Interview

【インタビュー】特撮映画の名手・樋口真嗣が描く“お仕事アニメ”の本気度。航空自衛隊とドラゴンと…異色だらけの話題作『ひそねとまそたん』

【インタビュー】特撮映画の名手・樋口真嗣が描く“お仕事アニメ”の本気度。航空自衛隊とドラゴンと…異色だらけの話題作『ひそねとまそたん』

謎のジョアおばあさんも登場。ユーモアが形作っていく“ひそまそ”

そういったアイデアを、脚本として具体的な形にしていかれたのが岡田麿里さんですね。

はい。僕のむちゃくちゃな妄想話を岡田さんが受け止めて、形にしてくれています。ただ、こんな感じなんだけど……と僕が思い付いたものを、とりあえず書き出して渡しても、その通りに脚本にしなくてもいいということは、お伝えしてました。岡田さんの話のほうが面白いときは、自分の考えを引っ込めるようなこともありましたし。

例えば、岡田さんからはどんなアイデアが挙がったんでしょうか。

ひそねたち“Dパイ”が、ドラゴンに食べられ、吐き出されることで乗り降りする……というやり方は、岡田さんが考えたものですね。「ドロドロにしたかった」って言ってました(笑)

あれは観ていて本当にびっくりしました。確かに、 “まそたん”は戦闘機の装甲は身につけていますが、中身は生き物ですし。コックピットがあるわけでもなく、パイロットが背中にまたがっているわけでもない。呑み込まれるしかないんだと。この設定も印象的だったんですが……そもそも、『ひそねとまそたん』というタイトルもインパクトがありました。

タイトルが決まったのは、最後の最後だったんですけどね。それも岡田さんから出てきたアイデアでした。それも、「タイトル考えてよ」とお願いしたわけではなく、自然と出てきたもので。“ひそまそ”って略称も、呪文みたいでいいなぁと。

アイキャッチの“ひそまそ~”も可笑しくてよかったです。

あれは、音楽の岩崎太整さんが自主的に提案してくれたものでしたね。「一応録っておきますんで。使わなくてもいいから」とか言って(笑)。結果、あれのおかげで全体像が定まった感じもあって。「あ、このアニメはこういうテンションのお話なんだな」というのが、僕も理解できたんですよ。

先ほどお話にあった“まそたん”の搭乗シーンといい、ユーモラスな描写が独特のテンションを形作っていますよね。ひそねが謎のおばあさんに「ジョア」を渡されて困惑するシーンも、笑っちゃいました。

基地の中って現実的なものが何もないから、浮世離れしちゃってるんですよ。そこで現実との接点を考えていて、ジョアを配達するおばあさんが出てくるのはどうだろう? と思いつきまして。

ヤクルトやジョアの配達の方って、「なぜこんなところに?」と思うようなところにも入ってくるんですよね。実際、自衛隊基地の中でも見たことがありますし、映画を撮っている撮影所の中にもやってくる。そういうのを見ていると、なんで入れるんだろう? というか、失礼ながら「あの人たちは人間じゃないんじゃないか!?」 とすら思う瞬間があるんですよ(笑)。じゃあ、ここにも登場させようかなと。ヤクルトさんとタイアップしているというわけじゃないんですけどね。

主人公・ひそねの“愛され力”

ユーモラスなギミックといえば、ひそねがスマホではなく、ガラケーを使っていることが科学的な伏線になっているあたりも非常に面白かったです。軍用機の飛行の挙動なども実写さながらのリアリティがありますし、ファンタジックな要素を採り入れつつも、軍事考証と科学考証には相当こだわられていると感じました。

実は、自分がもともと作り話とか嘘が得意じゃないんですよ。いかにもファンタジー寄り、というものが。国会図書館に行って調べ物をすれば、そこに答えがあるようなものが好きで。この作品でも架空の生き物だったり、突飛なものは出てくるんですが、そんな存在もガチガチの規則とか日本的な申し送りで縛られたら窮屈そうで面白いんじゃないか? だから、なるべく調べて分かるものにしておきたい。それが、僕の習性としてあるようなんですね。

バックグラウンドは、きちんと本物を描くと。

「ゼロから創造しました!」というのが実は苦手なんですよ、やってきた仕事とはうらはらに(笑)。本物が出てくるなら、本物の通りにしたい。そういうのが、僕の作品にはいっぱいありますね……「ジョア」だったりね(笑)。そういう本物を、お話として面白く演出してくれているのは、岡田さんの力です。

登場キャラも、みんな活き活きと描かれていて魅力的です。特にひそねは、言いたいことを何でも口にして人の気持ちを逆撫でする女の子ですが、嫌みな感じがなく、久野美咲さんのナチュラルなお芝居にも惹かれました。

