから調べた。そうか、こんなことを歌ってたのか。流石だ。ポール・オースターが書いたみたいだよ。

「Impossible Germany」

Impossible Germany  できるわけがない ドイツ
Unlikely Japan  ありえない 日本

Wherever you go  君がどこへ行こうと
Wherever you land  どこに着こうと

I’ll say what this means to me  ぼくは言いたいことを言い
I’ll do what I can  自分に出来ることをやるだろう

(意訳 : 山口洋)

WILCO / ウィルコ:イリノイ州ベレヴィルでジェフ・トゥイーディとジェイ・ファーラーの2人を中心に結成されたアンクル・トュペロが1994年に解散し、直後にトゥイーディが立ち上げたシカゴを拠点として活動するロック・バンド。幾度ものメンバーチェンジを経て、現在のメンバーは、ジェフ・トゥイーディ(vo)、ジョン・スティラット(b)、ネルス・クライン(g)、クレン・コッチェ(ds)パット・サンソン、マイケル・ヨルゲンセン(マルチ・インストゥルメンタリスト)。1995年のデビュー作『A.M.』は、トュペロ時代の面影を残すオルタナ・カントリーな作風だったが、2作目『Being There』では広い音楽性を示した。ジム・オルークをミキサーに迎えた4作目の『Yankee Hotel Foxtrot』で一気に知名度を上げ、2003年2月に初来日。2004年に発表した5作目のアルバム『A Ghost is Born』では、音響系からポップ、ロック、カントリー、ジャム系までのサウンド世界を縦横無尽に行き来し、グラミー賞では最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムと最優秀パッケージ・レコーディングの2部門を受賞した。さらにこの頃には、現在の“最強メンバー6人”が揃い、ライブ・バンドとしても目覚ましい躍進を遂げる。2011年1月に、自身のレーベルdBpm Recordsを設立。同年7月、フジロック・フェスティバル最終日、ホワイトステージのトリを飾った。2014年11月にはバンド結成20周年を記念して、バンド初となるCD2枚組ベスト・アルバム『What’s Your 20? Essential Tracks 1994-2014』とCD4枚組レア・トラックを集めたボックス・セット『Alpha Mike Foxtrot Rare Tracks 1994-2014』を同時リリースした。

ワーナーミュージック・ジャパン オフィシャルサイト

『Yankee Hotel Foxtrot』

ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-80189 ¥1,600(税別)
2002年発売の4枚目のアルバム。ジム・オルークをミキサーに迎え、WILCOの名を知らしめた代表作。

『A Ghost Is Born』

ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-80190 ¥1,600(税別)
グラミー賞では最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムと最優秀パッケージ・レコーディングの2部門を受賞。2004年発売。

『What’s Your 20? Essential Tracks 1994-2014』

ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-16220/1 ¥2,800(税別)
結成20周年を記念した、バンド初となるCD2枚組ベスト・アルバム。スタジオ・レコーディングから38曲を厳選して収録。

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年に結成したHEATWAVEのフロントマン。1990年にアルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に歌い継がれている。アイルランドの重鎮、ドーナル・ラニー、元モット・ザ・フープルのモーガン・フィッシャーら海外のミュージシャンとの親交も厚い。仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと東日本大震災後に立ち上げた福島県相馬市を応援するプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”の活動も続けている。今年は6月29日に“MY LIFE IS MY MESSAGE 2018 You’ve Got A Friend”の開催が決まった。6月2日からはリスナーからのリクエストで構成されるソロ・アコースティック・ツアー“YOUR SONGS 2018”で全国を廻る。2018年3月31日に渡辺圭一(Bass)が脱退し、細海魚(Keyboard)、池畑潤二(Drums)と3人の新生HEATWAVE初のライヴが、5月18日横浜THUMBS UPにて開催される。

オフィシャルサイト

ライブ情報

山口洋 SOLO TOUR “YOUR SONGS 2018”
6月2日(土)静岡 LIVEHOUSE UHU
6月4日(月)名古屋 TOKUZO
6月6日(水)大阪 南堀江 knave(16th Anniversary)
6月8日(金)京都 coffee house 拾得
6月10日(日)豊橋 HOUSE of CRAZY
6月16日(土)千葉 Live House ANGA
7月27日(金)熊本 ぺいあのPLUS
7月29日(日)福岡 ROOMS

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HW SESSIONS 2018
5月18日(金)横浜 THUMBS UP

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MY LIFE IS MY MESSAGE 2018 You’ve Got A Friend
6月29日(金)東京 下北沢GARDEN

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ARABAKI ROCK FEST.18
大宮エリー×山口洋(HEATWAVE)
4月29日(日)出演 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

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VORZ BAR ×GROOVE COUNCIL presents Mix Up & Blend vol.2
6月30日(土)仙台市市民活動サポートセンターB1Fシアター
出演:山口洋(HEATWAVE)・矢井田瞳・佐々木龍大

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山口洋×藤井一彦(THE GROOVERS)OUR SONGS 2018
7月13日(金)吉祥寺 STAR PINE’S CAFE

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