Interview

【インタビュー】特撮映画の名手・樋口真嗣が描く“お仕事アニメ”の本気度。航空自衛隊とドラゴンと…異色だらけの話題作『ひそねとまそたん』

【インタビュー】特撮映画の名手・樋口真嗣が描く“お仕事アニメ”の本気度。航空自衛隊とドラゴンと…異色だらけの話題作『ひそねとまそたん』

大作目白押しの2018年春アニメの中に、独特のテイストでフレッシュな存在感を放つ作品がある。それが『ひそねとまそたん』だ。ほっこりするタイトルは、童話のようなファンタジーを想像させるが、なんと舞台は日本の航空自衛隊! 岐阜基地に配属された新人女性隊員・甘粕ひそねが、何の因果か本人の望まぬうちに、長い間秘匿されてきた「OTF(変態飛翔生体)」=“まそたん(ドラゴン)”のパイロットに選ばれ、仲間と任務に励むハートフルな“お仕事”ストーリーだ。

総監督は、映画『シン・ゴジラ』を筆頭に、アニメ・実写映画の両方で多くのヒット作を手がけている樋口真嗣。脚本は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』など名作を多数手がける岡田麿里。その豪華なケミストリーを、『交響詩篇エウレカセブン』などで知られる名アニメーションスタジオ・ボンズがテレビアニメシリーズとして世に放つ。心温まるユーモア、心をジンとさせる感動が滲む意欲作へのこだわりを、樋口真嗣総監督に語ってもらった。


取材 / 柳 雄大 文 / 阿部美香 撮影 / 松浦文生


基地の中に“実はいるのかもしれない”存在を描くこと

<『ひそねとまそたん』あらすじ>
素直すぎ、思ったことを口にしてまう性格ゆえ、無意識に他人を傷つけてしまう人生を送ってきた甘粕ひそね。任期限定の自衛官を仕事に選んだ彼女は、航空自衛隊の岐阜基地に配属された。そこで彼女は、基地に秘匿されていた「OTF(変態飛翔生体)」、つまり戦闘機に擬態するドラゴンに乗り込む飛行要員=“Dパイ”(ドラゴンパイロット)に選ばれ、大空高く舞い上がるのだった。国家的な命運を左右するといわれるドラゴン。そこにはどんな秘密が隠されているのだろうか?

本作の原作者には、樋口総監督と岡田麿里さん、そしてボンズという3者がクレジットされています。航空自衛隊が、戦闘機に擬態するドラゴンを所有しているという設定からしてとてもユニークですが、この原案はどこから生まれたんでしょうか?

そもそもは、『日本沈没』(樋口が監督を務めた2006年公開の映画)の撮影中のできごとが始まりでしたね。成田空港で離着陸する飛行機を1日中撮っていたことがあったんですが、そこには航空写真を撮るファンが大勢集まっていたんですよ。

なるほど、かなり遡りますね。

はい。彼らは日がな一日、航空無線を聞いていて、あの機体が来るというと、ぞろぞろ出ていって写真を撮ってまた戻る。寒い冬空の下、それを繰り返しているんです。まず、それが不思議だったんですね。しかも旅客機じゃなく、DHL(ドイツの輸送会社)の貨物機を喜んで撮っていたりする。後で聞いてみたら、どうやら特別な機体らしいんですが。

なるほど、そういう世界も世の中にはあるんだなぁと思いながら(笑)その様子をずっと見ていたら……だんだん、飛行機が飛行機に見えなくなってくるんですよね。ゲシュタルト崩壊して。もしかしたら、あの中に飛行機じゃないヤツも紛れ込んでいるんじゃないか、と。そんなことを、誰に語るでもなく考えていたんです。まだ“構想”にもなってなかったので、“妄想”レベルですけど。その妄想を岡田さんに話したら面白いと言っていただけて。実写では無理なので、アニメーションにしてみようというのが、この作品の始まりでした。

では、舞台を航空自衛隊にしようと思われたきっかけは?

それこそ『シン・ゴジラ』に至るまで、僕は撮影や取材で幾度となく自衛隊の基地に行ってるんです。すると、基地の中というのはとても面白い。同じ飛行場にしても、海軍だけじゃなく陸軍の航空隊が始まりのところもありました。特に僕が見学したところは歴史が古くて、旧日本軍の頃から残っている建物があったりするんです。この建物は何だろう? と思うと、終戦後に米軍に接収され、施設を改造したキリスト教会だったりね。

基地の中というのは画一化されているものかと思ったら、意外とそうでもないんです。それに、機密に抵触するので、「写真に撮っちゃいけません」という場所も非常に多い。そうなると、あの建物の中には何かいるんじゃないか?  公にしてはいけないものが!……と、次の妄想が始まるわけです(笑)。

基地の中に、戦闘機のように見せかけたドラゴンがいてもおかしくないぞと。

そうです。さらに、僕の個人的な趣味で伊勢神宮の遷宮などを見にいくと、実際目に見えないものも、形を持って見えてくるというのが理解できるんですね。神様は実はいないかもしれない。でも、心から信じている人にとっては、僕らが見るとただの丸太にしか見えないものが、ちゃんと神様として存在していると。そういう様々な要素がだんだん積み重なっていき、『ひそねとまそたん』の話になっていったんです。

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