ZARDデビュー25周年記念特集【THE POP STANDARD】  vol. 2

Review

いつ聴いても胸に迫るものがある、心を打つ、永遠のスタンダード・ナンバー

いつ聴いても胸に迫るものがある、心を打つ、永遠のスタンダード・ナンバー

愛され続けている楽曲たちが、今も生き生きと鳴り響いている

テキスト / 竹内美保

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 エバーグリーン。

 それはその存在が生まれたときから変わらず新鮮に輝きを保っている、ということではなく。生まれた瞬間から現在に至るまでの間にある“過去”を背負いながら、上質なヴィンテージ感も醸し出しながら、その存在と出会った人々のそれぞれの思い出や思い入れに寄り添いながら、それでもなお今日も美しい輝きと鮮やかな響きが失われていない、ということ。

 ZARDの楽曲たちを改めて聴くと、“ZARDのエバーグリーンなたたずまい”というものが少し特別なものであることに気づく。

 変わらず、ということには実はそれほど大きな意味があるわけではなくて。むしろ時を経てからもいつなんどき聴いても胸に迫るものがある、心を打つものがある、という響きを湛えていることにこそ、深くて大きな意味があるのだ。『ZARD Forever Best ~25th Anniversary~』のキャッチコピーにある、“永遠のスタンダード・ナンバー”とは、つまりそういうことなのだろうし、事実、この作品集を聴けばそれらをリアルに感じられるはず。

 その“永遠のスタンダード・ナンバー”が52曲収められているこの作品集、何より素晴らしい試みなのは、“早春”“初夏”“盛夏”“秋冬”という括りで4枚のCDにまとめられている点。

 オールタイム・ベスト盤の場合、歳月が積み重ねてきたものが重視されるため時系列を軸にした流れで構成されることが多いのだけれど、こうして季節をひとつの大きなテーマとして打ち出したことで楽曲の背景もより明確に浮かび上がってくるし、前後の楽曲との相乗効果でまた新たな物語も生まれるし、その季節ごとの風、空気、温度、色彩、空の表情などをゆっくりじっくり体感できる。

 また、たとえばこの作品集がリリースされる厳寒の時期にいつかのあの夏の日に思いを馳せる、というような楽しくもちょっと切ない心の旅を味わえるのもうれしいところだ。52曲というかなりボリュームのある内容だが疲れずに一気に聴き込めてしまえるのは、列車の車窓から流れていく四季の移ろいを眺めているような、その移ろいの瞬間瞬間の風景を新鮮な心持ちで楽しめていくような、そんな感覚を持てるからなのかもしれない。

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 そう。デビューから25周年、ボーカリスト(というより、ZARDの象徴、ZARDそのものとして存在し続けていた)・坂井泉水が遠い世界へと永遠に旅立ってしまってから約9年の歳月が経っているにも関わらず“空白”をいっさい感じることがないのは、“エバーグリーンでスタンダード”な珠玉の名曲たちがこうしてたくさん残されているからだろう。それは形あるものとしても、ZARDの楽曲を愛し続けている人たちの心の中で鳴り続けているものとしても。

 さまざまなコンポーザーとアレンジャーによる、多彩なメロディとサウンド。大胆な冒険はないけれど、ポップでキャッチーな音世界によく耳をすませてみれば緻密で実験的な音作りがなされていることにも、改めて気づかされる。人懐っこさと気品が共存し、その向こう側からは風格がそこはかとなく漂ってくる。決してマニアックにはなり過ぎない、絶妙なバランスで音を紡いでいる匠の技の数々。とりわけ幾つかの楽曲に織り込まれているバロックのエッセンスなどには、ハッとさせられるものがある。

 そしてZARDといえばもちろん、坂井泉水が綴る詞の世界。難解な言葉やアブストラクトな表現を使わず、あえて日常の会話に溢れているようなシンプルで明瞭な言葉と表現で時に手紙のように、時に日記のように思いを綴り風景を描いている。伝える相手は、“君”もしくは“あなた”。常にたったひとりの誰かに向けて、歌っている。第三者的視点で遠くの光景をスケッチするのではなく、親しみやすい語りかけで聴き手との距離を作らない、いうならば、“対話型”のスタイル。濁りのない、柔らかでかつ芯のある声で歌われる、リアリティのある言葉とストーリーに多くの人が共感を覚えてきたのは、ある意味当然のことだったのだろうし、またここで新たに“君”や“あなた”として、もしくは“私”に自分を重ねながら一曲一曲を聴き込んでいく人が増えるのも想像に難しくない。

