佐藤剛の「会った、聴いた、読んだ」  vol. 40

Column

存在していること自体がそのまま「ロック」、萩原健一の原点回帰と完全復活!

存在していること自体がそのまま「ロック」、萩原健一の原点回帰と完全復活!

萩原健一(ショーケン)が2018年になってまもなく、自身のレーベル「Shoken Records」を設立した。
しかも22年ぶりとなるシングルの『Time Flies』では、デビュー51年目にして初めて自らソングライティングを手がけたと知った。

さらにはシングル発売の記念に合わせて、ビルボードライブ東京を皮切りに名古屋、大阪、横浜でライブツアーを行ことも発表された。

そうしたニュースを読んだ時に、心が晴れていくように感じたのは、これで完全復活が叶ったのかもしれないという思いになったからだった。

初のレーベル設立や新曲についても、萩原健一はこのように話していた。

「人生の節目として、半世紀やってきた経験を、形にしたかった。そこに賛同してくれる仲間との仕事が楽しい。いつだって、応援してくれる人に、全力で答えたいと思ってる」
 

「ライブにも行かねば!」とぼくの中で気持ちが高まったのは、自分が携わっていた音楽舞台の「マイ・ラスト・ソング」のビルボード大阪公演で、店内に貼られていた公演告知ポスターを見かけたときだった。

すると何という偶然なのか、大阪から帰京して10日ほど後にビルボード東京のスタッフから、「萩原健一さんへの取材にご興味ないでしょうか?」というメールが送られてきた。

そして4月12日の昼過ぎに、東京の日比谷公園を見下ろす東京ミッドタウン日比谷にあるビルボードカフェダイニングで、御本人とお目にかかれることになったのである。

その日の朝、取材のために著書の「ショーケン」を再読しながら聞いていたTBSラジオで、パーソナリティの伊集院光と話しているショーケンの声には、驚きとうれしさを隠せなかった。
一時は聞き取りにくかった声が、すっかりもとに戻っていたからだ。

そして落ち着いた口調の向こうからは、気の遠くなる辛抱を重ねることで精神の安定と、喉のコンディションをすっかり取り戻した男が放つ、得もいわれぬオーラが強烈に感じられた。

それから2時間後にお目にかかってみたとき、ラジオでのトークから感じていたオーラが変わることはなかった。

ショーケンはグループサウンズ時代から、存在していること自体がそのまま「ロック」だった。
ビートルズの来日公演に影響を受けたグループサウンズのブームの中で、ロカビリー時代の歌手やバンドマンが持っていた不良性と、危険な香りを持ち込んだのはショーケンという稀有な表現者の本質なのだろう。

そこにはロックンロールの初期衝動とも重なる、反社会的な不良っぽさが漂っていた。それはブラウン管を通してでも、はっきりと伝わってきた。

やがてバンド解散から70年代に入ると、ショーケンはスーパーグループのPYGを経て、演技者の道を選び取っていくことになった。
そしてそこからはひたすら前を向いて、エネルギッシュに役者として戦っていく。

まず映画出演で頭角を現して注目を集めると、伝説になったテレビの『傷だらけの天使』と『前略おふくろ様』によって、俳優としての地位を確立した。
さらにはロックシンガーとしても、自らバンドを率いて新たな地平を目指して歩み始めた。

似ているようでまったく似ていないふたつの表現を、ショーケンはその時その時で切り替えながら追い求めてきた。
それから40年の歳月が過ぎて、今でもちっとも枯れてなんかいない。

ブルージーなロック・ナンバーの『Time Flies』には、こんな歌詞が出てくる。

鏡の中をのぞけば 見知らぬ顔がオレに微笑む
一人のとき いつも気づくんだ You Can Runaway
おまえはいま どこにいるんだ
いつもそうさ ロンリーウルフ
 

そう、飢えた狼のような目はその昔から、まったく変わっていないのだ。
この日も話してくれたが、ショーケンはまだ幼い子供の頃から、横浜の進駐軍の兵士たちが行く横浜のゼブラクラブなどに出入りし、そこで鳴っていたブルースを聞いて育った少年だった。

自分で作詞作曲した新曲はどれもその時代、つまりグループサウンズ以前、少年の頃への原点回帰だという。

やり残したことや貯めていることが、まだたくさんあるとショーケンは語っていた。
ほんとうに彼にしか出来ないことに向かって、これからの明日に向かって挑戦していってほしいと思う。

完全復活を果たした伝説のロックシンガーが、原点回帰によってますます活躍していくことを願わずにはいられない。

リリース情報

萩原健一
NEW SINGLE『Time Flies』
2018/05/09 RELEASE

KHSR-1801 1500円(tax out)
Shoken Records

萩原健一の楽曲はこちらから

ツアー情報

【萩原健一 「Time Flies」】

5月2日(水)・5月4日(金)ビルボードライブ東京
オフィシャルサイトhttp://www.billboard-live.com/

5月13日(日)名古屋ブルーノート
オフィシャルサイトhttp://www.nagoya-bluenote.com/

5月30日(水)・6月1日(金)・6月2日(土)ビルボードライブ大阪
オフィシャルサイトhttp://www.billboard-live.com/

6月9日(土)・6月10日(日)モーション・ブルー・ヨコハマ
オフィシャルサイトhttp://www.motionblue.co.jp/


著者プロフィール:佐藤剛

1952年岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち。明治大学卒業後、音楽業界誌『ミュージック・ラボ』の編集と営業に携わる。
シンコー・ミュージックを経て、プロデューサーとして独立。数多くのアーティストの作品やコンサートをてがける。
「マイ・ラスト・ソング」では構成と演出を担当。
2015年、NPO法人ミュージックソムリエ協会会長。
著書にはノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店、小学館文庫)、『黄昏のビギンの物語』(小学館新書)、『ウェルカム!ビートルズ』(リットーミュージック)

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