ありがとうございます。ひそねは、愛され力がありますね。彼女の性格やセリフを文字にしたら、どう見ても嫌われ者なんですよ。だから、彼女は嫌われる主人公かどうかのスレスレのところで……ただ、そのスレスレの面白さっていうのがあるわけです。「何だこの野郎!」と思われるようなことを平気で言えちゃうんだけど、愛らしいというか。いろんな感情が、観る人の心に上手く着地して欲しい。そういう主人公をどう見せるかは、僕の中でのやりたいことでもありました。それを、久野さんがとても見事に演じてくれています。

実はこの作品はプレスコ(映像に声を合わせるアフレコとは異なり、セリフを先に録音する)をやっているんです。TVシリーズでは、スケジュールが大変なことになるので普通はやらせていただけないんですが、無理矢理お願いして許してもらえた。ボンズさんに感謝ですね。それ抜きでは、この作品は成り立たなかったと思います。

この作品で「仕事をすること」の良さを伝えたい

樋口総監督はこれまでいくつものアニメ作品に参加されていますが、本格的にご自身が企画したTVシリーズでアニメを監督されるのは、本作が初めてと伺っています。

そうですね。他のアニメは基本的にお手伝いというか、誰かの企画があって、「こういうふうにやってくれ」と言われ、その期待に応えて作る場合が多いんです。でも今回は、初めてアニメーションで自分の好きなことをやっていいと言われました。

今まで一緒にアニメーションの仕事をしてきた人、仲良くさせていただいている人は、皆さん、めちゃくちゃアニメーションが上手い人ばっかりなんです。自分がその人たちと横並びになったとき、「僕が納得してできることは何か?」というのを突き詰めた。その結果、『ひそねとまそたん』では僕が好きなことだけをやらせてもらっているんです。キャラクター作り、アニメの作り方を含めて。「自分だったらこういうアニメーションを作りたい」が形になったのが、この作品といえますね。

その中ではやはり、基地や戦闘機といった要素が重要になったんでしょうか。

いや、そこも大好物なんですけど、それらと登場人物を結びつけるものが大切なんじゃないかと。だから描かなきゃいけない“仕事”なんです。主人公が、仕事を通して自分をどうしたいのか。僕にど恋愛話は無理なので(笑)、何を自分に託せるかといえば、仕事だと思ったんですよ。“仕事をする”っていいことだなと、僕も50歳を過ぎて思えたので。いろんな意味で「仕事をするっていいよ」ということを、この作品から受け取って、明日も仕事頑張ろうって寝床についてもらえたらいいですね。

(4月16日 11:30 文中の表現を一部訂正しました。)

TVアニメ『ひそねとまそたん』

TOKYO MX にて 毎週木曜 24:00~
BS フジにて 毎週木曜 24:00~
岐阜放送にて 毎週木曜 24:45~
MBS にて 2018 年 4 月 17 日(火)26:30~ 放送開始
NETFLIXにて 毎週金曜配信

※放送日時は変更になる場合があります。

<スタッフ>
原作:BONES・樋口真嗣・岡田麿里
総監督:樋口真嗣 監督:小林寛 シリーズ構成:岡田麿里
キャラクター原案:青木俊直 キャラクターデザイン:伊藤嘉之 メインメカニックデザイン:河森正治
モンスターコンセプトデザイン:コヤマシゲト コンセプトデザイン:okama ミリタリーアドバイザー:小柳啓伍 美術デザイン:平澤晃弘 美術監督:金子雄司 色彩設計:小針裕子 撮影監督:佐々木康太
3DCG 監督:安東容太 編集:奥田浩史 音楽:岩崎太整 音響監督:山田陽 音響効果:野口透
アニメーション制作:ボンズ

<キャスト>
甘粕ひそね(あまかす・ひそね):久野美咲
貝崎名緒(かいざき・なお):黒沢ともよ
星野絵瑠(ほしの・える):河瀬茉希
絹番莉々子(きぬつがい・りりこ):新井里美
日登美真弓(ひとみ・まゆみ):名塚佳織
樋本貞(ひのもと・さだ):朴 璐美
小此木榛人(おこのぎ・はると):梶 裕貴
財投豊(ざいとう・ゆたか):徳本恭敏
柿保令美(かきやす・れみ):釘宮理恵
幾嶋博己(いくしま・ひろき):諏訪部順一
曽々田弘(そそだ・ひろし):中田譲治
まそたん:神田松之丞

©BONES・樋口真嗣・岡田麿里/「ひそねとまそたん」飛実団

『ひそねとまそたん』オフィシャルサイト

『ひそねとまそたん』公式Twitter

『ひそねとまそたん』公式Instagram

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