 かつてたくさんのタイアップがあり、今もさまざまなシーンで流れている、楽曲たち。だけど本当に大切なのは、そこじゃない。愛され続けている楽曲たちが、今も生き生きと鳴り響いていることの証。これからも心から心へと受け継がれていく、証。それがこの、オールタイム・ベストアルバム。収録された52曲の最後の曲、“秋冬”盤のラストを飾るのが『負けないで』だということも、それを象徴している。そう、坂井はこう歌っている――“どんなに 離れてても 心はそばにいるわ”、と。

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リリース情報

デビュー25周年記念究極のオールタイムベスト、デビュー記念日・2016年2月10日リリース!

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『ZARD Forever Best ~25th Anniversary~』
JBCJ-9055~9058 ¥3,700+税

・デジタルリマスタリング&高品質CD Blu-spec CD2(TM) 4枚組
・歌詞ブックレット封入
・ZARD制作スタッフによるライナーノーツ付

初回生産分のみ
・三方背ブックケース仕様
・フォトブックレット封入 [未公開写真含む全32P]
・ZARD Cruising & Live 映像視聴用ID入りカード封入 [モバイルのみ対応] ※視聴期限:2017年2月10日まで

【disc1 ―早春―】
1. Don’t you see!
2. マイ フレンド
3. この愛に泳ぎ疲れても
4. Good-bye My Loneliness
5. WAKE UP MAKE THE MORNING LAST~忘れがたき人へ~
6. 君に逢いたくなったら・・・
7. 息もできない
8. 今すぐ会いに来て
9. ハイヒール脱ぎ捨てて
10. Forever you
11. 明日を夢見て
12. 翼を広げて
13. 愛は暗闇の中で featuring Aya Kamiki

【disc2 ―初夏―】
1. 星のかがやきよ
2. 夏を待つセイル(帆)のように
3. 君がいない
4. 心を開いて
5. 揺れる想い
6. 素直に言えなくて featuring Mai Kuraki
7. Oh my love
8. 雨に濡れて
9. I still remember
10. 来年の夏も
11. あなたに帰りたい
12. 愛が見えない
13. 果てしない夢を /ZYYG, REV, ZARD & WANDS featuring 長嶋茂雄

【disc3 ―盛夏―】
1. かけがえのないもの
2. 遠い星を数えて
3. 風が通り抜ける街へ
4. DAN DAN 心魅かれてく
5. 突然
6. Today is another day
7. Season
8. 眠れない夜を抱いて
9. こんなにそばに居るのに
10. 永遠
11. サヨナラは今もこの胸に居ます
12. 眠り
13. あの微笑みを忘れないで

【disc4 ―秋冬―】
1. もう少し あと少し・・・
2. Get U’re Dream
3. IN MY ARMS TONIGHT
4. 運命のルーレット廻して
5. 少女の頃に戻ったみたいに
6. きっと忘れない
7. こんなに愛しても
8. promised you
9. GOOD DAY
10. My Baby Grand ~ぬくもりが欲しくて~
11. グロリアス マインド
12. あなたを感じていたい
13. 負けないで

竹内美保

82年、イギリスのPUNK/NEW WAVE専門誌“ZIG ZAG”と提携した音楽誌“ZIG ZAG EAST”で執筆活動をスタート。同誌が休刊後、新たに誌名を“WAPPING WALL”と変更し再び休刊となるまで、編集・ライター・デスクの三役を兼ねる。84年、“オリコン・ウィークリー”の制作スタッフとして参加、翌年からライター業に専念。以降さまざまな音楽誌、一般誌、音楽サイト、新聞などでインタビュー・執筆活動を続ける。また、単行本、ツアー・パンフレット、幾つかのファンクラブの会報などの制作にも携わってきた。82年のスタートから現在に至るまで、一貫してフリーランスの音楽ライターとして活動を続け、気づけばキャリア34年目に。近年は反原発・反レイシズム・反ファシズムといった社会運動にも関わっている。

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